『イングロリアス・バスターズ』に関するあれやこれや

 『イングロリアス・バスターズ』を観て、いくつか確認したいことがあって、パンフを購入しました。
 確認したかったことのいくつかはパンフに載っていたんですが、そうでないこともいろいろありました。

 パンフには、4ページを割いて「『イングロリアス・バスターズ』トリビア30」というのが載っていました(ほとんどIMDbかWikipediaに載っていることばかり)が、ここでは、パンフに載っていなかったことを、ちょっとだけ書き出してみたい、と思います。

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 ◆スクリプト
 映画では、英語のほかに、ドイツ語、フランス語、イタリア語が使われていますが、オリジナルの台本は英語のみで書かれています。「台詞はフランス語で、英語字幕」という指定が書かれていたりします。

 My Movie Script:http://www.mymoviescripts.com/moviescript/Inglorious.pdf

 ※カットされたシーンも書かれています。(2008年7月2日版)

 ◆『死の銀嶺』“Die weiße Hölle vom Piz Palü(White Hell of Pitz Palu)”(1929/独) 監督:G・W・パブスト、アーノルト・ファンク 主演:レニ・リーフェンシュタール

 ヒコックス中尉のドイツ語がおかしいのは、ピッツ・パリュー出身だからで、あそこではみんなこんな風ですよといい、あそこで撮影されたリーフェンシュタールの映画でも、スキーのシーンでは家族みんなで出ていたんですよ、というシーンで引き合いに出された映画。
 または、フレデリックがショシャナと出会った時に、ショシャナの映画館でかかっていた映画。
 そのほか、スクリプト上には、
 PROJECTION BOOTH
 like the German heroine in one of Riefenstahl's mountain films,
 Shosanna CLIMBS UP the 35mm film projector, like it was Piz Palu
 という記述もあります。(ラスト近く)

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 ◆数の数え方

 「ドイツ人なら、3を数えるのに、親指から中指(“thumb to index”)を立てるが、ヒコックス大尉は、人差指から薬指(“index to pinky”)を立てた(ためにイギリス人であることがばれた)。」というような台詞が本編中にありましたが、ネット上で調べた限りでは、そのような国民性の違いを示す記述はみつかりませんでした。ま、ホントのところは個人差があると思いますが。

 ◆ショシャナのタバコ

 アメリカ映画では、悪(または罪)の要素を持っている登場人物以外、タバコを吸ったりはしなくなりましたが、ショシャナにはタバコを吸っているシーンがあります。
 ショシャナたちを匿っていたラパディットもパイプをやり、ランダ大佐もパイプをやります。

 ◆『ヨーク軍曹』(1941/米) 監督:ハワード・ホークス

 フレデリックが、自分のことが映画になるとショシャナに話す時に、引き合いに出す、第一次世界大戦での英雄の実話を映画化した作品。
 ドイツ人であるフレデリックが、第一次世界大戦でドイツ兵を殺害・捕虜にした米兵の名前を自分になぞらえて出すというのはちょっと考えにくいことですが、それを別にしても、1944年の段階で、フランス人やドイツ人がアメリカ映画『ヨーク軍曹』を観ていたとは考えにくいようです。
 IMDbによれば、『ヨーク軍曹』のフランス公開は1945年4月ということになっています。(ちなみに、日本公開は1950年)

 ◆ランダ大佐がカフェで食べるスイーツ:シュトゥルーデル

 オーストリア発祥のパイで、最も古いレシピは1696年のものが残っているという。18世紀ハプスブルグ朝に広く広まった。クリームを添えることも多い。
 中にはいろんなものが詰められるらしいのですが、映画の中で使われたのは(少なくとも台本上は)リンゴでした(要するにアップル・パイ)。
 ランダ大佐がシュトゥルーデルを食べるのは、(ミルクを飲むシーンと同様に)こわもてでありながら、甘党である、ということを示すギャグ、でしょうか。
 にも拘わらず、最後にその上でタバコをもみ消すのは、お国のものとは味が違っていたためか?(あるいは、単に、非情であることを示すためでしょうか?)

