国際ドキュメンタリー協会賞(IDA)2010 ノミネーション発表!

 国際ドキュメンタリー協会(International Documentary Association /IDA)が贈る第26回IDAアワード2010各部門のノミネーション/ファイナリストが発表になりました。(10月25日)

 IDAは、ドキュメンタリー作品の作り手の支援やドキュメンタリー作品の上映機会の増加のための活動を行なっている非営利団体で、ロサンゼルスに本部があり、世界53カ国に2800人の会員を有しています。

 IDAアワードは、そんな非営利団体が贈る賞ということで、一見地味~な印象も受けますが(実際のところ、あまり陽の目を見ないドキュメンタリー作品に積極的にスポットライトを当てようとしているようなところがあり、シリアスな作品も多い)、ユニークな題材を扱った作品も多く、さまざまな映画祭で評価された作品もたくさん取り上げられています。

 過去の受賞作には―
 ・『ウォー・チャイルド』:Video Source Award 2008
 ・『神は僕らを見放した』:Emerging Documentary Filmmaker 2006
 ・『イラクのカケラを集めて』:長編ドキュメンタリー賞2006
 ・『未来を写した子どもたち』:長編ドキュメンタリー賞2004
 ・『華氏911』:長編ドキュメンタリー賞2004
 ・『イメルダ』:Video Source Award 2004
 ・『バス174』:Video Source Award 2003
 ・『SUGIHARA: Conspiracy Of Kindness~杉原千畝 善意の陰謀』:Pare Lorentz Award 2000
 などがあります。

 昨年は、『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』が長編ドキュメンタリー賞と音楽ドキュメンタリー賞をダブル受賞しました。

 米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞、短編ドキュメンタリー賞の前哨戦になっていれば、それはそれで興味深いのですが、対象期間の違いなどもあるようで、アカデミー賞では2009年度対象になった作品もノミネート作品に含まれていたりします。

 今年のノミネートは以下のようになっています。

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 ◆長編ドキュメンタリー部門(Distinguished Feature Documentary Nominees)

 ・“Exit Through The Gift Shop”(米・英) 監督:Banksy
 イギリスのグラフィティ・アーティストBanksyが、自分のことを撮影しているフランス人店主がいるのを見て、それなら自分で自分を撮ってしまおうということで自ら手がけた“グラフィティ・アーティストBanksy”に関するドキュメンタリー作品。
 ブリティッシュ・インディペンデント・フィルム・アワード2010 ドキュメンタリー賞ノミネート。
 英国グリアソン・アワード2010 エンタテインメント賞受賞。

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 ・“The Oath”(米) 監督:Laura Poitras
 ゴッサム・アワード2010 ドキュメンタリー賞ノミネート。1996年に運命的な出会いをし、アフガニスタン、オサマ・ビン・ラディン、9.11、グアンタナモ、米最高裁へと導かれた2人の男性の物語。
 監督のLaura Poitrasは、“My Country, My Country”(2006)で、米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされています。
 サンダンス映画祭2010 撮影賞受賞。
 エジンバラ国際映画祭2010 長編ドキュメンタリー賞受賞。

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 ・“Steam Of Life”(フィンランド) 監督:Joonas Berghäll、Mika Hotakainen
 フィンランドの男たちが人生や愛や家族を語る、語らいの場としてのサウナに焦点を当てたドキュメンタリー。
 シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2010 ワールド部門審査員スペシャル・メンション。
 米国アカデミー賞2011 外国語映画賞フィンランド代表。

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 ・“Sweetgrass”(仏・英・米) 監督:Ilisa Barbash, Lucien Castaing-Taylor
 2003年に、ヒツジの群れを連れて、山越えを含む300キロの旅を行なった羊飼いに関するドキュメンタリー。
 ゴッサム・アワード2010 ドキュメンタリー賞ノミネート。

