BLUの新作完成を細田守監督のツイートで知る!“BIG BANG BIG BOOM”

 BLUの新作が1ヶ月も前に完成して、ネット上で公開されていたんですね。

 ということを私が知ったのは細田守監督の数日前のツイートを通してでした。(細田監督は、BLUのことを知らなかったみたいでしたが。)

 私が当ブログでBLUの“MUTO”を取り上げたのが、2008年11月で、その頃、BLUのことを知っている人はまだそんなにはいなかったはずなのですが(当時、BLU+MUTO検索でひっかかってきた日本語サイトは確かわずか数件でした)、今、検索してみると、BLUの新作をほとんど発表と同時に取り上げている日本のサイトがたくさんあって驚かされてしまいます。

 当ブログの“MUTO”の記事で、現在までに1000以上のアクセスがあり、また、“MUTO”はイメージフォーラム・フェスティバルでも上映されましたから、BLUの知名度は2年前とは比較にならないほど上がり、注目度もアップしたということなのでしょう。

 新作“BIG BANG BIG BOOM”を、BLUはアヌシーあたりに出品することも可能だったはずですが(そうすれば私ももっと早く気づいたのに)、そうしなかったのは、ネットで全世界同時に観てもらうということをBLUが大事に考えている証拠だと思われます。

 もう既に紹介され尽くしている感もありますが、2年ぶりの新作グラフィティ・アニメーションで、過去最長の10分という長さがあり、しかもBLUとして新たな展開が見られるので、ここはやはり、しっかりと紹介しておきたいと思います。

画像

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BIG BANG BIG BOOM - the new wall-painted animation by BLU from blu on Vimeo.



 【物語】

 漆黒。
 白抜きでタイトル。BIG BANG BIG BOOM
 風が吹いているようなSEが聞こえる。
 ぴちゃっという音と同時に、白抜きで、しずくの痕ができる。
 しずくが次々と重なり合って落ち、全体的に少しずつ遠ざかっていく。
 白い丸となって、爆発。土星のような輪ができて、それが画面いっぱいに拡がる。

 白い壁に赤いしみ。
 それが壁一面に拡がる。
 赤→緑→黄→青→黒→白→赤→緑→青→黒と壁面の色が変化していく。
 色は塗り重ねられるうちに少しずつ濁っていき、途中で塗っている人の姿も映ったりする。
 三角がいくつか重なり合って1つの構成物を作り、それが複数できて、外側に展開していく。
 さらに、小さな三角が真ん中から外側へと次から次へと増えていく。
 三角形を一面とする多面体が現れ、壁を左から右へと少しずつ大きくなりながら転がっていく。
 そして壁から出て、下に置かれていたネットの中に飛び込む。
 ネットそのものを動かしつつ、ネットから排水パイプの中へ。
 パイプの中を移動し(水の流れるような音とペイントの移動でそれを示す)、ドラム缶の中へ入る。
 ドラム缶が下部から白く染まる。
 そのドラム缶に突っ込まれているホースが緑色に染まる。
 別のドラム缶に“三角”がたまっていき、上から圧縮されて、下の蛇口から白い液体が出る。
 液体がタンクの中へ流れ込む。そしてパイプを通り、球体となって出る。
 球体は、床面でつぶれ、分裂を繰り返していく。
 床面を白く覆いつくした後、卵子に集まる精子の図が現れる。
 受精の後、より大きな“精子”が生まれ、動いていく。
 より大きな卵子との受精し、さらに大きな精子が生まれる。
 床面から扉を開けて、その向こう側へ。

