ドキュメンタリーとアニメーションの新しい流れ クラクフ映画祭2010 各賞発表!

 第50回クラクフ映画祭の各賞が発表になりました。(6月6日)

 【コンペティション部門】

 ◆ドキュメンタリー・コンペティション(Documentary Competition)

 [上映時間が60分以上の部門](Films with running time more than 60 minutes) 全10本

 ○“Enemies of the People”(2009/英・カンボジア/93分) 監督:Rob Lemkin、Thet Sambath シルバー・ホーン特別芸術賞(The Silver Horn for Special Artistic Merit)
 △“108”(2010/西/95分) 監督:Renate Costa オナラブル・メンション
 ・“Florence Fight Club”(2009/伊・独/92分) 監督:Luigi Maria Perotti、Rovero Impiglia
 ◎“Beyond This Place”(2010/スイス/92分) 監督:Kaleo La Belle ゴールデン・ホーン最優秀監督賞
 △“Osadne”(2009/チェコ/65分) 監督:Marko Skop  オナラブル・メンション
 ・“Na północ od Kalabrii(North From Calabria)”(2009/ポーランド/67分) 監督:Marcin Sauter
 ・“Dwa Rembrandty w ogrodzie(Two Rembrandts in the garden)”(2009/ポーランド・独/79分) 監督:Jerzy Śladkowski
 △“As Lilith”(2009/イスラエル/78分) 監督:Eytan Harris オナラブル・メンション
 ・“October Country”(2009/米/80分) 監督:Michael Palmieri、Donal Mosher
 ・“New Muslim Cool”(2009/米/83分) 監督:Jennifer Maytorena Taylor

 ※“Enemies of the People”は、サンダンス映画祭2010 審査員特別賞、香港国際映画祭2010 優秀ドキュメンタリー賞、サンタバーバラ国際映画祭2010最優秀ドキュメンタリー賞受賞。
 “Osadne”は、スロヴァキア・アカデミー賞2010監督賞・編集賞・ドキュメンタリー賞ノミネート。
 “October Country”は、シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2009米国部門作品賞受賞。ゴッサム・アワード2009 & インディペンデント・スピリッツ・アワード2010ノミネート。

 [上映時間が30~60分の部門](Films with running time 30 to 60 minutes) 全10本

 ○“Men of the City”(2009/英/59分) 監督:Marc Isaacs シルバー・ホーン特別芸術賞
 ・“Inhale Exhale”(2009/ベルギー・フィンランド/44分) 監督:Jean Counet
 ・“Kleine Woelfe(Loney Pack)”(2009/独/48分) 監督:Justin Peach
 ☆“Ucieknijmy od niej(Let’s Run Away From Her)”(2010/ポーランド/48分) 監督:Marcin Koszałka 学生審査員賞
 △“Marysina polana(The Dog Hill)”(2010/ポーランド/39分) 監督:Grzegorz Zariczny オナラブル・メンション
 ◎“Sanya and Sparrow”(2009/ロシア/52分) 監督:Andrey Gryazev ゴールデン・ホーン最優秀監督賞
 ・“I Am a Monument”(2009/ウクライナ/57分) 監督:Dmytro Tiazhlov
 ・“The Worst Company In The World”(2009/イスラエル/50分) 監督:Regev Contes
 ・“The Last Krasucky”(2009/イスラエル/54分) 監督:Y.A. Krasucsky
 △“Who looks after”(2009/アルゼンチン/54分) 監督:Muriel Rebora オナラブル・メンション

 ◆インターナショナル短編コンペティション(Short Film Competition)

