マイケル・ムーア落選! アカデミー賞2010長編ドキュメンタリー賞セミファイナリスト!

 米国アカデミー賞2010長編ドキュメンタリー賞のセミファイナリスト15作品が発表になりました。(11月18日)

 •『アニエスの浜辺』“The Beaches of Agnes” 監督:アニエス・ヴァルダ
 •『ビルマVJ』“Burma VJ” 監督:アンダース・オスターガルド(Anders Østergaard)
 •『ザ・コーヴ』“The Cove” 監督:ルイ・シホヨス(Louie Psihoyos)
 •『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』“Every Little Step” 監督:ジェームズ・D・スターン、アダム・デル・デオ
 •“Facing Ali” 監督:Pete McCormack
 •“Food Inc.” 監督:Robert Kenner
 •“Garbage Dreams” 監督:Mai Iskander
 •“Living in Emergency:Stories of Doctors Without Borders” 監督:Mark N. Hopkins
 •“The Most Dangerous Man in America:Daniel Ellsberg and the Pentagon Papers” 監督:Judith Ehrlich、Rick Goldsmith
 •“Mugabe and the White African” 監督:Andrew Thompson、Lucy Bailey
 •“Sergio” 監督:Greg Barker
 •“Soundtrack for a Revolution” 監督:Bill Guttentag、Dan Sturman
 •“Under Our Skin” 監督:Andy Abrahams Wilson
 •“Valentino The Last Emperor” 監督:Matt Tyrnauer
 •“Which Way Home” 監督:Rebecca Cammisa

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 •『アニエスの浜辺』“The Beaches of Agnes”(仏) 監督:アニエス・ヴァルダ
 セザール賞2009 ドキュメンタリー賞受賞。
 ヨーロッパ映画賞2009ドキュメンタリー賞ノミネート。

 •『ビルマVJ』“Burma VJ”(デンマーク) 監督:アンダース・オステルガルド(Anders Østergaard)
 2007年のミャンマーでの反政府デモの様子を、自らの危険を顧みずに撮影し、配信したビデオ・ジャーナリストたちの、その映像を1本のドキュメンタリー作品として構成/再構成したもの。
 サンダンス映画祭2009編集賞受賞。
 デンマーク映画批評家協会賞2009最優秀ドキュメンタリー賞受賞。
 エルサレム映画祭2009スピリット・オブ・フリーダム賞Vivian Ostrovsky受賞。
 ヨーロッパ映画賞2009ドキュメンタリー賞ノミネート。
 英国グリアソン・アワード2009 UKフィルム・カウンシル最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート。
 第4回UNHCR難民映画祭-東京で上映。

 •『ザ・コーヴ』“The Cove”(米) 監督:ルイ・シホヨス(Louie Psihoyos)
 「日本のイルカを救おう」というキャンペーンでも知られるリック・オバリーと彼のグループの日本での活動と調査を追ったドキュメンタリー。
 脚本家マーク・モンローは『ペレを買った男』『ザ・フー:アメージング・ジャーニー』で知られる脚本家。監督のLouie Psihoyosはプロの写真家(アップル社の広告が自分の作品と似てると抗議したことでも知られる)。
 サンダンス映画祭2009 観客賞受賞。
 第7回シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭観客賞受賞。
 ローマ映画祭2009 IKEA賞受賞。
 東京国際映画祭2009で上映。

 •『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』“Every Little Step”(米) 監督:ジェームズ・D・スターン、アダム・デル・デオ

 •“Facing Ali”(米・カナダ) 監督:Pete McCormack
 3度ヘビー級チャンピオンに輝いたムハマド・アリをかつてのライバルたち10人が語る。
 出演:ジョージ・シュバロ、ヘンリー・クーパー、ジョー・フレイザー、ジョージ・フォアマン

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 •“Food Inc.”(米) 監督:Robert Kenner
 エリック・シュローサー(映画『ファースト・フード・ネイション』の元になった『おいしいハンバーガーのこわい話』の著者)やマーケル・ポーラン(“The Omnivore's Dilemma”の著者)らにインタビューしつつ、現在流通している食べ物について調査し、その危険性を描き出す。ドキュメンタリー版『ファースト・フード・ネイション』。
 トロント国際映画祭2008で上映。
 ベルリン国際映画祭2009 特別上映。
 ゴッサム・アワード2009 最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート。
 IDAアワード2009長編ドキュメンタリー賞ノミネート。

