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zoom RSS 必ず2度観てしまう! イザベラ・プリュシンスカ 『あと7分』!

<<   作成日時 : 2010/11/15 00:01   >>

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 「世界のアニメーションシアター WAT2010」でも紹介されている作品から、イザベラ・プリュシンスカ作品『あと7分』“7 More Minutes”―。



 【物語】
 音楽が先行。どことなく不安げな印象を与える弦楽器の音楽。
 闇の中、画面いっぱいに列車が左から右へと進む。
 列車の窓の明りは一切外に漏れていない。
 列車の中。
 大きな鼻のスーツ姿の男、青い服の男、緑の服の男、そして赤い髪の女が、1つのボックス席に座っている。
 列車のシルエット。(右から左へ)
 そのシルエットが乱れる。
 衝撃音。
 混乱する車内。
 乱れる列車のシルエット。
 さらに大きな衝撃音。
 画面が真っ白になる。薄い靄がかかって、それがゆっくりと風で流れて行っているようにも見える。
 冒頭と同じ音楽。
 ルーズリーフの紙が、靄の中で、風に飛ばされそうになっている。
 画面の右隅にタイトル。
 カモメ。
 大きな鼻の男のシルエット。カモメのシルエットも重なる。左から右へ、右から左へ。
 男は帽子を取って、空を見上げる。
 頭からダラダラと汗を流す。
 電車の車輪が線路をこするような音が聞こえる。
 大きなカバンを押して、浜辺を歩いてくる赤い髪の女。
 その足跡が砂浜に残る。
 カバンを抱える緑の服の男。左右をキョロキョロする。
 赤い髪の女。
 黒いスーツの男。
 腕時計は9時を指している。時計の針を5分ほど前に戻す。
 緑のスーツの男がスーツの男をみつけて会釈する。
 カモメのシルエット。
 青い服の太った男。雲がシャツを通り抜けていく。
 女の裸足の足。
 女は、大きな赤い帽子を抱えていたが、風に飛ばされてしまう。
 青い服の太った男。
 空を舞う帽子。
 砂浜に打ち寄せる波。
 スーツの男の汗。男はネクタイをゆるめる。
 紙に写生を始める。しかし、なぜか絵の中のカモメが落ちてしまう。
 男の足も裸足。
 緑の服の男が、服のファスナーを下ろして、上半身をはだけさせる。
 カモメ。
 青い服の太った男もズボンを脱ぐ。
 緑の服の男は上半身裸になる。
 砂浜に打ち寄せる波。
 涙を流す女。
 遠くの海には雲間から何本もの光が差している。
 赤い髪の女。
 大きな鼻の男はスーツを脱いでシャツ姿になっていて、その隣には太った男が立っている。
 太った男は、服を脱いで上半身裸になる。そしてパンツも脱ぐ。
 もう1人の男と赤い髪の女。
 女も上半身裸になる。
 もう一方の2人。
 緑の服を着ていた男は、パンツも脱いで全裸になる。
 大きな鼻の男もシャツとズボンを脱ぐ。
 青いシャツが空を舞う。
 海に向かって立つ4人の後ろ姿。
 全員が裸になる。
 パンツが空を舞う。
 少し前に出る4人。
 打ち寄せる波とカモメのシルエット。
 海の中に入っていく4人。
 そして、その姿は海の中に消えて見えなくなる。
 波打ち際をカモメが右から左へと歩く。
 エンドロール。

画像
   (c) ClayTraces

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 【コメント】

 最初にこの作品を観た時は、クレイ・アニメーションの表現にばかり気を取られていたこともありますが、これは、列車に乗って、海に入水自殺にやって来た4人組の物語なのかなと思いました。

 でも、本当にそうなのかなと思って、2度3度と観ていくうちに、どうやらそうではないということがわかってきました。

 どうもこの4人は、列車の事故で死んで、ちょうどあの世に向かおうとしているところ、らしいんですね。

 列車の事故をイメージさせる映像の後の、唐突な浜辺のシーン。
 カバンを抱えた緑の服の男は、なぜ自分はここにいるのか訝るように、左右をキョロキョロする。
 ここが異世界であることを示すような不可思議なことが次々に起こる。――電車の車輪が線路をこするような音が聞こえる。青い服の太った男のシャツを雲が通り抜けていく。写生した絵の中のカモメがなぜか落ちてしまう。

