詳細! 第60回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門!

 第60回ベルリン国際映画祭の全ラインナップが発表になりました。(2月1日)

 コンペティション部門は全部で20作品あります。
 日本で話題になっている山田洋次監督作品『おとうと』はコンペ部門出品作ではなく、アウト・オブ・コンペティションのクロージング作品です。

 ・“The Ghost Writer(Der Ghostwriter)”(仏・独・英) 監督:ロマン・ポランスキー
 ・“Mammuth”(仏) 監督:Benoît Delépine、Gustave de Kervern
 ・“Shahada”(独) 監督:Burhan Qurbani
 ・“Der Räuber (The Robber)”(オーストリア・独) 監督:Benjamin Heisenberg
 ・“Jud Süß - Film ohne Gewissen”(オーストリア・独) 監督:オスカー・レーラー
 ・“En Familie (A Family)”(デンマーク) 監督:Pernille Fischer Christensen
 ・“Submarino”(デンマーク) 監督:トーマス・ヴィンターベア
 ・“En ganske snill mann (A Somewhat Gentle Man)”(ノルウェー) 監督:Hans Petter Moland
 ・“Na Putu (On the Path)”(ボスニア ヘルツェゴビナ・オーストリア・独・クロアチア) 監督:ヤスミラ・ジュバニッチ
 ・“Eu când vreau să fluier、fluier (If I Want To Whistle、I Whistle)”(ルーマニア・スウェーデン) 監督:Florin Şerban
 ・“Kak ya provel etim letom (How I Ended This Summer)”(ロシア) 監督:Alexei Popogrebsky
 ・“Bal (Honey)”(トルコ・独) 監督:Semih Kaplanoglu
 ・“Shekarchi (The Hunter/Zeit des Zorns)”(独・イラン) 監督:Rafi Pitts
 ・“San qiang pai an jing qi (三槍拍案驚奇/A Woman、A Gun And A Noodle Shop)”(中) 監督:チャン・イーモウ
 ・“Tuan Yuan (團圓/Apart Together)”(中) 監督:ワン・チュアンアン
 ・『キャタピラー CATERPILLAR』“Caterpillar”(日) 監督:若松孝二
 ・“Greenberg”(米) 監督:ノア・バウムバック
 ・“Howl”(米) 監督:ロブ・エプステイン、ジェフリー・フリードマン
 ・“The Killer Inside Me”(米・英) 監督:マイケル・ウィンターボトム
 ・“Rompecabezas (Puzzle)”(アルゼンチン・仏) 監督:Natalia Smirnoff

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 ・“The Ghost Writer(Der Ghostwriter)” (仏・独・英)
 監督:ロマン・ポランスキー
 出演:ユアン・マクレガー、キム・キャトラル、オリヴィア・ウィリアムズ、ピアース・ブロスナン
 物語:ゴーストライターとして成功している男性が、前英国首相の回想録を書く仕事の依頼を受ける。エージェントはこれがライターとしていいチャンスになるだろうと言うが、前にこの仕事を引き受けたライターは謎の死を遂げているのだった……。
 3大映画祭との関わり:ベルリン国際映画祭コンペ部門出品は監督作品としては44年ぶり3度目。(プロデュース作品も含めると4度目。)過去3回は、『反撥』(1965)で銀熊賞(審査員特別賞)&国際批評家連盟賞、『袋小路』(1966)で金熊賞。カンヌ国際映画祭は2度出品し、『戦場のピアニスト』(2002)でパルムドール受賞。ベネチア国際映画祭は、『水の中のナイフ』(1962)で国際批評家連盟賞、1993年に生涯金獅子賞受賞。


