第45回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 受賞結果発表!

 第45回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭の各賞が発表になりました。(7月10日)

 【コンペティション部門】

 ◎グランプリ(Grand Prix - Crystal Globe):“The Mosquito Net / La mosquitera”(2010/西) [ワールド・プレミア]
 監督:Agustí Vila
 出演:Emma Suárez、Eduard Fernández、ジェラルディン・チャプリン、Marcos Franz、Alex Batilori
 物語:老マリアは、アルツハイマー病を患って、話すことができなくなっている。一方、彼女の孫である15歳のルイスは、両親の夫婦仲が危機にあることを感じ取って、家の中でしゃべらなくなり、通りで捨て猫や捨て犬を見つけては拾ってくるようになる。父ミゲルは、それをやめさせようとするが、母アリスは彼を甘やかしてしまう。家の中には、どんどん動物が増えていき、混乱に拍車がかかっていく……。
 老マリアを演じるのは、ジャラルディン・チャプリンで、彼女は、この映画の脚本は生涯のベスト3に入る素晴らしい脚本だと絶賛したそうです。

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 ◎審査員特別賞(Special Jury Prize):“Kooky / Kuky se vrací”(2010/チェコ・デンマーク) [インターナショナル・プレミア]
 監督:ヤン・スヴィエラーク
 出演:Oldřich Kaiser、Ondřej Svěrák、Kristýna Fuitová-Nováková、Filip Čapka
 物語:オンドラ少年は、喘息を患っていて、彼の母は、彼のためを思い、彼が大事にしていたかび臭いクマの人形クーキーを捨ててしまう。オンドラは、クーキーがゴミ捨て場から家に戻って来ようとしている夢を見る。クーキーは、森に差し掛かり、これまで見たこともない生き物に出会ったりして怯えるが、やがて本物のヒーローになるべく勇気を奮い立たせていく……。

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 ◎監督賞:Rajko Grlić “Just Between Us / Neka ostane medju nama”(2010/クロアチア・セルビア・スロヴェニア) [インターナショナル・プレミア]
 出演:ミキ・マノイロヴィッチ、Bojan Navojec、Nataša Dorčić、Daria Lorenci、Ksenija Marinković
 物語:ザグレブに暮らす2人の兄弟とその妻たちと愛人たち、そして、本当の父親が誰なのかもわからない子供たち。愛と幸せを求めて、情熱の赴くままに行動して生まれた、二重生活と複数の関係は、やがてほろ苦いものとなり、残酷な結末に至る……。

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 ◎男優賞:Mateusz Kościukiewicz、Filip Garbacz “Mother Teresa of Cats / Matka Teresa od kotów”(2010/ポーランド) [インターナショナル・プレミア]
 監督:Paweł Sala
 物語:モーテルでアーサーとマーティンの兄弟が逮捕され、どうしてそういう事態に至ったかがフラッシュバックされていく。テレサは、イラクから戻って、戦争後遺症に苦しんでいる職業軍人の夫ヒューバートに尽くし、彼らの子供たちアーサーとマーティン、そして自閉症のJadzaの面倒を見、さらに、音楽学生のエヴァの手助けもしていた。困っている者をみつけると世話を焼かずにいられない彼女は、よく捨て猫を拾ってきたが、おかげで、家の中はノラ猫が入りたい放題になっていた。一方、22歳のアーサーは、退職金がゴールであるような生き方をバカにし、すっかり威厳を失ってしまった父親にも失望し、ドラッグの力も手伝って、己の妄想をどんどん肥大化させていく。弟のマーティンは兄の影響から逃れられず、テレサはそんな息子たちの変化に全く気づかないのだった……。

