シカゴ国際映画祭2009 受賞結果!

 ちょっと気になる映画のリリースデータや受賞歴、映画人のキャリアなどを調べていくと、必ずといっていいほど顔を出すのが、(カンヌ、ベネチア、ベルリン、トロントなどのほかでは)シカゴ国際映画祭です。

 「この作品もシカゴ国際映画祭のお墨付きがあるの?」と思うことが本当によくあるんですね。

 シカゴ国際映画祭は、北米で最も古い映画祭の1つで(一番古いのはサンフランシスコ国際映画祭)、そういう伝統の力もあってか、優れた作品がたくさん集まってきます。

 たとえば、2008年のシカゴ国際映画祭の作品賞は、スティーヴ・マックイーンの『ハンガー』で、この作品は主演男優賞も受賞。脚本賞は『ゴモラ』で、ドキュメンタリー賞(ドキュフェスト賞)は『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』、観客賞が『スラムドッグ$ミリオネア』と『縞模様のパジャマの少年』が受賞しています。

 2007年の作品賞は、カルロス・レイガダスの『静かな光』で、ドキュメンタリー賞はアレックス・ギブニーの『闇へ』“Taxi to the Dark Side”、主演男優賞は『コントロール』のサム・ライリー(『コントロール』は脚本賞も受賞)、主演女優賞は『トゥヤーの結婚』のユー・ナン(『トゥヤーの結婚』は審査員特別賞も受賞)、監督賞は『愛おしき隣人』のロイ・アンダーソンが受賞……。

 いずれの作品も、その後、(各地の/各国の)映画賞レースで受賞を重ねていく作品ばかりで、シカゴ国際映画祭は、そんな映画賞レースの前哨戦にもなっています。

 アメリカにもローカルな映画祭(たとえ名前に「国際」を冠していても)はたくさんありますが、こんな特権的なポジションにある/注目すべき映画祭は他にはありません。

 そんなシカゴ国際映画祭(第45回/10月8日~22日)の今年の受賞結果は以下の通りです――

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 ◆インターナショナル・コンペティション(International Feature Film Competition)

 ・『アバウト・エリ』“About Elly”(イラン) 監督:アシュガル・ファルハディ(Asghar Farhadi)
 ・『空気人形』(日) 監督:是枝裕和
 ・“Backyard”(メキシコ) 監督:カルロス・カレラ
 ・“Case Unknown”(ポーランド) 監督:Feliks Falk
 ・『ヴィサージュ』“Face”(仏・台湾) 監督:ツァイ・ミンリャン
 ・“Fish Tank”(英) 監督:アンドレア・アーノルド
 ・“Hidden Diary”(仏) 監督:Julie Lopes-Curval
 ・“Hipsters”(ロシア) 監督:ヴァレリー・トドロフスキー
 ・『エリックを探して』“Looking for Eric”(英) 監督:ケン・ローチ
 ・“Mississippi Damned”(米) 監督:Tina Mabry
 ・“Prank”(ハンガリー) 監督:Péter Gárdos
 ・“Ricky”(仏・伊) 監督:フランソワ・オゾン
 ・“The Be All and End All”(英) 監督:Bruce Webb
 ・“Vincere”(伊) 監督:マルコ・ベロッキオ

 ◎作品賞/ゴールド・ヒューゴー賞(Gold Hugo For Best Film):“Mississippi Damned” (米)

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 ◎審査員特別賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo For Special Jury Award):“Fish Tank”(英)

 ◎監督賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo For Best Director):マルコ・ベロッキオ : “Vincere”(伊)

 ◎主演男優賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo For Best Actor):フィリッポ・ティーミ(Filippo Timi) “Vincere”(伊)

 ◎主演女優賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo For Best Actress):ジョヴァンニ・メッツォジョルノ “Vincere”(伊)

 ◎助演男優賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Supporting Actor):マイケル・ファスベンダー “Fish Tank”(英)

 ◎助演女優賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Supporting Actress):Jossie Harris Thacker “Mississippi Damned”(米)