 ・“Mammuth” (仏) [ワールド・プレミア]
 監督:Benoît Delépine、Gustave de Kervern
 出演:ジェラール・ドパルデュー、ヨランド・モロー、イザベル・アジャーニ、Miss Ming
 物語:主人公は、食肉処理工場の労働者で、定年を迎えようとしていた。彼は、欠勤も病欠もしてこなかったが、いくつかの職場での就労記録が残っておらず、正規の年金を望むなら、これまで働いた職場から必要書類を手に入れてこなければならなくなる。彼は、バイクでかつての職場をまわる旅に出るが、それは、昔懐かしい仕事仲間や親族に再会する旅でもあった。その旅の中で、彼は、これまで封印してきた記憶、バイク事故で死なせてしまった最愛の女性ヤスミンのことを甦らせる。
 タイトルの「マンモス」は、主人公のバイクの名前であり、「愚鈍」と思われている彼に対するニックネーム。
 3大映画祭との関わり:初めて
 監督のBenoît DelépineとGustave de Kervernは、ともに俳優で(Benoît Delépineは70年代から活躍するベテラン、Gustave de Kervernは90年代半ばから活躍している中堅俳優)、共同で監督した初監督作品“Aaltra”(2004)がロッテルダム国際映画祭コンペ部門にエントリーされ、前作“Louise-Michel”(2008)がサンダンス映画祭コンペ部門にエントリーされ、サンセバスチャン国際映画祭で脚本賞を受賞している。


 ・“Shahada” (独) [ワールド・プレミア]
 監督:Burhan Qurbani
 出演:Maryam Zaree、Carlo Ljubek、Jeremias Acheampong、セルゲイ・モヤ(Sergej Moya)、Vedat Erincin
 物語:主人公は、ベルリンに住む、マリアムとサミールとイスマイルという3人の若いイスラム教徒。マリアムは、西欧風の生活にすっかり馴染んでいて、楽しいことが大好き。そんな娘をシングルファーザーでイスラム教の導師でもあるヴェダットは心配していたが、ある日、マリアムが妊娠していることがわかる。ナイジェリア人のサミールはドイツ人のダニエルと仲がよく、一緒にコーランの授業も受けていた。やがて、ダニエルは、サミールのことを友達以上の存在として感じていることに気づく。イスマイルは、家族を持つ30代の警官で、3年前に彼の銃の暴発により瀕死の重傷を負わせた女性と偶然にめぐり逢い、すっかり動揺してしまう。マリアム、サミール、イスマイルの3人の物語は、ヴェダットが務めているモスクで交わる。
 タイトルの「シャハダ」とは、イスラム教信仰の核である「信仰の告白」のこと。
 初長編監督作品
 3大映画祭との関わり:初めて


 ・“Der Räuber (The Robber)” (オーストリア・独) [ワールド・プレミア]
 監督:Benjamin Heisenberg
 出演:Andreas Lust、Franziska Weisz
 物語:趣味が泥棒というマラソン・ランナーの物語。
 Martin Prinzの小説の映画化。
 3大映画祭との関わり:初めて
 本作品で、バイエルン映画賞2010新人監督賞受賞。


 ・“Jud Süß - Film ohne Gewissen” (オーストリア・独) [ワールド・プレミア]
 監督:オスカー・レーラー
 出演:トビアス・モレッティ(Tobias Moretti)、マルティナ・ゲデック、モーリッツ・ブライプトロイ、ユストゥス・フォン・ドーナニー(Justus von Dohnanyi)、アーミン・ローデ(Armin Rohde)
 物語:1940年のドイツ。フェルディナンド・マリアンは、ファイト・ハーマン監督のプロパガンダ映画“Jud Süß”(ユダヤ人ジュース)の主役に抜擢される。彼の栄光は、この映画がベネチア国際映画祭でプレミア上映されるまで続くが、その頃になって、彼もようやくこの映画の持っている社会的な意味や危険性を認識し始める。彼の友人のユダヤ人たちは移民を始め、彼も、家族をユダヤ人の友人の別荘に隠すが、家族はメイドの密告で見つかってしまう。彼は、自棄になって酒に溺れる。しかし、その行為がまた非難の対象となり、ゲッペルスの不興を買って、妻が国外追放になってしまう。チェコ人の愛人ブラスタももう彼を守ることはできない……。
 3大映画祭との関わり:ベルリン国際映画祭コンペ部門出品は、『アグネスと彼の兄弟』(2003)、『素粒子』(2006)以来、3度目。