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 ◎女優賞:Anaïs Demoustier “Sweet Evil / L´enfance du mal”(2009/仏) [インターナショナル・プレミア]
 監督:Olivier Coussemacq
 出演:Anaïs Demoustier、パスカル・グレゴリー、Ludmila Mikaël
 物語:セリーヌは、15歳にしては大人びていて、ボーイフレンドの力を借りたりして、宿無し生活を続けていた。彼女は、ある邸宅の東屋に忍び込んで、寝泊りしていたが、やがて主人である判事のアンリにみつかってしまう。しかし、アンリは、彼女を追い出すことはせずに、逆に、彼女を邸宅に雇い入れてくれる。互いに多くのことを語らぬまま、時が過ぎていくが、セリーヌが自分を守るためについたウソが発端となって、脆弱な信頼関係の上に成り立っていた彼らの関係性はあっさり崩れ去ってしまう……。

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 ◎審査員スペシャル・メンション(Special Jury Mention):“Another Sky / Drugoje něbo”(2010/ロシア) [インターナショナル・プレミア]
 監督:Dmitri Mamulia
 物語:中央アジアのステップ地帯。アリとその息子が死んでしまった羊を集めている。息子は、よりよい生活を求めて、モスクワに去ってしまった母親を恋しがり、結局、彼女を捜して、2人でモスクワに出ることになる。モスクワの街は、彼らに冷たく、彼らはわずかな稼ぎをすぐに食べ物に変えるような生活をしながら、彼女を捜し続ける。しかし、警察に訊いても、ウズベキスタン人コミュニティーを訪ねても、なかなか有力な手がかりは得られない……。

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 ◎同上:“There Are Things You Don´t Know / Chiz-haie hast keh nemidani”(2010/イラン) [ワールド・プレミア]
 監督:Fardin Saheb Zamani
 物語:アリは、タクシー運転手で、遅番のシフトで、テヘランの裏通りを流し、伝統的なカフェの主人デニスと、愛らしい女性レイラと知り合いになる。中でも、レイラとは性格や内面が似ていることもあって、どんどん親しくなっていく。やがて、大地震が襲ったとき、彼は真実の愛を悟る……。

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 ◎国際批評家連盟賞:“Hitler in Hollywood / Hitler à Hollywood”(2010/ベルギー・仏・伊) [ワールド・プレミア]
 監督:Frédéric Sojcher
 出演:マリア・デ・メデイロス、ミシュリーヌ・プレール、Wim Willaert、ハンス・メイヤー、ナタリー・バイ、アリエル・ドンバール
 物語:女優マリア・デ・メデイロスが、女優ミシュリーヌ・プレールについてのドキュメンタリーに参加している。彼女の、1930年代からのバイオグラフィーをたどっていく過程で、1939年に作られていながら、戦争のために公開されることのなかった1本の映画にたどりつく。マリア・デ・メデイロスは、その失われてしまった1本の映画の消息を追うが、それは、いまとなってはすっかり忘れられてしまっていたヨーロッパ映画の過去を掘り起こすことにもなるのだった……。
 本作は、監督で映画理論家でもあるFrédéric Sojcherによるモキュメンタリーであり、ヨーロッパ映画産業へのオマージュにもなっている。

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 ◎Europa Cinemas Label Award:“Just Between Us / Neka ostane medju nama”(2010/クロアチア・セルビア・スロヴェニア)


 ◎エキュメニカル審査員賞:“Another Sky / Drugoje něbo”(2010/ロシア)
 監督:Dmitri Mamulia


 ◎ドン・キホーテ賞(The Don Quijote Prize (FICC – International Federation of Film Societies)):“The Mosquito Net / La Mosquitera”(2010/西)


 【ドキュメンタリー・コンペティション】

 ◎30分以上の最優秀ドキュメンタリー:“Familia”(2010/スウェーデン)
 監督:Mikael Wiström、Alberto Herskovits
 物語:ある貧しいペルー人一家の肖像。母親は、スペインのホテルでメイドをするために、タクシー運転手をしている夫と、3人の子どもを残して、家を後にする……。
 ヨーテボリ映画祭2010 最優秀スウェーデン・ドキュメンタリー映画受賞。