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 ◆"If the shoe fits...you must wear it"(ランダ大佐が酒場で拾った靴をブリジットに履かせた後で言う台詞。)
 ことわざとしては、「その評言に思い当たることがあれば、自分のことと思いなさい」という意味でありながら、ランダ大佐は文字通り(ぴったり合えば、その靴の持ち主だということだ)に使う。
 映画本編では、確か、ランダ大佐が、本来の使い方をアルドに指摘されるシーンがあったように思いましたが、公表されているスクリプトには、そうした箇所は見つけられませんでした。

 ◆映画館 The Cinema Marquee内に貼られていた映画のポスター

 ・『犯人は21番地に住む』“L'assassin habite... au 21”(1942/仏) 監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー

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 ・“Domino”(1943/仏) 監督:Roger Richebé

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 ◆ゾーイ・ベル
 ショシャナとブリジットのスタントとして出演。
 ゾーイ・ベルの出演シーンはどこなのかということは、世界中の映画ファンの間で、囁かれているわけですが、ゾーイ・ベル本人が語っていることは、以下のようなことくらいで、ドイツで撮影したことと、メラニー・ロランとダイアン・クルーガーの2人のスタントをこなしたこと以外、具体的なシーンについては明らかにしていません。
 "Inglorious Bastards," says Bell, "I'm stunting on that. I'm doubling two of the leads on that. Shot in Germany, hung out with Quentin again…"
 “I doubled both the girls, Melanie and Diane, but I don't wanna give too much away if you haven't seen the movie. I really love working with Quentin and the people on that crew- even the cast this time around were like family to me. I knew this movie was going to be awesome from the moment I read the script. I was so excited for Quentin and knew I just wanted to be a part of it, you know? He was like, "Of course! I've got girls in it. Let's go!" It was an epic movie and it's proving successful in the box office which is fantastic. I'm real happy for him.”
 そんなにスタントが必要と思われるシーンもないので、それぞれの最後のシーン(あるいは、銃で撃たれるシーン)がそれでしょうか。
 ショシャナにはもう1人スタントが用意され、フランセスカ・モンディーノにもスタントが用意されています(たぶん銃で撃たれるシーン)。
 ちなみに、ゾーイ・ベルは、『イングロリアス・バスターズ』で、カンヌや全米プレミアにも出席しています。

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 ◆エンド・ロールで流れる曲
 タヴィアーニ兄弟の『アロンサンファン/気高い兄弟』“Allonsanfàn”(1974/伊)のテーマ曲「恐水病と舞踏病」(作曲:エンニオ・モリコーネ)。『イングロリアス・バスターズ』では、若干アレンジが加えられていたように思いましたが、違うでしょうか。



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 ◆カットされたシーン

 ※ ヒトラーがバスターズにつかまって生き延びた男に話を聞くシーンと、ショシャナとフレデリックの出会いのシーンの間に書かれていたシーン
 ※ マダム・ミミュー役はマギー・チャン

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 ドリー・ショットで、映画を観ているショシャナのクローズ・アップ。

 字幕が現れる。“1941年 パリ ショシャナの家族の虐殺から2週間後”

 ドイツのミュージカル映画のクライマックスの音が聞こえる。
 観客席に光線が流れている。
 ショシャナは、どこから盗んできた看護婦のユニフォームを着て、座っている。
 コートを受け取った客たちが、ぞろぞろと外に出る。

 3人の人。

 映画館マルケー(パリ)の外、夜
 客が映画館の中から出て、明かりが落とされる。
 フシュマルク in “MADCAP IN MEXICO”(メキシコの向こう見ず)」

 映写室の外
 黒人のフランス人(後で彼がマルセルという名前であることがわかる)が映画館の映写技師を務めている。しばらく彼を映す。彼は、映写機からフィルムを外して、巻き上げる。

 観客席
 ショシャナのクローズ・アップ
 誰もいない観客席に彼女だけが座っている。
 映画館主(魅力的なフランス人女性、あとで彼女の名前がマダム・ミミューであることがわかる)がボックス席に現れ、客席に独りぽつんと座っている少女を見つける。
 台詞はフランス語で、英語字幕が出る。