 ・“En Familie (A Family)” (デンマーク) [ワールド・プレミア]
 監督:Pernille Fischer Christensen
 出演:イェスパー・クリステンセン(Jesper Christensen)、Lene Maria Christensen、Pilou Asbæk 、アンヌ・ルイーセ・ハシング(Anne Louise Hassing)
 物語:ディッテは、画廊経営で成功して、夢のニューヨーク進出がもうすぐ目の前に迫り、恋人のペーターとニューヨークでの新生活のプランを練っていた。しかし、彼女の最愛の父が重病に倒れ、彼女は父につきっきりで介護することになる。父の願いは、彼が王室御用達にまで成長させたパン工房を娘に継いでもらうことだったが、それはディッテがずっと抱いてきた夢を諦めることであった……。
 3大映画祭との関わり:“Indien”(1999)で、カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門第3位。“En soap”(2006)で、ベルリン国際映画祭コンペ部門銀熊賞(審査員賞)&新人監督賞受賞。


 ・“Submarino” (デンマーク) [ワールド・プレミア]
 監督:トーマス・ヴィンターベア
 出演:Jakob Cedergren、Peter Plaugborg、Patricia Schumann、Gustav Fischer Kjærulff、Morten Rose
 物語:ニックと弟は、悲惨な家庭環境のせいで、幼い頃に別離し、何年も会うことなく、別々に暮らしていた。ニックは、アルコールと暴力に明け暮れ、弟は、シングルファーザーとして6歳の息子を育てるためにドラッグに手を染めていた。そんな2人が、刑務所の中で、運命の再会を果たす……。
 タイトルは、刑務所内での拷問「潜水艦」(水中に頭を突っ込まれる)のこと。
 Jonas T. Bengtsson の小説の映画化。
 3大映画祭との関わり:『セレブレーション』(1998)でカンヌ国際映画祭審査員賞受賞。


 ・“En ganske snill mann (A Somewhat Gentle Man)” (ノルウェー) [ワールド・プレミア]
 監督:Hans Petter Moland
 出演:ステラン・スカルスゲルド、Jannike Kruse Jåtog、Jan Gunnar Røise
 物語:ウルリクは、殺人で服役していた刑務所から12年ぶりに釈放される。彼には、遣り残した仕事があり、彼の仲間は彼がそれをやり遂げるであろうことを知っていた。彼は、昔、一緒に計画を練っていた相棒のケニーを捜すが、ケニーが過去のことなど忘れたように幸せな家庭を築いていることを知る。ケニーの幸せな姿を見て、ウルリクも、別れた妻のことを思い出し、彼女に連絡を取るが、元妻は自分と息子を棄てた男を許してはおらず、息子にも絶対に連絡を取るなと約束させる。しかし、彼は、息子と連絡を取り、自分がもうすぐおじいちゃんになろうとしていることを知る。一方、ケニーがウルリクの恩も忘れてのうのうとしていることを知った昔の仲間は、ケニーに復讐に行こうとウルリクを誘う……。
 3大映画祭との関わり:“The Beautiful Country”(2004)がベルリン国際映画祭コンペ部門に出品。


