「ロンドン・タイムズ」で過去10年間の映画ベスト100が発表になりました(11月7日)。 「ロンドン・タイムズ」では毎年12月上旬に年間ベスト100を発表していますが、これはその10年分を集計してベスト100にしたもののようです。 年間ベスト100がなかなか興味深い結果なので、10年分のベスト100も興味津々だったのですが、その結果は―― −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 100位 『プラダを着た悪魔』“The Devil Wears Prada”(2006/デイヴィッド・フランケル) 99位 『バトル・ロワイヤル』“Battle Royale”(2000/深作欣二) 98位 『クラッシュ』“Crash”(2004/ポール・ハギス) 97位 『親切なクムジャさん』“Sympathy for Lady Vengeance”(2005/パク・チャヌク) (Park Chan-Wook, 2005) 96位 『モーヴァン』“Morvern Callar”(2002/リン・ラムジー) 95位 『アモーレス・ペロス』“Amores Perros”(2000/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウ) 94位 『不都合な真実』“An Inconvenient Truth”(2006/デイヴィッド・グッゲンハイム) 93位 『LOVERS』“House of Flying Daggers”(2004/チャン・イーモウ) 92位 『堕天使のパスポート』“Dirty Pretty Things”(2002/スティーヴン・フリアーズ) 91位 『ランタナ』“Lantana”(未) (2001/レイ・ローレンス(Ray Lawrence)) 90位 『ウエディング・クラッシャーズ』“Wedding Crashers”(未)(2005/デイヴィッド・ボブキン(David Dobkin)) 89位 『スクール・オブ・ロック』“School of Rock”(2003/リチャード・リンクレイター) 88位 『ロイヤル・テネンバウムズ』“The Royal Tenenbaums”(2001/ウェス・アンダーソン) 87位 『時と風』“Time and Winds”(未)(2006/レハ・エルデム(Reha Erdem)) 86位 『永遠のこどもたち』“The Orphanage”(2007/フアン・アントニオ・バヨナ) 85位 『ピアニスト』“The Piano Teacher”(2001/ミヒャエル・ハネケ) 84位 『ホテル・ルワンダ』“Hotel Rwanda”(2004/テリー・ジョージ) 83位 『麦の穂をゆらす風』“The Wind that Shakes the Barley”(2006/ケン・ローチ) 82位 『ヤンヤン 夏の想い出』“Yi Yi: A One and a Two”(2000/エドワード・ヤン) 81位 “In The Loop”(2009/Armando Iannucci) 80位 『君とボクの虹色の世界』“Me, You and Everyone We Know”(2005/ミランダ・ジュライ(Miranda July)) 79位 『長い旅』“Le Grand Voyage”(2004/イスマイル・フェルーキ(Ismael Ferroukhi)) 78位 『アバウト・シュミット』“About Schmidt”(2002/アレクサンダー・ペイン) 77位 『ボウリング・フォー・コロンバイン』“Bowling for Columbine”(2002/マイケル・ムーア) 76位 『コントロール』“Control”(2007/アントン・コービン) 75位 『トーク・トゥ・ハー』“Talk to Her”(2002/ペドロ・アルモドバル) 74位 『パンズ・ラビリンス』“Pan’s Labyrinth”(2006/ギレルモ・デル・トロ) 73位 『真夜中のピアニスト』“The Beat That My Heart Skipped”(2005/ジャック・オーディアール) 72位 “The Hurt Locker”(2008/キャスリン・ビグロー) 71位 『モンスターズ・インク』“Monsters, Inc.”(2001/ピート・ドクター、デイヴィッド・シルヴァーマン、リー・アンクリッチ) 70位 “The Class”(2008/ローラン・カンテ) 69位 『ペルセポリス』“Persepolis”(ヴァンサン・パロノー、マルジャン・サトラピ) 68位 『メメント』“Memento”(2000/クリストファー・ノーラン) 67位 『ゴモラ』“Gomorrah”(未)(2008/マッテオ・ガローネ) 66位 『シティ・オブ・ゴッド』“City of God”(2002/フェルナンド・メイレレス、カティア・ルンド) 65位 『戦場でワルツを』“Waltz with Bashir”(2008/アリ・フォルマン) 64位 『ある子供』“L'enfant”(2005/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ) 63位 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』“There Will Be Blood”(2007/ポール・トーマス・アンダーソン) 62位 『僕たちニュースキャスター』“Anchorman: The Legend of Ron Burgundy”(未)(2004/アダム・マッケイ) 61位 『千と千尋の神隠し』“Spirited Away”(2001/宮崎駿) 60位 『イカとクジラ』“The Squid and the Whale”(2005/ノア・バウムバック) 59位 『Etre et avoir ぼくの好きな先生』“Être et Avoir”(2002/ニコラ・フィリベール) 58位 『ショーン・オブ・ザ・デッド』“Shaun of the Dead”(未)(2004/エドガー・ライト) 57位 『愛の果てへの旅』“The Consequences of Love”(未)(2004/パオロ・ソレンティーノ) 56位 『ボルベール〈帰郷〉』“Volver”(2006/ペドロ・アルモドバル) 55位 『チョッパー・リード 