 [インターナショナル短編ドキュメンタリー部門](Documentary) 全15本

 ・“Perfect World”(2009/英/12分) 監督:Beryl Richards
 ・“Bye Bye Now”(2009/アイルランド/15分) 監督:Ross Whitaker、Aideen O'Sullivan
 ☆“I Love My Boring Life”(2009/チェコ/27分) 監督:Jan Gogola 国際批評家連盟賞
 ・“Tobacco Girl”(2009/独/30分) 監督:Biljana Garvanlieva
 ・“Holding Still”(2009/独/26分) 監督:Florian Riegel
 ・“Bernadett & Sanju”(2009/ハンガリー/25分) 監督:Viktor Oszkár Nagy
 ・“To Meet You”(2009/ポルトガル/26分) 監督:Alex Campos
 ・“H₂O”(2010/ポーランド/9分) 監督:Tomasz Wolski
 ・“Inwentaryzacja(Inventory)”(2010/ポーランド/9分) 監督:Paweł Łoziński
 ◎“Poza zasięgiem(Out of Reach)”(2010/ポーランド/30分) 監督:Jakub Stożek ゴールデン・ドラゴン最優秀監督賞
 ・“Altzaney”(2009/グルジア/30分) 監督:Nino Orjonikidze、Vano Arsenishvili
 △“Cicada”(2009/オーストラリア/9分) 監督:Amiel Courtin-Wilson オナラブル・メンション
 ・“Songs From The Tundra”(2009/米・ロシア/24分) 監督:Alexander Berman
 ○“The Darkness of Day”(2009/米/26分) 監督:Jay Rosenblatt シルバー・ドラゴン最優秀短編ドキュメンタリー監督賞
 ・“La Patrona”(2009/メキシコ/5分) 監督:Lizzette Arguello

 [インターナショナル短編フィクション部門](Fiction) 全16本

 ・“The Taxidermist”(2009/英/22分) 監督:Bert & Bertie
 ・“Stained”(2009/英/15分) 監督:Lewis Arnold
 ・“Dental Breakdown”(2009/アイルランド/6分) 監督:Ian Power
 ・“Absent”(2009/西/10分) 監督:Guillermo Asensio
 ・“Alice au pays s'émerveille(Alice In Modernland)”(2009/仏/27分) 監督:Marie-Eve Signeyrole
 ☆『ドンデ エスタ キム・ベイシンガー?』“Where is Kim Basinger?”(2009/仏/28分) 監督:Edouard Deluc ドンキホーテ賞オナラブル・メンション
 ・“The Blue Bus”(2009/オランダ/30分) 監督:Sanne Kortooms
 ・“Ich bin’s Helmut”(2009/独/11分) 監督:Nicolas Steinem
 ・“Hanoi – Warszawa(Hanoi – Warsaw)”(2009/ポーランド/27分) 監督:Katarzyna Klimkiewicz
 ◎“Incident by a Bank”(2009/スウェーデン/12分) 監督:Ruben Östrund シルバー・ドラゴン最優秀短編フィクション監督賞、学生審査員賞
 ・“Sinner”(2009/イスラエル/28分) 監督:Meni Philips
 ・“On Leave”(2009/イスラエル/15分) 監督:Asaf Saban
 ・“Dirty Bitch”(2009/シンガポール/14分) 監督:Sun Koh
 △“Out in the Deep Blue Sea”(2009/カナダ/16分) 監督:Kazik Radwanski オナラブル・メンション
 ・“Ana’s Playground”(2009/米/18分) 監督:Eric Howell
 ・“Away”(2009/アルゼンチン/10分) 監督:Jorge Fried Budnik

 [インターナショナル短編アニメーション部門](Animation) 全15本

 ・“Mother of Many”(2009/英/6分) 監督:Emma Lazenby
 ◎“1000 Voices”(2009/英/8分) 監督:Tim Travers Hawkins 最優秀短編アニメーション監督賞
 ☆“Logorama”(2009/仏/16分) 監督:François Alaux (H5)、Hervé de Crécy (H5)、Ludovic Houplain (H5) ドンキホーテ賞
 ・“Clouds, Hands”(2009/仏/9分) 監督:Simone Massi
 ・“Anna Blume”(2009/独・ベルギー/9分) 監督:Vessela Dantcheva
 ・“Love & Theft”(2009/独/7分) 監督:Andreas Hykade
 ・“Kinematograf(The Kinematograph)”(2009/ポーランド/12分) 監督:Tomasz Bagiński
 △“Millhaven”(2009/ポーランド/7分) 監督:Bartek Kulas オナラブル・メンション
 ・『雨の中の潜水夫(雨の中のダイバー)』“Divers In The Rain”(2009/エストニア/23分) 監督:プリート・パルン、オルガ・パルン
 ・“Good Stuff”(2009/フィンランド/8分) 監督:Niina Suominen
 ☆“Tussilago”(2010/ノルウェー/14分) 監督:ヨナス・オデル(Jonas Odell) ヨーロッパ映画賞2010クラクフ代表
 ・“Dog-Walking Ground”(2009/ロシア/8分) 監督:Leonid Shmelkov
 ・“Don’t Forget”(2010/オーストラリア/6分) 監督:Yoram Gross
 ・“Prayers for Peace”(2009/米/7分) 監督:Dustin Grella
 ・“Divino Freestyles”(2009/ブラジル/7分) 監督:Fabio Yamaji