 ・“Na Putu (On the Path)” (ボスニア ヘルツェゴビナ・オーストリア・独・クロアチア)
 監督:ヤスミラ・ジュバニッチ(Jasmila Žbanić) [ワールド・プレミア]
 出演:ズリンカ・ツヴィテシッチ(Zrinka Cvitešić)、レオン・ルチェフ(Leon Lucev)、エルミン・ブラーボ(Ermin Bravo)、ミリャナ・カラノヴィチ(Mirjana Karanović)
 物語:ルナとアマールは、恋人どうし。ルナの希望は、アマールと2人で子供を育てることだったが、アマールが飲酒で仕事をクビになったことから危機状態に陥ってしまう。アマールは、出稼ぎのために、少し遠い場所に出かけることになる。そこは、厳格なイスラム教徒のコミュニティーで、ルナが彼を訪ねていった時、彼女はアマールがすっかり感化されてしまったことを知る。ルナは、アマールに、仕事を切り上げて、一緒に帰ろうと誘うが、彼は承知しない。しばらくして、彼が帰ってきた時、ルナは彼が全く別人になってしまったことを知る。
 3大映画祭との関わり:前作『サラエボの花』(2006)でベルリン国際映画祭金熊賞&エキュメニカル審査員賞受賞


 ・“Eu când vreau să fluier、fluier (If I Want To Whistle、I Whistle)” (ルーマニア・スウェーデン) [ワールド・プレミア]
 監督:Florin Şerban
 出演:George Piştereanu、Ada Condeescu、Clara Vodă、Mihai Constantin
 物語:シルビウは、あと5日で少年院から釈放されることになっていた。そこに、長年、音信不通だった母親が突然現れて、これからは次男は自分が育てると宣言する。次男のことは、これまで自分の息子のように面倒を見てきていたので、シルビウは、突然現れた母親に彼を連れ去られてしまうことが我慢ならず、何もできない5日間が苦痛で耐えられないほどになる。一方で、シルビウは、少年院にインターンとしてやってきていたソーシャルワーカーのアナに恋してもいて、この機会に、アナをさらって、少年院を脱走してしまおうと考える。
 初監督作品
 3大映画祭との関わり:初めて。


 ・“Kak ya provel etim letom (How I Ended This Summer)” (ロシア) [ワールド・プレミア]
 監督:Alexei Popogrebsky (Prostye veshchi – Simple Things、Koktebel - Roads to Koktebel)
 出演:Grigory Dobrygin、Sergei Puskepalis
 物語:北極海に浮かぶ孤島。気象学者のセルゲイと大学を卒業したばかりのパヴェルは、そこにある研究所で数ヶ月を過ごす。セルゲイは、本土に妻子がいて、次の船がやってくれば、ここでの任務も終了して、やっと妻子の元へ戻れると考えている。パヴェルは、セルゲイのいない間に重要な無線連絡を受けるが、その内容をなかなかセルゲイに伝えることができない……。
 3大映画祭との関わり:初めて。
 Alexei Popogrebskyは、初監督作品“Koktebel”(2003)がモスクワ国際映画祭コンペ部門に出品され、審査員特別賞受賞。第2作“Prostye veshchi”(2007)はカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭国際批評家連盟賞&エキュメニカル審査員賞受賞。本作が第3長編。


 ・“Bal (Honey)” (トルコ・独) [ワールド・プレミア]
 監督:Semih Kaplanoglu
 出演:Bora Altas、Erdal Besikcioglu、Tülin Özen、Alev Ucarer、Ayse Altay
 物語:ヤクプは養蜂家で、森の中で蜂を飼っている。6歳の息子ユスフは、神秘的な森が大好きだったし、そこで父親に遊んでもらうことを楽しみにしていた。ところが、ある日、蜂たちが忽然と姿を消す。そして、ヤクプ本人も行方知れずになる。妻は夫の身を案じるが、さらに心配なことに、それ以来、ユスフが口を利けなくなってしまう……。
 3大映画祭との関わり:前作“Süt/Milk”(2008)がベネチア国際映画祭コンペ部門出品。