 ◎脚本賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Screenplay):Tina Mabry “Mississippi Damned”(米)

 ◎撮影賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Cinematography):Daniele Ciprì “Vincere”(伊)

 ◎美術監督賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Art Direction):Hipsters (ロシア)

 ◎シルバー・プラーク賞(Silver Plaque):“Backyard”(メキシコ)

 *審査員:ジャクリーン・ビセット、ショーレー・アグダシュルー(Shohreh Aghdashloo) (イラン出身の女優)、Duane Byrge (アメリカの批評家)、Pablo Cruz (メキシコのプロデューサー)、Bruce Sheridan (ニュージーランド出身のプロデューサー)

 ◆ニュー・ディレクターズ・コンペティション(New Directors Competition)

 ・“Berlin’36”(独) 監督:Kaspar Heidelbach
 ・“Daniel & Ana”(メキシコ) 監督:Michel Franco
 ・『イースタン・プレイ』“Eastern Plays”(ブルガリア・スウェーデン) 監督:カメン・カレフ
 ・“Eye of the Storm”(ブラジル・ポルトガル) 監督:Eduardo Valente
 ・“Eyes Wide Open”(独・イスラエル) 監督:Haim Tabakman
 ・“Gigante”(ウルグアイ) 監督:Adrián Biniez
 ・“Lost Times”(ハンガリー) 監督:Áron Mátyássy
 ・“Made in China”(米) 監督:Judi Krant
 ・“Northless”(メキシコ・西) 監督:Rigoberto Pérezcano
 ・“Partners”(仏・スイス) 監督:Frédéric Mermoud
 ・“Police,Adjective”(ルーマニア) 監督:Corneliu Porumboiu
 ・“Who's Afraid of the Wolf?”(チェコ) 監督:Maria Procházková

 ◎ゴールド・ヒューゴー賞(Gold Hugo):“Gigante”(ウルグアイ)

 ◎シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo):“Made in China”(米)

 *審査員:Charin Alvarez (アメリカの女優)、Chiara Arroyo Cella(スペイン出身の“Screen International”誌記者)、Leonardo Garcia Tsao (メキシコの脚本家)、David Robinson (イギリスの批評家)

 ◎ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque):“Partners”(スイス・仏)

 ◆ドキュフェスト・コンペティション(Docufest Competition)

 ・“Beyond Ipanema”(ブラジル・米) 監督:Guto Barra
 ・“Cooking History”(オーストリア・スロヴァキア) 監督:Peter Kérekes
 ・“Cropsey”(米) 監督:Joshua Zeman、Barbara Brancaccio
 ・“Girls on the Wall”(米) 監督:Heather Ross
 ・“Henri-Georges Clouzot's Inferno”(仏) 監督:Serge Bromberg and Ruxandra Medrea Annonier
 ・“I Know a Woman Like That”(米) 監督:Elaine Madsen
 ・“My Neighbor, My Killer”(仏・米) 監督:Anne Aghion
 ・“Racing Dreams”(米) 監督:Marshall Curry
 ・“Soundtrack for a Revolution”(米) 監督:Dan Sturman、Bill Guttentag
 ・“The Moon Inside You”(スロヴァキア・西) 監督:Diana Fabiánová
 ・“Those Who Remain”(メキシコ) 監督:Juan Carlos Rulfo、Carlos Hagerman
 ・“Videocracy”(伊・スウェーデン) 監督:Erik Gandini
 ・“Visual Acoustics: The Modernism of Julius Shulman”(米) 監督:Eric Bricker

 ◎金賞/ゴールド・ヒューゴー賞(Gold Hugo):“Cooking History”(オーストリア・スロヴァキア・チェコ)

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 ◎銀賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo):“Racing Dreams”(米)

 ◎監督賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque In Direction):“Soundtrack For A Revolution”(米)

 *審査員:John Russell Taylor (イギリスの脚本家)、Matt Irvine (アメリカの監督)、Alison Cuddy (Chicago Public Radio).

