今年注目のドキュメンタリーはこれだ! シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2010 結果発表!

 第8回シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭の各賞の結果が発表になりました。(開催期間は6月21日~27日)

 シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭は、アメリカ映画協会(AFI:American Film Institute)とディスカバリー・チャンネルが共同で開催しているドキュメンタリー映画の祭典で、2003年にスタートしてから、今年で第8回を迎えています。

 この映画祭は、まだまだ若い映画祭ですが、米国内のドキュメンタリー映画のお披露目の場としてはサンダンス映画祭に次ぐ重要な映画祭となりつつあり、前年9月のトロント国際映画祭、1月のサンダンス映画祭、3月のSXSW映画祭、6月のシルバードックスを経て、米国アカデミー賞へとつながって行きます。

 昨年の受賞作には、『ソウル・パワー』(審査員スペシャル・メンション)、『牛の鈴音』(シネマティック・ヴィジョン賞)、『ザ・コーヴ』(観客賞)があります。

 今年の受賞結果は以下の通りです。

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 ◎米国部門 作品賞(Sterling Us Feature Award):“Wo Ai Ni Mommy (I Love You, Mommy)”(米)
 監督:Stephanie Wang-Breal
 英語もしゃべれない8歳の中国系の少女を養女に迎えたユダヤ人カップルを1年半追いかけたドキュメンタリー。

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 ◎米国部門 審査員スペシャル・メンション(Special Jury Mentions):“The Kids Grow Up”(米)
 監督:Doug Block
 大学を去る準備をしている監督の娘ルーシーにカメラを向けて、家族の変わり目と娘を旅立たせる父親(監督自身)の想いをとらえる。

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 ◎同賞:“My Perestroika”(米・英)
 監督:Robin Hessman
 ソ連が崩壊した時にクラスメートだった、最後のソ連時代を知る世代、ボーリャ、リューバ、アンドレイ、オルガ、ルスランの5人へのインタビューと、70年代~80年代に撮られた彼らのホームムービー、および、ソ連のプロパガンダ映画の映像を交えて、ソ連時代末期からポストソ連時代にいたるロシア人の夢とチャレンジと幻滅をとらえる。
 サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品。

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 ◎ワールド部門 作品賞(Sterling World Feature Award):“The Woman With The 5 Elephants”(スイス・独)
 監督:Vadim Jendreyko
 85歳のSvetlana Geierは、ドストエフスキーの5大作品(5 Elephantsと呼ばれる)のロシア語からドイツ語への翻訳を終える。彼女は、ウクライナ生まれだが、ナチの侵攻を受けて、通訳として、ドイツに連れ去られる。以来、60余年、彼女は、一度も故郷に帰ることはなかった。本作は、そんな彼女の仕事と、1943年以来となる故郷への旅を通して、彼女の半生をたどる。

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 ◎ワールド部門審査員スペシャル・メンション(Special Jury Mention):“Steam Of Life(Miesten Unoro)”(フィンランド)
 監督:Mika Hotakainen、Joonas Berghäll
 フィンランドの男たちが人生や愛や家族を語る、語らいの場としてのサウナに焦点を当てたドキュメンタリー。

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 ◎短編部門 作品賞(Sterling Short Award):“This Chair Is Not Me”(英)
 監督:Andy Taylor Smith
 アラン・マーティンは、脳性麻痺を患って、車椅子に縛りつけられ、話すこともできなくなる。しかし、彼は、行動が制約されることを望まず、最新テクノロジーを使って、「声」を取り戻す。

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 ◎短編部門 審査員スペシャル・メンション(Special Jury Mention):“Between Dreams”(フィンランド)
 監督:Iris Olsson
 モスクワとウラジオストクを結ぶシベリア鉄道の乗客にインタビューして、彼らの夢と希望を聞いて行く。
 監督は、夜汽車を舞台にした短編アニメーション“Madame Tutli-Putli”(2007/カナダ)にインスピレーションを受けて、この作品を作ったと語っています。

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 ◎同賞:“The Poodle Trainer”(米)
 監督:Vance Malone
 イリナ・マルコヴァ(Irina Markova)は、プードルのロシア人トレーナーで、カラフルなコスチュームを身にまとった20頭のプードルを訓練することに人生を捧げている。彼女は、子供時代に悲劇に見舞われて、他人を遠ざけた時期もあったが、いまでは、犬たちに癒され、サーカスの幕が開く瞬間を心待ちにしている。

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 ◎シネマティック・ヴィジョン賞(The Cinematic Vision Award):“Marwencol”(米)
 監督:Jeff Malmberg
 悪意ある攻撃を受けたMark Hogancampは精神的ダメージを受け、そこから立ち直るために、第二次世界大戦時代の6分の1スケールの町“Marwencol”のキットを裏庭に作り始める。
 SXSW映画祭2010 長編ドキュメンタリー部門審査員賞(グランプリ)受賞。

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 ◎ウィットネス賞(The Witness Award):“Budrus”(パレスチナ・イスラエル・米)
 監督:Julia Bacha
 イスラエル政府がパレスチナとの間に築いた隔離壁は、ブルドゥス村(Burdus)の住民1500人にとっては死活問題で、壁によって300エーカーの土地と3000本のオリーブの木が失われてしまう。村民たちは、非暴力で抵抗運動を実践する……。
 トライベッカ映画祭2010 ワールド・ドキュメンタリー・コンペティション部門 審査員スペシャル・メンション受賞。
 ベルリン国際映画祭2010 パノラマ部門出品。

