注目! アラキーやHiromixをドキュメントしたポルトガル映画『日記をたどる』!

 かつてヴィム・ヴェンダースが東京にやってきて、『東京画』やら『都市とモードのビデオノート』を撮ったりして、話題になったことがありますが、今また、世界中からたくさんのフィルムメーカーたちが日本にやってきて、自分が興味を持った題材や自分に取材して、ドキュメントする、ということが盛んに行なわれています。

 先日、記事にした、デンマーク人監督カスパー・アストルップ・シュレーデル(Kaspar Astrup Schröder)による『ドクター中松の発明』“The Invention of Dr. Nakamats(Opfindelsen at Dr. Nakamats)”もそうですし、ボクサーから浄土真宗本願寺派僧侶に転身して、夜はバーのマスターもしている藤岡善信を題材にしたドキュメンタリー“Ito: Diary of an Urban Priest(Seitti - kilvoittelijan päiväkirja)”(監督はフィンランド人のピルヨ・ホンカサロ)なんかもこれに当たります。

 フィクションでは、日本を舞台にした映画は近年たくさん作られるようになっていますが(日本人が見るとちょっと違うんじゃないかというものも多いのですが)、ドキュメンタリーの題材としても外国人監督によって日本や日本人が発見・再発見されつつあるということになります。

 これは、「サムライ・フジヤマ・ゲイシャ」ではない日本に関する細かい情報が海外に伝わり、それらに興味を持った外国人フィルムメーカーが気軽に日本にやって来れるようになり、また、デジタルカメラの機能の向上によって、映画自体も以前に比べて、遙かに簡単に作れるようになった、ということが関係しているのだと思われます。

 国際的に見ても、日本は面白く、面白いことをやっている日本人はいっぱいいる、ということになります。

--------------------------------

 今回、ご紹介するのは、リオ・デ・ジャネイロ国際映画祭2010のラインナップの中で見つけた“Traces of a Diary - Fragmentos de um Diário”というポルトガル映画で、題材となっているのは、アラーキーや森山大道、Hiromixといった日本人写真家です。

画像

 映画祭での作品紹介には、例えば、以下のように書かれています。

 「この作品は、ある種の、旅人の日記のようなものであり、もっと言うと、現代日本人写真家の仕事に関するシネマノートのようなものである。監督たちは、それら写真家たちとの一連の取材を通して、自然の写し方や、イメージの作り方、ストーリーテリング、そして日記のプロセス自体にも影響を受けている。撮影に関しては、16ミリのKrasnogork3を2台使い、素材を加工したりせず、偶発性を大事にした、と監督のMartins e Príncipeは語っている。」

 監督は、ポルトガル人のMarco Martinsと André Príncipeで、Marco Martinsは、2005年の“Alice”でカンヌをはじめ、数々の賞を受賞しているポルトガル映画界の俊英で、長編ドキュメンタリーを手がけるのはこれが初めてであり、撮影も担当したAndré Príncipeは、プロの写真家で、映画の監督をするのはこれが初めてです。

 どうして2人が組むことになったかということまで書かれた記事を見つけることはできませんでしたが、映画部分をMarco Martinsが担当し、写真や日本人写真家に関する知識はAndré Príncipeが提供したのだろう、ということは容易に想像できます。

 2人の監督は、この映画を単なる「日本人写真家に関するドキュメンタリー」にはしたくなかったそうで、取材だけなら数日の日本滞在で済むはずのものを、わざわざ日本に住んで、1年と半月かけて、撮影を行なっていて、「我々が日本に住んで、そこから見えてきたものがこの作品であり、そういう意味でこれは日記であり、事実を積み上げていくことで作っていくドキュメンタリーを脱構築したかった」(Marco Martins)と語っています。
 実際、彼らは、カメラの後ろ側にいるだけの人間ではなく、日記の書き手というか、映画の語り手として、映画の中に普通に写り込んでいるそうです。

 この作品のプロデューサーは、マノエル・デ・オリヴェイラの『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)を手がけたフランソワ・ダルテマール(François d'Artemare)とマリア・ジョアオン・マイエ(Maria Joao Mayer)というコンビで、彼らが、『ブロンド少女は過激に美しく』の次に手がけたというか、たぶん同時進行で進めていた作品がこの“Traces of a Diary - Fragmentos de um Diário”ということになります。

 日本公開は、東京のミニシアターのどこかで、うちでやってもいいよと手を挙げるところが出てくるかどうかにかかっているでしょうか。ライズXが存続していたらぴったりだったとも思える題材なのですが、ライズXなき今は、シアター・イメージフォーラムかユーロスペースのレイトショー枠、あるいは東京都写真美術館かアップリンクあたりに期待するしかないというところでしょうか。
 映画の製作に当たって、協力した写真関係の日本人も大勢いたはずで、そういった人の働きかけがあれば、案外、簡単に劇場公開が決まるかもしれません。
 劇場公開がダメなら、あとは、映画祭での上映に賭けるしかないということになりますが、さて、どうなるでしょうか。今考えると、ポルトガル映画祭のラインナップの1本に入ってもよかったのですが。