 ・“Shekarchi (The Hunter/Zeit des Zorns)” (独・イラン)
 監督:Rafi Pitts
 出演:Rafi Pitts、Mitra Hajjar、Ali Nicksaulat、Hassan Ghalenoi
 物語:アリは、前科者で、刑務所から釈放された後、テヘランの工場の夜警として働いていた。彼の望みは、ただ、妻のサラと娘のサバと平穏な暮らしを送ることだけ。ある日の帰宅後、彼は、妻と娘が一向に戻ってこないので、心配して、警察に捜索願いを出す。しばらくすると、妻がデモに巻き込まれて死んだことがわかる。彼は、依然として行方不明のままの娘の生存に一縷の望みを託すが、頼りの警察は全く要領を得ない。娘が遺体となって発見されると、これまで怒りをこらえていた彼もついに逆上し、警官に発砲してしまう。彼は、無我夢中で逃亡し、警察が彼を追う……。
 3大映画祭との関わり:“It’s Winter”(2006)に続き、2度目のベルリン国際映画祭コンペ部門出品。


 ・“San qiang pai an jing qi (三槍拍案驚奇/A Woman、A Gun And A Noodle Shop)” (中) [インターナショナル・プレミア]
 監督:チャン・イーモウ
 出演:スン・ホンレイ、シャオ・シェンヤン、イェン・ニー
 物語:ワンは、万里の長城に近い小さな町でそば屋を営んでいる。彼は横柄な性格で、妻をこき使い、従業員に支払う給料を何ヶ月も滞らせたりする。一方、妻の方は、内気なコックのリーとの情事で自らを慰めていたが、自分たち2人が幸せになるためには夫を殺すしかないと思い始め、とうとうペルシャ絨毯の商人から銃を手に入れる。しかし、2人の企みはワンに知れることになり、ワンは、先手を打って、大金をやるから2人を殺してくれと警官のチャンに依頼する……。
 コーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』のリメイク。
 3大映画祭との関わり:
 1987年 『紅いコーリャン』 ベルリン国際映画祭 金熊賞
 1990年 『菊豆』 カンヌ国際映画祭コンペ部門出品
 1991年 『紅夢』 ベネチア国際映画祭銀獅子賞
 1992年 『秋菊の物語』 ベネチア国際映画祭金獅子賞
 1994年 『活きる』 審査員特別賞&エキュメニカル審査員賞
 1995年 『上海ルージュ』 カンヌ国際映画祭 技術賞
 1995年 『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』
 1997年 『キープ・クール』 ベネチア国際映画祭コンペ部門出品
 1999年 『あの子を探して』 ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員特別賞)&エキュメニカル審査員賞
 1999年 『初恋のきた道』 ベネチア国際映画祭 金獅子賞&ユニセフ賞
 2002年 『HERO』 ベルリン国際映画祭 アルフレッド・バウアー賞


 ・“Tuan Yuan (團圓/Apart Together)” (中) [ワールド・プレミア]
 監督:ワン・チュアンアン
 出演:凌峰(Ling Feng)、リサ・ルー、モニカ・モク、Xu Caigen、Ma Xiaoqing
 オープニング作品
 物語:中国は、建国50年を記念して、家族を残して、台湾に去った国民党の元兵士と、彼らの家族とを上海で再会させるという機会を作る。リュウは、そのチャンスに恵まれた1人で、彼には、親族に再会することとはもう1つ別の目的があった。それは、当時、彼の子を身ごもっていたのに、さよならも言えずに別れることになってしまった女性を見つけ出すことだった。彼は、彼女のことが50年経った今も忘れられず、できるなら、彼女を連れて台湾に帰りたいとまで考えていた。しかし、彼女を見つけ出すことには成功したものの、彼女は人民解放軍の兵士と結婚し、家庭を築いていた。彼は、せめても罪の償いにと、自分の全財産を彼女の夫に贈ることを約束する……。
 3大映画祭との関わり:『トゥヤーの結婚』(2007)でベルリン国際映画祭金熊賞&エキュメニカル審査員賞受賞。
 ワン・チュアンアン監督は、『紡績姑娘』“Weaving Girl”でモントリオール世界映画祭2009審査員特別賞&国際批評家連盟賞を受賞したばかり。


