やるなあ~! こんな映画祭なら大歓迎! なら国際映画祭2010!

 全日程が終了し、受賞結果がネットで報道されるまで、この映画祭のことは気づきませんでした、なら国際映画祭。ひょっとすると、文字としては目にしていたかもしれませんが、私の意識にのぼってくることはなかったんですね。

 そのグランプリ(ゴールデンSHIKA賞)が『海へ』という作品だと知って、もしやと思い、確認したら、やっぱり今年のロッテルダム国際映画祭のグランプリ、タイガー・アワード受賞作品“Alamar(To The Sea)”でした!
 コンペティション部門の他のエントリー作品を調べてみて、またまたびっくり。ワールド・プレミア作品こそありませんが、世界のトップクラスの映画祭で上映されて、高い評価を受けている作品ばかりじゃないですか!

 必ずしも集客力が高いとも思えない「地方」の映画祭で、そのためだけに外国映画を、しかも国際的に高い評価を受けている作品を輸入し、1回限りの上映のために、日本語字幕をつけて、上映する、なんていうことができるんですね~。(ちなみに、4日間、22本の上映作品に対し、入場者数5527人、のべスタッフ数310人だそうです。)

 調べてみると、この映画祭は、地元出身の河瀬直美監督がふるさとを文化面から活性化させたいと提唱したところから始まったもので、地元の有志が実行委員会を作り、地元企業や公的助成金、個人の寄付などを得て、実現させたのだそうです。
 映画祭理事長は、哲学者の鷲田清一で、顧問が河瀬直美、そのほか、地元企業の社長クラスの人が、理事に名を連ねています。

 奈良遷都1300年を記念としたイベントの1つとして、1回限りの“お祭り的な”映画祭ということになるのかなと思ったりもしたんですが、決してそんなことはなくて、2008年、2009年と、プレイベント的に、シンポジウムや上映会が行なわれ、一歩ずつ着実に実績を積み上げてきて、今年の映画祭開催にこぎつけた、ということのようです。(平城遷都1300年記念事業協会が後援についてはいますが、映画祭の公式サイトには大々的には「奈良遷都1300年記念」とは書かれておらず、意識的に1回こっきりの「奈良遷都1300年」のイベントとして終わってしまうことは避けたのだろう、と考えられます。)

 国際的に評価は高くとも、一般的には全く知られていないはずのこれらの作品で、映画祭を成立させちゃうなんて凄いですね~。
 客寄せパンダ的な作品が1本もないし、普通なら安易に企画してしまいそうな河瀬直美特集もやらないというのはエライ!(最新作『玄牝』のワールド・プレミアくらいやってもよかったかもしれませんが)。

なら国際映画祭2010


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 ◆NARAtiveプロジェクト
 奈良に若手映画監督を招き、奈良を舞台とした映画を製作するプロジェクト。

 ・『びおん』 監督:山崎都世子
 ・『光男の栗』 監督:趙曄

 ◆新人コンペティション
 3本以上の劇用映画を手掛けたことがない作家の2009年以降の作品のコンペティション。
 外国作品は、すべて日本プレミア。
 以下には、各作品の主な上映履歴&受賞歴を付記しておきました。内容等に関しては、当ブログの各映画祭記事をご参照ください。

 ・『虹』“Passerby #3”(2010/韓) 監督:シン・スウォン(Shin Suwon)
 全州国際映画祭2010 韓国映画コンペティション部門出品。JJ-STAR賞(グランプリ)受賞。

 ・『オキシゲン』“Oxygen”(2010/モンゴル) 監督:センゲドルジ・ジャンチウドルジ(Sengedorj Janchivdorj)

 ・『強盗』“Der Räuber (The Robber)”(2010/オーストリア・独) 監督:ベンヤミン・ハイゼンベルグ(Benjamin Heisenberg)
 ベルリン国際映画祭2010 コンペティション部門出品。
 バイエルン映画賞2010 新人監督賞受賞。
 ドイツ映画賞2010 撮影賞ノミネート。
 パリ映画祭2010 ブロガー賞受賞。

 ・『海へ』“Alamar(To The Sea)”(2009/メキシコ) 監督:ペドロ・ゴンザレス・ルビオ(Pedro Gonzalez-Rubio)
 ペドロ・ゴンザレス・ルビオの第2長編で、プロダクションは、カルロス・レイガダスとアマ・エスカランテが設立したMantarraya Producciones。
 トロント国際映画祭2009 VISIONS部門出品。
 ベルリン国際映画祭2010 ジェネレーション kplus 長編部門出品。
 ロッテルダム国際映画祭2010 タイガー・アワード受賞。
 マイアミ国際映画祭2010 審査員グランプリ受賞。