 ※“Logorama”は、米国アカデミー賞2010短編アニメーション賞受賞。
 “Kinematograf”は、米国アカデミー賞2010短編アニメーション賞ショートリストエントリー。
 “Kinematograf”と“Dog-Walking Ground”は、ズリーン2010コンペ部門出品。“Clouds, Hands”は、ズリーン2010アウト・オブ・コンペティション部門出品。
 “Logorama”と“Love & Theft”と『雨の中の潜水夫』と“Tussilago”は、ザグレブ2010コンペ部門出品。
 “Logorama”と“Love & Theft”は、アヌシー2010コンペ部門出品。

 ◆ナショナル短編コンペティション(National Competition)

 [ポーランド短編ドキュメンタリー部門](Documentary) 全20本

 ・“Magda, miłość i rak(Magda, Love and Cancer)”(2009/ポーランド/52分) 監督:Alina Mrowińska
 ◎“Warszawa do wzięcia(Warsaw Available)”(2009/ポーランド/50分) 監督:Karolina Bielawska、Julia Ruszkiewicz ゴールデン・ホビー・ホース最優秀監督賞
 ・“Co ja tu robię? Tadeusz Konwicki(What Am I Doing Here? Tadeusz Konwicki)”(2009/ポーランド/54分) 監督:Janusz Anderman
 ・“Ucieknijmy od niej”(2010/ポーランド/50分) 監督:Marcin Koszałka
 ・“Zawód - podróżnik na południe. Andrzej Stasiuk(Profession - Southern Traveller. Andrzej Stasiuk)”(2009/ポーランド/42分) 監督:Dariusz Pawelec
 ・“W drodze(On The Road)”(2010/ポーランド/43分) 監督:Leszek Dawid
 ☆“Marysina polana(The Dog Hill)”(2010/ポーランド/39分) 監督:Grzegorz Zariczny The Maciej Szumowski Award(キノ・ポルスカ賞)
 ・“10 lat do Nashville(10 Years to Nashville)”(2009/ポーランド/38分) 監督:Katarzyna Trzaska
 ☆“Pogodna(Gettig On)”(2009/ポーランド/30分) 監督:Renata Gabryjelska ポーランド映画監督協会会長賞編集賞
 ・“Pomału(Slowly)”(2010/ポーランド/30分) 監督:Tomasz Wolski
 △“Poza zasięgiem(Out of Reach)”(2009/ポーランド/30分) 監督:Jakub Stożek オナラブル・メンション
 ・“Takie życie…(That’s Life …)”(2010/ポーランド/27分) 監督:Daniel Zieliński
 ○“Seans w kinie Tatry(A Screening at The Tatry Cinema)”(2010/ポーランド/27分) 監督:Igor Chojna シルバー・ホビー・ホース最優秀ドキュメンタリー監督賞
 ☆“Deklaracja nieśmiertelności(The Declaration of Immortality)”(2010/ポーランド/25分) 監督:Marcin Koszałka 学生審査員賞、ピープルズ・チョイス・アワード、ポーランド映画監督協会会長賞
 ・“Czwarty człowiek(The Fourth Man)”(2010/ポーランド/21分) 監督:Krzysztof Kasior
 ・“Viva Maria!”(2010/ポーランド/17分) 監督:Agnieszka Smoczyńska
 ・“Przyrzeczona(Little Bride)”(2010/ポーランド/14分) 監督:Lesław Dobrucki
 ・“H₂O”(2010/ポーランド/8分) 監督:Tomasz Wolski
 ・“Inwentaryzacja(Inventory)”(2010/ポーランド/9分) 監督:Paweł Łoziński
 ・“Kres świata(The End of the World)”(2010/ポーランド/7分30秒)2 監督:Mateusz Skalski

