アカデミー賞各部門の名称について

 もうすぐ米国アカデミー賞のノミネーションが発表されますが、その前に各部門の日本語訳についてまとめておきたいと思います。媒体によって異なる日本語訳表記が使われるのは大体以下の11部門です。
 他の映画賞と表記を統一する必要性やオリジナルの部門名の変化もあって、以前はもうちょっと混乱していたように思うのですが、このところ日本語表記も大分落ち着いてきたようです。
 【日本語表記】は、各媒体のアカデミー賞発表時に使っているものを書き出してみましたが、個々の記事では別の表記を使っている場合があります。

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 ・Best Achievement in Art Direction
 1928~39 Best Art Direction
 1940 Best Art Direction,color、Best Art Direction, Black-and-White
 1941~46 Best Art Direction-Interior Decoration, Color、Best Art Direction-Interior Decoration, Black-and-White
 1947~56 Best Art Direction-Set Decoration, Color、Best Art Direction-Set Decoration, Black-and-White
 1957 Best Art Direction-Set Decoration
 1958 Best Art Direction-Set Decoration, Black-and-White or Color
 1959~66 Best Art Direction-Set Decoration, Color、Best Art Direction-Set Decoration, Black-and-White
 1967~2003 Best Art Direction-Set Decoration
 2004~ Best Art Direction
 映画美術(Art Direction)に対して贈られる賞で、1946年度までは室内装飾のみが対象となっていましたが、1947年度以降は、映画美術全般が対象となっています。1947年度以降はアート・ディレクション(Art Direction)とセット装飾(Set Decoration)が併記され、2004年度以降アート・ディレクションのみが部門名となっていますが、1947年以前も2004年以降もアート・ディレクションとセット装飾の2名(以上)が受賞対象者となることは変わっていません。キネマ旬報がこの賞に対して「美術・装置賞」という表記をしていることにはそういう意味があります。
 1940~56年度、1959~66年度はカラー部門と白黒部門が分かれていました。
 【日本語表記】
 キネマ旬報:美術・装置賞
 eiga.com:美術賞
 allcinema:美術賞
 Wikipedia:美術賞
 WOWOW:美術賞

 ・Best Achievement in Costume Design
 1948~56 Best Costume Design, Color、Best Costume Design, Black-and-White
 1957 Best Costume Design
 1958 Best Costume Design Black-and-White or Color
 1959~66 Best Costume Design, Color、Best Costume Design, Black-and-White
 1967~ Best Costume Design
 1948~56年度、1959~66年度はカラー部門と白黒部門が分かれていました。
 「花嫁衣裳」などとしてつかう「いしょう」は、元々は「衣裳」が正しく、「裳」が常用漢字に入らなかったために、「衣装」を代用として使うことになりました。ちなみに、ワダエミさんは、体をトータルに装うという意味で「衣装」という表記を使っているそうです(ワダエミの衣裳世界ブログ:http://blog.mbc.co.jp/wadaemi/2008/07/post-6b73.html)。
 【日本語表記】
 キネマ旬報:衣裳デザイン賞
 eiga.com:衣装デザイン賞
 allcinema:衣裳デザイン賞
 Wikipedia:衣装デザイン賞
 WOWOW:衣装デザイン賞

 ・Best Achievement in Sound
 1930~1959 Best Sound,Recording
 1958~2002 Best Sound
 2003~2007 Best Sound Mixing
 2008~ Best Sound
 優れた録音(Recording)と音響ミキシング(Sound Mixing)を評価する賞で、録音技師(プロダクション・サウンド・ミキサー(Production Sound Mixers):撮影現場での音や効果音を録音するパート)とリレコーディング・ミキサー(Re-recording Mixers:ポスト・プロダクションで台詞・音楽・効果音から最終的なサウンドトラックを作り出すパート)に贈られる。
 【日本語表記】
 キネマ旬報:録音賞
 eiga.com:音響賞
 allcinema:音響賞(調整)
 Wikipedia:録音賞
 WOWOW:録音賞

