第57回サンセバスチャン国際映画祭 受賞結果!

 いろんな映画祭での高評価を見ると、リー・ダニエルズ監督の『プレシャス!』は、東京国際映画祭で観なくても、たぶん日本でも劇場公開されるんじゃないかと思っていたら、東京国際映画祭での上映は中止になってしまったそうです。どんな事情があったのかはわかりませんが、ひょっとすると日本での劇場公開に向けてのやりとりとの兼合い、でしょうか?

 そんな『プレシャス!』がまたも賞を受賞した、第57回サンセバスチャン国際映画祭の各賞の結果は以下の通りです。

 ◆オフィシャル・セレクション

 ◎グランプリ(Golden Shell):『南京!南京!』"City Of Life And Death"(中・香港) 監督:ルー・チュアン

 出演:劉燁、高圓圓、范偉、中泉英雄、宮本裕子、木幡竜
 物語:1937年。日中戦争の南京戦とその後を日本兵と中国人の視点を交互に切り替えつつ描いた作品。
 トロント国際映画祭2009、釜山国際映画祭2009上映作品。

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 ◎Silver Shell 監督賞:Javier Rebollo "La Mujer Sin Piano(Woman Without Piano)" (西・仏)

 物語:マドリッドに住む主婦のある1日の物語。主人公は、家族のために食事を用意することのみを生き甲斐としているような主婦だが、ある夜、そうした仕事を放棄して、家を飛び出してしまう……。

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 ◎Silver Shell 男優賞:Pablo Pineda "Yo, También" (西)(監督:Álvaro Pastor 、Antonio Naharro)

 物語:セビリアからやってきた34歳のダニエルは、ダウン症を抱えながら、初めて大学を卒業したヨーロッパ人であった。彼は、公共施設で仕事を始め、そこでラウラと出会い、恋に落ちる。
 監督のÁlvaro Pastorは、これまでに監督した短編映画で数々の賞を受賞してきた監督で、これが初長編。Antonio Naharroは、Álvaro Pastorの前作に役者/脚本家として参加していた俳優で、これが初監督長編。

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 ◎Silver Shell 女優賞:Lola Dueñas "Yo, También" (西) (監督:Álvaro Pastor 、Antonio Naharro)

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 ◎審査員賞/脚本賞:Andrew Bovell、Melissa Reeves、Patricia Cornelius、Christos Tsiolkas "Blessed"(オーストラリア) (監督:アナ・コッキノス)

 出演:フランシス・オコーナー、ミランダ・オットー
 物語:都会のストリートをさまよう7人の子供たちの一昼夜の物語。「祝福」されるのは、母と子の、愛と美と喪失と家に帰る道を見つけること。
 『ヘッド・オン!』(1998)のアナ・コッキノス監督最新作。

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 ◎審査員賞/撮影賞:Cao Yu『南京!南京!』(中) 監督:ルー・チュアン

 ◎審査員特別賞:"Le Refuge"(仏) 監督:フランソワ・オゾン

 出演:イザベル・カレ、メルヴィル・プポー、ルイ=ロナン・ショワジー
 物語:主人公は、恋人が麻薬の過剰摂取で死んだ後、自分が妊娠していることを知る。彼女は、恋人の弟に伴われて、海辺の家に身を落ち着ける。

 ◆New Directors(新人監督)部門

 ◎グランプリ(Kutxa-New Directors Award):“Le Jour Où Dieu Est Parti En Voyage(The Day God Walked Away)”(ベルギー) 監督:Philippe Van Leeuw

 物語:ブルガリア人の一家に家政婦として働いていたジャクリーヌは、ルワンダ大虐殺が起きたその日に、主人たちが逃げ出して、自分が見捨てられてしまったことを知る。屋根裏に隠れて、虐殺者たちをやり過ごした後、実家に帰ってみると、わが子が殺されているのを見つける。難を逃れるために森に逃げ込んだ彼女は、傷ついた男性を見つけ、一所懸命に彼を助けようとする……。

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 ◎“Sammen / Together”(ノルウェー) 監督:Matias Armand Jordal