史上最凶の殺人鬼』“Chopper”(未)(2000/アンドリュー・ドミニク) 54位 『バッドサンタ』“Bad Santa”(2003/テリー・ツワイゴフTerry Zwigoff, 2003) 53位 『ミルク』“Milk”(2008/ガス・ヴァン・サント) 52位 『ナイロビの蜂』“The Constant Gardener”(2005/フェルナンド・メイレレス) 51位 『息子の部屋』“The Son’s Room”(2001/ナンニ・モレッティ) 50位 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』“The Lord of The Rings: The Return of the King”(2003/ピーター・ジャクソン) 49位 『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』“Knocked Up”(未)(2007/ジャド・アパトー) 48位 『リトル・ミス・サンシャイン』“Little Miss Sunshine”(2006/ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス) 47位 『マイ・サマー・オブ・ラブ』“My Summer of Love”(未)(2004/パヴェル・パヴリコフスキー(Pawel Pawlikowski)) 46位 『トラフィック』“Traffic”(2000/スティーヴン・ソダーバーグ) 45位 『運命を分けたザイル』“Touching the Void”(2003/ケヴィン・マクドナルド) 44位 『まぼろし』“Under the Sand”(2000/フランソワ・オゾン) 43位 『ダークナイト』“The Dark Knight”(2008/クリストファー・ノーラン) 42位 『Mr.インクレディブル』“The Incredibles”(2004/ブラッド・バード) 41位 『トゥモロー・ワールド』“Children of Men”(2006/アルフォンソ・キュアロン) 40位 『シリアナ』“Syriana”(2005/スティーヴン・ギャガン) 39位 『ロスト・イン・トランスレーション』“Lost in Translation”(2003/ソフィア・コッポラ) 38位 『マルホランド・ドライブ』“Mulholland Drive”(2001/デイヴィッド・リンチ) 37位 『花様年華』“In the Mood for Love”(2000/ウォン・カーウァイ) 36位 “Capturing the Friedmans”(2004/Andrew Jarecki) 35位 『天国の口、終りの楽園。』“Y Tu Mamá También”(2001/アルフォンソ・キュアロン) 34位 『ファインディング・ニモ』“Finding Nemo”(2003/アンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチ) 33位 『モンスーン・ウェディング』“Monsoon Wedding”(2002/ミラ・ナイール) 32位 『グラディエーター』“Gladiator”(2000/リドリー・スコット) 31位 『イラクのカケラを集めて』“Iraq in Fragments”(未)(2006/ジェームズ・ロングリー(James Longley) ) 30位 『アレックス』“Irreversible”(2002/ギャスパー・ノエ) 29位 『マルコヴィッチの穴』“Being John Malkovich”(2000/スパイク・ジョーンズ) 28位 『潜水服は蝶の夢を見る』“The Diving Bell and the Butterfly”(2007/ジュリアン・シュナーベル) 27位 『サイドウェイ』“Sideways”(2004/アレクサンダー・ペイン) 26位 『マイノリティ・リポート』“Minority Report”(2002/スティーヴン・ソダーバーグ) 25位 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』“Dancer in the Dark”(2000/ラース・フォン・トリアー) 24位 『28日後…』“28 Days Later... ”(2002/ダニー・ボイル) 23位 『マン・オン・ワイヤー』“Man On Wire”(2008/ジェームズ・マーシュ) 22位 『エデンより彼方に』“Far from Heaven”(2002/トッド・ヘインズ) 21位 『グッドナイト&グッドラック』“Good Night, and Good Luck”(2005/ジョージ・クルーニー) 20位 『ドニー・ダーコ』“Donnie Darko”(2001/リチャード・ケリー) 19位 『ユナイテッド93』“United 93”(2006/ポール・グリーングラス) 18位 “Let the Right One In”(2008/Tomas Alfredson) 17位 『ブロークバック・マウンテン』“Brokeback Mountain”(2005/アン・リー) 16位 『エターナル・サンシャイン』“Eternal Sunshine of the Spotless Mind”(2004/ミシェル・ゴンドリー) 15位 『ヒトラー 〜最期の12日間〜』“Downfall”(2004/オリバー・ヒルシュビーゲル) 14位 『4ヶ月、3週と2日』“4 Months, 3 Weeks & 2 Days”(2007/クリスティアン・ムンジウ) 13位 『THIS IS ENGLAND』“This Is England”(2007/シェーン・メドウス) 12位 『善き人のためのソナタ』“The Lives of Others”(2006/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク) 11位 『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』“Borat: Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan”(2006/ラリー・チャールズ) 10位 