 自分の死を受け入れるまでの残された時間が約7分ということなのでしょうか。

 時計の針を5分ほど(7分?)戻すスーツの男の行動が意味ありげで、2度目に観た時は、まだこの男が4人のうちの1人とは気づかず、4人をあの世へと送る黄泉の国の番人のような存在なのかなと思ってしまいました。
 この男が時計の針を戻すのは、自分たちの残された時間を知っていたからというか、この作品に不可思議な雰囲気を醸し出させるために監督が入れた、ある種の仕掛けのようなもの、と考えたらいいでしょうか。

 最初に観た時は、クレイ・アニメーションの表現の斬新さに目を奪われました。
 ・クレイ・アニメーションでありながら、クレイ・アニメーションのみに頼らず、列車やカモメをシルエットで表現する。
 ・額を流れる汗。流す涙。
 ・服を脱ぐところ。
 ・砂浜に打ち寄せる波。

 前の記事で、イザベラ・プリュシンスカのことを「クレイ・アニメーションの魔術師」を書きましたが、それは、彼女のこんな表現力に驚嘆したところから出てきた言葉、ということになります。
 ※ 「赤い髪の女が大きなカバンを押して行った後で、遅れて砂浜に足跡が残る」というのは、不可思議な効果を出すために監督が意図した演出なのか、それとも「遅れて」は全然意図したものでなかったのは、ちょっと確信がもてませんでした。

 映画のリズムもいいですね。
 空を飛ぶカモメ、打ち寄せる波、空を舞う帽子や服。これらを、テンポよく、シーンの合間に挟み込んでいくことで、物語にいいリズム感を作り出しています。
 登場人物を4人にしたのも、たぶん、4人の姿を1人ずつ見せていくのが、3人とか5人とかより、物語のテンポがよくなるからだろうと思われます。

 「この世とあの世の境目で、人は汗をかくのか」ということが気にならないでもありませんが、これは、死に行く人を自主的に裸にして、あの世に送り出すための(神様の編み出した)仕掛け・方便と考えたらいいでしょうか。

 「世界のアニメーションシアターWAT2010」のチラシには、この作品に関して、一切の紹介文がつけられていませんが、それは正解だと思いますね。
 果たして1回観ただけでこの作品が正確に理解できるのかということはありますが、先入観なしでこの作品を観て、どういうことなんだろうと考えていくことが、この作品にとって意味のあることだと思われますから。(そういうことはたぶん『ジョゼットのひとり遊び』に関しても言うことができるように思います。)

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 ◆作品データ
 2008年/独/7分30秒
 台詞なし/字幕なし
 クレイ・アニメーション)
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ※参考サイト:http://www.slinkypictures.com/work/3d/7-more-minutes/

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 *当ブログ関連記事
 ・伊藤裕美さんのこと。オフィスHのこと。:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_15.html
 ・「世界のアニメーションシアター WAT2010」 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_16.html
 ・イザベラ・プリュシンスカ 『ブレックファースト』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_17.html
 ・オフィスHが手がけた短編アニメーション(カナダ映画以外):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_21.html

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 ◆監督について

 イザベラ・プリュシンスカ(Izabela Plucinska)

 1974年6月10日、ポーランドのコシャリン(Koszalin)で生まれる。
 幼い頃から粘土遊びが好きで、長じてそれが仕事(クレイ・アニメーション作家)になった。

 1995-2000年 ウッチ(ポーランド)のASP Designでデザインとグラフィックスを学ぶ。
 1998-2001年 ウッチのPWSFTviT Animationでアニメーションを学ぶ。
 2002-2004年 DAAD奨学金を得て、ポツダム・バーベルスベルク(ドイツ)のHFF “Konrad Wolf”に留学。(DAAD奨学金は1年間のみで、Nipkow Programm Berlinによりポツダム滞在をさらに1年延長した。)