 物語:母の死でバラバラになりかけた家族が、その喪失を乗り越えようとする物語。

 ◆観客賞(TCM-Audience Award)

 ◎観客賞:『プレシャス!』(米) 監督:リー・ダニエルズ
 物語:ハーレムに暮らす少女プレシャスは、無知と家庭内暴力に打ちのめされていたが、レイン先生と出会って、文字を覚え、自分自身を発見していく。
 出演:ギャブーレー・"ギャビー"・シディベ, ポーラ・パットン、モニク・アイムズ、レニー・クラヴィッツ
 サファイア(Ramona Lofton)の『プッシュ』が原作。
 サンダンス映画祭2009審査員グランプリ&観客賞&パフォーマンス賞(モニク・アイムズ)受賞。カンヌ国際映画祭2009 ある視点部門出品。
 トロント国際映画祭2009 観客賞受賞。

 ◎観客賞次点:“Desert Flower”(英・独・オーストリア) 監督:Sherry Hormann

 出演:リヤ・ケベデ、サリー・ホーキンス、クレイグ・パーキンソン、ミーラ・サイアル
 ワリス・ディリー(ソマリアの遊牧民の家に生まれ、13歳で結婚させられそうになって逃げ、モデルを経て、国連大使になった)が書いた、自らの半生に基づく同名原作の映画化。
 ベネチア国際映画祭ベネチア・デイズ出品作品。

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 ◆GAZTEA Youth Award

 ◎"Min Dît / The Children of Diyarbakir"(独・トルコ) 監督:Miraz Bezar

 物語:1990年代のクルディスタン。10歳の少女とその弟の両親が彼らの見ている前で軍隊に殺され、頼る人もない二人は、彼らだけで生き抜かなければならなくなる。

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 ◆Horizontes latinos部門(ラテンアメリカ映画コンペティション)

 ◎Horizontes Award:“Gigante”(ウルグアイ) 監督:Adrián Biniez

 物語:ハラは35歳の独身男性で、モンテビデオ郊外にあるスーパーマーケットのガードマンだった。彼の仕事は、監視カメラのチェックをすることだったが、彼のシフトは店が閑散としている時間帯だったので、暇を持て余していた。それが変わったのは、クリーン・スタッフとして25歳のフリアが入ってきてからで、彼は仕事中は監視カメラを通して彼女を見つめ、仕事が終わるとこっそり彼女の後を尾行するようにまでなってしまう。ある日、店に従業員のレイ・オフの噂が流れ、ハラは、フリアがその候補に挙がっているらしいことを知る……。
 ベルリン国際映画祭2009 銀熊賞(審査員特別賞&第1回作品賞)&アルフレッド・バウアー賞受賞。

 ◎Horizontes Award スペシャル・メンション:“Francia”(アルゼンチン) 監督:Israel Adrián Caetano

 物語:マリアナの両親は、別れたのにも拘らず、同じ屋根の下で暮らし続け、ケンカばかりしていた。彼らのケンカの間中、マリアナは、いつもヘッドホンで耳をふさいでいた……。
  監督のIsrael Adrián Caetanoは、“Crónica de una fuga”(2006)がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれている。

 ◆TVE-Anotner Look Award

 ◎TVE’s “Otra mirada” Award:『プレシャス!』(米) 監督:リー・ダニエルズ

 ◎TVE’s “Otra mirada” Award スペシャル・メンション:“La mujer sin piano (Woman Without Piano)”(西) 監督:Javier Rebollo

 ◆Films in Progress 16 Awards

 ◎Films in Progress Industry Award:“La Vida Útil”(ウルグアイ) 監督:Federico Veiroj

 ◎TVE Award:“Norberto Apenas Tarde”(ウルグアイ) 監督:Daniel Hendler

 ◎Casa de América Award:“Rompecabezas”(アルゼンチン) 監督:Natalia Smirnoff

 ◆Cinema in Motion Awards

 ◎“In the Sands of Babylon” 監督:Mohamed Al-Daradji

 ◆International Film School Meeting Awards

 ◎Panavision Award:“Segal”(イスラエル) 監督:Yuval Shani(テルアビブ大学)