 [ポーランド短編フィクション部門](Fiction) 全7本

 ◎“Ciemnego pokoju nie trzeba się bać(Don’t Be Afraid of The Dark Room)”(2009/ポーランド/30分) 監督:Kuba Czekaj シルバー・ホビー・ホース最優秀短編フィクション監督賞
 ・“Co mówią lekarze(What The Doctors Say)”(2009/ポーランド/25分) 監督:Michał Wnuk
 ・“Hanoi – Warszawa”(2009/ポーランド/27分) 監督:Katarzyna Klimkiewicz
 ・“Moja biedna głowa(My Poor Head)”(2009/ポーランド/29分) 監督:Adrian Panek
 ・“Real”(2009/ポーランド/22分) 監督:Rafał Samusik
 ・“Wyłączność(An Exclusive)”(2009/ポーランド/14分) 監督:Krzysztof Szot
 ・“Pod wiatr nie popłynie słodki zapach kwiatów(The Scent Of Flowers Does Not Blow Against The Wind)”(2009/ポーランド/19分) 監督:Leszek Korusiewicz

 [ポーランド短編アニメーション部門](Animation) 全6本

 ・“Kinematograf(The Kinematograph)”(2009/ポーランド/12分) 監督:Tomek Bagiński
 △“Esterhazy” (2009/ポーランド/24分) 監督:Izabela Plucińska オナラブル・メンション
 ・“Danny Boy”(2010/ポーランド/10分) 監督:Marek Skrobecki
 ◎“Millhaven”(2010/ポーランド/7分) 監督:Bartek Kulas Poland シルバー・ホビー・ホース最優秀アニメーション監督賞
 ・“Charon Taxi”(2009/ポーランド/12分) 監督:Joanna Wójcik
 ・“Wyspa gibonów(Gibbon’s Island)”(2010/ポーランド/8分) 監督:Małgorzata Bosek

 ※“Kinematograf”は、米国アカデミー賞2010短編アニメーション賞ショートリストエントリー。ズリーン2010コンペ部門出品。
 “Esterhazy”は、アヌシー2010コンペ部門出品。

 ◆最優秀プロデューサー賞(The Bronisław Chromy Sculpture for the Best Producer of Polish Short and Documentary Films)
 ◎アンジェイ・ワイダ映画学校(Andrzej Wajda Master School of Film Directing)

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 受賞作品のすべてを紹介したいのはやまやまですが、全部で27作品もあって、すべて調べて書き出すには負担も大きく、また、後々、作品情報として重要性を増してくるのは、長編ドキュメンタリー部門と短編アニメーション部門だけなので、ここではその2部門の受賞作品に関してのみ、内容紹介を書き出すことにしたいと思います。(それでも10作品あります。)

 ◎“Beyond This Place”(2010/スイス/92分) 監督:Kaleo La Belle
 ゴールデン・ホーン最優秀監督賞
 物語:監督のKaleo La Belleは、典型的なヒッピー・ジェネレーションの子供世代に属している。彼は、幼い頃に父親と別れて、母と2人でポートランドで暮らしていたが、自分も父親になったのをいい機会として、実父を捜して会いに行く。久しぶりに会った父は、40年間、全く変わっておらず、今でもマリファナは吸うし、いたって無頓着な生活を送っている。Kaleoは、父と自転車旅行をすることにするが、その旅行を通して、親子関係や責任、許し、そして何よりも真の自由とは何かということについて考えることになる。

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 ○“Enemies of the People”(2009/英・カンボジア/93分) 監督:Rob Lemkin、Thet Sambath
 シルバー・ホーン特別芸術賞(The Silver Horn for Special Artistic Merit)
 クメール・ルージュに家族を殺された若きジャーナリストが、虐殺を起こした加害者と親しくなり、ショッキングな事実を明るみに出していく。
 サンダンス映画祭2010審査員特別賞受賞。