画像

画像

--------------------------------

 【作品データ】

 出演:中平卓馬、Hiromix、森山大道、Kaiji Syoin、吉行耕平、荒木経惟

 監督・撮影:Marco Martins
 1972年、リスボン生まれ。
 1994年にEscola Superior de Teatro e Cinemaを卒業し、ヴィム・ヴェンダースやマノエル・デ・オリヴェイラ、ベルトラン・タヴェルニエの作品にスタッフとして加わる(ヴィム・ヴェンダースのはたぶん『リスボン物語』)。
 その後、2年間、ポルトガルの監督ジョアン・カニージョ(João Canijo)に師事する。
 90年代は、いくつかの短編を発表して注目されるようになり、90年代後半より広告を手がけるようになる。
 2002年に自身のプロダクションMinistério dos Filmesを立ち上げ、制作した作品でいくつもの賞を受賞する。
 2005年の長編“Alice”は、カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されて、最優秀作品賞を受賞。この作品は数々の賞を受賞したほか、米国アカデミー賞2006 外国語映画賞ポルトガル代表作品にも選ばれている。
 2006年の短編“Um Ano Mais Longo”は、ベネチア国際映画祭の短編コンペティション部門に出品された。
 主な監督作品:“Mergulho no Ano Novo” (1992) [短編]、“Não Basta Ser Cruel” (1995) [短編]、“No Caminho para a Escola”(1998)[短編]、“Alice”(2005)、“Um Ano Mais Longo”(2005)[短編]、“How to Draw a Perfect Circle”(2009)

 監督・撮影:André Príncipe
 1976年、ポルト生まれ。
 心理学と写真を学ぶ。
 現在は、リスボンに住み、写真家として活躍している。
 2004年以来、定期的に写真展を開いている。
 最初の写真集は“Tunnels”(2005)で、2010年に第2作品集“Smell of the Tiger precedes Tiger”と300部限定の“Master and Everyone”を刊行した。

 プロデューサー:フランソワ・ダルテマール(François d'Artemare)
 1966年、フランス生まれ。
 ポルトガルで映画製作に関わる。
 主な製作作品には、カンヌ国際映画祭2008 批評家週間に出品されて、最優秀作品賞を受賞した“Snijeg”(2008)、マノエル・デ・オリヴェイラの『コロンブス 永遠の海』(2007)と『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)、テレーザ・ヴィラヴェルデの“Cold Water”(2004)(“Visions of Europe”)や“A Favor da Claridade”(2004)などがある。

 プロデューサー:マリア・ジョアオン・マイエ(Maria Joao Mayer)
 主な製作作品は、マノエル・デ・オリヴェイラの『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)。

 [ 2010年/ポルトガル/90分 ]

 【上映履歴】

 ・2010年4月 第7回Indie Lisboa International Film Festival(リスボン)  Emerging Cinema, National Competition
 ・2010年7月 第10回 Era New Horizons International Film Festival(ポーランド・ヴロツワフ) Films on Art Competition
 ・2010年9月 第12回リオ・デ・ジャネイロ国際映画祭 Ubique Itineraries部門

 *関連サイト
 ・この作品をIndie Lisboaでご覧になったポルトガル在住の写真家/フィルムメーカーのスギモトタカシさんのブログ(英語):http://thebloomingspirit.wordpress.com/2010/04/28/trace-of-a-diary/

 ・tvi24(ポルトガル語による監督への取材記事):http://www.tvi24.iol.pt/cinema/traces-of-a-diary-fragmentos-de-um-diario-marco-martins-andre-principe-documentario-filme/1158108-4059.html

 ・Marco Martinsに関するWikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Marco_Martins

 ・写真家としてのAndré Príncipの仕事を紹介しているサイト:http://kaunasphoto.info/en/pages/view/index/id/andrprncipe
 ・André Príncipe の300部限定の写真集“MASTER AND EVERYONE”の版元(リスボン)のサイト:http://www.pierrevonkleist.com/master.html
 ・“MASTER AND EVERYONE”のfacebook:http://www.facebook.com/note.php?note_id=392780067763

--------------------------------

 *この記事がなかなかよかった!と思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 
 ↑ ↑ ↑ ↑
 クリックしてね!

 *当ブログ記事
 ・リオ・デ・ジャネイロ国際映画祭2010 受賞結果&ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201010/article_13.html

この記事へのコメント

よん
2010年10月17日 03:12
突然のコメントですみません。
この作品を日本で見るチャンスはありますか?
よん
2010年10月17日 03:26
すみません最後に書かれてましたね。
興奮のあまり先走ってコメントしてしまいました…。
削除しておいてください。。

この記事へのトラックバック