『ハンガー』“Hunger”(未)(2008/スティーヴ・マックイーン) 9位 『クイーン』“The Queen”(2006/スティーヴン・フリアーズ) 8位 『007/カジノ・ロワイヤル』“Casino Royale”(2006/マーティン・キャンベル) 7位 『ラストキング・オブ・スコットランド』“The Last King of Scotland”(2006/ケヴィン・マクドナルド) 6位 『スラムドッグ$ミリオネア』“Slumdog Millionaire”(2008/ダニー・ボイル) 5位 『チーム★アメリカ/ワールドポリス』“Team America: World Police”(2004/トレイ・パーカー) 4位 『グリズリーマン』“Grizzly Man”(未)(2005/ヴェルナー・ヘルツォーク) 3位 『ノーカントリー』“No Country for Old Men”(2007/ジョエル&イーサン・コーエン) 2位 『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』“The Bourne Supremacy”、“The Bourne Ultimatum”(2004、2007/ポール・グリーングラス) 1位 『隠された記憶』“Hidden(Cache)”(2005/ミヒャエル・ハネケ) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 100本(実はなぜか101本)のうち、日本で劇場公開されていない作品が19本あり、そのうちの5本は映画祭でもテレビやビデオでも未紹介の作品です。ただし、その中には、2008年作品が2本あり、2009年作品が2本あって、うち1本は日本公開が決定しています。 「ロンドン・タイムズ」年間ベスト100と同じ傾向がこのベスト100にも引き継がれていて(当然といえば当然ですが)、ハリウッド・メジャーの作品は少なくて、アート系の作品が多く、アメリカのインディーズを積極的に選んでいるわりには、アジア映画への目配りはあまり行き届いていない、という傾向があります。 この10年間の日本映画の収穫は、『バトル・ロワイヤル』と『千と千尋の神隠し』しかなく、韓国映画は『親切なクムジャさん』しかは入っていません。(だからといって、では何が入ってしかるべきかと考えみると、日本映画には日本ローカルな作品が多くて、日本ではウケても、外国人が観ても「傑作!」と思えるだろう、というような作品はなかなか見当たらないのですが……。) そのほか、コメディーに弱いわりには、ウディ・アレンは1本もなく、スパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリー、ノア・バウムバック、ウェス・アンダーソン、クリストファー・ノーラン、トッド・ヘインズ、ポール・トーマス・アンダーソンなどの作品を高く評価しているわりには、クリント・イーストウッドやマーティン・スコセッシを1本も入れていない、などという傾向も見受けられます。(意図的なものかどうかわかりませんが、イーストウッドをはじめ、ウディ・アレンもショーン・ペンもロベルト・ベニーニも俳優出身の監督の作品は1本もは選ばれていません。) この100本の中には、これは選ばれて当然というのはもちろんたくさん入っていますが、そうでないものも多く、ベスト3、ベスト5、ベスト10はちょっと首をかしげたくなる結果になっています。 ま、そうやって、あれこれ言い合うのが、こうしたベストを見る楽しみの1つなのですが……。 この10年を振り返ってみると、スパイク・ジョーンズやミシェル・ゴンドリー、ノア・バウムバック、ウェス・アンダーソン、クリストファー・ノーラン、トッド・ヘインズ、ポール・トーマス・アンダーソンといった顔ぶれが持て囃されているのを見てもわかるように、映画としてはわりと小粒な作品(小さな世界、小さなテーマ、卑近な関係性を扱った作品)が多くなってきたように思います。 中国映画や台湾映画、イラン映画の躍進は、もう10年前かさらに10年前だし、イギリス映画(スコットランド映画)も10年以上前になります。 韓流ブームは、ほぼこの10年の出来事ですが、上の結果を見る限りでは、ヨーロッパへは波及していないようです。 ドイツ映画の新しい動きも、この10年の出来事のはずで、その結果はベスト100にもわずかに散見されますが、アメリカのインディーズ勢には全然歯が立たず、周辺に蹴散らされているように見えます。 シンガポールやマレーシア、メキシコやルーマニアなど、新しいムーブメントが起きている国もありますが、これらもまだまだ世界的なレベルには達していないようです。 2000年代最初の10年の最後の年として、この年末から新年にかけて、もしくは来年の年末から再来年にかけて、同様の試みはあちこちでされると思います。そうしたものと比べて、自分の感覚に一番あった「ベスト」を探してみるのも面白いかもしれません。 なお、公式サイト(TIMES ONLINE)には、100本の単なるリストではなく、作品に対して個別にコメントがつけられています(英語)。 TIMES ONLINE:http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/film/article6902642.ece *この記事がなかなか興味深かった!と思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓ ↓ ![]() ↑ ↑ ↑ ↑ 応援してね! *当ブログ記事 ・10年間のベスト100 「デイリー・テレグラフ」の場合:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200911/article_19.html ・「ロンドン・タイムズ」 2008年ベスト100:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200812/article_21.html ・「ロンドン・タイムズ」 2007年ベスト100:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200712/article_20.html |
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