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 ◎30分未満の最優秀ドキュメンタリー:“The River / Upe”(2009/リトアニア)
 監督:Julija Gruodienė、Rimantas Gruodis
 川に囲まれた、リトアニアの小さな村と、そこで暮らす人々についてのドキュメンタリー。

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 ◎審査員スペシャル・メンション(Special Jury Mention):“Tinar”(2009/イラン) [ヨーロッパ・プレミア]
 監督:Mahdi Moniri
 物語:Ghasemは、10歳の牛飼いの少年で、バボルに近い山の麓の村で暮らしていた。彼の母は死に、彼は父と継母から虐待を受けていた。兄は、そんな家から出て行ってしまったので、彼は独りぼっちになり、彼が心を許せる相手は牛しかいなかった……。
 アジア太平洋映画賞2008 ドキュメンタリー賞ノミネート。

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 【イースト・オブ・ウエスト コンペティション】

 ◎“Aurora”(2010/ルーマニア・仏・スイス・独)
 監督:Cristi Puiu
 物語:ジジは、警察官で、ヴァイオレットという妻と3年生になる娘がいた。一方で、一年以上、ジュリアというバツイチの女性とつきあっていて、もうそろそろどちらかを選ばなければならないと考えていた。彼は、ある殺人事件の担当になるが、彼とその被害者にはたくさんの共通点があることに気づくのだった……。
 カンヌ国際映画祭2010 ある視点部門出品。
 トランシルヴァニア国際映画祭2010 ルーマニア・デイ上映作品。



 ◎審査員スペシャル・メンション(Special Jury Mention):“The Temptation of St Tony / Püha Tõnu kiusamine”(2009/エストニア・スウェーデン・フィンランド)
 監督:Veiko Õunpuu
 出演:Taavi Eelmaa、Rain Tolk、Tiina Tauraite、Katarina Lauk、Raivo E. Tamm
 物語:主人公は、中流の経営者で、彼は、人生はもちつもたれつだと考えて、善人じみたマネをすることが大嫌いだった。というのも、そのせいで、かつて彼は、いったんつかみかけた静かな生活を失ってしまったからだった。
 サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品。
 ロッテルダム国際映画祭2010 コンペティション部門出品。



 【インディペンデント・フォーラム】

 ◎インディペンデント・カメラ(Independent Camera):“Four Lions”(2010/英)
 監督:Christopher Morris
 出演:Riz Ahmed、Arsher Ali、Nigel Lindsay、Kayvan Novak、Adeel Akhtarn
 物語: 主人公は、シェフィールドに住むムスリムの男たち。彼らは、世の中でのムスリムの扱いに憤慨して、自爆テロに身を投じることに決める。メンバーのうち、オマールとワジは、パキスタンのテロリスト訓練キャンプに参加。残りのメンバーのうち、バリーは改宗者で、ファイサルは、カラスを使って、爆弾を爆発させる訓練をし、オマールとワジの不在中に、5人目のメンバーとしてハッサンが加わる。ファイサルが訓練中に事故死してしまった後、4人はテロのターゲットをロンドン・マラソンに定める……。
 監督のChristopher Morrisは、ラジオDJからキャリアをスタートさせた風刺作家で、その後、テレビにも進出し、イギリスでは知らぬ者がいないほどの人気者となる。本作は、彼にとっての長編監督デビュー作。
 サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品。
 ロサンゼルス国際映画祭2010 ナラティヴ・コンペティション部門 観客賞受賞。

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 【その他の賞】

 ◎ワールド・シネマへの芸術貢献賞(Award for outstanding artistic contribution to world cinema):ニキータ・ミハルコフ

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 ◎同上:ユライ・ヘルツ(Juraj Herz)

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 ◎映画祭会長賞(Festival President´s Award):ジュード・ロウ


