30年の重さと希望 レバノン映画 1943-2008

 レバノン映画『キャラメル』が、レバノン映画として日本で初めて劇場公開されたのに合わせて、レバノン映画について調べてみました。

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 下記リストは、基本的には、WikipediaのList of Lebanese Films(http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Lebanese_films)をベースにしています。

 なお、日本で紹介されているレバノン映画は10本にも満たないながら、作品名も監督名も知られていないレバノン映画のタイトルをずらずら並べたのは、映画の製作本数と国の政治経済状況とは無関係ではないということがあり、特に長らく戦禍にみまわれ続けたレバノンの状況がこういう形でも見て取れる、と考えたからです。

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 【レバノン映画1943-2008】

 ◆1943年
 ・“Baiate al Ward”

 ◆1946年
 ・“Kawkab: Amirat al Sahra”(監督:Ali Al Ariss)
 ・“Sayf fi Lubnan”(監督:Salah Badrakan)

 ◆1947年
 ・“Al Istiyaf fi Lubnan”(監督:Bishara Wakim)

 ◆1950年
 ・“Arouss Lubnan”

 ◆1953年
 ・“Azab al Damir”

 ◆1957年
 ・“Ila Ayn”(監督:Georges Nasser)
 ・“Al Lahn al Awal”
 ・“Zuhur Hamra”(監督:Michel Harun)

 ◆1958年
 ・“Liman Tashrouk al Chams”(監督:Joseph Fahdi)
 ・“Zikrayat”(監督:Georges Qa'i)

 ◆1959年
 ・“Hukam al-kadar”
 ・“Iyam min Amri”
 ・“Kalbain wa Jassad”
 ・“Sakhrat al Hub”

 ◆1960年
 ・“Al Akd al katel”
 ・“Le Festival de Baalbeck 1960”
 ・“Fi Kalbiha Nar”
 ・“Fil dar Ghariba”(監督:Joseph Fahdi)
 ・“Al Gharib al Saghir”(監督:Georges Nasser)
 ・“Lastu Muzniba”

 ◆1961年
 ・“Al Sam al Abiad”
 ・“Al Faris wa al Chaki”(監督:Georges Qa'i)
 ・“Ma'bad al Hub”

 ◆1962年
 ・“Abu Salim fil Medina”
 ・“Arabat al Shaitan”
 ・“Marhaba Ayuhal Hub”

 ◆1963年
 ・“Abu Salim Rasul Gharam”
 ・“Al Ayn al Sahira”
 ・“Al Bedawia al Achika”
 ・“Chouchou wa al Million”
 ・“Hikayat Gharam”
 ・“Lubnan fi Lail”
 ・“Al Muallem Lattouf”
 ・“Yasalam al Hub”

 ◆1964年
 ・“Afrah al Chabab”
 ・“Akd al Lulu”
 ・“Al Badawia fi Paris”
 ・“Bint Antar”
 ・“Fatinat al Jamahir”
 ・“Habibat al kul”
 ・“Hasna al Badia”
 ・“Inta Amri”(監督:Georges Qa'i)
 ・“Shadiat al Djebel”
 ・“Ya Lail”

 ◆1965年
 ・“Abu Salim fi Afriquia”
 ・“Ariet bila Khatiat”
 ・“Al Asal al murr”
 ・“Al Bank”
 ・“Al Bedawia fi Roma”
 ・“Bi Amr al Hub”
 ・“Biya el-Khawatim”(監督:ユーセフ・シャヒーン)
 ・“Al Jababira”
 ・“Al Jaguar al Saouda”
 ・“Lahib al Jassad”
 ・“Layali al Chark”
 ・“Al Millianara”
 ・“Al Rahiba”
 ・“Walidtu min Gadid”

 ◆1966年
 ・“Al Amil al Sirri 99”
 ・“Al Siba wa al jamal”
 ・“Chebab Taht al Chams”(監督:Samir Nasri)
 ・“Al Dalou'a”
 ・“Gharam fi Istambul”
 ・“Al Ghorfa Numero 7”
 ・“Itab”
 ・“Al Kahirun”
 ・“Layali al Helwa”
 ・“Lika fi Tadmur”
 ・“Lil nisa' Fakat”
 ・“Mawal al Akdam al Zahabiya”
 ・“Mawal”
 ・“Al Rahina”
 ・“Safar Barlek”(監督:Henry Barakat)
 ・“Shariah al Dabab”
 ・“Al Sharidan”
 ・“Sultana”
 ・“Wadi al Mot”