 ・Best Achievement in Sound Editing
 ※1963~67、1975 Best Sound Effects
 1977 Sound Effects Editing
 1979 Sound Editing
 1981~99 Sound Effects Editing
 2000~ Sound Editing
 優れた音響編集(Sound Editing:サウンド・ミキシングに先立って、録音された音を選んだり、整理したりするパート)や音響デザイン(Sound Design:求める音を得るために音響要素を操作するパート)を評価する賞で、音響編集監督(Supervising Sound Editors of the film)もしくは音響デザイナー(Sound Designers)に贈られる。
 【日本語表記】
 キネマ旬報:音響編集賞
 eiga.com:音響編集賞
 allcinema:音響賞(編集)
 Wikipedia:音響編集賞
 WOWOW:音響編集賞

 ・Best Achievement in Music Written for Motion Pictures, Original Song
 優れたオリジナル・ソングを表彰する賞で、作曲者と作詞者が受賞対象者となります。歌っている俳優や歌手は作曲も作詞もしていない場合は受賞者とはなりません。
 審査の対象となるのは、歌と音楽で構成された楽曲で、その映画のために作曲されたオリジナル作品であること、映画本編もしくはエンドロールで最初に流れる曲、と決まっています。
 「主題歌賞」という訳語が使われることもありますが、作品に特定の「主題歌」が存在しなかったり、最も優れたと評価される楽曲が「主題歌」ではなかったり、1つの作品から複数のノミネーションが出ることもあって、「主題歌賞」という訳語はそぐわなくなっています。「楽曲賞」という訳語が当てられている場合もあります。
 【日本語表記】
 キネマ旬報:歌曲賞
 eiga.com:歌曲賞
 allcinema:歌曲賞
 Wikipedia:歌曲賞
 WOWOW:歌曲賞

 ・Best Achievement in Music Written for Motion Pictures, Original Score
 ※1934~37 MUSIC (Scoring)
 1938~40 MUSIC (Original Score)
 1941 MUSIC (Score of a Dramatic Picture)、MUSIC (Scoring of a Musical Picture)
 1942~56 MUSIC (Score of a Dramatic or Comedy Picture)、MUSIC (Scoring of a Musical Picture)
 1957 MUSIC (Score)
 1958~61 MUSIC (Score of a Dramatic or Comedy Picture)、MUSIC (Scoring of a Musical Picture)
 1962~67 MUSIC (Original Music Score)、MUSIC (Scoring of Music-adaptation or treatment)
 1968~69 MUSIC (Original Music Score)、MUSIC (Score of a Musical Picture-original or adaptation)
 1970 Original Score、Original Song Score
 1971~75 Original Score、Original Song Score and Adaptation
 1976~77 Original Score、Original Song Score and Its Adaptation or Adaptation Score
 1978 Original Score、Adaptation Score
 1979 Original Score、Original Song Score and Its Adaptation or Adaptation Score
 1980~81 Original Score
 1982 Original Score、Original Song Score and Its Adaptation or Adaptation Score
 1983 Original Score、Original Song Score or Adaptation Score
 1984 Original Score、Original Song Score
 1985~94 Best Original Score
 1995~98 Best Original Dramatic Score、Best Original Musical or Comedy Score
 1999~ Best Original Score
 定義としては「劇中曲という形を取っている音楽の大きなまとまりの中で最も優れたもの(the best substantial body of music in the form of dramatic underscoring)」を表彰の対象として、その作曲者に贈られます。
 過去には、ミュージカル部門とドラマ/コメディー部門が分かれていたり(1958~61)、ミュージカル/コメディー部門とドラマ部門が分かれていたり(1968~69、1995~98)、楽曲部門と歌曲部門が分かれていたり(1970~77、79、82~84)、作曲部門と編曲部門に分かれていた(1962~67、1978)こともありました。
 【日本語表記】
 キネマ旬報:作曲賞
 eiga.com:作曲賞
 allcinema:作曲賞
 Wikipedia:作曲賞
 WOWOW:作曲賞

 ・Best Documentary, Features
 【日本語表記】
 キネマ旬報:長編ドキュメンタリー賞
 eiga.com:長編ドキュメンタリー賞
 allcinema:ドキュメンタリー長編賞
 Wikipedia:長編ドキュメンタリー映画賞
 WOWOW:長編ドキュメンタリー賞

