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zoom RSS クレイ・アニメーションの魔術師! イザベラ・プリュシンスカ 『ブレックファースト』

<<   作成日時 : 2010/11/14 00:02   >>

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 「世界のアニメーションシアター WAT2010」で、見ごたえのある短編アニメーションを観たおかげで、久々に短編アニメーションを攻めてみたい気になりました。

 ということで、今回は、「世界のアニメーションシアター WAT2010」で特集が組まれているポーランド出身のアニメーション作家イザベラ・プリュシンスカの監督作品から、『ブレックファースト』“Breakfast(Sniadenie)”をご紹介したいと思います。

 この作品は、「世界のアニメーションシアター WAT2010」のラインナップにも入っていて、そんな作品をYou Tubeから動画を貼り付けて、紹介することに、やましさを感じないでもないんですが、まあ、「世界のアニメーションシアター WAT2010」への誘い水として、お許しいただきたいと思います。



 【物語】
 黄色い粘土が画面いっぱいに広がる。
 その中から太いパイプが現れて、逆L字型に伸びる。
 その左右に水道のコックが現れる。
 コックが勝手にまわって、蛇口から水滴が滴る。
 手(の輪郭)が現れて、コックを締める。
 タイトル
 男性(の輪郭)が左から右へと歩いてくる。
 男性は、窓から外を覗いた後、椅子を引いて、腰掛ける。そして新聞を読み始める。
 左から奥さんらしき女性(の輪郭)が現れて、テーブルにつく。
 奥さんが自分の左側にある窓を開けると、外から騒音が聞こえてくる。
 奥さんは、体をかがめて、夫に何か囁くようにした後、夫側にあったパンを取り、ナイフで切って、バターを塗る。そして、カップにお茶を注ぐ。
 夫は、新聞をたたんで、テーブルに置く。
 風が強くなってきたようなので、奥さんは窓を閉める。
 突然、突風が吹いて、2つの窓が開き、新聞が舞って、奥さんの顔にかぶさる。
 新聞は、部屋の中を舞った後で、窓から外に飛び出していく。
 2人は、手を取り合って、互いを気づかう。
 2人は、再び、椅子に座り、ゆっくりとお茶を飲む。

画像
   (c) ClayTraces

 ◆コメント
 クレイ・アニメーションといえば、粘土で作った人形を少しずつ動かして、コマ撮りしていくもの、というイメージがありますが、この作品は、そうではなくて、1枚の粘土板から形を浮かび上がらせるようにして、それだけで物語を進めています。

 クレイ・アニメーションの専門家ではないので、これがどのくらいユニークなものなのかはわかりませんが、シュヴァンクマイエルの諸作品や、『ウォレスとグルミット』「ひつじのショーン」をはじめとするアードマン作品などを観てきた感覚からすると、随分斬新でユニークな作品だと思えました。
 アードマン作品をクレイ・アニメーションの一般ドラマとするなら、この作品はクレイ・アニメーションのパントマイムということができるでしょうか。

 この作品のハイライトは、突風が吹き込んで、窓が開き、新聞が部屋の中を舞うところですが、クレイ・アニメーションでよくこんなこと(スペクタクル)ができるものだと感心してしまいます。

 気になるのは、黒い輪郭だけの人物で、テクニック的にどういうことになっているのか、よくわかりません。
 どうも粘土の上に黒いインクで描いているわけではなさそうで(?)、透明なセルの上に描いて別撮りした人物だけのフィルムを、クレイ・アニメーションを写したフィルムと重ねて、もう1回焼いたということなのでしょうか。(あるいは、デジタルを使って、コンピューター上で処理したか)
 作品として、そしてテクニックとして、「人物」も、クレイでやれないことはなかったように思いますが、作品にアクセントをっつけるためにわざとこのような手法を使った、ということなのかもしれません。

 これが実写であれば、特に注目すべきことも何もないただの日常風景を写しただけの作品ということになったのでしょうが、それをクレイ・アニメーションでやったことで、シンプルながら、新鮮で、観て、驚きのある作品に仕上がりました。

 ◆作品データ
 2006年/独/2分20秒
 台詞なし/字幕なし
 クレイ・アニメーション)
 広島国際アニメーションフェスティバル2008 木下蓮三賞を受賞。
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

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 ※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ
 ・「tantano 短編映画をたのしむ」INDEX
 ・「tantano 短編映画をたのしむ」 人気動画 トップ39!