 マダム・ミミュー:夕べに閉めてから大分経つというのに、こんなに若いお嬢さんがどうしたのかしら。何かわけありなんだと思うけれど、どうかしまして?
 ショシャナ:今晩、ここに泊めてもらえませんか?
 マダム・ミミュー:じゃあ、看護婦さんじゃないということ?
 ショシャナ:ええ。
 マダム・ミミュー:だとしたら、どうしてそんな格好をしてるの? ご家族はどこ?
 ショシャナ:殺されました。

 シーン31
 マダム・ミミュー:じゃあ、あなたは戦争孤児なのね?
 ショシャナ:ナンシーにいました。そこで見つかってしまって。
 マダム・ミミュー:それは悲劇なのね?
 ショシャナ:ええ。
 マダム・ミミュー:悲劇はいやね。このごろパリにいる人はみんなそういう話を持っているものよ。あなたの邪魔はしないけど、私を巻き込まないでほしいわ。
 ショシャナ:私は機械を動かせます。
 マダム・ミミュー:何の機械?

 ショシャナは、パントマイムで映写機にフィルムをかけるしぐさをしてみせる。

 ショシャナ:映画を上映する機械のことです。
 マダム・ミミュー:映写機のこと? もちろん私は映画館主で、映写機を扱ってるけど。
 ショシャナ:知っています。見てましたから。

 回想
 映写室の方を見つめるショシャナのクローズ・アップ。
 映写室ではマダム・ミミューが映写機を操作している。

 ショシャナにもどる
 ショシャナ:私に教えてください。映画を映す機械のことを。今それをやっているのは、あなたと黒人だけでしょう。あなたには助けが必要なはずです。

 シーン40
 マダム・ミミュー:私は、これまで国家の敵を匿っていて、殺された人を6人知っています。7人目にはなりたくないの。パリに来て、どのくらい経つの?
 ショシャナ:1週間と少しです。
 マダム・ミミュー:つかまらないでどうやって生き延びたの?
 ショシャナ:屋根の上で眠ってました。
 マダム・ミミュー:それはまたいい思いつきね。どんな感じだった?
 ショシャナ:寒かったです。
 マダム・ミミュー:(笑って)わかるわ。
 ショシャナ:いいえ、たぶん。
 マダム・ミミュー:そうかもしれないわね。
 マダム・ミミュー:あなたは35ミリの映写機を操作することはできないけど、私に教えてほしい、ここで働くために、私の映画館を隠れ家として使うために、そういうことでいいかしら?
 ショシャナ:はい。
 マダム・ショシャナ:あなたの名前は?
 ショシャナ:ショシャナです。
 マダム・ショシャナ:私は、マダム・ミミューよ。マダムと呼んで。ここは映画館で、戦争孤児を匿う場所ではない。あなたの言ったことが本当だとしてだけど。あなたが本当に優秀ならあなたを使いましょう。本当に優秀なのね?
 ショシャナ:はい、マダム。
 マダム・ミミュー:それを見せてもらいましょう。

 ディゾルブ

 完璧にエッフェル塔が描かれたパリの街の愛らしいエンピツ画が示される。
 その上に“1944年 パリ”

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 ◆『イングロリアス・バスターズ』に関するトリビア
 劇場パンフに載っていなくて、IMDbに載っていることから――

 ・クエンティン・タランティーノは、『キル・ビル』以前から『イングロリアス・バスターズ』の脚本にとりかかっていたが、いい結末が思いつかず、『パルプ・フィクション』以来暖めていた、ユマ・サーマンのための映画『キル・ビル』を先に撮ることにした。

 ・クエンティン・タランティーノは、この映画を戦争映画であると同時に、マカロニ・ウェスタンとして考えていた。

 ・この映画の最初のタイトルは、"Once Upon a Time in Nazi-Occupied France"だったが、それは結局、第1章のタイトルにつけられることになった。