 ◆短編コンペティション(Short Film Competition)

 ◎金賞/ゴールド・ヒューゴー賞(Gold Hugo For Best Short Film):“The History Of Aviation”(ハンガリー)

 ◎審査員賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo Grand Jury Prize For Short Film):“Good Advice”(スウェーデン)

 ◎短編アニメーション賞/シルバー・ヒューゴー賞(Silver Hugo For Best Animated Short Film):『スキゼン』“Skhizein”(仏)

 ◎短編実験映画賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Experimental Short Film):“Photograph of Jesus”(英)

 ◎学生短編映画賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Student Short Film):“Cherry On The Cake”(英)

 ◎短編エッセイ映画賞/ゴールド・プラーク賞(Gold Plaque For Best Essay Short Film):“The Illusion”(キューバ)

 ◎最優秀アンサンブル・パフォーマンス スペシャル・メンション(Special Mention For Best Ensemble Performances):“Short Term 12”(米)

 ◎短編アニメーション賞スペシャル・メンション(Special Mention For Animated Short Film):“Attached To You”(スウェーデン)

 * 審査員:Jacinta Banks、John Bleeden、Gabe Clinger、Armando Ibanez

 ◆シカゴ・アワード・コンペティション(Chicago Award Competition)

 ◎シカゴ・アワード:“Wet”

 ◎スペシャル・メンション(A Special Mention):“Girls On The Wall”

 ◎スペシャル・メンション(A Special Mention):“An Evening With Emery Long”

 * 審査員:Kathleen Ermitage、Betsy Steinberg、Mike Mcnamara

 ◆観客賞

 ◎観客賞(Audience Award):『プレシャス!』“Precious: Based On The Novel ‘Push’ By Sapphire” 監督:リー・ダニエルズ

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 ◎観客賞次点:“An Education” 監督:ロネ・シェルフィグ

 ◎観客賞次点:“No Hard Feelings!” 監督:Yves Hanchar

 ◆トリビュート賞(Tribute Awards)

 ◎生涯貢献賞(Lifetime Achievement Award):マーティン・ランドー

 ◎生涯貢献賞(Career Achievement Award):ユマ・サーマン

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 ◎生涯貢献賞(Career Achievement Award):ウィレム・デフォー

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 ◎生涯貢献賞(Career Achievement Award):パトリス・シェロー

 ◎芸術貢献賞(Artistic Achievement Award):リー・ダニエルズ

 ◎ブレイクスルー・パフォーマンス賞(Breakthrough Performance Award):ギャバリー・シディベ(Gabourey Sidibe)

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 一級の作品ばかりが集まったシカゴ国際映画祭で、今年、作品賞を獲ったのは“Mississippi Damned”という、これまでほとんど名前が挙がってくることのなかった映画でした。(プレミア上映は1月のスラムダンス映画祭でした)

 “Mississippi Damned”の主人公は、ミシシッピの貧しい家庭に暮らす3人の黒人の子供たちで、彼らが抜け出そうとしても悪循環を繰り返している家庭内の悪弊(暴力、暴言、嘘、悪癖…)、そして過酷な現実から逃れようとする物語で、実際にあった話をベースにしているそうです。

 監督のTina Mabryは、これまで短編を発表したりはしているようですが、長編はこれが初めて。

 この作品は、アメリカン・ブラック・フィルム・フェスティバル2009で審査員グランプリと男優賞を受賞、アトランタ映画祭2009で審査員特別賞を、フィラデルフィア映画祭2009で審査員賞を、LA Outfest 2009で審査員グランプリを受賞しています。

 よく知られているような人は出演しておらず、監督も無名、製作プロダクションも無名なので、日本で劇場公開されるかどうかわかりませんが(作品をハンドリングする力のある配給会社がワールド・セールズにつくといいのですが)、観る者に生きる希望を与え、幸せな気持ちにしてくれる作品だそうなので、日本でもなんらかの形で紹介されるかもしれません。要注目ですね!

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 *当ブログ記事
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html

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