 ◎観客賞:“Oldboys”(2009/デンマーク) アナザー・ビュー部門 [インターナショナル・プレミア]
 監督:Nikolaj Steen
 物語:Vagnは、1人暮らしの50代男性で、同世代かそれより年輩の仲間たちとサッカーチームを組んでいた。彼らは、スウェーデンの警官チームと対戦するために、バスでスウェーデンに向かう。しかし、ツアーの途中で、彼は、無一文でガソリンスタンドに置き去りにされてしまう。そこで、彼は刑務所から出てきたばかりの泥棒ジョンと出会うが、ジョンとの出会いは、彼を思ってもいない運命に導いていくのだった……。
 デンマーク・アカデミー賞2010 7部門ノミネート、作曲賞・歌曲賞受賞。

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 ◎NETPAC賞:“Son of Babylon”(2009/イラク・英・仏・オランダ・パレスチナ・UAE・エジプト) 特別上映部門
 監督:Mohamed Al-Daradji
 出演:Yasser Talib、Shazda Hussein、Bashir Al-Majid
 物語:フセイン政権の没落後、クルド人の少年と祖母が父/息子を探して、イラク国内を旅をする。
 サンダンス映画祭2010 コンペティション部門出品。
 ベルリン国際映画祭2010 パノラマ部門出品。平和映画賞(Peace Film Award)受賞。



 ◎同上:“Orion”(2010/イラン) インディペンデント・フォーラム部門 [ワールド・プレミア]
 監督:Zamani Esmati
 物語:エラムは、アミールに恋し、彼に処女を捧げる。しかし、アミールが結婚を望まなかったため、エラムを窮地に追いやられる。結婚前の娘が処女ではないとわかると、本人とその相手が裁判にかけられることになるからだった。アミールは、心優しいボーイフレンドから合理主義者に変身し、エラムに、裏切ったのはアミールではないと証言させようとする。もはや彼女を救えるのは、彼女の父親だけであった……。



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 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、東欧・中欧を中心に、ヨーロッパの映画が数多くエントリーされる映画祭ですが、今回の受賞作にはイラン映画が3本もあり、ここでもイラン映画の新しい波を感じさせる結果となりました。

 そのほか、イギリスに住むムスリムを描いた“Four Lions”や、イラクにおけるクルド人祖母と孫のロードムービー“Son of Babylon”など、イスラム圏やイスラム社会をベースにした物語が高い評価を受けていることが注目されます。ウズベキスタン人家族のロードムービーであるロシア映画“Another Sky / Drugoje něbo”もこれらの仲間に入れることができるでしょうか。

 全体としては、スケール感の大きな派手な作品こそありませんが、10代や20代、あるいは老人といった社会的弱者の目を通して、現代社会や現代社会が直面している問題を描いた良心的な作品が多いようです。(あと、不倫をモチーフにした作品も多いですね。)

 グランプリを受賞した“The Mosquito Net / La mosquitera”、ヤン・スヴィエラークの“Kooky / Kuky se vrací”も面白そうですが、個人的に興味を惹かれるのは“Hitler in Hollywood / Hitler à Hollywood”でしょうか。

 “Sweet Evil / L´enfance du mal”は、監督のOlivier Coussemacqがフランスの映画賞レースで新人賞を獲り、その後、フランス映画祭で上映される、ということも考えられます。

 上記の中で日本で劇場公開されそうな作品があるかというと、これという決め手がなくてちょっと予想できないのですが、近年のイラン映画の収穫(“Be Calm and Count to Seven”とか“Tehroun” とか、“My Tehran for Sale”、“Twenty(Bist)”、“Bibi”など)を集めて、日本でも新・イラン映画祭が開催できたら面白いと思うのですが、どうでしょうか。

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 *当ブログ記事
 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2010 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201007/article_10.html 
 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_28.html
 ・カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200907/article_11.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

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