 ◎The Second Prize:“Segal”(イスラエル) 監督:Yuval Shani(テルアビブ大学)

 ◎The Second Prize:“He Long Chuang Gang” (The Opposite Shore)”(中) 監督:Ao Shen(北京电影学院)

 ◎The Second Prize:“L’Merja(L’Etang)”(モロッコ) 監督:Azzarn El Mehdi(Esav – École Supériure Des Arts Visuels)

 ◆その他の賞

 ◎国際批評家連盟賞:“Los Condenados”(西) 監督:Isaki Lacuesta

 物語:マルティンは、アルゼンチンの活動家だったが、スペインに追放されていた。ラウルは、行方不明になった友人エゼキエルを捜すために、30年ぶりにマルティンを故郷に呼び戻すことにする。しかし、再会した二人はすべてがすっかり変わってしまったことを知る……。

 ◎Kutxa’s Social Programme Aid:“Yo También”(西) 監督:Álvaro Pastor 、Antonio Naharro

 ◎SIGNIS Award:『南京!南京!』(中) 監督:ルー・チュアン

 ◎SIGNIS Award スペシャル・メンション:“Yo También”(西) 監督:Álvaro Pastor 、Antonio Naharro

 ◎Guipuzcoan Blood-Donors’ Association Corresponding To The Solidarity Award:“Yo También”(西) 監督:Álvaro Pastor、Antonio Naharro

 ◎セバスチャン2009賞(Sebastian 2009 Award):“Contracorriente”(ペルー・コロンビア・仏・独) 監督:Javier Fuentes-León

 物語:ミゲルは、漁師で、もうすぐ子どもも生まれることになっていたが、サンチアゴとも不倫関係にあった。サンチアゴが水死した時、ミゲルは村のしきたりに則って、サンチアゴの葬儀を行なうことになったが、その儀式の最中にサンチアゴの霊がふたりの情事のことをみんなにばらすのではないかと気が気ではなかった……。

 ◎国際批評家連盟賞グランプリ:“Das Weisse Band”(独・オーストリア・仏・伊) 監督:ミヒャエル・ハネケ

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 ◎Donostia Award:イアン・マッケラン

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 受賞結果を見て、特に注目されるのは、やはり複数の賞を受賞した『南京!南京!』と“Yo También”でしょうか。

 既に物議をかもしている『南京!南京!』は、こうした評価を見ると、単に日本バッシングではなく、フェアな目で見て、優れた作品になっているのだろうと思われます。

 “Yo También”は、あらすじだけ読んでもいかにも高評価を受けそうな内容で、スペインで劇場公開されたら、スペインの映画賞の多くの部門でノミネートされそうです。

 そのほか、『プレシャス!』が高い評価を受けていること、ウルグアイ映画が何本も賞を獲得していること、が注目されます。

 『プレシャス!』は、サンダンス、トロント、サンセバスチャンと、高い評価を受け、今年のアメリカの映画賞レースの台風の目(『リトル・ミス・サンシャイン』や『JUNO/ジュノ』のような)、というか、ほぼ射程圏内にとらえていると言ってよさそうです。アカデミー賞作品賞ノミネートはまず間違いないところではないでしょうか。

 ウルグアイ映画は、ラテンアメリカ映画の中でも特に近年躍進を遂げている国で、個人的にも注目していて、“Gigante”くらいは日本でも映画祭上映があってもいいんじゃないかと期待しているんですが、いまだに上映が決まったという噂を聞きません。
 今年のラテンビート映画祭ではウルグアイ映画は1本も上映されませんでしたが、来年に期待、というところでしょうか……。
 ウルグアイ映画についての書きかけの記事もあるのですが、タイミングを見計らって、ブログにアップしたいと思います。

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 *当ブログ記事
 ・サンセバスチャン国際映画祭2009 ラインナップ その1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200908/article_26.html
 ・サンセバスチャン国際映画祭2009 ラインナップ その2:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200909/article_15.html
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html

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