部屋の壁でできるアニメーション BLU “Walking”
“MUTO”の先立つBLUのグラフィティ・アニメーション。といっても、この作品は、ストリートの壁ではなく、アトリエの白い壁に描かれています。
【物語】
黒いシルエットが右に歩いていき、帽子をとって、地面に置く。
男は拳銃自殺して倒れ、帽子の中から別の男が這い出てくる。
彼が胸を左右に開くと、中からより大きな男が出てくる。
男は、部屋の角に歩いていく。
すると、体が両側に広がって、2つの体になるが、完全には離れきらずに、右の男が左の男を引っ張って歩き出す。
「2人」はケンカして、2つに裂けるが、中からまた別の男が出てくる。
男は、右に歩いていき、4つんばいになる。
すると、尻の間からもう1つ頭が現われ、逆立ちのような形でヒーターの上を横切る。
ヒーターを越えたところで、尻から出ていた方の頭が、服を脱ぐようにして、その体を脱ぎ捨てる。
男は、壁に開いた“入口”を越えようとするが、頭がもげて、落ちる。
落ちた頭から手足が伸びて、人の体になり、さらに右へ歩いていく。
彼は、立ち止まったかと思うと、前後に3つの体に分かれ、前後の体が倒れ、真ん中で前屈していた体だけが残る。
彼はヒーターを飛び越え、“入口”の上部に左手を伸ばす。
手のひらを地面に下ろすと、中から黒いシルエットが現われる。
*ここまでが1分14秒で、作品としては全く同じものがもう一度ループする。
【コメント】
1回のループで1つの部屋を2周していることになります。
最初の壁面を1とし、順に2、3、4と番号を振っていくと、3の壁面がヒーターのある面で、4の面が“入口”のある面になります。
これを上の【物語】に当てはめると次のようになります。
[1]黒いシルエットが右に歩いていき、帽子をとって、地面に置く。
男は拳銃自殺して倒れ、帽子の中から別の男が這い出てくる。
彼が胸を左右に開くと、中からより大きな男が出てくる。
男は、部屋の角に歩いていく。
すると、体が両側に広がって、2つの体になるが、完全には離れきらずに、
[2]右の男が左の男を引っ張って歩き出す。
「2人」はケンカして、2つに裂けるが、中からまた別の男が出てくる。
男は、右に歩いていき、
[3]角を越えたところで、男は4つんばいになる。
すると、尻の間からもう1つ頭が現われ、逆立ちのような形でヒーターの上を横切る。
[4]ヒーターを越えたところで、尻から出ていた方の頭が、服を脱ぐようにして、その体を脱ぎ捨てる。
男は、壁に開いた“入口”を越えようとするが、頭がもげて、落ちる。
[1]落ちた頭から手足が伸びて、人の体になり、さらに右へ歩いていく。
[2]彼は、角を越えたところで、立ち止まったかと思うと、前後に3つの体に分かれ、前後の体が倒れ、真ん中で前屈していた体だけが残る。
彼は歩いていって、角を越え、
[3]ヒーターを飛び越え、
[4]“入口”の上部に左手を伸ばす。
[1]手のひらを地面に下ろすと、中から黒いシルエットが現われる。
後半の2周目は、ヒーターと入口が出てくるので、2周目だとわかるのですが、1周目と比べて、展開が速いと感じられます。どうやらこれは1巡目の人物は小さく描いていたのに、後に行くにしたがってどんどん大きくなり、後半になると、大跨ぎで歩いてあっさりと1つの壁面を通り過ぎるために起こる錯覚のようです。比較対照物がない白い壁に描かれているために、大きさの感覚が失われてしまうんですね。
展開としては、人が左右に(この作品では右だけ)動き続けて、新しい人が別の人の体を破って出てくるということ(BLU作品の典型的パターン)が繰り返されています。
他の作品と比べると、①体が左右に広がってシャム双生児になる、②尻からもう1つの頭が出て、そのままどちらが上か下かわからないような状態で歩いていく、③1つの体がいきなり前後3つの体に分かれる、という動きがユニークで面白いでしょうか。
全体としては、黒いシルエットの手品師のエンドレスのマジックとみなすこともできそうです。
◆作品データ
2007年/伊/2分35秒
台詞なし/日本語字幕なし
グラフィティ・アニメーション
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※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ
・「tantano 短編映画をたのしむ」INDEX
・「tantano 短編映画をたのしむ」 人気動画 トップ39!