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 ・『ヴィック・ムーニーズ/ごみアートの奇跡』“Waste Land”(ブラジル・英) 監督:ルーシー・ウォーカー
 国際的なアーティストヴィック・ムーニーズ(Vik Muniz)が、リオ・デ・ジャネイロの埋立地でゴミ漁りをする人々とコラボレートして、人々の生活がいかに変わったかを検証する。
 ルーシー・ウォーカーは『ブラインドサイト 小さな登山者たち』の監督。
 サンダンス映画祭2010 観客賞受賞。
 ブリティッシュ・インディペンデント・フィルム・アワード2010 ドキュメンタリー賞ノミネート。
 東京国際映画祭2010にて上映。

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 ◆短編ドキュメンタリー部門(Distinguished Short Documentary Nominees)

 ・“Keep Dancing”(米) 監督:Greg Vanderveer
 ダンサーとして大きな名声を得た後で、Marge ChampionとDonald Saddlerは友人になり、2001年に一緒に“The Broadway Show Follies”のステージに立つ。ショーが終わった後、2人は、一緒にスタジオを作ることに決め、そこでオリジナル・ダンスの振付をし、リハーサルを行なう。彼女たちは90歳で、なお踊り続けている。本作では、過去の記録映像と現在のフィルムを織り交ぜつつ、彼女たちの物語を語る。

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 ・“The Last Campaign Of Governor Booth Gardner”(米) 監督:Daniel Junge
 1985年から1993年までにワシントン州知事を務めたブース・ガードナーが引退後(自らがパーキンソン氏病にかかっていることがわかってから)に始めた、自殺幇助を認める尊厳法キャンペーンを追ったドキュメンタリー。
 Daniel Jungeは、“Iron Ladies of Liberia”(2007)や“They Killed Sister Dorothy”(2008)などで知られるドキュメンタリー作家。
 米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞 ノミネート。

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 ・“Woman Rebel”(ネパール・米) 監督:Kiran Deol
 ネパールの女性活動家に関するドキュメンタリー。
 米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞候補ショートリスト エントリー。

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 ・“The Fence”(米) 監督:Rory Kennedy
 全長2000マイルにおよぶアメリカ-メキシコ国境に、30億ドルかけて、700マイルにわたる金属製のフェンスが設営された。テロリストに対処することや、麻薬の輸入や不法移民を防ぐことが目的らしいが、人道的にも環境的にも全くのムダである。本作は、このフェンス敷設を、痛烈に、そして皮肉たっぷりに非難する。
 Rory Kennedyは、昨年も“Thank You, Mr. President: Helen Thomas At The White House”でビデオ・アワードにノミネートされています。

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 ・“The Last Truck”(米) 監督:Steven Bognar、Julia Reichert
 ゼネラル・モータースのオハイオ工場の最後の日々を、そのラインで働く人々へのインタビューを交えて、記録している。
 監督Steven Bognarは、Julia Reichertとのコンビで、ガン患者を抱える家族を6年にわたって追った“A Lion in the House”(2006)(エミー賞受賞)など、さまざまなジャンルのドキュメンタリー作品を発表しています。
 米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞 ノミネート。

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 ◆音楽ドキュメンタリー部門(IDA Music Documentary Award Nominees)

 ・“For Once In My Life”(米) 監督:Mark Moormann、Jim Bigham
 精神的あるいは肉体的な障害を抱えた28人のミュージシャンおよびシンガーがSpirit of Goodwill Bandというバンドを組み、日常生活を送りながら、作曲と演奏を続けていく様子を追う。
 SXSW映画祭2010観客賞受賞。
 ワルシャワ国際映画祭2010 観客投票第2位。

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 ・“Genius Within: The Inner Life Of Glenn Gould”(カナダ 監督:Michele Hozer、Peter Raymont
 グレン・グールドの精神世界にスポットライトを当てたドキュメンタリー。
 トロント国際映画祭2009 REAL TO REEL部門出品。