 1999年よりクレイ・アニメーションを作り始める。
 HFFの卒業制作がクレイ・アニメーションの『ジャム・セッション』“Jam Session”(2005)で、制作に9ヶ月かけ、50000カットを撮影して、完成させた。
 『ジャム・セッション』は、ベルリン国際映画祭2005の短編コンペティション部門にエントリーされ、銀熊賞(最優秀短編賞)を受賞した。
 同作品は、また、Jamila Wenskeをプロデューサー、プリュシンスカを監督/アニメーターとして設立した自身の制作会社Clay Traces GbRの最初の作品でもある。

 2008年の『ブレックファースト』は、広島国際アニメーションフェスティバルにエントリーされて、木下蓮三賞を受賞した。

 2009年の『ベルリンの野うさぎ』“Esterhazy”は、イレーネ・ディーシェとハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー著の『エスターハージー王子の冒険』の翻案で、ベルリンの壁崩壊をモチーフに取り込んだ作品で、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010とアヌシー国際アニメーションフェスティバル2010の短編コンペティション部門にエントリーされたほか、クラクフ映画祭2010の短編コンペティション部門にもエントリーされ、同映画祭ではオナラブル・メンションを受賞した。

 2010年のワルシャワ国際映画祭では、短編コンペティション部門の審査員も務めた。

 2010年11月には、「世界のアニメーションシアターWAT2010」で特集上映が行なわれるのと、MOVIX本牧で「横浜ドイツ・フィルム・デイズ−ベルリン&アニメーション」が行なわれるのに合わせて来日し、後者ではトークショーも行なった。

 粘土を使って、多彩な表現にチャレンジするというのが作品の1つの特徴で、ガラスや光、音なども効果的に使う。
 作品のモチーフとしては、切なく、ちょっともの悲しい題材を好む。
 原作ものの映画化や、社会性のある題材も多い。
 単純な描写でありながら、繰り返し観て、ようやくその意味が汲み取れるというような語り口を持つ作品も多い。
 監督自身は、「夢のようなものと現実のイメージを自分の作品の中でミックスさせたい」と語っている。

 *参考サイト
 ・公式サイト(英語):http://www.izaplucinska.com/resume.htm
 ・DAAD(英語):http://www.daad.de/alumni/netzwerke/vip-galerie/adm/13671.en.html

 【フィルモグラフィー】

 ・1998年 “Castling”(ポーランド)(2分/35mm-Kodak 5248/ペーパー・コラージュ)
 ・1999年 “Backyard”(ポーランド)(2分30秒/35mm-Kodak 5248/クレイ・アニメーション)
 ・2000年 “Twin”(ポーランド)(3分20秒/35mm -Kodak 5248/クレイ・アニメーション)
 ・2002年 “On The Other Side”(独)(4分30秒/35mm -Kodak 5248/クレイ・アニメーション)

 ・2005年 『ジャム・セッション』“Jam Session”(独・ポーランド)(9分30秒/ digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 ベルリン国際映画祭2005銀熊賞(最優秀短編賞)受賞。

 ・2006年 『ブレックファースト』“Breakfast(Sniadanie)”(独)(2分20秒/digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 広島国際アニメーションフェスティバル2008 木下蓮三賞を受賞。
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ・2008年 『あと7分』“7 More Minutes”(独)(7分30秒/digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ・2008年 “Marathon”(5分10秒/ digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 共同監督:Spela Cadez(スヴェロニアのアニメーション作家)

 ・2009年 『ベルリンの野うさぎ』“Esterhazy”(独・ポーランド)(24分/digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 *イレーネ・ディーシェとハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー著の『エスターハージー王子の冒険』の翻案。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。
 クラクフ映画祭2010 ポーランド短編 コンペティション部門出品。オナラブル・メンション受賞。
 こどもアニメーションフェスティバル2010@女子美術大学相模原キャンパス(2010年10月)にて上映。
 「横浜ドイツ・フィルム・デイズ−ベルリン&アニメーション」(2010)@本牧MOVIXにて上映。
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ・2010年 『ジョゼットのひとり遊び』“Josette und ihr Papa”(独)(9分/クレイ・アニメーション)
 *ウジェーヌ・イヨネスコの同名児童書の映画化。(邦訳『ジョゼット おなべのなかにパパをさがす/ストーリー4』(角川書店) 1979年刊 著:ウージェーヌ・イヨネスコ、絵:ニコル・クラヴルー 訳:谷川俊太郎 )
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

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