 真っ白。
 いくつかの白い丸。
 その1つが割れて、中からイソギンチャク状のものが現れ、4つ足の節足動物となる。
 仲間と出会い、交わって、そこからカニのような大きなハサミを持つ生き物が生まれる。
 それがやや小型化して、パイプの側面を這う。
 パイプを流れる(?)オレンジ色の液体に押し流される。
 対岸の壁面に達して、あふれ出る。
 “カニ”も這い出てきて、イソギンチャク状のものに姿を変え、大きな白い丸に飲み込まれる。
 白い丸の上部が割れて、いくつもの触手が出てくる。
 それを大きなウツボのような魚が飲み込む。
 ウツボは這い回って行き止まり、その口の中から赤いエビのような生き物が這い出てくる。
 “エビ”は、壁を伝って、開いていた穴から建物の中へ。そして扉を開けて、屋上に出る。
 ゴミ缶をひっくり返して、それをヤドカリのように背負う。
 風に舞うビニール袋を追いかける。
 ゴミ缶を捨て、今度はビニール袋の方に飛び込んだのか、ビニール袋の方が変化し始め、そこからクラゲが現れる。
 クラゲは、壁に広がる“青い海”を泳いでいく。
 海から大きなタコが現れる。
 タコは屋上でキューブの中に入り込む。
 キューブは、サイコロとなって転がる。
 サイコロは、壁面で魚になり、全身にトゲを出したかと思うと、より大きな“サメ”のような魚に飲み込まれる。
 サメは、壁から床を伝って、コンクリート塀にぶつかって、くだける。
 その影の中から小さな魚が出てきて、それを大きな魚が追う。
 その追いつ追われつがループになる。
 そこから黒い魚の影が這い出てきて、ペットボトルの中に飛び込む。
 ペットボトルは、水面を漂った後、変容し始め、つぶれたサッカーボールから“カメ”へと姿を変える。
 “カメ”は砂浜を這いまわって、産卵(?)する。
 残された穴から節足動物が卵をほじくり返す。
 節足動物は、ふんころがしのように卵を運んでいくが、それはゴミを巻き込んで、どんどん大きくなっていく。
 ゴミの塊は、コンクリート塀にぶつかって、はじける。
 その中から白い大きな卵が現れる。
 割れて、ウナギ状の生き物が這い出てくる。
 仲間が出会い、からまっていく。
 それは“トカゲ”に変容し、壁をつたっていく。
 “トカゲ”が停めてあった車をにらみつけると、車は白から黄、赤、青と色を変えていく。
 車がボンネットの中に“トカゲ”を食らい込む(あるいは、トカゲがボンネットの中に飛び込む)。
 車の助手席側の窓に描かれていた“目”が緑色の“トカゲ”の目にオーバーラップする。
 緑色の“トカゲ”は、脱皮を繰り返して、二足歩行を始める。
 トカゲ(エリマキ?)は、より大きなトカゲに捕食される。
 トカゲは、ゴミ箱を押しながら進み、さらに大きな恐竜に食べられる。
 恐竜の吐き出す息で、人間も吹き飛ばされる。
 その恐竜もさらに大きな恐竜に食べられる。
 その恐竜はさらに大きな恐竜に踏みつぶされる。
 その後にトリケラトプスがやってくる。
 空から燃える隕石が飛来して、世界を焼き尽くし、恐竜も骨と化す。

 トリケラトプスの骨の中から小動物が姿を現す。
 小動物は、やや大きくなって、アルマジロに変化し、丸まって、転がっていく。
 その中からゾウが現れる。
 猿が登場。
 類人猿から人類へと進化する。
 人類は道具を使うようになり、道具は武器に変わる。
 1人の人間の発射した銃弾が、人類を後ろから貫いていき、最後は自分を撃ち抜く。
 ロケット砲が発射される。
 爆発。
 塔から核弾頭(?)が発射される準備が整えられていく。
 地球の爆発。
 画面全体が白く染まる。

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 集大成と新たなる展開。

 「集大成」としては、文字通りこれまでの作品で使ったテクニックやパターンをすべて投入しているようです。例えば――
 ・奇妙な生きもの(特に節足動物と爬虫類)への偏愛
 ・右に左に、壁や地面を移動しながらの変容
 ・捕食し捕食される関係
 ・対象の内部から別の生き物が出てくる(①口から出てくる、②頭がパックリ割れて、そこから出てくる、③体が開いて中から出てくる)
 ・ある種の破滅願望のようなもの

 「新たなる展開」の方は、これまでの作品を見た人であれば一目瞭然ですが、
 1.グラフィティ・アニメーションが壁や地面を飛び出して、パイプ、ネット、ビニール袋、ドラム缶、ペットボトル、車、そして人まで巻き込んだものに進化している。
 2.グラフィティ・アニメーションに物語性(地球の誕生から破滅まで、生命の誕生から進化、ホモ・ファーベルたる人類の登場まで)が付与されている。

 今回の作品を見始めて、最初は「へえ~、グラフィティ・アニメーションが壁や地面を飛び出したんだ」と驚きつつも、それでも「10分もこれに付き合うのはつらいかも?」と思い始めていたところで、「あれっ、これは、もしかして?」とようやく物語があることに気づかされました。

 以前から、右に左に移動しつつ、グロテスクに変容していくだけでは作品作りが続かないんじゃないのかと危惧していたので、物語性のある作品へ向かうというのは、当然の帰結だと思われます。

 展開を丁寧に追っていくと、「物語」がところどころ途切れていることに気づかされますが、「進化論」とか「創世記」というものは概してそういうものなのでしょう(笑)。

 これを作るのに2年というのはちょっと時間がかかりすぎではないかとも思いますが、手間隙を考えると仕方ないことなのかもしれません。(実際には、ほかの仕事(ウォール・ペインティングの仕事とか)もたくさんしていますし、2009年にDavid Ellisとのコラボレーション作品“COMBO”を発表してます。)

 新作を目にしたばかりで気が早いですが、次なる展開は、
 1.原作もののグラフィティ・アニメーション
 2.動くもの(自動車や電車)を使ってのグラフィティ・アニメーション
 3.距離への挑戦(道路や長い壁を使ってのグラフィティ・アニメーション。例えば、万里の長城とか)
 など、どうでしょうか。

 ま、とりあえずは今回の作品がいくつかのアニメ・フェスもしくは短編映画祭のコンペ部門に出品されて、賞を競うことになるとは思いますが。

 ◆作品データ
 2010年7月5日/伊/9分55秒
 台詞なし/字幕なし
 グラフィティ・アニメーション(ウォール・ペイント・アニメーション)

