『チェコ人形アニメの巨匠たち』@ユーロスペース

 『チェコ人形アニメの巨匠たち』を最終日にユーロスペースで鑑賞。開場時に待っていた人は70名くらいでしたが、上映時にはユーロスペース2が80~90%くらい埋まるくらいの入りになっていました。みなさん、しっかりチェックされてるんですね~。

 上映は『チェコ人形アニメの巨匠たち』の後に併映作品の『りんごのお姫様』(ブジェチスラフ・ポヤル)と『ゴーレム(パイロット版)』(イジー・バルタ)を上映。

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 『チェコ人形アニメの巨匠たち』はドキュメンタリー映画としては、チェコ・アニメーションに対する考察も特になく、チェコ・アニメーション史についての概説や、チェコ(スロヴァキア)でアニメーションが多く製作されるようになったバックグラウンド、チェコ(スロヴァキア)での40年代~90年代の製作状況の変化、などについても触れられていなくて、そういうものを期待すると、ちょっと残念な作品ではありました。

 でもまあ、この映画の価値はきっとそういうところにはないのでしょう。なんといっても、日本未公開の作品を含む、たくさんのチェコ・アニメ(の断片)を続けざまに観られたのはすばらしかったし、十分にチェコ・アニメの魅力を伝える作品にもなっていて、自分の好きな監督や作品を探すためのチェコ・アニメ・ガイドにもなっていました。大半の作品は日本では監督別・シリーズ別にDVDになっているので、そういう風にも(チェコ・アニメの指針としても)使えますよね(ただし、ブジェチスラフ・ポヤル作品はまだそんなにはDVD化されておらず、イジー・バルタ作品はVHSはありますが、まだDVD化はされていません)

 観客の方はチェコ・アニメのファンばかりだったようで、閉映後の様子を見た限りでは、みなさんけっこう満足して帰られたようでした。まあ、『りんごのお姫様』と『ゴーレム』(私は再見)をきれいなプリントで観られただけも十分というようなものでしたが。

 この映画は、劇場パンフも作られておらず、チラシには監督名も記載されておらず、公式サイトにも情報らしい情報が載っていません。鑑賞後、いろいろ思い出しながら、楽しみたかったのですが。
 仕方がないので、思い出し思い出ししながら、少しだけ記録に残しておきたいと思います(観ながらメモでも取っておけばよかったのですが)。

 邦題『チェコ人形アニメの巨匠たち』
 チェコ語タイトル“Zlatý vek Ceské loutková animace”
 英語タイトル“Golden Age of Czech Puppet Animation”
 2008年/チェコ共和国/68分
 日本語字幕:木村有子
 おそらくこれはテレビ用の作品で、この作品が劇場公開されたのは日本だけのようです。

 監督:ミロスラフ・カチョル Miroslav Kacor
 *ヘルシンキ・オリンピックで金メダルを獲得したチェコの陸上選手エミール・ザトペック(1922~2000)と彼の妻ダナ・ザトペコワに関する短編ドキュメンタリー“Emil A Dana Zatopkovi”(1997)、同じくエミール・ザトペックに関するテレビ映画“Pohádkový Péťa”(2002)などの監督作品がある。“Osudové okamžiky”(2003)、“Zapomenuté výpravy”(2005)などの著作もある。
 原案:ブジェチスラフ・ポヤル
 脚本:ミハル・ポトフラドスキー Michal Podhradsky
 *プロデューサーで、映画制作会社Animation Peopleの創設者。
 編集:アロイス・フィシャーレク
 撮影:イヴァン・ヴィート Ivan Vit
 *イジー・バルタ作品の撮影監督で『笛吹き男』『遺棄されたクラブ』『ゴーレム(パイロット版)』『屋根裏のポムネンカ』を手がける。『麻酔ブルース』ではポヤルとともに監督も務めている。
 音楽:カレル・ヘジュマン
 製作:アニメーション・ピープル Animation People
 *プロデューサー ミハル・ポトフラドスキーと撮影監督のイヴァン・ヴィートが作ったプロダクション。製作作品にマハル・ジャブカの『原始哺乳類』などがある。
 出演:ブジェチスラフ・ポヤル
 イジー・バルタ
 イジー・クビチェク Jiri Kubicek(文芸脚本・アニメーションの創作理論・アニメーションの分析などを手がける。『パットとマット』のアニメーターも務めた。)
 ミハエラ・メルトヴァー(チェコ・アニメーション作品専門の歴史学者)
 ヴラヂミール・オペラ Vladimir Opela(歴史学者、チェコの国立映画保管所の所長)
 ヴラスタ・ポスピシロヴァー Vlasta Pospísilová(シュヴァンクマイエルの『エトセトラ』『ジャバウォッキー』『対話の可能性』、バルタの『笛吹き男』、川本喜八郎『いばら姫またはねむり姫』などを手がけたアニメーター。監督作品としてアウレル・クリムトと共同で監督したオムニバス作品『フィムファールム』などがある。)
 ヤン・クロス Jan Klos(「ダーシェンカ」シリーズや「パットとマット」シリーズ、ブジェチスラフ・ポヤル作品を手がけるアニメーター。チェコ国立芸術アカデミー映画学部FAMU出身)
 ミハル・ジャプカ Michael Zabka(監督。代表作に『ババーン』『原始哺乳類』がある。)
 イジー・ヴォイタ Jiri Vojta(撮影監督。ズデネック・ミレル『コネコのいたずら』、トルンカ『真夏の夜の夢』などを手がける)
 イジー・ノヴォトニー(歴史学者、教育者)