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 △“108”(2010/西/95分) 監督:Renate Costa
 ドキュメンタリー部門オナラブル・メンション
 物語:1980年代、アルフレド・ストロエスネル独裁政権下のウルグアイで、若きダンサー、ルドルフォは、ブラックリスト“108”にホモセクシャル容疑で名前が載り、迫害と拷問を受ける。歳月が流れて―、現在。彼の姪に当たるRenate Costa監督は、家族にとってはこのままそっとしておきたかった事実を白日のもとに曝すことで、こうした事実を忘却のかなたに押し込めようとしている母国ウルグアイとその歴史を検証しようとする。

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 △“Osadne”(2009/チェコ/65分) 監督:Marko Skop
 ドキュメンタリー部門オナラブル・メンション
 物語:スロヴァキアの小さな村Osadnéの東方教会司祭と、その村長、そして活動家の3人が、村の未来を賭けて、ブリュッセルで開催されるヨーロッパ議会に向かう……。
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009 ドキュメンタリー部門30分以上の部グランプリ受賞。
 スロヴァキア・アカデミー賞2010 監督賞・編集賞・ドキュメンタリー賞ノミネート。

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 △“As Lilith”(2009/イスラエル/78分) 監督:Eytan Harris
 ドキュメンタリー部門オナラブル・メンション
 物語:イスラエルのジフロン・ヤアコヴの町。ここでは、今も魔女狩りが行なわれている。変人リリスは、彼女の娘が、謎の自殺を遂げた後、ユダヤ教の伝統に反して娘の遺体を火葬にすることで、イスラエルの正統派ユダヤ教コミュニティーに宣戦布告することになる。それは、狂信的なユダヤ教グループを敵にまわすだけでなく、葬儀業の一切を取り仕切っていて、大きな影響力も持っているユダヤ人組織Zakaをも敵にまわすことになるのだった……。

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 ◎“1000 Voices”(2009/英/8分) 監督:Tim Travers Hawkins
 最優秀短編アニメーション監督賞
 物語:係官がティーンエージャーに英国の難民救済システムの効率性とヒューマニティーに関してレクチャーを行なっている。一方、全く同じビルの地下には、ずっと移民センターに留め置かれたままの抑留者のメッセージが吹き込まれているが、それらは全く省みられることがない。それらのメッセージには、紛争から逃れてきた彼の人生がいかに恐ろしいものであったかということが刻まれている。実際の記録に基づいて製作されたアニメーション作品。

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 ☆“Logorama”(2009/仏/16分) 監督:François Alaux (H5)、Hervé de Crécy (H5)、Ludovic Houplain (H5)
 ドンキホーテ賞
 米国アカデミー賞2010短編アニメーション賞受賞。ザグレブ国際アニメーションファスティバル2010 スペシャル・メンション受賞。
 *当ブログ記事:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201003/article_19.html

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 △◎“Millhaven”(2009/ポーランド/7分) 監督:Bartek Kulas
 インターナショナル部門オナラブル・メンション、ナショナル部門シルバー・ホビー・ホース最優秀アニメーション監督賞
 物語:退屈な田舎町に暮らす15歳のロレッタの、おぞましく、時にシュールな物語。
 ニック・ケイヴのサイケデリックなバラード“The Curse of Millhaven”にインスパイアされて作られた作品。

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 ☆“Tussilago”(2010/ノルウェー/14分) 監督:ヨナス・オデル
 ヨーロッパ映画賞2010クラクフ代表
 物語:1976年。ノルベルト・クレーチャー(Norbert Kröcher)は、東ドイツの赤軍一派のリーダーで、オペレーション・レオという計画を実行に移そうとしていた。それは、スウェーデンの政治家を誘拐し、獄中にいる仲間と交換しようというものだった。しかし、子供のゲームじみた計画は、あっさり失敗し、クレーチャーのガールフレンドAも逮捕され、尋問を受ける。それから30年後、Aが自分の物語を語り始める……。

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 △“Esterhazy” (2009/ポーランド/24分) 監督:Izabela Plucińska
 ナショナル部門オナラブル・メンション
 物語:エスターハージー家の家長の忠告に従って、チビ・ウサギがお嫁さんを探しにウィーンを発ってベルリンにやってくるが、いろんな家族をたらしまわしにされるばかりで、なかなか目的が達せられない。しかし、彼もついにウサギの楽園があるという大きな壁に到達する……。
 イレーネ・ディーシェとハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー著の『エスターハージー王子の冒険』の翻案で、ベルリンの壁崩壊をモチーフに取り込んだ作品。