 ・『キャタピラー CATERPILLAR』“Caterpillar” (日) [ワールド・プレミア]
 監督:若松孝二
 出演:寺島しのぶ、大西信満、粕谷圭吾、河原さぶ、篠原勝之
 物語:第2次世界大戦下。クロカワ中尉は、満州で負傷して、両手両足、さらには、視覚と触覚以外の全機能をも失うといった状態で帰国する。村人は、彼の負傷をお国のために尽くした証と讃え、彼に献身的に尽くす妻シゲコを妻の鑑と噂し合う。しかし、当事者の2人以外、誰も知らないことがあった。それは、シゲコが芋虫のようになった夫を人知れず嬲っていることであった……。
 江戸川乱歩の短編『芋虫』の映画化。
 3大映画祭との関わり:『壁の中の秘事』(1965)とに続き、ベルリン国際映画祭コンペ部門出品は45年ぶり2度目。2008年にフォーラム部門に『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)が出品され、NETPAC賞&CICAE賞受賞。同年のフォーラム部門では『壁の中の秘事』(1965)、『ゆけゆけ2度目の処女』(1969)、『天使の恍惚』(1972)も上映された。


 ・“Greenberg” (米) [ワールド・プレミア]
 監督:ノア・バウムバック
 出演:ベン・スティラー、グレタ・ゲルウィグ(Greta Gerwig)、リス・エヴァンス、ジェニファー・ジェイソン・リー
 物語:フローレンスは、グリーンバーグ家の個人秘書で、彼女の日常は、グリーンバーグ家の人々に命じられる仕事で埋めつくされていた。そんな彼女の住まいは、小さなアパートで、ハリウッドに大きなヴィラを持つグリーンバーグ家とは対照的だった。ある日、一家が旅行で家を空けることになり、彼女は、忙しい日常から解放される。彼女がやるように言われたことは、犬のマーラーの世話をすることと、家族の中では落ちこぼれ扱いされているロジャーがやってきたら、彼の面倒をみること、だけであった。ロジャーというのは、ボスの弟で、彼は、ミュージシャンを夢見ながら、今はニューヨークで大工をして暮らしていた。しかし、そんな彼ももう40代になり、ミュージシャンへの道も行き詰っていた。久しぶりにハリウッドに帰ってきたロジャーは、運転ができないので、何かあるとフローレンスに頼ることになる。そうして彼の頼みを聞いているうちに、フローレンスは、彼が落ちこぼれなどではなく、とても魅力的な男性であることに気づいていく……。
 3大映画祭との関わり:初めて。


 ・“Howl” (米) [インターナショナル・プレミア]
 監督:ロブ・エプステイン、ジェフリー・フリードマン
 出演:ジェームズ・フランコ、ジョン・ハム、デイヴィッド・ストラザーン、メアリー=ルイーズ・パーカー
 物語:アレン・ギンズバーグの詩集“Howl”が猥褻物として押収された事件とその後の裁判に焦点を当てたドラマ。
 ジェームズ・フランコが若き日のアレン・ギンズバーグを演じる。
 ロブ・エプステインとジェフリー・フリードマンは『セルロイド・クローゼット』(1995)、“Ten Days That Unexpectedly Changed America: Gold Rush”(2006)などで知られる監督。
 サンダンス映画祭2010コンペティション部門出品作。
 3大映画祭との関わり:ベルリン国際映画祭パノラマ部門に“Common Threads: Stories from the Quilt”(1989)出品、Interfilm Award受賞。『セルロイド・クローゼット』(1995)でテディベア賞受賞。“Paragraph 175”(2000)でテディベア賞&国際批評家連盟賞受賞。コンペティション部門出品はこれが初めて。


