『アンヴィル!』も評価高し! IDAアワード2009 ノミネーション発表!

 国際ドキュメンタリー協会(International Documentary Association /IDA)が贈る第25回IDAアワード2009各部門のノミネーション/ファイナリストが発表になりました。(11月12日)

 IDAは、ドキュメンタリー作品の作り手の支援やドキュメンタリー作品の上映機会の増加のための活動を行なっている非営利団体で、ロサンゼルスに本部があり、世界53カ国に2800人の会員を有しています。

 IDAアワードは、そんな非営利団体が贈る賞ということで、一見地味~な印象も受けますが(実際のところ、あまり陽の目を見ないドキュメンタリー作品に積極的にスポットライトを当てようとしているようなところがあり、シリアスな作品も多いのですが)、ユニークな題材を扱った作品も多く、さまざまな映画祭で評価された作品もたくさん取り上げられています。

 過去の受賞作には、第4回UNHCR難民映画祭-東京で上映された『ウォー・チャイルド』(Video Source Award 2008)や『神は僕らを見放した』(Emerging Documentary Filmmaker 2006受賞)、『イラクのカケラを集めて』(長編ドキュメンタリー賞2006)、『未来を写した子どもたち』『華氏911』(ともに長編ドキュメンタリー賞2004)、『イメルダ』(Video Source Award 2004)、『バス174』(Video Source Award 2003)、『SUGIHARA: Conspiracy Of Kindness~杉原千畝 善意の陰謀』(Pare Lorentz Award 2000)、などがあります。

 IDAアワードを、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞の前哨戦とみなして、映画賞レース予想の判断材料にしたりすることはできませんが(受賞作どころか、ノミネーションが重なることもごく稀です)、こういう風に提示されなければ知らなかったであろう興味深い作品や題材もたくさんあります(“Thank You, Mr. President: Helen Thomas At The White House”とか“Wounded Knee”とか――。なので、サラッと書き流そうかとも思ったのですが、ついつい長くなってしまいました)。

 部門によっては、娯楽性の強い作品もあって、そんなに評価が高いなら、『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』を観に行っちゃおうかなと思ったりもしますね。

 なお、下記エントリー作品には、複数の部門にエントリーされている作品がいくつもあります。

画像

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 ◆長編ドキュメンタリー賞

 ・“Afghan Star”(アフガニスタン・英) 監督:Havana Marking
 30年間にわたる戦争とタリバンの支配の後で「ポップ・アイドル」がアフガンのテレビに登場する。百万人がオーディション番組に夢中になり、自分のお気に入りのシンガーに投票する。カメラは、4人のオーディション参加者を追う。
 サンダンス映画祭2009 観客賞&監督賞受賞。
 英国グリアソン賞2009 コンテポラリー部門賞受賞。

 ・『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』“Anvil! The Story of Anvil”(米) 監督:サーシャ・ガヴァシ(Sacha Gervasi)

 ・“Diary of A Times Square Thief”(オランダ) 監督:Klaas Bense
 ニューヨークで作家になることを夢見て、アメリカ中西部を旅立った男性がいて、彼はその過程を日記に綴っていく。しかし、夢破れ、日記の最後はページがナイフで切り裂かれて終わる。その日記をeBayで手に入れた監督は、この日記を書いた人物を探す旅に出る……。

 ・“Food, Inc.”(米) 監督:Robert Kenner
 エリック・シュローサー(映画『ファースト・フード・ネイション』の元になった『おいしいハンバーガーのこわい話』の著者)やマーケル・ポーラン(“The Omnivore's Dilemma”の著者)らにインタビューしつつ、現在流通している食べ物について調査し、その危険性を描き出す。ドキュメンタリー版『ファースト・フード・ネイション』。
 トロント国際映画祭2008で上映。
 ベルリン国際映画祭2009 特別上映。
 ゴッサム・アワード2009 最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート。

 ・“Mugabe and The White African”(英) 監督:Lucy Bailey、Andrew Thompson
 ジンバブエのロバート・ムガベ大統領は国土再編計画の名の下に、白人農場の強制収用を行なう。マイク・キャンベルもその計画の犠牲者となった1人で、強制収用の結果、農場で働いていた500人の黒人労働者とその家族が路頭に迷いそうになる。
 シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2009 ワールド部門作品賞受賞。