 ちなみに―
 メイキングの記事がBLUのブログ(http://feeds.feedburner.com/Blu)のところどころに現れます。
 2009年10月16日 小魚とサメのパート
 2009年12月11日 浜辺のパート(ウルグアイ)
 2009年12月15日 橋の下のパイプのパート(ウルグアイ)
 2009年12月25日 トカゲと車のパート(ブエノスアイレス)
 2010年4月7日 ネットのパート

 これらからすると、順撮りで撮影していったのではないようです。

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 ◆アーティストについて

 BLU
 イタリアのボローニャを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、画家、壁画作家(muralist)、アニメーション作家。

 1990年代半ば、15歳からグラフィティ・アートを描き始める。当時、イタリアではグラフィティ・アートのブームがあり、雑誌も出版されていて、大いに刺激を受ける。

 元々は無許可で、ストリートや廃屋などに夜中に描くことが多かった。初期に描いたものはほとんど残っておらず、「ストリートなどに描いたものは消されて当然だし、描いた壁や建物が取り壊されてしまうことは決して苦痛ではない」、と語っている。
 古い建物、古い壁に触発(「古い壁が語りかけてくる」)されて描くことも多い、という。

 最近では依頼を受けて、プロジェクトとしてビルの外壁などに絵を描くことが多い。

 2006年に映像作家ロレンツォ・フォンダLorenzo Fonda(http://www.lorenzofonda.com/index.html?id=hom)からBLUのドキュメンタリー“Megnica”を撮らせてほしいという申し出があり、彼と一緒にメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、アルゼンチンを旅する(http://www.megunica.org/news.php)。 “Megnica”は2008年国際アムステルダム映画祭(http://www.dnerve.com/IAFF_2008/films/competition.html)で上映されて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。BLU自身、この旅はとてもインスパイアされるものが多かったと語り、最新ウォール・アニメーション“MUTO”もブエノスアイレスで制作している。

 2008年6月 第一画集“BLU-2004 2007”を出版。

 画家Ericailcane(http://www.ericailcane.org/)とともに(壁画の)仕事をすることが多い。

 壁画作品は、公式サイトの「WALL S」(http://blublu.org/sito/walls/walls.htm)で見ることができる。

 動画作品は、vimeo(http://www.vimeo.com/blu/videos)やYou Tube(http://jp.youtube.com/user/notblu)に自ら投稿している。

 公式には、プロフィール、作品年譜などは発表していない(生年すら明らかになっていませんが、1980年前後の生まれで、現在30歳くらいのようです)。

 “MUTO”は、イメージフォーラム・フェスティバル2009で上映されています。

 【フィルモグラフィー】
 ・2005年 “Child
 ・2006年 “ffwd”
 ・2006年 “fino”
 ・2006年 “Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)[ミュージック・ビデオ]
 ・2007年 “LETTER A” [グラフィティ・アニメーション]
 ・2007年 “WALKING” [グラフィティ・アニメーション]
 ・2008年5月 “MUTO” [グラフィティ・アニメーション]
 ・2009年9月 “COMBO” [David Ellisとの共作]
 ・2010年7月 “BIG BANG BIG BOOM” [グラフィティ・アニメーション]

 2008年以前の作品(制作年不詳)
 ・No.1(手回しカメラ)
 ・No.3(ネクタイ)
 ・No.4(腸があふれ出てきて困る)
 ・No.7(輪切り)
 ・No.8(ゲップ)
 ・No.10(脳の入れ替え)
 ・No.12(こんな車いらない)
 ・No.13(食事)
 ・No.15(目を押すと)
 ・No.16(耳から口へ抜ける)

 ・No.18(loop)
 ・No.20(ふたりにクギづけ)
 ・No.22(死の影)
 ・No.23(のどにしずく)
 ・No.24(頭がかゆくて)
 ・No.26(トランスフォーマー)
 ・No.27(目からヒョロヒョロ)
 ・No.29(換気扇)
 ・No.33(8本手男)
 ・“Connections”

 ・“loop #1” [グラフィティ・アニメーション]

 ※参考サイト
 ・公式サイト(英語):http://blublu.org/
 WALL S(2000年からの年別グラフィティ・アート)、Drawings(スケッチ集)、News、リンク集、Video、Shopなどで構成。
 ・公式ブログ(英語):http://www.blublu.org/blog/
 2008年3月スタートのBLUのブログ。BLUとしては3つ目のブログだとか。
 ・notblu(BLU video channel):http://jp.youtube.com/user/notblu
 ・Megunica(インタビュー/英語/PDF):http://www.megunica.org/download/swindle.pdf
 ・NAMES FEST@プラハ(インタビュー/英語):http://namesfest.net/news.php?extend.19
 NAMES FESは、さまざまなグラフィティ・アーティストのフェス。
 ・STUDIOCROMIE:http://www.studiocromie.org/gallery.php?id_art=56
 ・POW(Pictures on Wall):http://www.picturesonwalls.com/
 ・GIZMODO Japan:http://www.gizmodo.jp/2008/07/post_3935.html
 2008年7月にBLUを紹介している。

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