 ・“The Killer Inside Me” (米・英) [インターナショナル・プレミア]
 監督:マイケル・ウィンターボトム
 出演:ケイシー・アフレック、ジェシカ・アルバ、ケイト・ハドソン
 物語:田舎町の保安官補ルー・フォードは、みんなから頼りにされ、愛されていた。しかし、誰も知らなかったが、彼は、内面に深刻な問題を抱えていた。近隣の町で、残忍な殺人事件が続発する。すべての証拠は、ルー・フォードが犯人であると指しているように思われたが、真実を知っているのはルー・フォード本人だけであった……。
 ジム・トンプソンの『内なる殺人者』の映画化。
 サンダンス映画祭2010 プレミア部門で上映。
 3大映画祭との関わり:バルリン国際映画祭コンペ部門出品は6度目。過去には、『イン・ディス・ワールド』(2002)で金熊賞&エキュメニカル審査員賞受賞。『グアンタナモ、僕達が見た真実』(2006)で、銀熊賞(監督賞)受賞。カンヌのコンペには3作、ベネチアのコンペには1作出品している。


 ・“Rompecabezas (Puzzle)” (アルゼンチン・仏) [ワールド・プレミア]
 監督:Natalia Smirnoff
 出演:マリア・オネット(Maria Onetto)、Gabriel Goity、Arturo Goetz、Henny Trailes
 物語:マリアは、50歳の誕生日に家族からジグソーパズルをプレゼントしてもらう。彼女は、初めてのジグソーパズルに興奮し、自分がそれに得意なことも発見する。ジグソーパズルに夢中になった彼女は、新しい作品を買いに出かけ、そこで、パズル・トーナメントのパートナー求むという張り紙を見つける。彼女は、家族がやめておけというのにも拘わらず、張り紙を張った相手に連絡を取り、その男性(彼女より年配の独身男性)と会って意気投合し、ドイツで行なわれるワールド・パズル・トーナメントに出場しようと誓う。しかし、ワールド・パズル・トーナメントに出場するには、地方大会で勝ち上がらなければならず、彼女は家族に内緒で着々と準備を整えていく。
 Natalia Smirnoffは、10年以上にわたって、キャスティング・ディレクターやアシスタント・ディレクターとしてキャリアを重ね、本作で、監督デビュー。
 3大映画祭との関わり:初めて


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 コンペ作品の国別の内訳は、ヨーロッパが11本で、アジアが5本、アメリカ画3本、南米が1本という具合になりました。
 アジア作品がやや多く、アフリカやオセアニアからのエントリー作品はありませんでした。
 ベルリン国際映画祭なので、ドイツ映画が多くなってしまうのは仕方がないのですが、今年は純粋なドイツ映画というのは1本しかなく(その1本も監督が非ドイツ系)、共同製作作品が多数を占めています。

 日本からは2年ぶりに1作品がエントリーされました。

 監督を見てみると、過去にベルリンで金熊賞か銀熊賞を受賞した監督が、ロマン・ポランスキー(金1、銀1)、Pernille Fischer Christensen(銀1)、ヤスミラ・ジュバニッチ(金1)、チャン・イーモウ(銀1)、ワン・チュアンアン(金1)、マイケル・ウィンターボトム(金1、銀1)と6人もいます。

 過去に、ベルリン国際映画祭のコンペ部門に出品したことのある監督も、オスカー・レーラー、Hans Petter Moland、Semih Kaplanoglu、Rafi Pitts、若松孝二、ロブ・エプステイン&ジェフリー・フリードマンと6組もいます。

 ベルリン国際映画祭といえば、未知の監督の作品が多いという印象がありますが、今年は新人監督作品は5作品でした。

 最初に、ラインナップを眺めた時は、ノア・バウムバック作品などアメリカからの出品作がちょっとベルリンっぽくないな、むしろベネチアっぽい(ということは少々エンタメ志向)という感じもしたのですが、そんなこともないでしょうか。

 内容としては、ベルリン国際映画祭が得意とするような、「激動の歴史を背景としたドラマチックな作品」とか「深刻な社会問題を扱った作品」は少なく、スリラーやクライム系に分類される作品が多いことに気づかされます。まあ、ベルリン、カンヌ、ベネチアといえど、以前ほど映画祭の個性は明確ではなく、どんどん均質化してきている(単に作品が完成したタイミングでエントリーされるだけに過ぎない)のかもしれませんが。