 ◆短編ドキュメンタリー賞

 ・“The Delian Mode”(カナダ) 監督:Kara Blake
 『ドクター・フー』のテーマ・ソングを作曲したデライア・ダービシャーに関するドキュメンタリー。

 ・“Salt”(オーストラリア) 監督:Michael Angus、Murray Fredericks
 写真家のマーレー・フレドリクスは、毎年、南オーストラリアのエアー湖に撮影に出かける。エアー湖は、湖とは名ばかりで、水はなく、そこにはただ塩の平原が広がるばかりだった。
 モスクワ国際映画祭2009出品。
 シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭2009 審査員特別賞受賞。

 ・“Sari’s Mother”(イラク・米/2006) 監督:ジェームズ・ロングリー(James Longley)
 戦争と占領に見舞われるイラクで、エイズで死にかけている息子を気遣う母親の姿を追う。
 『イラクのカケラを集めて』“Iraq in Fragments”のジェームズ・ロングリー監督の短編。
 米国アカデミー賞2008短編ドキュメンタリー賞ノミネート。

 ・“The Solitary Life of Cranes”(英) 監督:Eva Weber
 クレーン操縦士の目を通してとらえたロンドンの24時間。

 ◆ドキュメンタリー・シリーズ賞 現在も放映中の番組部門(Continuing Series Award)

 ・“American Experience”
 エピソード:“A Class Apart” 監督:Carlos Sandoval、Peter Miller
 エピソード:“The Trials Of J. Robert Oppenheimer” 監督:David Grubin
 エピソード:“The Polio Crusade” 監督:Sarah Colt
 エピソード:“The Assassination of Abraham Lincoln” 監督:Barak Goodman

 ・“Iconoclasts” 監督:Joe Berlinger、Bruce Sinofsky
 エピソード:“Desmond Tutu & Richard Branson”
 エピソード:“Stella Mccartney & Ed Ruscha”
 エピソード:“Tony Hawk & John Favreau”
 エピソード:“Bill Maher & Clive Davis”
 エピソード:“Venus Williams & Wyclef Jean”
 エピソード:“Cameron Diaz & Cameron Sinclair”

 ・“P.O.V.”
 エピソード:“Inheritance” 監督:James Moll
 エピソード:『選挙』“Campaign” 監督:想田和弘
 エピソード:“Up The Yangtse” 監督:Yung Chang

 ◆ドキュメンタリー・シリーズ賞 期間限定番組部門(Limited Series Award)

 ・“Architecture School”(米) 監督:Michael Selditch
 チューレン建築大学に関する6回のシリーズで、チューレン大学の都市/建設プログラム(Tulane University's URBAN/build program)とニューオリンズの隣人ハウジング・サービス(Neighborhood Housing Services of New Orleans (N.H.S.))が、共同で、ハリケーン・カトリーナ後のニューオリンズで、ローコストのシングル家族用住宅をデザインし、建設していくというプロジェクトを追う。

 ・“The Alzheimer’s Project”(米) 監督:Shari Cookson、Nick Doob、Eamon Harrington、John Watkin、Bill Couturié
 快適さ、サポート、記憶障害者への支援、介護者などを提供する非営利団体アルツハイマー・プロジェクト(APT)の活動を追ったドキュメンタリー。
 エミー賞2009 Exceptional Merit in Nonfiction Filmmaking(ノンフィクション番組制作優秀賞)、Outstanding Children's Nonfiction Program(児童向け優秀ノンフィクション番組)受賞。

 ・“In Their Boots”(米)
 イラクやアフガニスタンでの戦争が家庭にいる我々に与える影響をマガジン・スタイルで伝えるショー・プログラム。

 ・“Time for School”(米)
 教育についてのグローバルな危機、にスポットライトを当てたシリーズ。

 ・“We Shall Remain”(米) 監督:Ric Burns、Dustin Craig、Sarah Colt、Stanley Nelson、Chris Eyre
 1600年代から現代まで、ネイティブ・アメリカンを主体としたアメリカ史(ライバル部族と負かすためにイギリス人と手を組んだ1600年代の物語から、市民権運動が拡大した1970年代の新しい指導者たちの物語など)を伝える番組で、パート5まで製作されている。

 ◆ABCニュース・ビデオ・アワード(ABCnews Video Source Award)―ファイナリスト

 ・“Earth Days”(米) 監督:Robert Stone
 9人のアメリカ人の目を通して、環境運動の起源(運動が始まった50年代、アースデイも設けられ、成功を勝ち得ていった70年代、政治的な大きな力となった現在……)を追っていく。

