上海国際映画祭2009 受賞結果発表!

 第12回上海国際映画祭が閉幕し、各賞の結果が発表になりました(6月21日)。

 ◆金爵奨(Jin Jue Award)コンペティション

 【金爵奨作品賞】
 ◎“Original”(デンマーク・スウェーデン) 監督:Alexander Brøndsted、Antonio Tublén

 物語:ヘンリーは、仲間はずれになりたくないという思いから、人の期待や機嫌ばかり気にするようになっていた。ある時、一緒にスペインでレストランをやらないかという親友のジョンが誘い乗って、国を出る準備を進めるが、物事はなかなかいい方向に向かわない。混乱のあまり、ヘンリーは何が現実で何がそうでないのかわからなくなってしまう。

 審査員のコメント:実に危険な匂いのするタイトルだが、この作品にはタイトルから想像される以上のものがある。明るく、感動的で、共感を込めて、人の心のバランスが崩れていく様子を描いているが、決してセンチメンタルなものにはなっていない。魚の水槽のオープニングから、主人公の頭の中でメキシコ人レスラーが宙返りするイメージへと移行する頃には、われわれは傑作に出会えたということを知るのだのだ。

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 【審査員グランプリ】
 ◎“尋我智美更登(The Search)”(中) 監督:Pema Tseden

 物語:映画の制作チームが、自分の映画の理想のキャストを求めて、チベット・オペラで有名な村にやってくる。監督たちは、主人公にふさわしいと思える娘を見つけるが、彼女は、自分の元カレを相手役に選んでくれるなら出演してもいいという条件を出してくる。監督たちは彼女の希望を呑み、彼女の元カレ捜しが始まる……。

 審査員のコメント:意欲的な作品で、躍動的であると同時に、瞑想的でもある。妥協のない作品であるが、笑いもあり、人間味もある。この作品を観たら、もっとチベットを描いた映画を観たいと思うだろう。

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 【審査員賞】
 ◎“白銀帝国(Empire of Silver)”(中・香港・台湾) 監督:クリスティーナ・ヤオ

 物語:1899年の中国(清朝末期)。中国のウォール街と呼ばれる山西省の金融街が舞台物語で、銀行家の父親と跡取りとなる息子の確執が激動の時代を背景に描かれる。
 出演:アーロン・クオック、チャン・ティエリン、ティン・ティーチャン、レイ・チェンユイ

 審査員のコメント:スケール感があり、ロケーションも壮大でありながら、細部まで丁寧に描きこまれている。この作品を観ると、あの時代に銀行家であるということがどういうことだったのかということを教えてくれる。

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 【監督賞】
 ◎Julius Sevcik “Normal”(チェコ・マケドニア)

 物語:1929年。ピーター・キュルテンが、女・子供を含む大勢の人を殺傷して、逮捕される。弁護士のヴェーナーは、彼の弁護を引き受け、彼が正気を失っていたという線で弁護を進めようとする。しかし、彼がピーターを深く知るにつれ、彼の心はバランスを失い始め、ついに彼自身が殺人を犯してしまう。社会全体がファシズムに飲み込まれようといつつある中で、ピーター・キュルテンは、時代の寵児のようにみなされていく……。

 審査員のコメント:シリアル・キラーものに新しい局面を切り開いた野心作。

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 【男優賞】
 ◎Sverrir Gudnason “Original”(デンマーク・スウェーデン) 監督:Alexander Brøndsted、Antonio Tublén

 審査員のコメント:彼は演じ、空想し、おどけて見せ、狂っているようにすら見える。われわれには、彼が本当に狂っているのかどうかわからないが、繊細で、ユーモアがあり、デリケートな演技のできる、才能あふれる若き男優が登場したということは確かである。

 【女優賞】
 ◎Simone Tang “Aching Hearts”(デンマーク) 監督:Nils Malmros

 物語:1960年代初頭。ジョナスとアグネットは、高校生。アグネットは、ジョナスに自分の思いを伝えようとするが、ジョナスは、それに気づかずにいて、アグネットを失ってしまいそうになる。友情と家族と試練と苦悩の物語。
 撮影は、俳優の成長を追う形で、3年かけて行なわれた。

 審査員のコメント:彼女はとても魅力的なため、主人公の青年と同様に、彼が物語の中で彼女に拒絶された時、観客であるわれわれも心に深い痛みを感じてしまう。

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 【脚本賞】
 ◎Fabio Bonifacci、ジュリオ・マンフレドニア 『やればできるさ』 監督:ジュリオ・マンフレドニア

 物語:1980年代のミラノ。イタリア全土で精神病院の全廃が進められる中、労働組合員である主人公は、左遷されて、元精神病患者たちのいる施設に放り込まれ、彼らの管理・指導を任される。彼は、元精神病患者たちの特技を生かして、ある事業を始める。事業は順調に軌道に乗り、すべてがうまく進んでいると思われたが……。
 イタリア映画祭2009上映作品。