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 これらの受賞結果をざっと眺めたところでは、長編ドキュメンタリーでは、監督自身の身内を題材として取り上げて、それを通して、時代や社会を描こうとした作品が2作品あり(“Beyond This Place”と“108”)、短編アニメーションでは、実際に起こった社会的な事件や出来事をアニメーションという手段を使って作品化したというものが2作品(“1000 Voices”と“Tussilago”)ある、ということが注目されます。

 ドキュメンタリーとして「監督自身の身内を題材として取り上げる」というのは、限られたドキュメンタリー作家に生涯一度だけしか許されないものですが、昨今のドキュメンタリーの1つの流行であり、サンダンス映画祭などでもよく見かけます。(サンダンス映画祭2009で監督賞を受賞したナタリー・アルマダ監督の“The General (El General)”などがあります。)

 「実際に起こった社会的な事件や出来事をアニメーションという手段を使って作品化した」アニメーション作品には、全世界で数多くの賞を受賞した『戦場でワルツを』という前例がありますが、『戦場でワルツを』の成功がこうした作品群を次々と生み出す契機になったんじゃないかということは可能性として十分ありそうです。

 “Tussilago”は、クラクフ映画祭だけでなく、同時期に開催されていたザグレブ国際アニメーションフェスティバル2010のコンペ部門にもエントリーされていたのですが、ザグレブでは受賞できずに、ここクラクフで受賞したというのは、ドキュメンタリーに力を入れているクラクフ映画祭ならでは、なのかもしれません。

 これまでアニメーション作家によるアニメーション作品といえば、ナラティブな作品であれ、抽象作品であれ、実験アニメーションであれ、アニメーション作家のユニークな内面世界や技法を前面に打ち出すようなものがほとんどでしたが、“1000 Voices”や“Tussilago”は、それらとは対照的に、アニメーションという手法を使って、社会的な事件や出来事を描いて、政治的・社会的メッセージを訴えかけていこう、そのための手段としてアニメーションを使おうというもので、これまでのアニメーションとは立ち位置が180度違う、という気がします。

 これまでにも、メッセージ性の強いアニメーション作品や社会性の濃いアニメーション作品はなかったわけではありませんが、政治的・社会的メッセージを訴えかけるための手段として、ここまで割り切ってアニメーションを使うということはなかったように思います。それは、「新しいアニメーションの流れ」として、アニメーションに新たな地平を築くことになるんじゃないか、という予感をも抱かせますが、その予感を抱かせたのが、ザグレブやアヌシーといったアニメーションの聖地ではなく、クラクフでというのがちょっと面白いですね。

 アニメーションというのは制作に手間隙がかかるので、手っ取り早く政治的・社会的メッセージを訴えかけるには不似合いなメディアなのですが、ドキュメンタリーというのは元々はっきりした公開の目処もなしに、じっくりと腰を据えて、何年も時間をかけて制作していくものなので、その点では、アニメーションとドキュメンタリーは、案外、親和性があると言えるかもしれません。

 考えてみれば、リチャード・リンクレーターが『ウェイキング・ライフ』や『スキャナー・ダークリー』を作ったように、これまで実写作品を撮り続けてきた(アニメーション制作のノウハウを持たない)映画監督が突然アニメーションにチャレンジして、ファンを驚かせたりしますが、そうしたことは、こういう新しいアニメーションの流れの予兆であり、また、新しいアニメーションの流れそのものを形作ってきたと言える、かも知れません。(アニメーションの専門家やアニメーション畑の人、およびアニメーション一筋の人は、『戦場でワルツを』やリチャード・リンクレーターのアニメ作品などをあまり話題にしていないように思いますが、それはこれらの作品がこれまでのアニメーションとは元々違う出自の作品であり、また、語るべき文脈も全く異なるものだから、なのでしょうか。)

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 *当ブログ記事
 ・クラクフ映画祭2010 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201006/article_1.html
 ・クラクフ映画祭2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_17.html
 ・クラクフ映画祭2009 受賞結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_6.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2010年5月~2011年2月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201005/article_23.html

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