 ・“Mugabe and The White African”(英) 監督:Lucy Bailey、Andrew Thompson

 ・“Sergio”(米) 監督:Greg Barker
 国連高等弁務官セルジオ・ヴィエイラ・デ・メロへのインタビューを通して、国連の持つ役割を検証するドキュメンタリー。
 サンダンス映画祭2009 編集賞受賞。

 ・“Shouting Fire: Stories From The Edge Of Free Speech”(米) 監督:Liz Garbus
 合衆国憲法修正第1条(信教、言論、出版、集会の自由、請願権)に対する新解釈(特に、9.11以降、政府が、市民や外国人に対して、監視や逮捕、拘留に関しての権限を強化したこと)についてのドキュメンタリー。

 ・“Soundtrack for A Revolution”(米・仏・英) 監督:Bill Guttentag、Dan Sturman
 自分で語ることはできなくても、歌うことはできる。黒人聖歌、ピケット・ラインで歌われるプロテスト・ソングなど、音楽を通して語られるアメリカ市民権運動の物語。
 バンクーバー国際映画祭2009 Most Popular Film受賞。

 ・“Studs Terkel”(米) 監督:Eric Simonson
 『仕事!』『よい戦争』『アメリカの分裂』などの著作で知られるアメリカの作家スタッズ・ターケル(1912~2008)についてのドキュメンタリー。

 ・“Thank You, Mr. President: Helen Thomas At The White House” 監督:Rory Kennedy
 57年間UPIに勤め、ホワイトハウスでジョン・F・ケネディー以降の9人の大統領に取材を行なってきたジャーナリスト、ヘレン・トーマス(ホワイトハウスのプレス会議で最前列に座り、最初の質問をするのが慣例で、のちにUPIホワイトハウス局チーフまで務める。質問を「Thank You, Mr. President」で締めるのが有名)についてのドキュメンタリー。

 ・“Valentino: The Last Emperor”(米) 監督:Matt Tyrnauer
 2007年、デザイナー人生45年で引退を宣言したヴァレンチノ。映画“Valentino: The Last Emperor”は、「ヴァニティ・フェア」の記者Matt Tyrnauerが、彼に2年間密着し、250時間撮影したフィルムを編集して完成させたドキュメンタリー。
 ベネチア2008 Orizzonti部門、トロント国際映画祭2008にて上映。

 ・“Wounded Knee”(米) 監督:Stanley Nelson
 インディアンに対する暴力、テロ、差別に対する抗議活動として、1973年にAIM(アメリカ・インディアン運動)が起こしたパインリッジ居留地にある町ウンデット・ニーでの占拠事件と、その顛末を描いたドキュメンタリー。

 ◆音楽ドキュメンタリー賞(IDA Music Documentary Award)

 ・『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』“Anvil! The Story of Anvil”(米) 監督:サーシャ・ガヴァシ(Sacha Gervasi)

 ・“Archaeology of Memory: Villa Grimaldi”(米) 監督:Quique Cruz、Marilyn Mulford
 チリ人の亡命ミュージシャンQuique Cruz (Claudio Duran).のベイ・エリアから故郷チリへの旅を追ったドキュメンタリー。
 Mill Valley Film Festival2008 観客賞受賞。

 ・『The Audition メトロポリタン歌劇場への扉』“The Audition”(米/2007) 監督:スーザン・フロムキー(Susan Froemke)
 ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場で年に1回行なわれる「ナショナル・カウンシル・オーディション」の、2007年のセミファイナルからファイナルの様子を追ったドキュメンタリー。

 ・“It Might Get Loud”(米) 監督:デイヴィス・グッゲンハイム(Davis Guggenheim)
 『不都合な真実』のデイヴィス・グッゲンハイムの監督最新作。
 エレキ・ギターについてのドキュメンタリー。取り上げられるミュージシャンは、ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト。
 トロント国際映画祭2008で上映。

 ・“Soundtrack for A Revolution”(米・仏・英) 監督:Bill Guttentag、Dan Sturman

 ・“Tibet in Song”(米) 監督:Ngawang Choephel
 チベット音楽を通して、ユニークな文化を守っていこうとしているチベットの人々(チベットに留まっている人であれ、亡命中の人であれ)の決然たる姿勢を描く。監督は、チベットで映画を撮ろうとして、18年の服役を言い渡され、6年間刑務所に服役している。
 サンダンス映画祭2009 審査員特別賞(Special Jury Prize)受賞。