 ◆1967年
 ・“La Fille du gardien”(監督:Henry Barakat)

 ◆1968年
 ・“Broken Wings”

 ◆1969年
 ・“Al Hob al Kabir”(監督:Henry Barakat)

 ◆1971 年
 ・“Rimal min Dhahab”

 ◆1974年
 ・“Saat el Fahrir Dakkat, Barra ya Isti Mar”

 ◆1975年
 ・“Beyrouth ya Beyrouth”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“Habibati”
 ・“Kafr Kasem”
 ・“Majority Is Standing Strong”(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1976年
 ・“Kafarkala”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“The South Is Fine, How About You”(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1977年
 ・“Greetings to Kamal Jumblat”(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1978年
 ・“Lebanon... Why?”(監督:Georges Chamchoum)[ドキュメンタリー]
 ・“The Most Beautiful of All Mothers”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“Ninety”(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1979年
 ・“The Martyr”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“The Story of a Village and a War”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“We Are All for the Fatherland”(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1980年
 ・“The Procession”
 ・“Whispers”(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1981年
 ・“Beyrouth el Lika”

 ◆1982年
 ・“Little Wars”(監督:マルーン・バグダディ)
 ※『666号室』“Chambre 666”(仏・西独)(監督:マルーン・バグダディ/TVM)

 ◆1984年
 ・“Leila wa al Ziab”(監督:Heiny Srour)

 ◆1985年
 ・“Adolescente, sucre d'amour”
 ・“A Suspended Life”

 ◆1986年
 ・“Wild Flowers: Women of South Lebanon”

 ◆1987年
 ・“L'homme voilé”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“The Land of Honey and Incense”(監督:マルーン・バグダディ)
 ・“Leylouna (Notre nuit)”(監督:Yamine Khlat)

 ◆1988年
 ・“Beirut: The Last Home Movie”

 ◆1990年
 ※『地獄のレバノン/出口なき内戦』“Liban Medecins de Hommes ”(仏/TVM)(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1991年
 ※『無防備都市/ベイルートからの証言』“Out of Life(Hors la vie)”(仏・ベルギー・伊)(監督:マルーン・バグダディ)
 カンヌ国際映画祭審査員賞受賞

 ◆1992年
 ・“El-Aasar”
 ※『ブリジット/女が男を奪うとき』“La Fille de l'air(The Girl in the Air)”(仏)(監督:マルーン・バグダディ)

 ◆1993年
 ・“Operation Golden Phoenix”(監督:Jalal Merhi)

 ◆1994年
 ・“Ana El Awan (監督:Time Has Come)”

 ◆1995年
 ・“Credits Included: A Video in Red and Green”
 ・“Kanya Ya Ma Kan,Beyrouth”(監督:Jocelyn Saab)

 ◆1996 年
 ・“Kriegsbilder”
 ・“Taxi Service”

 ◆1997年
 ・“Merci Natex”(監督:Elie Khalifé)
 ・“El Havi”

 ◆1998年
 ・“Alger-Beyrouth: Pour mémoire”
 ・“Children of Shatila”
 ・“Phantom Beirut”(監督:Ghassan Salhab)
 ・“Wayn Yo! ”

 ・『西ベイルート』“West Beyrouth”(監督:ジアド・ドゥエイリ(Ziad Doueiri))
 *地中海映画祭2000にて上映

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 ◆1999年
 ・“Autour de la maison rose”(監督:Joana Hadjithomas、Khalil Joreige)
 ・“Beirut Palermo Beirut”
 ・“Civilisées”(監督:ランダ・シャハル・サッバーグ(Randa Chahal Sabbag))
 ・“Crème et crémaillère”
 ・“The Shower/La Douche”(監督:ミシェル・カンムーン(Michel Kammoun)) [短編]