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 ・『双子のデュオ~アンタッチャブル・ガールズ』“The Topp Twins: Untouchable Girls”(ニュージーランド) 監督:リアン・プーリー(Leanne Pooley)
 ニュージーランドでカントリー&ウェスタンを歌う人気レズビアン・デュオTopp Twinsに関するドキュメンタリー。
 トロント国際映画祭2009観客賞ドキュメンタリー部門受賞。
 メルボルン国際映画祭2009 Most Popular Documentary受賞。
 ニュージーランド映画&テレビ賞2009 最優秀作品賞(100万ドル以下部門)&オリジナル音楽賞受賞。
 ヨーテボリ国際映画祭2010 観客賞受賞
 GLAAD(ゲイ&レズビアン同盟)メディア・アワード2010 最優秀ドキュメンタリー番組部門ノミネート。
 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭2010にて上映。

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 ・“Thunder Soul”(米) 監督:Mark Landsman
 1970年代にセンセーションを巻き起こした高校生バンドKashmere Stage Bandについてのドキュメンタリー。ヒューストンの黒人高校の音楽教師コンラッド・O・ジョンソンは、高校生バンドにコンテンポラリー・ジャズやファンク、オリジナル曲などを教えて、彼らを一級のバンドに育て上げる。バンドのメンバーには、プロになった者もいれば、ならなかった者もいるが、このバンドの特異なところは、卒業してもなおバンドにとどまって、レッスンを続けたことだと言う。卒業生の1人は話す、「先生の教えてくれたのは、単に音楽ではなく、人間(Men)になる方法だった」と。
 ロサンゼルス映画祭2010 ドキュメンタリー・コンペティション 観客賞受賞。

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 ・“When I Rise”(米) 監督:Mat Hames
 才能あるテキサス大学の黒人女子学生が人権問題に巻き込まれ、永遠に人生を変えてしまうような事態に遭遇する。テキサス大学の黒人女子学生Barbara Smith Conradは、オペラで白人男子学生の相手役に選ばれたことで、テキサス州議会議員からの反発を受ける。結局、彼女は降板することになるが、逆にこのことが大きなニュースとなり、人気スターが彼女の支援に立ち上がるといった事態にまで発展する。彼女の声と精神は北テキサスに根差したもので、才能あるメゾソプラノ・シンガーとして国際的な注目を集めることになる。

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 ◆ドキュメンタリー・シリーズ賞 継続シリーズ部門(Continuing Series Award Nominees)

 ・“30 For 30”(ESPN)
 エピソード:‘The Band That Wouldn't Die’ 監督:Barry Levinson
 エピソード:‘Muhammad And Larry’ 監督:Albert Maysles、Bradley Kaplan
 エピソード:‘Winning Time: Reggie Miller Vs. The New York Knicks’ 監督:Dan Klores
 エピソード:‘Run Ricky Run’ 監督:Sean Pamphilon、Royce Toni

 ・“American Experience”(WGBH; PBS)
 エピソード:‘Into The Deep: America, Whaling & The World’ 監督:Ric Burns
 エピソード:‘My Lai’ 監督:Barak Goodman
 エピソード:‘Roads To Memphis’ 監督:Stephen Ives

 “American Experience”は2年連続ノミネートです。

 ・“Art In The Twenty-First Century”(PBS)
 エピソード:‘Compassion’ 監督:Catherine Tatge
 エピソード:‘Fantasy’ 監督:Catherine Tatge
 エピソード:‘Transformation’監督:Charles Atlas
 エピソード:‘Systems’ 監督:Charles Atlas

 ・“Brick City”(Sundance Channel)
 エピソード:‘Summer Is Ours’ 監督:Marc Levin、Mark Benjamin)
 エピソード:‘Struggle’ 監督:Marc Levin、Mark Benjamin)
 エピソード:‘Central’ 監督:Marc Levin、Mark Benjamin)
 エピソード:‘Circus’ 監督:Marc Levin、Mark Benjamin)
 エピソード:‘Red October’ 監督:Marc Levin、Mark Benjamin)

 ・“Wide Angle”(PBS)
 エピソード:‘Contestant No.2’ 監督:Ibtisam Salah Mara’ Ana
 エピソード:‘Heart Of Jenin’ 監督:Leon Geller、Marcus Vetter
 エピソード:‘Crossing Heaven’ s Border’ 監督:Jung In Taek
 エピソード:‘Once Upon A Coup’ 監督:Christopher Olgiati