 審査員のコメント:ウイットがあり、透明感がある脚本。政治哲学が社会的要求と交わり、何かを変えることもあるということを教えてくれる真の物語でもある。

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 【撮影賞】
 ◎Nicolas Guicheteau、Hans Meier “Nowhere Promised Land”(仏) 監督:Emmanuel Finkiel

 物語:若いビジネスマン、学生、子持ちのクルド人という3人の主人公が、約束の地を探してヨーロッパを旅する。ある者は列車に乗り、ある者はヒッチハイクをし、またある者はビザを持たないまま……。

 審査員のコメント:この受賞には異論もあるかもしれない。これは伝統的なやりかたではないが、見るものとそれがどのように見えるかということについて新たなビジョンを示してくれる。

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 【音楽賞】
 ◎Hyoung-woo Roh 『映画は映画だ』“Rough Cut”(韓) 監督:チャン・フン

 物語:ガンペはヤクザだが、映画が好きで、ひょんなことから俳優として映画に出演することになる。

 審査員のコメント:ギャング映画の新たな可能性を示した作品。

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 ◆亜州新人奨(Asian New Talent Award)コンペティション

 【作品賞】
 ◎“Scandal Makers”(韓) 監督:Hyung-Chul Kang

 物語:ナム・ヒョンスは、かつては人気アイドルだったが、今はラジオ番組のホストをして生計を立てている。ある時、彼の番組に、息子の父親を探しているという若きシングルマザー、ジュンナムからメッセージが届き、それを番組で取り上げたことから、彼の番組は人気番組となっていく。しかし、ジュンナムと彼女の6歳の息子は番組だけでなく、彼の家にまで押しかけてきて、彼こそ息子の実の父親なのだと言い始める……。

 審査員のコメント:この監督は、映画をコントロールする才能に長けている。様々な映像表現を用い、異なるユニークな登場人物のアンサンブルで喜劇的効果を引き出し、観客を心から楽しませるのに成功している。

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 【監督賞】
 ◎Zhao Ye  “Jalainur”(中)

 物語:ジャライノールは、ロシアの国境に近い中国北部の町で、かつて炭鉱で栄えていたが、今は廃鉱寸前となっている。チューさんとチーチョンは仲のいい仕事仲間だったが、チィーさんは、チーチョンとも別れ、30年以上働いた炭鉱を去って、国境近くに住む娘の元に身を寄せようとする。チーチョンは、チューさんを追うが、彼の決心は変えられず、空しさを抱いて、国境付近を彷徨う……。

 審査員のコメント:中国の最北部の町で撮影されたこの作品には、孤独と孤立が描かれている。映画自体はシンプルだが、観客に人生の意味について十分に考えさせてくれる。俳優の自然な演技もすばらしく、映画のテーマを強調し、普通の生活の中にこそドラマがあることを教えてくれる。

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 【審査員賞】
 ◎“Be Calm And Count to Seven”(イラン) 監督:Ramtin Lavafipour

 物語:イランの南にある島が舞台。13歳の息子を持つ男性は密航の手助けをして、家にはずっと帰っていなかった。密航者の中には、父親を捜しにやってきた彼の息子も混じっていた。ある男性はテヘランに妻と子供と暮らしていたが、妻にイランを出たいと言われて困り果てていた。また、若い花嫁は新婚初夜に夫に逃げられて、途方に暮れていた。

 審査員のコメント:この作品は、これまでのイラン映画の伝統を超越していて、撮影スタイルも革新的である。監督の努力が尋常なものでなかったことは、映画を見れば容易に知ることができる。監督にこの賞を贈るのは、監督に映画を作る情熱を失って欲しくなかったからで、もっともっと彼の作品を観てみたいと思うからだ。

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 【スチューデント・チョイス賞】
 ◎“Jalainur”(中) 監督:Zhao Ye

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 こんなにたくさんの賞がありながら、エントリーされていた日本映画は全く賞にたどりつくことはできませんでした。

 受賞結果を見ても、やっぱり地味な映画祭だったな、という印象はぬぐえませんが、いくつかの作品は既に国際的にも評価が高く、2009年度の映画賞レースを賑わわせることになりそうです。

 日本で劇場公開されそうな作品は1つあるか2つあるかという感じですが、アジア映画が多いこともあり、『やればできるさ』や『映画は映画だ』程度のクオリティーの作品が揃っているということであれば、いくつかの作品は何らかの形で日本でも観られる、と考えてよいのではないでしょうか。

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 *当ブログ記事
 ・上海国際映画祭2009 ラインナップ!:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200906/article_14.html
 ・映画祭&映画賞カレンダー 2009年5月~2010年5月:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200905/article_6.html

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