 ◆2000年
 ・“S.L.Film”(監督:Shady Hanna)
 ・“Hostage: The Bachar Tapes”(監督:Souheil Bachar)

 ◆2001年
 ・“Taif Al-Madina”(監督:Jean Khalil)
 ・『彼女と彼、ヴァン・レオ』“Her and Him Van Leo”(監督:アクラム・ザアタリ)[ドキュメンタリー]
 *山形国際ドキュメンタリー映画際2003にて上映

 ◆2002年
 ・“La Chaise”
 ・“How I Love You”
 ・“When Maryam Spoke Out (Lamma Hikyit Maryam)”(監督:Assad Fouladkar )
 ・“Terra Incognita”(監督:Ghassan Salhab)
 ・“Le Vent de Beyrouth”(監督:Fouad Alaywan)

 ◆2003年
 ・“Les Cendres du phénix”

 ・『ラミアの白い凧』“The Kite (Le Cerf-volant)”(監督:ランダ・シャハル・サッバーグ) *アラブ映画祭2005にて上映

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 ・“Elie Feyrouz”(監督:Cynthia Choucair)[ドキュメンタリー/短編]
 ・“Lady of the Palace”(監督:Samir Habchi) [ドキュメンタリー]
 ・“Non métrage Libanais”(監督:Ghassan Koteit、Wissam Smayra)
 ・“Prêt-à-porter Imm Ali”
 ・“Ramad”
 ・“Safar el layaly”(監督:Hani Khalifa)(エジプト?)
 ・“Saving Face”(監督:Jalal Toufic)

 ◆2004年
 ・“Berlin Beirut”(監督:Myrna Maakaron)[短編]
 ・“Fi Haza al Bayt”(監督:Akram Zaatari) [短編]
 ・“In the battlefields”(監督:Danielle Arbid)
 ・“Le Matelas”(監督:Antoine Waked)
 ・『記憶の足音』“The Sound of Footsteps on the Pavement”(監督:レイン・ミトリ)[ドキュメンタリー]
 *山形国際ドキュメンタリー映画際2005にて上映

 ◆2005年
 ・“After Shave”(監督:Hany Tamba)[短編]
 ・“The Big Fall”(監督:Antoine Waked) [短編]

 ・『BOSTA』“Bosta”(監督:フィリップ・アークティンギ(Philippe Aractingi))
 *アラブ映画祭2008にて上映
 2006年度米国アカデミー賞外国語映画賞レバノン代表 レバノン映画がアカデミー賞に出品されるのはこれが初めて

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 ・“Zozo”(監督:Josef Fares)
 ・“Ça sera beau”
 ・“Giallo”(監督:Antoine Waked)[短編]
Massaker
 ・“A Perfect Day”(監督:Joana Hadjithomas、Khalil Joreige)

 ・“Dunia(Kiss Me Not on the Eyes)”(監督:Jocelyn Saab)(レバノン・エジプト・仏)
 シンガポール国際映画祭2006最優秀女優賞受賞(Hanan Tork)

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 ◆2006年
 ・“Boum... Tac”
 ・“De ma fenêtre, sans maison...”(監督:Maryanne Zéhil)
 ・“Le Dernier homme”(監督:Ghassan Salhab)

 ・『ファラフェル』“Falafel”(監督:ミシェル・カンムーン)
 *東京国際映画祭2007「アジアの風」部門にて上映

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 ・“Invisible Children”(監督:Carol Mansour) [ドキュメンタリー]
 ・“Quelle révolution”

 ◆2007年
 ・“Al Machhad al Akhir”(監督:Ghassan Estephan)
 ・“Fouads Aventure”(監督:Gioergo Piconi)

 ・『キャラメル』“Caramel”(監督:ナディーン・ラバキー(Nadine Labaki))
 *東京国際映画祭2008「アジアの風」部門にて上映、2009年ユーロスペースにて劇場公開
 2008年度米国アカデミー賞外国語映画賞レバノン代表

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 ・“Un homme perdu”(監督:Danielle Arbid)
 ・“Ghanoujet Baya”(監督:Elie F. Habib)