 ◆ドキュメンタリー・シリーズ賞 限定シリーズ部門(Limited Series Award Nominees)
 ・“Afflictions: Culture And Mental Illness In Indonesia” 監督:Robert Lemelson
 ・“Have You Heard From Johannesburg” 監督:Connie E Field
 ・“Latin Music USA” 監督:Director/Producers: Adriana Bosch, Daniel Mccabe, John J. Valadez, Jeremy Marre
 ・“Masterclass” 監督:Karen Goodman、Kirk Simon
 ・“This Emotional Life” 監督:

 ◆学生作品部門(IDA/David L. Wolper Student Documentary Award Nominees)
 ・“Little Mom” 監督:Maria Fortiz-Morse(スタンフォード大学/MFA Documentary Film And Video)
 ・“Perry County” 監督:Matt Durning、N’ Jeri Eaton(カリフォルニア大学バークレー校)
 ・“The Stinking Ship” 監督:Bagassi Koura(University Of California Berkeley)
 ・“Waiting For A Train: The Toshio Hirano Story” 監督:Oscar Bucher(OB3 Studios/ サンフランシスコ州立大学)
 ・“Whales Of Gold” 監督:Lucia Duncan(テキサス大学)

 スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校は、この部門の常連のようです。

 【名誉賞】

 ◆生涯貢献賞(Career Achievement Award)
 ◎バーバラ・コップル
 バーバラ・コップルは、『ワイルド・マン・ブルース』(1998)や『MY GENERATION マイ・ジェネレーション』(2000)、『ディクシー・チックス シャラップ&シング』(2006)などで知られる映画監督。

 ◆パイオニア賞(Pioneer Award)
 ◎Alan & Susan Raymond
 Alan & Susan Raymondは、TVドキュメンタリーの世界で活躍するコンビで、70年代から作品を発表し続けて、“Doing Time: Life Inside the Big House”(1991)で米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート、“I Am a Promise: The Children of Stanton Elementary School”(1993)で、同賞を受賞しています。

 ◆プリザベーション&スカラシップ賞(Preservation And Scholarship Award)
 ◎マーク・ジョナサン・ハリス(Mark Jonathan Harris)
 マーク・ジョナサン・ハリスは、『INTO THE ARMS OF STRANGERS ホロコースト:救出された子供たち』(2000)、『ロング ウェイ ホーム 遥かなる故郷 イスラエル建国の道』 (1997)の監督で、“Darfur Now”(2007)などのプロデューサーです。

 ◆新進フィルムメーカー賞(Jacqueline Donnet Emerging Filmmaker Award)
 ◎Jeff Malmberg
 Jeff Malmbergは、10年以上のキャリアを持つ映画編集者で、2010年に長編ドキュメンタリー“Marwencol”の監督を手がけました。

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 上記で、内容紹介までしたのは、3部門だけで、その大半の作品は当ブログで既に取り上げたことのある作品ばかり、つまり、それほどあちこちで評価されている作品ばかりだということですが、そうでない作品もあって、調べてみて、「いい作品、見つけた!」と思える作品があったりするのはいいですね。

 昨年まであったビデオ・アワードとPare Lorentz Awardは、なくなってしまったようです。

 受賞結果の発表は、12月3日です。

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 *当ブログ記事

 ・IDAアワード2009 ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_24.html
 ・IDAアワード2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_10.html

 ・サンダンス映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_1.html
 ・SXSW映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201003/article_31.html
 ・シルバードックス映画祭2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201007/article_5.html
 ・グリアソン・アワード2010 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_8.html
 ・米国アカデミー賞2011 短編ドキュメンタリー賞 ショートリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201010/article_25.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:Http://Umikarahajimaru.At.Webry.Info/201005/Article_23.Html

 追記:
 国際ドキュメンタリー協会賞2010 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201012/article_7.html

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