◆アーティストについて
BLU
イタリアのボローニャを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、画家、壁画作家(muralist)、アニメーション作家。
1990年代半ば、15歳からグラフィティ・アートを描き始める。当時、イタリアではグラフィティ・アートのブームがあり、雑誌も出版されていて、大いに刺激を受ける。
元々は無許可で、ストリートや廃屋などに夜中に描くことが多かった。初期に描いたものはほとんど残っておらず、「ストリートなどに描いたものは消されて当然だし、描いた壁や建物が取り壊されてしまうことは決して苦痛ではない」、と語っている。
古い建物、古い壁に触発(「古い壁が語りかけてくる」)されて描くことも多い、という。
最近では依頼を受けて、プロジェクトとしてビルの外壁などに絵を描くことが
多い。
2006年に映像作家ロレンツォ・フォンダLorenzo Fonda(http://www.lorenzofonda.com/index.html?id=hom)からBLUのドキュメンタリー“Megnica”を撮らせてほしいという申し出があり、彼と一緒にメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、アルゼンチンを旅する(http://www.megunica.org/news.php)。 “Megnica”は2008年国際アムステルダム映画祭(http://www.dnerve.com/IAFF_2008/films/competition.html)で上映されて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。BLU自身、この旅はとてもインスパイアされるものが多かったと語り、最新ウォール・アニメーション“Muto”もブエノスアイレスで制作している。
2008年6月 第一画集“BLU-2004 2007”を出版。
画家Ericailcane(http://www.ericailcane.org/)とともに(壁画の)仕事をすることが多い。
壁画作品は、公式サイトの「WALL S」(http://blublu.org/sito/walls/walls.htm)で見ることができる。
動画作品は、vimeo(http://www.vimeo.com/blu/videos)やYou Tube(http://jp.youtube.com/user/notblu)に自ら投稿している。
公式には、プロフィール、作品年譜などは発表していない(生年すら明らかになっていませんが、1980年前後の生まれで、現在30歳くらいのようです)。
【フィルモグラフィー】
・2005年 “Child”
・2006年 “ffwd”
・2006年 “fino”
・2006年 “Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)[ミュージック・ビデオ]
・2007年 “LETTER A” [グラフィティ・アニメーション]
・2007年 “WALKING” [グラフィティ・アニメーション]
・2008年5月 “MUTO” [グラフィティ・アニメーション]
・2009年9月 “COMBO” [David Ellisとの共作]
・2010年7月 “BIG BANG BIG BOOM” [グラフィティ・アニメーション]
2008年以前の作品(制作年不詳)
・No.1(手回しカメラ)
・No.3(ネクタイ)
・No.4(腸があふれ出てきて困る)
・No.7(輪切り)
・No.8(ゲップ)
・No.10(脳の入れ替え)
・No.12(こんな車いらない)
・No.13(食事)
・No.15(目を押すと)
・No.16(耳から口へ抜ける)
・No.18(loop)
・No.20(ふたりにクギづけ)
・No.22(死の影)
・No.23(のどにしずく)
・No.24(頭がかゆくて)
・No.26(トランスフォーマー)
・No.27(目からヒョロヒョロ)
・No.29(換気扇)
・No.33(8本手男)
・“Connections”
・“loop #1” [グラフィティ・アニメーション]
※参考サイト
・公式サイト(英語):http://blublu.org/
WALL S(2000年からの年別グラフィティ・アート)、Drawings(スケッチ集)、News、リンク集、Video、Shopなどで構成。
・公式ブログ(英語):http://www.blublu.org/blog/
2008年3月スタートのBLUのブログ。BLUとしては3つ目のブログだとか。
・notblu(BLU video channel):http://jp.youtube.com/user/notblu
・Megunica(インタビュー/英語/PDF):http://www.megunica.org/download/swindle.pdf
・NAMES FEST@プラハ(インタビュー/英語):http://namesfest.net/news.php?extend.19