 ・『戦禍の下で』“Under the bombs(Sous les bombes)”(フィリップ・アークティンギ)(レバノン・仏・英)
 *SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008にて上映
 ベネチア国際映画祭2007 EIUC Human Rights Film Award受賞
 2007年度米国アカデミー賞外国語映画賞レバノン代表

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 ・“Khalass”(監督:Burhan Alaouie)
 ・“laylit eid”(監督:Caroline Milan)
 ・“Falling From Earth”(監督:Chadi Zeneddine)

 ◆2008年
 ・“Cedars of Lebanon”
 ・“I Can't Go Home”(監督:Joana Hadjithomas、Khalil Joreige)
 ・“KHALIK MA3E”(監督:Elie F. Habib)
 ・“Amour d’Enfants”(監督:Fares Khalil)
 ・“Melo Habibi”(監督:Hany Tamba)
 ・“Beirut Open City”(監督:Samir Habchi)

 ・“Je Veux Voir”(監督:Joana Hadjithomas、Khalil Joreige)(レバノン・仏)
 カンヌ国際映画祭2008 ある視点部門出品
 カトリーヌ・ドヌーブ出演

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 ・“33 Yaoum (33 Days)”(監督:Mai Masri、Mohammad Belhaj、Jean Chamoun)(レバノン・カタール) [ドキュメンタリー]
 アジア太平洋映画祭ドキュメンタリー部門エントリー
 ・“The One Man Village (Semaan Bilda'ia)”(監督:Simon El Habre)
 ベルリン国際映画祭2009 フォーラム部門出品
 ・"Niloofar"(監督:Sabine El Gemayel)(仏・イラン・レバノン)
 ベルリン国際映画祭2009 ジェネレーション部門出品

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 ◆レバノン映画以外で「レバノン」が登場する主な作品

 レバノン映画以外での「レバノン」は、「過酷な内戦」、「テロリスト」、「難民」といったものを意味する「記号」となっているようです。

 ・『ヒア&ゼア こことよそ』(1976/仏)(監督:ジャン=リュック・ゴダール)
 パレスチナ問題をテーマに、1970年にレバノンで撮影した映像が使われる。

 ・『野獣死すべし』(1980/日)(監督:村川透)
 元戦場カメラマンの主人公伊達邦彦がかつて取材したという設定としてのレバノン。

 ・『ミニストリー・オブ・ベンジェンス 炎の復讐』(1989/米)(監督:ピーター・マリス)
 元ベトナム帰還兵の牧師が、妻子を殺されたために復讐の炎を燃やし、レバノンのベカー高原でテロリストたちと対決する。

 ・『ネイビー・シールズ』(1990/米)(監督:ルイス・ティーグ)
 奪われたスティンガー・ミサイルを取り戻すために米海軍特殊部隊ネイビー・シールがレバノンで活躍する。

 ・“Un été à Beyrouth, 1990”(1990/仏)[TV](監督:ローラン・カンテ)
 レバノン戦争についてのドキュメンタリー

 ・『スパイ・ゲーム』(2001/米)(監督:トニー・スコット)
 主人公トム・ビショップ(ブラッド・ピット)がかつて活躍した土地としてレバノンが登場。

 ・『愛すべきベイルート アラブの歌姫』(2003/オランダ)(監督:ジャック・ジャンセン)
 内戦の間もレバノンにとどまって歌い続けたレバノン人歌手ファイルーズに関するドキュメンタリー

 ・『愛をつづる詩』(2004/米・英)(監督:サリー・ポッター)
 主人公が出会う男性がレバノン人(サイモン・アブカリアン)で、彼は、元々レバノンで医者をしていたが、祖国に幻滅して、いまはイギリスでコックをしているという設定。

 ・『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(2005/日)(監督:佐藤真)
 パレスチナ問題について語り続けた、エルサレム生まれのパレスチナ人文学批評家エドワード・サイードの墓はレバノンに建てられた。彼の同名自伝に基づくドキュメンタリー。

 ・『ユナイテッド93』(2006/米)(監督:ポール・グリーングラス)
 映画『ユナイテッド93』でハリド・アブダラが演じたハイジャックの実行犯ジアド・ジャラ(Ziad Jarrah)はレバノン出身(父親はレバノンの憲兵)。ハリド・アブダラはレバノン人ではなく、エジプト出身。