 ・ヒコックス大尉の役は、サイモン・ペグの予定だったが、スケジュールが合わず、降板した。ヒコックス大尉役には、ティム・ロスの名前が挙がったこともあるという。

 ・フランセスカ・モンディーノの役は、クエンティン・タランティーノがジュリー・デレファスのために書いた役で、彼女は『キル・ビル』でも同じような役を演じている。

 ・イーライ・ロスが演じたドニー・ドノウィッツのドノウィッツとは、タランティーノが脚本を手がけた『トゥルー・ロマンス』のプロデューサーの苗字である。

 ・Babe Buchinskyという役で、マイケル・マドセンが出演する予定になっていた。

 ・ランダ大佐役にはレオナルド・ディカプリオの名前も挙がったが、タランティーノがドイツ語ができる俳優にこだわったので、立ち消えになった。

 ・出演者候補にはエディー・マーフィーの名前が挙がったこともあるらしい。

 ・ブラッド・ピットとタランティーノが直接組むのは初めてだが、ブラッド・ピットは、タランティーノが脚本を書いた『トゥルー・ロマンス』に出演している。

 ・マイク・マイヤーズが演じるフェネク将軍のフェネクとは、女優エドウジェ・フェネシュ(Edwige Fenech)へのオマージュ。彼女は、タランティーノがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、イーライ・ロスが監督した『ホステル2』に出演している。

 ・ブラッド・ピット演じるアルド・レインという名前は、ハリウッド俳優アルド・レイと、『ローリング・サンダー』(1977)の登場人物チャールズ・レインの名前を掛け合わせたものである。アルド・レイの元妻ジョハンナ・レイは、本作のキャスティング・ディレクターである。

 ・ドイツでの宣伝に当たっては、鉤十字はすべて取り除くかカバーがかけられるかした。ドイツでは鉤十字の使用は、歴史の正確な再現の目的以外には使用を禁じられているため。

 ・イーライ・ロスは、“ユダヤの熊”を演じるために、筋肉を35ポンド増やし、アソシエイト・プロデューサー、ピラー・ザボーンの父が営むビバリーヒルズの床屋で髪をカットした。

 ・映画館が燃えるシーンでは、テストでは400度だったが、実際には1200度まで上がり、制御不能になった。タランティーノは、防火機能のついた椅子のついたクレーンに乗って撮影していた。担当者は、後15秒長く撮影していたら、鉄の骨組みも溶け出し、俳優もやけどしただろうと語っている。幸いに、イーライ・ロスとオマー・ドゥームは軽いやけどで済んでいる。

 ・『イングロリアス・バスターズ』の全米封切は、ロバート・ロドリゲスの“Shorts”と同じ日だった。

 ・プロデューサーのハイヴェイ・ワインスタインは、タランティーノにあと40分映画を短くしろと言ったと噂されているが、ワインスタインは、通常であれば編集に6ヶ月かけるところを、カンヌに間に合わせるために6週間しかなかったことは認めているものの、噂自体は否定している。実際、劇場公開版は、カンヌ・プレミア版よりも1分長い。(?)

 ・ヴィルヘルム・ウィキ(Wilhelm Wicki)という名前は、G・W・パブスト(Georg Wilhelm Pabst)とBernhard Wicki(オーストリアの男優)へのオマージュ。

 ・最初に頭皮を剥がれるナチの死体は、タランティーノ本人から型を取った模型である。

 ・映画内映画『国家の誇り』“Nation's Pride”の中で、"I implore you, we must destroy that tower!"(お願いだ、あの塔を倒してくれ)と叫んでいるアメリカ兵の声)はタランティーノが演じている。

 ・映画内映画『国家の誇り』“Nation's Pride”のポスターは、当時の検閲の認可印まで含めて正確に作られている。デザインもあの時代風で、“Film Posters of the Third Reich”(第3帝国時代の映画ポスター)という本を参考にしてデザインされている。

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 ・マイケル・ファスベンダーは、ドイツ人とアイルランド人のハーフで、ドイツで生まれ、アイルランドに育ち、現在はロンドンに暮らしている。だから、母語がドイツ語で、第一外国語が英語であり、流暢なドイツ語が話せるが、それを隠して、わざと流暢なドイツ語が話せないイギリス人(ニセ・ドイツ人)を演じている。

 ・ランダ大佐演じるクリストフ・ヴァルツにとって、『イングロリアス・バスターズ』は初めてのアメリカ映画である。

 ・最初の編集では3時間10分あったのを、タランティーノとサリー・メンケが公開の2日前までに現在の長さに編集し直している。

 ・ショシャナ・ドレフュスのドレフュスは、フランセスカ・モンディーノ役を演じたジュリー・ドレフュスの名前にちなんでいる。

 ・ショシャナの最後のドレスは、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『ベロニカ・フォスのあこがれ』(1982)の衣裳に似ている。