 ・『パライソ』“Paraiso”(2009/ペルー・西・ドイツ) 監督:エクトル・ガルヴェス(Héctor Gálvez )
 全州国際映画祭2010 インターナショナル・コンペティション部門出品。

 ・『不惑のアダージョ』(2009/日) 監督:井上都紀
 ロッテルダム国際映画祭2010 タイガー・アワード・コンペティション部門出品。

 ・『終わらぬ冬はない』“C'est déjà l'été”(2010/オランダ・ベルギー) 監督:マルタイン・マリア・スミス(Martijn Maria Smits)
 ロッテルダム国際映画祭2010 タイガー・アワード・コンペティション部門出品。

 ・『アジャミ』“Ajami”(2009/イスラエル・独) 監督:スキャンター・コプティ(Scandar Copti)
 カンヌ国際映画祭2009 監督週間出品。カメラドール・スペシャル メンション受賞。
 エルサレム映画祭2009 Wolgin Award長編部門 作品賞受賞。
 ロンドン映画祭2009 第1回監督賞受賞。
 モンペリエ地中海映画祭2009 グランプリ受賞。
 AFI Fest2009 New Rights コンペティション 審査員スペシャル・メンション受賞。
 テッサロニキ映画祭2009 グランプリ(Golden Alexander)、脚本賞(Scandar Corpi、Yaron Shani)、観客賞(Fischer Public Choice Awards)受賞。
 ヨーロッパ映画賞2009 ディスカバリー賞(第1回作品賞)ノミネート。
 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞ノミネート。

 ※審査員:クリスチャン・ジャンヌ(カンヌ国際映画祭ディレクター)、ローレンス・カルディッシュ(ニューヨーク近代美術館映画部門シニアキュレーター)、チョン・スーワン(東国大学校映像大学院助教授)
 ※プログラマー:ルチアーノ・バリソネ

 ※ゴールデンSHIKA賞(グランプリ)は『海へ』、観客賞は『アジャミ』。

 ◆NARA-wave
 学生映画部門。

 ・『キノウのアシタ』 監督:中村藍
 ・『Samurai Umpires in the USA』 監督:田中隆行
 ・『RIRIKA』 監督:明石有加
 ・『パラレル』 監督:渡邉光里
 ・『妙子まで八メートル』 監督:山本聖
 ・『天球のおんがく』 監督:吐山由美
 ・『APE エイプ』 監督:西中拓史
 ・『モノクロームで鮮やかに』 監督:川本紘生
 ・『オルタナ ドラゴン』 監督:和田武士

 ※観客賞は『APE エイプ』。

 ◆奈良ゆかり/昔なつかしの映画

 ・『雄呂血/おろち』(1925/日) 監督:ニ川文太郎
 ・『鑑真大和尚』(2010/台湾) 監督:蕭毅君(ロジャー・シャオ)

 ◆高木正勝特集

 ・『或る音楽』(2009)
 ・オリジナル作品セレクション

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 正直なところを言うと、このクラスの作品が地方の映画祭で上映されてしまうと、「日本国内で一度上映された」という上映実績だけが残って、東京でお披露目される可能性が低くなるのではないかと、懸念したりもするんですが、まあ、それは、東京人のエゴイスティックな思い上がりというもの、なのかもしれません。

 今年は、沖縄国際映画祭とか、大阪アジアン映画祭とかで上映されただけでそれっきりとなってしまい、観たくても観れない作品、が多くて、本当に困ってしまうのですが。

 まあ、これで、字幕入りのプリントは残らなくとも、データとして各作品の日本語字幕が残ったわけだし、この映画は凄いからもっと多くの人に観てもらいたいという意見が出てくれば、東京やそれ以外の地域でも上映したい、上映しようということにもなるかもしれません。それを期待して、楽しみに待つことにしましょう。

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この記事へのコメント

2010年08月31日 02:00
初めてコメントさせていただきます。
普段から貴殿の卓越した映画知識と情報に敬服しているモノです。

なら国際映画祭に参加してきました、そうなんですよね
コンペ8作品、地方映画祭では信じられないような作品
・・・正に奇跡。(スタッフの努力はもちろんですが)
流石河瀬監督の後光は凄いとしか言いようがありません。 また、ボランティアを中心とした運営も(多少のトラブルありましたが)見事でした。

ただ、私も『玄牝』上映があっても良かったんじゃないかと…(同感
umikarahajimaru
2010年08月31日 22:32
Longislandさま
コメントありがとうございました。
ブログ、読ませていただきましたが、全州国際映画祭にまででかけてしまうほどのシネフィルの方なんですね~。
なら国際映画祭も、わざわざ休みを取って、全作鑑賞されたのですね。凄い! そして、羨ましい!
詳細なレポートもお疲れさまでした!

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