 ・『ボーフォート -レバノンからの撤退‐』(2007/イスラエル)(監督:ヨセフ・シダー)
 1982年以降、イスラエル軍が駐留したレバノン南部のボーフォート要塞を舞台に、「敵」の攻撃を受け、味方を次々と失いながら撤退の日(2000年5月)を待つイスラエル兵たちの姿を描く。ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。

 ・『戦場でワルツを』(2007/イスラエル)(監督:アリ・フォルマン)
 ベイルート近郊にあったパレスティナ人の難民キャンプ、サブラ・シャティーラにゲリラが逃げこんでいると考えたレバノンのキリスト教民兵勢力ファランジスト(ファランヘ党)は、その難民キャンプを掃討し、1000人以上の難民を虐殺する(「サブラ・シャティーラ大虐殺」)。
 それを当時イスラエル軍の兵士だったアリ・フォルマン自身が、かつての仲間を訪ねることによって、回想し、記憶の欠落部分を埋めていく(という物語をアニメーションで描く)。
 カンヌ国際映画祭2008コンペティション部門出品。第81回米国アカデミー賞外国語映画賞ノミネート。その他受賞多数。

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 ◆レバノン
 西に地中海、北東にシリア、南にイスラエルと国境を接する。
 隣国イスラエル、シリアとは、70年代以降ずっと緊張状態にあり、過激派ヒスボラの活動もあって、絶え間ない内戦が続いている。

 面積は10400㎢(161位)で岐阜県とほぼ同じ。人口は3777000人(123位)で静岡県とほぼ同じ。

 国民の95%がアラブ人でアラビア語を話す。かつてフランス領だったこともあってフランス語も広く通用する。
 イスラム教徒が約70%、キリスト教徒が約30%。宗派ごとに国会ん議席数も定められている。

 ◆レバノン小史
 レバノン民族という固有の民族は存在せず、元々はレバノン山地に集まった宗教も民族も異なるマイノリティーの民族の共同体。第一次世界大戦後、シリアから切り離されてフランス領となり、1943年、第二次世界大戦中に独立。

 戦後は金融や観光で経済的成長を遂げる。

 1975~76年 パレスチナ人の流入により宗教的バランスが崩れたためにレバノン内戦が起こる。
 シリア軍の進駐を招く。以後、15年間の内戦。

 1978年 イスラエル軍侵攻

 1982年 イスラエル軍の再侵攻によりレバノン戦争勃発

 1990年 シリア軍侵攻
 実質的にシリアの支配下におかれ、パックス・シリアナと呼ばれる15年間の平和を迎える。

 1996年 イスラエル軍による空爆

 2006年7月12日 イスラエル軍空爆
 8月14日 停戦

 2008年5月7日~ 親シリア派と反シリア派によりレバノン内戦

 2008年8月13日 シリアと国交正常化

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 ◆レバノンの映画監督

 ・マルーン・マグダディ Maroun Baghdadi(1950‐93)
 レバノンを代表する映画監督。フランスで映画を学び、80年代半ばにはフランシス・フォード・コッポラの元で働いたこともある。
 レバノン内戦をモチーフとした一連の映画を発表。後年はフランスで活躍した。日本でもカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『無防備都市/ベイルートからの証言』(1991)等が紹介されている。
 マーティン・スコセッシ監督を尊敬し、自身の映画の参考にもしている。
 1993年、レバノンのエレベーター・シャフトに落ちて、死去。
 参考:http://goliath.ecnext.com/coms2/gi_0199-7562254/Violence-and-masculinity-in-Maroun.html

 ・フィリップ・アークティンギ(1964- )
 ベイルートで生まれ、12年間フランスで過ごす。商業映画以外にも、レポート、ドキュメンタリー、パーソナル・フィルムなど数々の映画を発表している映像作家。
 2005年に内戦後初のミュージカル『BOSTA』を発表し、レバノンとアラブ諸国で大ヒットする。同作はアカデミー賞外国語映画賞レバノン代表にも選ばれる。2006年に再びレバノンが戦禍に見舞われると『戦禍の下で』(2007)を発表。
 “Beirut of Stones and Memories, (Beyrouth de pierres et de mémoire)”(1993)、“The Dream of the Acrobat Child”(1995)でもいくつもの映画賞を受賞している。

