米国アカデミー賞2010 外国語映画賞候補 9作品発表!

 米国アカデミー賞2010 外国語映画賞 候補9作品が発表になりました。(1月20日)

 ・アルゼンチン:『瞳の奥の秘密』“The Secret in Their Eyes (El secreto de sus ojos)” 監督:ファン・ホセ・カンパネラ(Juan Jose Campanella)
 物語:ベンジャミンは、ブエノスアイレスの法廷で長らく秘書を務めていたが、引退して、小説を書こうと思っていた。それは、激動の70年代に実際に起こった事件を基にしたものだった……。
 トロント国際映画祭2009 SPECIAL PRESENTATIONS部門で上映。
 ハバナ映画祭2009 監督賞・男優賞・音楽賞・審査員特別賞・観客賞受賞。
 第24回ゴヤ賞10部門ノミネート(作品賞・監督賞・主演男優賞・新人女優賞・脚色賞・撮影賞・編集賞・美術賞・作曲賞・スペイン語外国映画賞)。
 日本では2009スペイン映画祭で上映。

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 ・イスラエル:“Ajami” 監督:Scandar Copti、Yaron Shani
 物語:ヤッファのAjamiは、人種のるつぼで、ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒が入り乱れて暮らしていた。13歳のナスリとその兄オマールは、叔父が名門の一員を痛めつけたのを見た後、びくびくして暮らしていた。パレスティナ難民であるマレクは母の手術代を稼ぐために違法労働をしていた。パレスティナ人のビンジはユダヤ人のガールフレンドと明るい未来を夢見ていた。ユダヤ人の警察官ダンドは、兵士になった後、行方不明になった弟を捜していた……。
 2009年イスラエル・アカデミー賞9部門ノミネート。
 カンヌ国際映画祭2009 監督週間上映作品。カメラドール・スペシャル メンション。
 エルサレム映画祭2009 Wolgin Award長編部門 作品賞受賞。
 ロンドン映画祭2009 第1回監督賞

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 ・オーストラリア:“Samson and Delilah” 監督:Warwick Thornton
 出演:Rowan McNamara 、Marissa Gibson 、Mitjili Gibson
 物語:サムソンとデリラは、オーストラリア中部の砂漠地帯に住む10代のアボリジニ。デリラは、病気のナナの面倒を見ていたが、ナナが死んで、悲嘆にくれてしまう。サムソンは、デリラを助けたかったが、彼自身もトラブルを抱えていた。結局、2人は、これまで住んでいたコミュニティーを一緒に出ることにする。彼らの向かったアリススプリングスは、これまで暮らしていたコミュニティーより遥かに危険が多いところで、彼らは橋の下を隠れ場所に決めるが、彼らに希望はなく、未来は暗澹としていた。
 カンヌ国際映画祭2009 カメラドール受賞
 オーストラリアIF賞2009 作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚本賞・音楽賞受賞
 オーストラリア映画協会賞2009 作品賞・監督賞・脚本賞・音響賞受賞

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 ・オランダ:“Winter in Wartime(Oorlogswinter)” 監督:Martin Koolhoven
 物語:1945年1月。オランダはナチの占領下にあった。ミシェルは、ズボーレ近くの村に住む13歳の少年で、彼は、レジスタンスのために何かしたいと考えていたが、父親はそれを望んでいなかった。ある時、友だちのディルクからレジスタンスの元に手紙を届けてくれないかと頼まれたミシェルは、喜び勇んでそれを引き受けるが、手渡す相手は彼の目の前でドイツ兵に射殺されてしまう。封筒の中には、地図が入っており、そこに行くと負傷したイギリス人が身を隠していた……。
 オランダ映画祭2009 主演男優賞(Martijn Lakemeier)、助演男優賞、美術賞
 ローマ国際映画祭2009 ヤング審査員賞/マルクス・アウレリウス銀賞都会のアリス賞12歳以上部門

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 ・カザフスタン:“Kelin (Келін)” 監督:Ermek Tursunov
 物語:ある女性が結婚させられる。それは、結婚相手の年老いた母親と弟の面倒を見させるためらしかったが、無理強いされた結婚であったのにもかかわらず、彼女は幸せを感じるようになる。しかし、そんな幸せも長くは続かなかった……。
 トロント国際映画祭2009、釜山国際映画祭2009上映作品。