 今年の審査員は、ヴェルナー・ヘルツォーク(審査員長)、フランチェスカ・コメンチーニ、ヌルディン・ファラー(Nuruddin Farah/アフリカの小説家)、コーネリア・フロベス(Cornelia Froboess/ドイツのベテラン女優)、ホセ・マリア・モラレス(José Maria Morales/スペインのプロデューサー。アルトゥーロ・リプステインやコスタ=ガヴラス、ゴラン・パスカリェヴィッチなどの作品を手がける)、ユー・ナン(『トゥヤーの結婚』の主演女優)、レニー・ゼルウィガー。

 審査員にエントリー作品の関係者がいるのが気になりますが、まあ、ベルリンらしいと言えばベルリンらしい顔ぶれというところで、これだったらさすがのヘルツォークも独断と偏見を押し通すというわけにはいかない、という感じでしょうか。(笑)

 過去の受賞者が何人もいて、常連組もして、期待の新人もいる中で、どれが賞を獲るかは、ちょっと予想しづらいのですが、若手にチャンスを与え、製作や興行が難しそうな作品の栄誉を讃えようとするなら、受賞の可能性が高いのは次のようなところでしょうか。
 ・“Shahada”
 ・“Na Putu (On the Path)”
 ・“Eu când vreau să fluier、fluier (If I Want To Whistle、I Whistle)”
 ・“Bal (Honey)”
 ・“Shekarchi (The Hunter/Zeit des Zorns)”
 ・“Tuan Yuan (團圓/Apart Together)”

 これらの作品で、金熊賞、監督賞、審査員特別賞、脚本賞、国際批評家連盟賞などを分け合うような気がします。
 “The Killer Inside Me”のマイケル・ウィンターボトムや、何かと注目のロマン・ポランスキーにも何らかの賞が与えられる可能性があります。

 男優賞候補は多く、ジェラール・ドパルデュー、Vedat Erincin、トビアス・モレッティ、ステラン・スカルスゲルド、George Piştereanu、Rafi Pitts、凌峰(Ling Feng) 、ケイシー・アフレック、のいずれか
 一方、女優賞候補は、あまり見当たらなくて(男の映画が多いから)、イェスパー・クリステンセン、ズリンカ・ツヴィテシッチ、寺島しのぶ、マリア・オネット、のいずれかでしょうか。

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 第60回ベルリン国際映画祭の会期は、2月11日~21日です。

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 *当ブログ記事
 ・第60回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門以外のラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_9.html
 ・第60回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門以外のラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_10.html
 ・第60回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門以外のラインナップ その3:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_11.html
 ・第60回ベルリン国際映画祭 受賞発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201002/article_36.html

 ・2009年度映画賞レース スケジュール表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_32.html

 ・第59回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200901/article_35.html
 ・第59回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門以外のラインナップ!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200901/article_36.html
 ・第59回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門以外のラインナップ! その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200901/article_37.html
 ・第59回ベルリン国際映画祭 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200902/article_17.html

この記事へのコメント

ホワイト
2010年02月11日 18:39
若松監督の過去作品はコンペティションではありませんよ。
連合赤軍もフォーラム部門です。
若松監督にとって、生涯初のコンペティション部門へのノミネートです。
umikarahajimaru
2010年02月11日 20:18
ホワイトさま
失礼しました。
『連合赤軍』は勘違いでした。訂正します。
しかし、『壁の中の秘事』は、確かにコンペ部門に選出されています。映画祭公式サイトのアーカイブには載っていませんが、あれはコンプリートではないので。
ホワイト
2010年02月13日 13:57
umikarahajimaruさま
コメントありがとうございます。
確かに壁の中の秘事はコンペだったようですね。失礼いたしました。
いつもブログ読ませて頂いています。これからも更新お願いします。
いよいよベルリンが開幕しました。
朗報が日本に届くことを祈っています。

ありがとうございました。

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