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 ◆レバノン人映画人/レバノン出身の映画人
 レバノン人で国際的に活躍している人、レバノン系移民の子でヨーロッパやアメリカで活躍している人、両親の一方がレバノン人である人、両親の仕事上の都合でレバノンで生まれた人、などがいます。

 ・デルフィーヌ・セイリグ(1932-1990)
 ベイルート生まれ。フランスで活躍した女優。
 ベイルートで生まれたのは、考古学者であった父親の仕事上の理由によるもの(らしい)。
 代表作に『去年マリエンバートで』『ミュリエル』『夜霧の恋人たち』『ミスター・フリーダム』『ブルジャワジーの秘かな愉しみ』『ロバと王女』『インディア・ソング』などがある。

 ・オマー・シャリフ(1932- )
 俳優。エジプト生まれ。父親がレバノン人。

 ・テレンス・マリック(1943- )
 『天国の日々』『シン・レッド・ライン』で知られるアメリカ生まれの監督・脚本家・プロデューサー。父親がレバノン人。

 ・ガブリエル・ヤレド(1949- )
 ベイルート生まれ。18歳までベイルートを過ごし、パリへ移る。
 法律を学んでいたが、20歳で音楽の道に進むことを決める。
 キャリアの最初は、シャルル・アズナブールらのためのオーケストラの作曲家。1979年にゴダールの『勝手に生きろ/人生』(1979)から映画音楽を手がけ始め、『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)で米国アカデミー賞作曲賞受賞、『リプリー』『コールド・マウンテン』でも同賞にノミネートされている。
 『カミーユ・クローデル』『愛人/ラマン』『シティ・オブ・エンジェル』『Shall We Dance』『善き人のためのソナタ』など、世界各国の多数の映画音楽を手がけている。

 ・トニー・シャルーブ(1953- )
 アメリカ生まれの俳優。父親がレバノン系。

 ・エリー・サマハ(Elie Samaha)(1955- )
 ベイルート生まれ。アメリカの製作会社Franchise Picturesのプロデューサー。
 主なプロデュース作品に、『フランキー・ザ・フライ』(1996)、『処刑人』(1999)、『追撃者』(2000)、『バトルフィールド・アース』(2000)、『エンジェル・アイズ』(2001)、『ドリヴン』(2001)、『プレッジ』(2001)、『奪還 DAKKAN』(2002)、『撃鉄 GEKITEZ』(2002)、『あなたにも書ける恋愛小説』(2003)、『セイブ・ザ・ワールド』(2003)、『トリスタンとイゾルデ』(2006)など。

 ・キャシー・ナジミー(1957- )
 『天使にラブソングを…』などで知られる女優。両親がレバノン系の移民で、アメリカで生まれる。アニメーションの声優としても活躍していて、代表作に『キング・オブ・ヒル』『ウォーリー』がある。

 ・キャサリン・キーナー(1960- )
 『ジョニー・スエード』『リビング・イン・オブリビオン』『マルコヴィッチの穴』『カポーティー』などで知られるアメリカの女優。母親がレバノン系。

 ・サイモン・アブカリアン(1962- )
 フランス生まれの俳優で、国際的に活躍をしている。両親とともに1971~77年までベイルートで過ごす。
 出演作には、アトム・エゴヤンの『アララトの聖母』(2002)、サリー・ポッターの『愛をつづる詩』(2004)、エリック・バルビエ“Le Serpent”(2006)、『カジノ・ロワイヤル』(2006)、『ペルセポリス』(2007)、ギャビン・フッド“Rendition”(2007)ソフィー・マルソー“La Disparue de Deauville”(2007)などあり、主演作も多い。

 ・エイミー・ヤスベック(1962- )
 アメリカの映画やテレビで活躍する女優。アメリカ生まれ。レバノン系。

 ・アレック・ケシシアン(1964- )
 ベイルートで生まれ、米国ニューハンプシャー州マンチェスターで育つ。
 ハーバード大学卒。『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』(1991)の監督として知られる。