NAMES FESは、さまざまなグラフィティ・アーティストのフェス。
・STUDIOCROMIE:http://www.studiocromie.org/gallery.php?id_art=56
・POW(Pictures on Wall):http://www.picturesonwalls.com/
・GIZMODO Japan:http://www.gizmodo.jp/2008/07/post_3935.html
2008年7月にBLUを紹介している。
【物語】
黒いシルエットが右に歩いていき、帽子をとって、地面に置く。
男は拳銃自殺して倒れ、帽子の中から別の男が這い出てくる。
彼が胸を左右に開くと、中からより大きな男が出てくる。
男は、部屋の角に歩いていく。
すると、体が両側に広がって、2つの体になるが、完全には離れきらずに、右の男が左の男を引っ張って歩き出す。
「2人」はケンカして、2つに裂けるが、中からまた別の男が出てくる。
男は、右に歩いていき、4つんばいになる。
すると、尻の間からもう1つ頭が現われ、逆立ちのような形でヒーターの上を横切る。
ヒーターを越えたところで、尻から出ていた方の頭が、服を脱ぐようにして、その体を脱ぎ捨てる。
男は、壁に開いた“入口”を越えようとするが、頭がもげて、落ちる。
落ちた頭から手足が伸びて、人の体になり、さらに右へ歩いていく。
彼は、立ち止まったかと思うと、前後に3つの体に分かれ、前後の体が倒れ、真ん中で前屈していた体だけが残る。
彼はヒーターを飛び越え、“入口”の上部に左手を伸ばす。
手のひらを地面に下ろすと、中から黒いシルエットが現われる。
*ここまでが1分14秒で、作品としては全く同じものがもう一度ループする。
【コメント】
1回のループで1つの部屋を2周していることになります。
最初の壁面を1とし、順に2、3、4と番号を振っていくと、3の壁面がヒーターのある面で、4の面が“入口”のある面になります。
これを上の【物語】に当てはめると次のようになります。
[1]黒いシルエットが右に歩いていき、帽子をとって、地面に置く。
男は拳銃自殺して倒れ、帽子の中から別の男が這い出てくる。
彼が胸を左右に開くと、中からより大きな男が出てくる。
男は、部屋の角に歩いていく。
すると、体が両側に広がって、2つの体になるが、完全には離れきらずに、
[2]右の男が左の男を引っ張って歩き出す。
「2人」はケンカして、2つに裂けるが、中からまた別の男が出てくる。
男は、右に歩いていき、
[3]角を越えたところで、男は4つんばいになる。
すると、尻の間からもう1つ頭が現われ、逆立ちのような形でヒーターの上を横切る。
[4]ヒーターを越えたところで、尻から出ていた方の頭が、服を脱ぐようにして、その体を脱ぎ捨てる。
男は、壁に開いた“入口”を越えようとするが、頭がもげて、落ちる。
[1]落ちた頭から手足が伸びて、人の体になり、さらに右へ歩いていく。
[2]彼は、角を越えたところで、立ち止まったかと思うと、前後に3つの体に分かれ、前後の体が倒れ、真ん中で前屈していた体だけが残る。
彼は歩いていって、角を越え、
[3]ヒーターを飛び越え、
[4]“入口”の上部に左手を伸ばす。
[1]手のひらを地面に下ろすと、中から黒いシルエットが現われる。
後半の2周目は、ヒーターと入口が出てくるので、2周目だとわかるのですが、1周目と比べて、展開が速いと感じられます。どうやらこれは1巡目の人物は小さく描いていたのに、後に行くにしたがってどんどん大きくなり、後半になると、大跨ぎで歩いてあっさりと1つの壁面を通り過ぎるために起こる錯覚のようです。比較対照物がない白い壁に描かれているために、大きさの感覚が失われてしまうんですね。
展開としては、人が左右に(この作品では右だけ)動き続けて、新しい人が別の人の体を破って出てくるということ(BLU作品の典型的パターン)が繰り返されています。
他の作品と比べると、①体が左右に広がってシャム双生児になる、②尻からもう1つの頭が出て、そのままどちらが上か下かわからないような状態で歩いていく、③1つの体がいきなり前後3つの体に分かれる、という動きがユニークで面白いでしょうか。
全体としては、黒いシルエットの手品師のエンドレスのマジックとみなすこともできそうです。
◆作品データ
2007年/伊/2分35秒
台詞なし/日本語字幕なし
グラフィティ・アニメーション
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◆アーティストについて
BLU
イタリアのボローニャを拠点に活躍するグラフィティ・アーティスト、画家、壁画作家(muralist)、アニメーション作家。
1990年代半ば、15歳からグラフィティ・アートを描き始める。当時、イタリアではグラフィティ・アートのブームがあり、雑誌も出版されていて、大いに刺激を受ける。
元々は無許可で、ストリートや廃屋などに夜中に描くことが多かった。初期に描いたものはほとんど残っておらず、「ストリートなどに描いたものは消されて当然だし、描いた壁や建物が取り壊されてしまうことは決して苦痛ではない」、と語っている。