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 ・ドイツ:“The White Ribbon ( Das weise Band)”(独・オーストリア・仏・伊) 監督:ミヒャエル・ハネケ
 物語:事件後、何年も経った後、教師の回想という形で、物語が語られる。1913年から14年にかけて、北ドイツの、厳格な伝統に守られた村に不可解な出来事が次々と起こる。家の入り口の木の間にひもが張られていたことから医師が落馬する。荘園に不審火が出て、納屋が焼け落ちる。男爵の息子が行方不明になり、手足を縛られ、尻を鞭打たれた状態で発見される。ハンディキャップを抱える助産婦の子供が木にくくりつけられた姿で発見され、その頬には天罰を思わせる刻印が刻まれている。教師が調べていくうち、村の暗い秘密にたどりつき、主犯格らしい人物も浮かんでくるが、やがて、ヨーロッパ全土を巻き込む第一次世界大戦という狂乱の波に、この村も否応なくのみ込まれていく……。
 カンヌ国際映画祭2009 パルムドール、国際批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンション
 ノルウェー国際映画祭2009 The Andreas Award
 ヨーロッパ映画賞2009 作品賞・監督賞・脚本賞受賞。

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 ・フランス:“A Prophet (Un prophète)”(仏・伊) 監督:ジャック・オーディアール
 物語:アラブ系の青年がフランスの刑務所に入れられる。彼は、そこを牛耳っているコルシカ系マフィアのボスと出会い、次々に出される彼のミッションをクリアして、次第に信頼を勝ち得ていく。一方で、彼自身の秘密の計画も着々と準備を整えていく。
 出演:ニエル・アレストラップ、Alaa Oumouzoune、アデル・ベンチェリフ、Tahar Rahim
 カンヌ国際映画祭2009 コンペティション部門出品。グランプリ受賞。
 ロンドン映画祭2009 グランプリ受賞。
 ヨーロッパ映画賞2009 最多6部門ノミネート(作品賞・男優賞・脚本賞・撮影賞・技術部門)。男優賞候補はTahar Rahim。技術部門の対象はサウンドデザインで、対象者はブリジット・テイランディエ(Brigitte Taillandier)、Francis Wargnier、ジャン=ポール・ユリエ(Jean-Paul Hurier)、マルク・ドワーヌ(Marc Doisne)。
 ルイ・デリュック賞2009受賞。
 ヨーロッパ映画賞2009 最多6部門ノミネート(作品・監督・男優・脚本・撮影・技術)、男優賞受賞。

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 ・ブルガリア:"The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner(Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade)" 監督:Stephan Komandarev
 物語:アレックスは、事故で、記憶障害となり、自分の名前すらも出せなくなってしまう。彼を心配した祖父は、わざわざブルガリアからドイツに出向き、アレックスをドイツからブルガリアに連れ戻す旅をすることで、彼の記憶を取り戻そうとする。ヨーロッパの半分を横断する間、2人はよくバックギャモンをしたが、だんだんとアレックスの記憶は甦り、人生とはサイコロを手にチャンスと技術を生かしながら先に進んでいくゲームのようなものであるということに気づいてくる。

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 ・ペルー:『悲しみのミルク』“La teta asustada(The Milk of Sorrow)” 監督:クラウディア・リョサ(Claudia Llosa)
 物語:主人公のファウスタは、政情不安からゲリラやテロが横行した時代のペルーで、レイプによって生まれた娘で、男性に対して、異常に恐怖心を抱いていた。ある時、彼女の唯一の心の拠り所であった母が死んでしまうが、彼女は、その葬儀の費用も工面できず、音楽家の女主人の家に奉公に出ることになる。女主人は、ファウスタの口ずさむ歌が気に入って、1曲教えてくれるごとに、真珠を1粒あげると約束してくれる。
 2006年の初監督作品“Madeinusa”がサンダンス映画祭2006コンペティション部門に出品され、ロッテルダム国際映画祭2006で国際批評家連盟賞を受賞したクラウディア・リョサの監督第2作。
 ベルリン国際映画祭2009 金熊賞、国際批評家連盟賞
 ハバナ映画祭2009 最優秀作品、芸術貢献賞(Susana Torres、Patricia Bueno)
 東京フィルメックス2009、2009スペイン映画祭で上映。

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 フランスは、ノミネートされれば、最多ノミネーション記録を35回に更新されます。

 イスラエルは、ノミネートされれば3年連続ノミネートとなります。

 ペルーとオーストラリアは、ノミネートされればともに初ノミネートです。

 韓国の『母なる証明』、タイの『ベスト・オブ・タイム』、ルーマニアの“Police, Adjective”がノミネートされれば、それぞれの国で外国語映画賞初ノミネートとなるはずだったのですが、今回もこの段階で敗退しました。