 ・キアヌ・リーブス(1964- )もレバノン生まれで(地質学者であった父親(アメリカ人)の仕事上の理由らしい)、その後、トロントに移っている。本人はカナダ人であるという認識を持つ。

 ・サルマ・ハエック(1966- )
 メキシコ生まれで、アメリカで活躍する女優。父親がレバノン人(石油会社重役)。サルマ・ハエック自身もアラビア語を話すことができる。

 ・シャノン・エリザベス(1973- )
 『アメリカン・パイ』『最終絶叫計画』『ラブ・アクチュアリー』などで知られるアメリカの女優。父親がレバノン・シリア系。

 ・オマール・ナイーム(1977- )
 ヨルダンのアンマン生まれの映画監督。若くしてロビン・ウィリアムズ主演の『ファイナル・カット』(2004)の監督に抜擢される。その他の作品にドキュメンタリー“Grand Theater: A Tale of Beirut”がある。

 ・ジェナ・ディーワン(1980- )
 『ステップ・アップ』で知られるアメリカの女優。レバノン系。

 ・ウィリアム・ピーター・ブラッティ(1928- )
 『地上最大の脱出作戦』『暗闇でドッキリ』『エクソシスト』などで知られるアメリカ生まれの脚本家。両親がレバノン人。

 ・ウェントワース・ミラー(1972- )
 イギリス生まれで、アメリカで活躍する俳優。『プリズン・ブレイク』で知られる。母親がレバノン人の血を引く。

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 対外的には「ずっと過酷な戦争下にあった国」あるいは「テロ国家」というイメージ、国内的には、戦争が日常化していて国産映画のほとんどが戦争を背景にした映画であるということ(つまり日常が戦争であり、その悲惨な「日常」に潜むドラマを映画で描いているということだけれど)。

 レバノンをそんな国、そんなイメージの国にしたのは、実はこの30年のことであって、上に挙げたようなレバノン生まれの映画人やレバノン人の血を引く映画人の顔ぶれを眺めると、実は今あるような「レバノン」のイメージとはほとんど無縁であることがわかります。

 元々レバノンが「テロ国家」であったはずもなく、レバノン人全員がテロリストでもないんですね。当たり前ですが。

 心情的には非常に「遠い国」であるレバノンですが、キアヌ・リーブスやデルフィーグ・セイリグの生まれ故郷であり、サルマ・ハエックやキャサリン・キーナー、ジェナ・ディーワンやウェントワース・ミラーもレバノン系であると知ると、「レバノン」に対するイメージも若干変わってきます。
 彼らの活躍、そして『キャラメル』のような「戦争」が全く出てこないレバノン映画がふえてくると、レバノンに対する印象も変わり、ひいてはレバノンという国家自体も変わってくるのかもしれません。

 重すぎる30年ですが、わずかながらも希望の光も見えるのが現在のレバノンで、全世界で活躍するレバノン系映画人や新しいレバノン映画も、「レバノン」への心理的距離感を縮めるのに少なからず寄与している、と言ってもいいのではないでしょうか。

 ま、そうしたことを抜きにしても、スチール写真から窺われる独特の色彩感覚や美しい女優たち、セクシーさを感じさせるダンス・シーンは十分魅力的なのですが……。

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この記事へのコメント

2010年08月03日 23:27
初めまして。Kooと申します。
マイナーな映画を検索していると、よくこちらにたどり着きます。
素敵なブログですね。私のとは比較に
これからもいろいろ勉強させてください。
まずはご挨拶まで^^
2012年09月26日 00:56
これはとても素晴らしい映画ブログです。私が参照し、毎日読んでいる唯一のブログです。これからも、いい記事を書き続けていってください。

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    Excerpt: 渋谷のユーロスペースで上映してるレバノン産映画『キャラメル』を観てきました。 映画を見始めた時に間違って併設の『愛のむきだし』を上映してるスクリーンに入ってしまって、3分くらいそのことに気付かなかっ.. Weblog: cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー racked: 2009-03-08 23:21