古い建物、古い壁に触発(「古い壁が語りかけてくる」)されて描くことも多い、という。
最近では依頼を受けて、プロジェクトとしてビルの外壁などに絵を描くことが
多い。
2006年に映像作家ロレンツォ・フォンダLorenzo Fonda(http://www.lorenzofonda.com/index.html?id=hom)からBLUのドキュメンタリー“Megnica”を撮らせてほしいという申し出があり、彼と一緒にメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、アルゼンチンを旅する(http://www.megunica.org/news.php)。 “Megnica”は2008年国際アムステルダム映画祭(http://www.dnerve.com/IAFF_2008/films/competition.html)で上映されて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。BLU自身、この旅はとてもインスパイアされるものが多かったと語り、最新ウォール・アニメーション“Muto”もブエノスアイレスで制作している。
2008年6月 第一画集“BLU-2004 2007”を出版。
画家Ericailcane(http://www.ericailcane.org/)とともに(壁画の)仕事をすることが多い。
壁画作品は、公式サイトの「WALL S」(http://blublu.org/sito/walls/walls.htm)で見ることができる。
動画作品は、vimeo(http://www.vimeo.com/blu/videos)やYou Tube(http://jp.youtube.com/user/notblu)に自ら投稿している。
公式には、プロフィール、作品年譜などは発表していない(生年すら明らかになっていませんが、1980年前後の生まれで、現在30歳くらいのようです)。
【フィルモグラフィー】
・2005年 “Child”
・2006年 “ffwd”
・2006年 “fino”
・2006年 “Sulla differenza fra un sorriso e una risata”(微笑と笑いの違いについて)[ミュージック・ビデオ]
・2007年 “LETTER A” [グラフィティ・アニメーション]
・2007年 “WALKING” [グラフィティ・アニメーション]
・2008年5月 “MUTO” [グラフィティ・アニメーション]
・2009年9月 “COMBO” [David Ellisとの共作]
・2010年7月 “BIG BANG BIG BOOM” [グラフィティ・アニメーション]
2008年以前の作品(制作年不詳)
・No.1(手回しカメラ)
・No.3(ネクタイ)
・No.4(腸があふれ出てきて困る)
・No.7(輪切り)
・No.8(ゲップ)
・No.10(脳の入れ替え)
・No.12(こんな車いらない)
・No.13(食事)
・No.15(目を押すと)
・No.16(耳から口へ抜ける)
・No.18(loop)
・No.20(ふたりにクギづけ)
・No.22(死の影)
・No.23(のどにしずく)
・No.24(頭がかゆくて)
・No.26(トランスフォーマー)
・No.27(目からヒョロヒョロ)
・No.29(換気扇)
・No.33(8本手男)
・“Connections”
・“loop #1” [グラフィティ・アニメーション]
※参考サイト
・公式サイト(英語):http://blublu.org/
WALL S(2000年からの年別グラフィティ・アート)、Drawings(スケッチ集)、News、リンク集、Video、Shopなどで構成。
・公式ブログ(英語):http://www.blublu.org/blog/
2008年3月スタートのBLUのブログ。BLUとしては3つ目のブログだとか。
・notblu(BLU video channel):http://jp.youtube.com/user/notblu
・Megunica(インタビュー/英語/PDF):http://www.megunica.org/download/swindle.pdf
・NAMES FEST@プラハ(インタビュー/英語):http://namesfest.net/news.php?extend.19
NAMES FESは、さまざまなグラフィティ・アーティストのフェス。
・STUDIOCROMIE:http://www.studiocromie.org/gallery.php?id_art=56
・POW(Pictures on Wall):http://www.picturesonwalls.com/
・GIZMODO Japan:http://www.gizmodo.jp/2008/07/post_3935.html
2008年7月にBLUを紹介している。
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