 ◆登場作品
 イジー・トルンカ 『チェコの四季』『皇帝の鶯』『悪魔の水車小屋』『コントラバス物語』『草原の歌』『楽しいサーカス』『バヤヤ』『チェコの古代伝説』『善良な兵士シュヴェイク~コニャックの巻』『真夏の夜の夢』『電子頭脳おばあさん』『手』

 ヘルミーナ・ティールロヴァー 『アリのフェルダ』『おもちゃの反乱』『結んだハンカチ』『ベツレヘムの星』

 カレル・ゼマン 『クリスマスの夢』『プロコウク氏 靴屋はいやだの巻』『水玉の幻想』『カレル・ゼマンと子供たち』
 ※カレル・ゼマンのトリック撮影の説明は『カレル・ゼマンと子供たち』の中から引用。

 ヤン・シュヴァンクマイエル 『対話の可能性』『セルフポートレート』『アリス』

 ルボミール・ベネシュ 『パットとマット』「大掃除」(?)
 ※人形の動きの仕組みを示すためにパットとマットの人形が使われる。

 ブチェチスラフ・ポヤル 『飲みすぎた一杯』『ライオンと歌』『ぼくらと遊ぼう! 出会いの話』『りんごのお姫様』

 イジー・バルタ 『笛吹き男』『遺棄されたクラブ』『セルフポートレート』

 ◆memorable quotes
 ・そもそも始まりは、ヘルミーナ・ティールロヴァーの夫カレル・ドダルで、彼がCMで人形アニメーションを使った。ティールロヴァーはカレル・ドダルの2番目の妻イレナが作った映画会社でイレ・フィルムで映画を作るようになり、カレルとイレが国外に去っても映画を作り続けた。

 ・東のディズニーに匹敵するようなスタジオを作るべく、トリック・ブラザーズが作られ、既に4本の作品を作っていたイジー・トルンカに任された。
 トルンカは詩人のネズヴァルと組んで作品を作っていった。
 トルンカは、のちに、人形アニメを作るために、別のスタジオに移るべく、トリック・ブラザーズを去った。

 ・イジー・トルンカは、『コントラバス物語』のヒロインを『草原の歌』にも使った。

 ・ティールロヴァーは、みんながもう彼女は引退するんじゃないかと思った頃に、新たに『結んだハンカチ』を作った。

 ・イジー・トルンカの『手』はアカデミーでも高く評価された。(たぶんこれ(http://umikarahajimaru.at.webry.info/200711/article_6.html)のこと)

 ・ヤン・シュヴァンクマイエルはチェコスロヴァキアよりも外国で人気がある。

 ・アヌシーでアンケートを取ったらみんながシュヴァンクマイエルの『対話の可能性』をトップに挙げた。(たぶんこれ(http://umikarahajimaru.at.webry.info/200701/article_27.html)のこと)

 ・イジー・バルタは24センチではなく40センチの人形を使う異色の作家だ。

 ・この映画の終わりのナレーションは、「再びチェコ・アニメーションに黄金期は来るだろうか」というもので、それにイジー・バルタが答えて、「チェコ・アニメーションの黄金期は過去のものだね」とかなんとか。

 ◆参考(になる)文献
 ・『チェコアニメの巨匠たち』(エスクァイア マガジン・ジャパン):ヘルミーナ・ティールロヴァー、イジー・トルンカ、カレル・ゼマンについて

 ・『アニメーターズ1 カレル・ゼマン』(日本出版社):カレル・ゼマンについて
 ・『夜想34 パペット・アニメーション』(ペヨトル工房):イジー・トルンカ、ヤン・シュヴァンクマイエル、イジー・トルンカについて
 ・『夜想35 チェコの魔術的芸術』(ペヨトル工房):「パットとマット」、イジー・バルタ、イジー・トルンカ、ルボミール・ベネシュ、ヤン・シュヴァンクマイエル、ブジェチスラフ・ポヤル、カレル・ゼマンについて
 ・『チェコアニメ新世代』(エスクァイア マガジン ジャパン):イジー・クビチェフ、ヤン・クロス、ミハル・ジャブカについて

 ◆参考サイト
 ・prahakko日記:http://blog.ceska-japonka.com/
 ・チェコのヤポンカ:http://www.ceska-japonka.com/

 ◆当サイト関連記事
 ・イジー・トルンカ『悪魔の水車小屋』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200703/article_21.html
 ・イジー・トルンカ『楽しいサーカス』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200703/article_7.html
 ・イジー・トルンカ『電子頭脳おばあさん』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200703/article_14.html
 ・イジー・トルンカ『手』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200702/article_26.html
 ・カレル・ゼマン『クリスマスの夢』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200709/article_14.html
 ・カレル・ゼマン『プロコウク氏 靴屋はいやだの巻』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200709/article_22.html
 ・カレル・ゼマン『水玉の幻想』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200706/article_23.html
 ・カレル・ゼマン『カレル・ゼマンと子供たち』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200708/article_23.html
 ・ヤン・シュヴァンクマイエル『対話の可能性』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200703/article_27.html
 ・ブジェチスラフ・ポヤル『飲みすぎた一杯』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200704/article_22.html
 ・ブジェチスラフ・ポヤル『ぼくらと遊ぼう! 出会いの話』:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200709/article_16.html

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