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 •“Garbage Dreams”(米) 監督:Mai Iskander
 エジプトの移民Zabbaleenは、豚やヤギを飼い、家庭から出される残飯をもらってエサにしていたが、やがてゴミの収集や選別を生業とするようになり、カイロの公衆衛生は、非公式でありながらも彼らなしでは成り立たないようになる。しかし、今、彼らが行なっていたそうした仕事は外国企業が行なうようになり、彼らのことは存在も人間性も全く省みられなくなる……。本作は、そんなZabbaleenの3人のティーンエイジャーの生活を追う。
 フェニックス映画祭2009 監督賞&観客賞受賞。ナッシュヴィル映画祭2009 Reel Current Award受賞。Vail Film Festival 2009 最優秀ドキュメンタリー賞受賞。

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 •“Living in Emergency:Stories of Doctors Without Borders” 監督:Mark N. Hopkins
 リベリアとコンゴで働く国境なき医師団に所属する4人の医師についてのドキュメンタリー。それぞれ経験の異なる彼らが、厳しい状況の中で、難しい判断をし、ヒューマニズムの限界に挑む。

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 •“The Most Dangerous Man in America:Daniel Ellsberg and the Pentagon Papers”(米) 監督:Judith Ehrlich、Rick Goldsmith
 ベトナム戦争に関する秘密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」と、その執筆者の1人でありながら、そのコピーをマスコミにリークしたダニエル・エルズバーグに関するドキュメンタリー。
 トロント国際映画祭2009で上映。

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 •“Mugabe and the White African”(英) 監督:Andrew Thompson、Lucy Bailey
 ジンバブエのロバート・ムガベ大統領は国土再編計画の名の下に、白人農場の強制収用を行なう。マイク・キャンベルもその計画の犠牲者となった1人で、強制収用の結果、農場で働いていた500人の黒人労働者とその家族が路頭に迷いそうになる。
 シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2009 ワールド部門作品賞受賞。
 IDAアワード2009長編ドキュメンタリー賞&ABCニュース・ビデオ・アワードノミネート。

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 •“Sergio”(米) 監督:Greg Barker
 国連高等弁務官セルジオ・ヴィエイラ・デ・メロへのインタビューを通して、国連の持つ役割を検証するドキュメンタリー。
 サンダンス映画祭2009 編集賞受賞。
 IDAアワード2009 ABCニュース・ビデオ・アワードノミネート。

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 •“Soundtrack for a Revolution”(米・仏・英) 監督:Bill Guttentag、Dan Sturman
 自分で語ることはできなくても、歌うことはできる。黒人聖歌、ピケット・ラインで歌われるプロテスト・ソングなど、音楽を通して語られるアメリカ市民権運動の物語。
 バンクーバー国際映画祭2009 Most Popular Film受賞。
 IDAアワード2009 ABCニュース・ビデオ・アワード&長編ドキュメンタリー賞ノミネート。

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 •“Under Our Skin”(米) 監督:Andy Abrahams Wilson
 ライム病とライム病患者、ライム病と闘う医師についてのドキュメンタリーで、ライム病を通して現代のメディカル・ケアのあり方をも問う。

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 •“Valentino The Last Emperor”(米) 監督:Matt Tyrnauer
 2007年、デザイナー人生45年で引退を宣言したヴァレンチノ。映画“Valentino: The Last Emperor”は、「ヴァニティ・フェア」の記者Matt Tyrnauerが、彼に2年間密着し、250時間撮影したフィルムを編集して完成させたドキュメンタリー。
 ベネチア2008 Orizzonti部門、トロント国際映画祭2008にて上映。
 IDAアワード2009 ABCニュース・ビデオ・アワードノミネート。

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 •“Which Way Home”(米・メキシコ) 監督:Rebecca Cammisa
 アメリカを目指して、メキシコをさまよう(中南米の)子供たちにスポットライトを当てたドキュメンタリー。ある者は、アメリカで働く親に会うためにアメリカに行こうとし、ある者は親に捨てられて養護センターに収容され、また、ある者は親自らが子供たちをアメリカに行かせようとする……。希望と絶望と勇気と悲しみの物語。
 カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭2009で上映。

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 高い評価を受けながら、セミファイナリストに入らなかった作品はいくつかあって、最も意外だとされたのは、マイケル・ムーアの『キャピタリズム:マネーは踊る』がこの時点でエントリーもされなかったということです。アメリカの映画人にマイケル・ムーア嫌いの人が多いからでしょうか(支持者も多くいるわけですが)。

 そのほか有力候補とされながらエントリーされなかった作品としては、『ファッションが教えてくれること』、『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』、“Tyson”、“It Might Get Loud”、“We Live in Public”、“Afghan Star”、“Soul Power”などがあります。

 似たような題材やアプローチ、ジャンルの作品はいくつかあり、結果的に、毎度お騒がせの“Tyson”ではなく、“Facing Ali”を選び、マイケル・ムーア丸出しの『キャピタリズム:マネーは踊る』ではなく、『ザ・コーヴ』を選び、“Facing Ali”とカブってしまう“Soul Power”ではなく、“Soundtrack for a Revolution”を選び、なじみのない“Afghan Star”ではなく、『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』を選び、現役の『ファッションが教えてくれること』ではなく、引退した“Valentino The Last Emperor”を選んだ、という感じでしょうか。