 ・Best Documentary, Short Subjects
 【日本語表記】
 キネマ旬報:短編ドキュメンタリー賞
 eiga.com:短編ドキュメンタリー映画賞
 allcinema:ドキュメンタリー短編賞
 Wikipedia:短編ドキュメンタリー映画賞
 WOWOW:短篇ドキュメンタリー賞

 ・Best Animated Feature Film of the Year
 【日本語表記】
 キネマ旬報:長編アニメーション賞
 eiga.com:長編アニメーション賞
 allcinema:長編アニメ賞
 Wikipedia:長編アニメ賞
 WOWOW:長篇アニメ映画賞

 ・Best Short Film, Animated
 ※1931~70 Short Subjects (Cartoons)
 1971~73 Short Subjects (Animated Films)
 1974~ Short Films (Animated Films)
 【日本語表記】
 キネマ旬報:短編アニメーション賞
 eiga.com:短編アニメーション映画賞
 allcinema:短編アニメ賞
 Wikipedia:短編アニメ賞
 WOWOW:短篇アニメ映画賞

 ・Best Short Film, Live Action
 ※1932~35 Short Subjects, comedy、Short subjects, novelty
 1936~37 Short Subjects, one-reel、Short Subjects, two-reel、Short Subjects, color
 1938~56 Short Subjects, one-reel、Short Subjects, two-reel
 1957~70 Short Subjects, Live Action Subjects
 1971~ Best Short Film, Live Action
 【日本語表記】
 キネマ旬報:短編実写賞
 eiga.com:短編実写映画賞
 allcinema:短編実写賞
 Wikipedia:短編映画賞
 WOWOW:短篇実写映画賞

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 混乱を与えるのは、Sound部門の2賞で、Soundを録音賞、Sound Editingを音響賞とする媒体と、Soundを音響賞、Sound Editingを音響編集賞とする媒体があったりして、音響賞を受賞した作品がいったいどれなのかわからなくなってしまいます。
 アカデミー賞の結果を他の日本語サイトからコピーするだけであれば、現在は(eiga.com以外)ほとんどが「録音賞」となっているからいいのですが、アメリカの情報サイトからの情報を頼りに訳そうとすると(一般的な呼称を知らないと)“Sound”を「録音」とはなかなか訳せないものです。
 「録音賞」「音響編集賞」は主要部門ではないので、有名な日本人が受賞でもしない限りこの訳語が定着するのはなかなか難しいかもしれません。

 上に書いたほかに、「衣裳デザイン賞」「美術賞」「歌曲賞」「作曲賞」をそのままカタカナで「コスチューム・デザイン賞」「アート・ディレクション賞」「オリジナル・ソング賞」「オリジナル・スコア賞」としているものや、「衣裳デザイン賞」をただ「衣装賞」としているものも見かけたりします。

 当ブログでは、ほぼ「キネマ旬報」の表記に準拠しています。

 【おまけ】
 「モントリオール世界映画祭(Montréal World Film Festival/Festival des films du monde de Montréal)」は、普通であれば映画祭名を「国際(International)」とすべきところを「世界(World)」を使っている珍しい映画祭ですが、これまで日本のマスコミでは「モントリオール国際映画祭」を普通に使っていました(少数派ながら「モントリオール世界映画祭」と書いている媒体・書き手もありましたが)。それが、『おくりびと』のグランプリ受賞で「モントリオール世界映画祭」が一気に多数派になってしまいました(「モントリオール映画祭」という呼称を使っている媒体もありますが)。
 これまでも同映画祭で賞を受賞した日本映画はいくつもあったのに(『未完の大局』『長い散歩』がグランプリ受賞、『東京夜曲』が監督賞受賞、『いつか読書する日』が審査員特別賞受賞、『愛を乞うひと』が国際批評家連盟賞受賞、『鉄道員』が主演男優賞受賞)、不思議なものです。まあ、作品の公開規模、公開のタイミング、作品の評価なども関係あるのかもしれませんが。
 これまで正式名称を知りながら「モントリオール国際映画祭」を使ってきた私としてはいまさら「モントリール世界映画祭」という呼び名を使うのにはちょっと抵抗もありますねえ。

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