 ◆Pare Lorentz Award—ファイナリスト
 1930~40年代に活躍したドキュメンタリー作家Pare Lorentz(1905~1992)にちなんだドキュメンタリー賞。

 ・『ザ・コーヴ』“The Cove”(米) 監督:ルイ・シホヨス(Louis Psihoyos)

 ・“Earth Days”(米) 監督:Robert Stone

 ・“The Final Inch”(米) 監督:Irene Taylor Brodsky
 アフガニスタン、パキスタン、インドをめぐって、ポリオ根絶のために活動している人々の姿をカメラに収めていく。
 米国アカデミー賞2009 短編ドキュメンタリー賞ノミネート。

 ・“Food, Inc.”(米) 監督:Robert Kenner

 ・“The Last Mermaids”(米・韓国) 監督:Liz Chae
 済州島の海女についてのドキュメンタリー。海女たちにとって海とは、生活の慰安所であり、戦争からの避難所であり、母から娘への教育の場であった。そんな2000年も続いた海女たちの物語も、もう終わりを迎えようとしている……。

 ・“Mugabe and The White African”(英) 監督:Lucy Bailey、Andrew Thompson

 ・“Soundtrack for A Revolution”(米・仏・英) 監督:Bill Guttentag、Dan Sturman

 ・“We Shall Remain” 監督:Ric Burns、Dustin Craig、Sarah Colt、Stanley Nelson、Chris Eyre

 ・“Youssou N'Dour: I Bring What I Love”(セネガル・仏・エジプト・米) 監督:Elizabeth Chai Vasarhelyi
 セネガル人ミュージシャン、ユッスー・ンドゥール。誤って受け取られがちな彼のイスラム信仰と、深い精神世界を描いたアルバム“Egypt”、そして音楽の旅。
 サンパウロ国際映画祭2008 観客賞受賞。ナッシュヴィル映画祭2009 Impact of Music Award受賞。
 *日本でも公開された『ユッスー・ンドゥール 魂の帰郷』とは別の作品です。

 ◆David L. Wolper 学生ドキュメンタリー賞(IDA/David L. Wolper Student Documentary Award)

 ・“Arresting Ana” 監督:Lucie Schwartz(カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学校(University of California at Berkeley Graduate School of Journalism))

 ・“Famous 4A” 監督:Mike Atie(スタンフォード大学)

 ・“The First Kid To Learn English From Mexico” 監督:Peter Jordan(スタンフォード大学)

 ・“The Last Mermaids” 監督:Liz Chae(コロンビア大学)

 ・“My Name is Sydney” 監督:Melanie Levy(スタンフォード大学)

 ◆生涯貢献賞(Career Achievement Award)
 ◎エロール・モリス
 エロール・モリスは、『フォッグ・オブ・ウォー マクマナラ元米国防長官の告白』(2003)、『スタンダード・オペレーティング・プロシージャー』(2008)などで知られる監督。

 ◆パイオニア・アワード(Pioneer Award)
 ◎ニコラス・ノクソン(Nicolas Noxon)
 ニコラス・ノクソンは、さまざまなジャンルのドキュメンタリーを手がける監督・脚本家・プロデューサー。日本で紹介されている作品には製作/脚本を務めた『アニメル・ラブ』(1974)がある。

 ◆AMICUS AWARD
 ◎Michael C. Donaldson
 Michael C. Donaldsonは、法律顧問などで多くのドキュメンタリー作品に関わった人物。
 * AMICUSは「裁判所の友」の意。

 ◆新進フィルムメーカー賞(JACQUELINE DONNET EMERGING FILMMAKER AWARD)
 ◎Natalia Almada
 Natalia Almadaは、“El general”でサンダンス映画祭2009監督賞を受賞した新進のドキュメンタリー作家。

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 受賞結果の発表は、12月4日です。

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 *当ブログ記事
 ・第4回UNHCR難民映画祭-東京:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200909/article_19.html
 ・今年注目のドキュメンタリーはこれだ!第7回シルバードックス・ドキュメンタリー映画祭 結果発表!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_22.html
 ・サンダンス映画祭2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200901/article_31.html
 ・サンダンス映画祭2009 ラインナップ:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200812/article_9.html
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html

 ・追記:
 ・IDAアワード2009 受賞結果:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200912/article_10.html

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