 *当ブログ関連記事
 ・伊藤裕美さんのこと。オフィスHのこと。:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_15.html
 ・「世界のアニメーションシアター WAT2010」 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_16.html
 ・イザベラ・プリュシンスカ 『あと7分』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_19.html
 ・オフィスHが手がけた短編アニメーション(カナダ映画以外):http://umikarahajimaru.at.webry.info/201011/article_21.html

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 ◆監督について

 イザベラ・プリュシンスカ(Izabela Plucinska)

 1974年6月10日、ポーランドのコシャリン(Koszalin)で生まれる。
 幼い頃から粘土遊びが好きで、長じてそれが仕事(クレイ・アニメーション作家)になった。

 1995-2000年 ウッチ(ポーランド)のASP Designでデザインとグラフィックスを学ぶ。
 1998-2001年 ウッチのPWSFTviT Animationでアニメーションを学ぶ。
 2002-2004年 DAAD奨学金を得て、ポツダム・バーベルスベルク(ドイツ)のHFF “Konrad Wolf”に留学。(DAAD奨学金は1年間のみで、Nipkow Programm Berlinによりポツダム滞在をさらに1年延長した。)

 1999年よりクレイ・アニメーションを作り始める。
 HFFの卒業制作がクレイ・アニメーションの『ジャム・セッション』“Jam Session”(2005)で、制作に9ヶ月かけ、50000カットを撮影して、完成させた。
 『ジャム・セッション』は、ベルリン国際映画祭2005の短編コンペティション部門にエントリーされ、銀熊賞(最優秀短編賞)を受賞した。
 同作品は、また、Jamila Wenskeをプロデューサー、プリュシンスカを監督/アニメーターとして設立した自身の制作会社Clay Traces GbRの最初の作品でもある。

 2008年の『ブレックファースト』は、広島国際アニメーションフェスティバルにエントリーされて、木下蓮三賞を受賞した。

 2009年の『ベルリンの野うさぎ』“Esterhazy”は、イレーネ・ディーシェとハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー著の『エスターハージー王子の冒険』の翻案で、ベルリンの壁崩壊をモチーフに取り込んだ作品で、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010とアヌシー国際アニメーションフェスティバル2010の短編コンペティション部門にエントリーされたほか、クラクフ映画祭2010の短編コンペティション部門にもエントリーされ、同映画祭ではオナラブル・メンションを受賞した。

 2010年のワルシャワ国際映画祭では、短編コンペティション部門の審査員も務めた。

 2010年11月には、「世界のアニメーションシアターWAT2010」で特集上映が行なわれるのと、MOVIX本牧で「横浜ドイツ・フィルム・デイズ−ベルリン&アニメーション」が行なわれるのに合わせて来日し、後者ではトークショーも行なった。

 粘土を使って、多彩な表現にチャレンジするというのが作品の1つの特徴で、ガラスや光、音なども効果的に使う。
 作品のモチーフとしては、切なく、ちょっともの悲しい題材を好む。
 原作ものの映画化や、社会性のある題材も多い。
 単純な描写でありながら、繰り返し観て、ようやくその意味が汲み取れるというような語り口を持つ作品も多い。
 監督自身は、「夢のようなものと現実のイメージを自分の作品の中でミックスさせたい」と語っている。

 *参考サイト
 ・公式サイト(英語):http://www.izaplucinska.com/resume.htm
 ・DAAD(英語):http://www.daad.de/alumni/netzwerke/vip-galerie/adm/13671.en.html

 【フィルモグラフィー】

 ・1998年 “Castling”(ポーランド)(2分/35mm-Kodak 5248/ペーパー・コラージュ)
 ・1999年 “Backyard”(ポーランド)(2分30秒/35mm-Kodak 5248/クレイ・アニメーション)
 ・2000年 “Twin”(ポーランド)(3分20秒/35mm -Kodak 5248/クレイ・アニメーション)
 ・2002年 “On The Other Side”(独)(4分30秒/35mm -Kodak 5248/クレイ・アニメーション)

 ・2005年 『ジャム・セッション』“Jam Session”(独・ポーランド)(9分30秒/ digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 ベルリン国際映画祭2005銀熊賞(最優秀短編賞)受賞。

 ・2006年 『ブレックファースト』“Breakfast(Sniadanie)”(独)(2分20秒/digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 広島国際アニメーションフェスティバル2008 木下蓮三賞を受賞。
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ・2008年 『あと7分』“7 More Minutes”(独)(7分30秒/digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ・2008年 “Marathon”(5分10秒/ digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 共同監督:Spela Cadez(スヴェロニアのアニメーション作家)

 ・2009年 『ベルリンの野うさぎ』“Esterhazy”(独・ポーランド)(24分/digital on 35mm/クレイ・アニメーション)
 *イレーネ・ディーシェとハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー著の『エスターハージー王子の冒険』の翻案。
 ザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバル2010 短編コンペティション部門出品。
 クラクフ映画祭2010 ポーランド短編 コンペティション部門出品。オナラブル・メンション受賞。
 こどもアニメーションフェスティバル2010@女子美術大学相模原キャンパス(2010年10月)にて上映。
 「横浜ドイツ・フィルム・デイズ−ベルリン&アニメーション」(2010)@本牧MOVIXにて上映。
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

 ・2010年 『ジョゼットのひとり遊び』“Josette und ihr Papa”(独)(9分/クレイ・アニメーション)
 *ウジェーヌ・イヨネスコの同名児童書の映画化。(邦訳『ジョゼット おなべのなかにパパをさがす/ストーリー4』(角川書店) 1979年刊 著:ウージェーヌ・イヨネスコ、絵:ニコル・クラヴルー 訳:谷川俊太郎 )
 世界のアニメーションシアター WAT2010にて上映。

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