 ・ショシャナが女優リリアン・ハーヴェイの名を口にした時、ゲッペルスは「私の前では二度とその名を口にするな」と言うが、それは、リリアン・ハーヴェイが、ユダヤ人振付師Jens Keithをスイスに逃がして、自らも1939年にドイツから去ったから。

 ・アルドとランダ大佐の部屋に聞こえてくるOSS将校の無線の声は、ハーヴェイ・カイテルが演じている。

 ・Kliestの声は電話でしか聞こえないが、それを演じているのは、ドイツ人俳優Christian Brücknerで、彼は、『パルフ・フィクション』でハーヴェイ・カイテルの吹替えを担当している。

 ・ランダ大佐が、ラパディット家でくゆらすパイプは、Calabash Meerschaum、通称シャーロック・ホームズ・パイプと呼ばれるものである。

 ・ボー・スヴェンソン(Bo Svenson)は、アメリカ人大佐役でわずかに顔を見せているが、彼は、本作の元になった『地獄のバスターズ』(1976)にも出演している。

 ・本作で、ゲッペルスを演じたシルヴェスター・グロートがゲッペルスを演じるのは2度目。(前回は『わが教え子、ヒトラー』(2007/独)) 本作でヒトラーを演じたマルティン・ウトケは『ローゼンシュトラッセ』(2003/独・オランダ)でゲッペルスを演じたことがある。

 ・タランティーノのトレードマークの1つである“すくみ”(Mexican stand-off)が酒場でのシーンで2度も出てくる。一度目は、ヒコックス大尉とヘルシュトローム大佐とスティグリッツがテーブルの下で銃を向け合うシーン、もう1つは、その数分後で、アルドとヴィルヘルム大尉が店の中と店の出口とで銃を向け合うシーン。アルドとヴィルヘルム大尉は“すくみ”状態について会話も交わす。

 ・オマー・ウルマーの名前は、エドガー・G・ウルマーにちなんで名づけられている。

 ・ブラッド・ピットが演じたアルドと、『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』のトリスタンとは共通点が多い。どちらもドイツ兵と戦い、敗者の頭の皮をはぎ、月光に誓いを立てる。

 ・ヒトラーの後ろで、ヒトラーの肖像を描いているのはサム・レヴィン(Samm Levine)。

 ・ドイツのTVコメディアンVolker Michalowskiが、酒場のゲーム・シーンに顔を出している。

 ・酒場のゲームで名前が出てくるマタハリは第一次世界大戦での二重スパイだが、そのテーブルのすぐそばに現在(第二次世界大戦)の二重スパイ、ブリジットが座っている。

 ・酒場のゲームで出てくる「キング・コング」は、ヒトラーが好きだったことで知られる映画の1つ。

 ・タランティーノとブラッド・ピットが会ったのは、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーのフランスの住まいChateau Miravalであるが、ブラッド・ピットが出演をOKするまでにPink Floyd Roseのボトルが5本も空になった。

 ・アルドは、この映画の予告編でも本編でも、最初は(カナダ兵とアメリカ兵で構成される)第一特殊任務部隊Black Devilのユニフォームを着ている。

 ・ショシャナの役は、草稿ではもっと活動的なレジスタンスで、ナチのブラック・リストにも載ってしまうほどの設定だったが、『キル・ビル』を終えたタランティーノが、それでは復讐ものとしてあまりにも『キル・ビル』と似てしまうと考えて、よりリアルな設定に書き直した。

 ・Soenke Möhringは、Pvt. Butzと、フレデリックとショシャナのいるビストロにフランス人ガール・フレンドと一緒にやってくるゲシュタポの将校Walter Frazerの2役を演じている。

 ・タランンティーノは、裸足好きで、ショシャナの最後のシーンも裸足である。

 ・ドイツのパンク・バンド"Die Ärzte" (the doctors)のドラマー、Bela B. Felsenheimer(タランティーノ・ファン)が、プレミアの案内役として出演している。