 チェン・カイコーの『花の生涯-梅蘭芳』、ジュゼッペ・トルナトーレの『バーリア』、レオン・ダイの『あなたなしでは生きていけない』などもこの時点で落選しました。

 日本の『誰も守ってくれない』もノミネートされず、科学技術部門を除けば、今回の米国アカデミー賞で日本人がノミネートされる可能性があるのは、あとは長編アニメーション賞だけ(『崖の上のポニョ』がノミネートされるかどうか)となりました。前哨戦の結果から考えると、それもほとんど望み薄ですが、アカデミー賞は過去の受賞者に敬意を表して、その新作をノミネーションに入れることはする、ということをしないでもなく、また、本年度の長編アニメーション賞はノミネーション作品が5つになるのではないかとも考えられているので、まだわずかの可能性は残されています。(俳優部門、衣裳デザイン賞、メイキャップ賞、長編ドキュメンタリー賞、短編アニメーション賞、短編映画賞、短編ドキュメンタリー賞といった米国アカデミー賞2010のすべての部門で、日本人や日本作品がノミネートされないことはもう既に確定してしまっています。)

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 各国代表決定の記事で、ノミネーション予想として65作品の中から8作品をあげて置きましたが、その中から4作品がここまで残りました。

 ヨーロッパの人気で言うと、“The White Ribbon ( Das weise Band)”がトップで、その次が“A Prophet (Un prophète)”ですが、これらが受賞する可能性は低いのではないかというのが、私の予想です。
 というのは、概して批評家(にのみ)評価の高い作品はアカデミー賞を受賞しづらいという傾向性があるからで、そうなる原因としては、投票するために外国語映画賞ノミネート作品を全部観るというのは、時間に余裕のあるお年寄りの会員ばかりで、彼らの好みとするのは、批評家筋が推すのような難解であったり、作家性が強かったりする作品ではないからだ、と言われています。

 「批評家(にのみ)評価の高い作品」の代表格は、カンヌ国際映画祭パルムドール作品ですが、過去のデータを見ると、カンヌ国際映画祭パルムドール作品がアカデミー賞外国語映画賞のノミネーションに残ったのは、1994年の『さらば、わが愛/覇王別姫』まで15年以上もなく、ましてアカデミー賞外国語映画賞受賞作となると、1989年の『ペレ』まで遡らないとありません。

 だから、全米の映画批評家協会賞でもなかなか外国(語)映画賞を受賞できない“The White Ribbon ( Das weise Band)”がアカデミー賞外国語映画賞を受賞する確率はかなり低いように思います。ぎりぎりでパルムドール作品として17年ぶりのノミネートを果たすというのがいいところなのではないでしょうか。

 前哨戦のデータとしては、パームスプリングス国際映画祭で賞を受賞した作品が、アカデミー賞外国語映画賞も制すということがあって、過去に『キャラクター/孤独な人の肖像』『ライフ・イズ・ビューティフル』『空を飛ぶ夢』『善き人のためのソナタ』『おくりびと』がここで観客賞を受賞し、その後、アカデミー賞外国語映画賞を受賞しているという結果が出ています。
 その傾向性が今年も有効であるとするなら、今年は、ブルガリア映画“"The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner”が最有力ということになります。

 ノミネーション枠で考えると、5つのノミネーション枠のうち、ヨーロッパ映画は3作品で、非ヨーロッパ作品が2作品という組み合わせが基本で、稀にヨーロッパ映画が2作品になったり、4作品になったりしています。選考委員も作品のバランスを考えたりするのでしょう。

 以上のデータや傾向性から考えると、本年度のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品は、
 ・ドイツ映画“The White Ribbon ( Das weise Band)”
 ・フランス映画“A Prophet (Un prophète)”
 ・ブルガリア映画“The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner(Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade)”
 ・イスラエル映画“Ajami”
 ・オーストラリア映画“Samson and Delilah”

 受賞作として、わかりやすくて、多くの人に受け入れられやすいドラマチックな作品を、と考えるとすれば、それは“The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner(Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade)”か“Samson and Delilah”でしょうか。

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 *当ブログ記事
 ・米国アカデミー賞2010 外国語映画賞各国代表65作品:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_11.html

 ・パームスプリングス国際映画祭2010 結果発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201001/article_32.html

 ・米国アカデミー賞2010 メイキャップ賞 セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201001/article_17.html
 ・米国アカデミー賞2010 視覚効果賞 セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/201001/article_7.html
 ・米国アカデミー賞2010 視覚効果賞 候補発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_21.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編映画賞 セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_8.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編アニメーション賞 セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_34.html
 ・米国アカデミー賞2010 長編ドキュメンタリー賞 セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_31.html
 ・米国アカデミー賞2010 長編アニメーション賞セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_21.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_8.html
 ・米国アカデミー賞2010 歌曲賞候補 63曲発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_29.html

 ・2009年度映画賞レース スケジュール表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_32.html
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html
 ・2009年度映画賞の結果をまとめてみました! アメリカ編 前半戦:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_43.html

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