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 ◎米脚本家組合賞(WGA Documentary Screenplay Award):“A Film Unfinished(Shtikat Haarchion)”(イスラエル・独)
 監督:Yael Hersonski
 ナチのアーカイブから発見されたフィルムには、ワルシャワのゲットーの様子が写されていた。
 サンダンス映画祭2010 編集賞受賞。
 ベルリン国際映画祭2010 パノラマ部門出品。
 トランシルヴァニア国際映画祭2010、モスクワ国際映画祭2010出品。

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 ◎長編部門 観客賞:“Men Who Swim”(スウェーデン・英・伊)
 監督:Dylan Williams
 スウェーデンで暮らす1人の英国人男性が、40歳を目前にして、中年の危機を乗り越えるために、シンクロナイズド・スイミングに挑戦する。クラブには、仲間がいて、最初は趣味で始めたものが、趣味のレベルを超え、ついにミラノで開催される大会All Male World Championshipに挑戦するまでになる。

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 ◎短編部門 観客賞:“Bye Bye Now”(アイルランド)
 監督:Aideen O'Sullivan
 アイルランドで(もちろん世界中で)姿を消しつつある電話ボックスにスポットライトを当てたドキュメンタリー。
 クラクフ映画祭2010 インターナショナル短編ドキュメンタリー・コンペティション部門出品。

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 シルバードックスが終わった時点で、今年の映画賞レースの対象となるドキュメンタリー作品は、ほぼ出揃ったと見ていいわけで、2010年の米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に関して言えば、ノミネート5作品のうち、“The Most Dangerous Man In America: Daniel Ellsberg And The Pentagon Papers”以外は、すべてこの時点でアメリカ国内のどこかしらで上映されていました。

 そういう考えを踏まえて、2011年の米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞候補の予想がもう既に始まっているわけですが、それによると、2011年の米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞候補作品には次のようなものがあります。

 ○“The Oath”(米) 監督:Laura Poitras サンダンス映画祭2010 撮影賞受賞。エジンバラ国際映画祭2010 最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞。
 ○“Enemies of the People”(カンボジア・英) 監督:Rob Lemkin、Thet Sambath サンダンス映画祭2010 審査員特別賞受賞。サンタバーバラ国際映画祭2010 最優秀ドキュメンタリー賞受賞。香港国際映画祭2010 優秀ドキュメンタリー賞受賞。クラクフ映画祭2010シルバー・ホーン特別芸術賞(The Silver Horn for Special Artistic Merit)。
 ○“Last Train Home”(カナダ) 監督:Fan Lixin サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品。カナダ・Jutra賞2010 最優秀ドキュメンタリー賞受賞。
 ○“A Film Unfinished” 上記参照
 ○“Gasland”(米) 監督:Josh Fox サンダンス映画祭2010 審査員特別賞受賞。
 ○“Inside Job”(米) 監督:Charles Ferguson カンヌ国際映画祭2010 特別上映作品。
 ○“The Tillman Story”(米) 監督:Amir Bar-Lev サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品(上映題:“I’m Pat------Tilman”)。
 △『オーシャンズ』“Oceans”(仏・スイス・西) 監督:ジャック・ペラン、Jacques Cluzaud
 △“Babies”(仏) 監督:Thomas Balmes
 △“Exit Through the Gift Shop”(英・米) 監督:Banksy ベルリン国際映画祭2010 アウト・オブ・コンペティション出品。
 △“Joan Rivers: A Piece of Work”(米)  監督:Ricki Stern、Annie Sundberg サンダンス映画祭2010 編集賞受賞。

 このタイトルを挙げたのは、AJ Schnackというドキュメンタリー作家で、○印は本命、△印は対抗ということになります。(「All These Wonderfull Things」:http://edendale.typepad.com/weblog/2010/06/the-monday-brief-a-strong-start-for-restrepo-a-good-move-for-laff-and-8-for-oscar.html)

 本命の作品には、シルバードックスで受賞している“A Film Unfinished”も含まれていて、まあ、そんなものかなという感じもしますが、これ以外にもいくつか有力候補が浮かばないでもありません。デイヴィス・グッゲンハイムの“Waiting for Superman”とか、ルーシー・ウォーカーの“Countdown to Zero”や“Waste Land”、音楽ものでは“For Once in My Life”とか、カンヌで話題になった“Le Quattro Volte”とか……。

 大勢がはっきりするのは、いまから4ヵ月後の11月で、イギリスのグリアソン・アワードの発表(初旬)から始まって、国際ドキュメンタリー協会のIDAアワードのノミネーションの発表(中旬)、米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞セミファイナリストの発表(下旬)と続いていきます。

 なお、上記の候補作品に関しては、当ブログの当該映画祭のところに紹介記事を書いているので、気になる方は、リンク先もしくはブログ内検索窓から探してみてください。

 *当ブログ記事
 ・シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2009 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_22.html
 ・米国アカデミー賞2010 長編ドキュメンタリー賞セミファイナリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_31.html
 ・トロント国際映画祭2009 REAL TO REEL部門:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200908/article_21.html
 ・サンダンス映画祭2010 コンペティション部門 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_7.html
 ・サンダンス映画祭2010 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_1.html
 ・SXSW映画祭2010 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201003/article_31.html

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 *当ブログ記事
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

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