 ・「ユダヤの熊」のバットに刻まれた名前の1つにアンネ・フランクがある。

 ・元々は「ユダヤの熊」のバットが映し出されるシーンがあり、カンヌ上映版にはそれがまだ存在した。

 ・アルドのかぎ煙草入れには、イングロリアス・バスターズの鷲の記章が入っている。

 ・Cloris Leachmanは、ボストンに住むユダヤ系の老女ミセス・ヒンメルシュタインを演じ、ドニー・ドノウィッツと一緒にお茶を飲み、バットにサインするシーンが撮影されたが、本編ではカットされている。

 ・ダニエル・ブリュールは、スペイン語版の『イングロリアス・バスターズ』では自らの役を自分で吹替えている。

 ・『イングロリアス・バスターズ』は、タランティーノ作品としては、『パルプ・フィクション』以来のヒット作となった。

 ・ドノウィッツが第2章で口にする“Teddy Ballgame”は、現在も存命の大打者テディ・ウィリアムのニックネームの1つで、彼は、第二次世界大戦と朝鮮戦争で、2度も野球のキャリアを中断させている。

 ・ユダヤ・ハンターを演じているクリストフ・ヴァルツの息子は、実は、ラビである。

 ・ショシャナとランダ大佐が再会するレストランのシーンで聞こえてくるのは、『エンティティー 霊体』(1981)でも使われたチャールズ・バースタインの曲である。

 ・映画館が爆発するシーンで聞こえる絶叫は、『デス・プルーフ』でカート・ラッセルが発したものを使っている。

 ・スティグリッツのナイフには、“Meine Ehre Heisst Treue”(忠節こそわが命)と刻まれている。

 ・ティル・シュヴァイガーには、4行分の台詞しかなく、それはすべて第4章にある。

 ・タランティーノは、ロッド・テイラーに個人的にチャーチル役を頼みに行ったが、彼は、「池をはさんだ向こうにはアルバート・フィニーが住んでいて、彼なら6~7回チャーチルを演じたことがあるはずだ」と答えた。それに対し、タランティーノは「あなたが断るなら、アルバート・フィニーに頼みに行きますよ」と言ったという。

 ・アルドの首にある傷跡は、1920年代か30年代にリンチか罰を受けてできたものらしい。

 ・ランダ大佐がブリジットを絞め殺す時に映る手は実はタランティーノの手である。

 ・ナチ向けのショシャナの映画についえは、メラニー・ロランはフランス語にすべきだと主張したが、タランティーノは英語の方が迫力がある、と主張して、英語で撮影された。

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 予想外に長くなってしまったので、本当は「カットされたシーン」の部分は、オリジナル・スクリプトのコピーも添えていたのですが、入りきらなくなり、カットすることになってしまいました。

 ところで、こんなに長い記事を書くところを見ると、『イングロリアス・バスターズ』にさぞ満足したんじゃないかと思われるかもしれませんが、実は、全然そんなことはなかったですね。『キル・ビル Vol.1』や『デス・プルーフ』の方が遥かに面白くて、興奮したように思います。まあ、タランティーノ作品なので、いろいろ細かく見ていくことはできる作品に仕上がってはいますが。

 『イングロリアス・バスターズ』に私が大して面白く思えなかった理由として考えられるのは、たぶん、この映画が単に「正義者面した人殺し」の映画でしかないからで、北野武の『座頭市』のつまらなさに通じるものを感じてしまいます。

 また、この映画は、アカデミー賞脚本賞の最有力候補なわけですが、ほとんど同じ作戦が同時進行で進むというのも、ちょっと芸がないような気がします。2つの別の作戦が紆余曲折経ながら、最終的に1つの結末に収斂していくというのであれば、もうちょっと面白く感じられたと思うのですが。

 クリストフ・ヴァルツもアカデミー賞助演男優賞当確なわけですが、第1章で、ラパディット氏が匿っている家族を売ってしまいたくなるほどの怖さは感じませんでした。英語もドイツ語もフランス語もできる達者な役者さんであり、こんな役者さんがこれまで知られずにいたことに驚きは感じますが、それ以上ではないというか……。やさしく話しているだけで、ゾクゾクとした怖さ(迫力)をにじませてくるような役者はほかにもいると思いますが、どうでしょうか(今より若いの頃のロバート・デニーロとか)。ま、でも、たぶん、アカデミー賞獲っちゃうと思いますが。

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