 ジャンル的には、
 ・音楽ドキュメンタリー:2本
 ・スポーツ・ドキュメンタリー:1本
 ・そのほか文化に関するもの:3本
 ・食・環境:2本
 ・医療:2本
 ・国際政治:2本
 ・外国の政治・社会・文化:5本
 となります(複数のジャンルにまたがる作品を含む)。

 また、これまでのノミネーションの傾向を探ると――
 ① 歴史(的事件)に隠された真実に迫った作品(『フォッグ・オブ・ウォー』『ブラック・セプテンバー』等)
 ② アメリカの現在を鋭くえぐってみせるような作品(『不都合な真実』『エンロン:巨大企業はいかにして崩壊したのか?』『ダーウィンの悪夢』『ボウリング・フォー・コロンバイン』『チャレンジ・キッズ』等)
 ③ 知られざる国・地域の知られざる実情を描いた作品(『未来を写す子どもたち』『プロミス』等)
 ④ 題材のユニークさが光る作品(『マーダーボール』『スーパーサイズ・ミー』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』等)
 ⑤ 個性的な人物をクローズ・アップした作品(『マイ・アーキテクト』『戦場のフォトグラファー』『モハメド・アリ かけがえのない日々』『クリントンを大統領にした男』等)
 ⑥ 誰も観たことがないような驚異の映像を収めた作品(『WATARIDORI』『皇帝ペンギン』等)
 などが選ばれる傾向にあります。

 今回のセミファイナリストをこれに当てはめると――
 ①:“The Most Dangerous Man in America:Daniel Ellsberg and the Pentagon Papers”、 “Sergio”
 ②:“Food Inc.”、“Under Our Skin”
 ③:『ビルマVJ』、『ザ・コーヴ』、“Garbage Dreams”、“Living in Emergency:Stories of Doctors Without Borders”、“Mugabe and the White African”、“Which Way Home”
 ④:『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』、“Soundtrack for a Revolution”
 ⑤:『アニエスの浜辺』、“Facing Ali”、“Valentino The Last Emperor”
 と分類することができるでしょうか。

 ノミネーション5作品には、似たタイプの作品が選ばれにくいので、①~⑤から1つずつと考えると――
 ①:“Sergio”
 ②:“Food Inc.”
 ③:『ビルマVJ』か『ザ・コーヴ』か“Which Way Home”
 ④:『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』
 ⑤:“Facing Ali”

 『アニエスの浜辺』は私も好きだし、ノミネートされると面白いとは思いますが、アメリカのアカデミー会員がとりたてて思い入れもないフランスの映画監督アニエス・ヴァルダをモチーフとした映画を選ぶとは考えにくいので、この作品はセミファイナリストどまりのような気がします(アニエス・ヴァルダがアメリカに招かれて、アメリカが気に入って長居しまう、といったあたりの描写が支持されるきっかけになる可能性はありますが)。

 下馬評的には、セミファイナリスト発表以前からドキュメンタリー賞最有力候補は“Food Inc.”ですが、セミファイナリスト15作品が発表された現在でも、結局のところ、社会性・一般的な興味関心度・ドキュメンタリーとしての内容の衝撃度などから考えて、“Food Inc.”受賞に落ちつくんじゃないか、というのが、現時点での私の予想です。ノミネーションが当確なのも“Food Inc.”くらいではないでしょうか。

 これらファイナリスト15作品をアカデミー賞ドキュメンタリー・ブランチのメンバーが観て、ノミネート5作品に絞り込まれることになります。

 ノミネーションの発表は、2010年2月2日です。

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 *当ブログ記事
 ・米国アカデミー賞2009 長編ドキュメンタリー賞セミファイナリスト:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200811/article_11.html

 ・IDAアワード2009ノミネーション:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_24.html
 ・英国グリアソン・アワード2009:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_13.html
 ・第4回UNHCR難民映画祭-東京:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200909/article_19.html
 ・今年注目のドキュメンタリーはこれだ!第7回シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭 結果発表!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_22.html
 ・サンダンス映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200901/article_31.html
 ・サンダンス映画祭2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200812/article_9.html

 ・米国アカデミー賞2010 長編アニメーション賞セミファイナリスト発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_21.html
 ・米国アカデミー賞2010 外国語映画賞各国代表65作品発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_11.html
 ・米国アカデミー賞2010 短編ドキュメンタリー賞候補発表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200910/article_11.html

 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html

この記事へのコメント

オバリー逝ってくださいw
2009年11月20日 01:15
万が一にも「The Cove」が選ばれることにでもなったら、、、、
最悪ですね。
ノミネートされないことを祈るしかないですw

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