蒼井そら in 『夏休み ハートはドキドキ!』

 観てきました、蒼井そらin『夏休み ハートはドキドキ!』(@第4回アジア海洋映画祭イン幕張)。

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 この映画に関しては、以前チラッと書いた(http://umikarahajimaru.at.webry.info/200803/article_2.html)こともあるので、少々鑑賞後の情報を補足しておきたいと思います。

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 物語は、①チェンマイに住んでいるマイとプ(たぶん中学生)のところに、バンコクから幼なじみのナナが帰省してくる、②女子中学生(?)のオーレックは台湾のスターに憧れている、③ジョー(高校生?)はシーのことが好きで自分なりのやりかたで彼女にアタックし続けている、④大学生のハーンと、旅先にいる彼の恋人ヌアンと、タイに旅行にやって来た日本人バックパッカーAoiの物語、という4つの物語が平行して進みます。
 4つの物語は、基本的には交わりませんが、バンコクが舞台となる②と③は同じ映画館で同じ映画を観ている(?)、ということもあるようです。

 【物語‐1】

 ①‐1.マイとプは向かいに住み、学校でもライバル。幼なじみのナナがすっかりかわいくなってバンコクから帰ってきたので、2人は共にナナの携帯の番号を聞きだそうと競争を始める。2人は協定を交わし、プは偶数日にナナをデートに誘い、マイは奇数日にナナをデートに誘うことにする。ナナ本人は、2人がそういう約束をしたことを偶然目撃して知っていて、2人の競争を楽しんでいる。

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 ②‐1.オーレックは台湾のスター、ティティーの大ファンで、彼のタイ・ツアーを楽しみにしている。彼の出演の映画の歌部分に字幕がついていないことを不満に思った彼女は、中国語会話の学校に通って、中国語を学ぶ。ティティーのタイ・ツアーがスタートするのは4月13日で、彼女はその日が来るのを指折り数えている。

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 ③‐1.ジョーは、女性と付き合った経験も乏しいが、なんとかシーと付き合いたくて、素朴ながらも熱心に彼女にアタックする。

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 ④‐1.ハーンは、恋人ヌアンがトラン県にDJを行ってしまった(?)ので、ちょっと羽を伸ばす。しかし、4月12日は2人の交際3周年なので、その日はトラン県までヌアンに会いに行くことにし、彼女と会うのを心待ちにしている。

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 【キャスト】
 ・マイ(Mai):シラチャット・チエンターウォーン Sirachuch Chienthaworn
 ソンヨット・スックマークアナン作品には“Dorm”(2006)に続いての出演。
 ・プ(Pu):チャーリー・トライラット Charlie Trairat*
 『フェーンチャン』では主役の男の子ジアップを演じた。ソンヨット・スックマークアナン作品には3作連続で出演。
 参考サイト:http://www.charlietrairat.com/
 ・ナナ(Nana):Ungsumalynn Sirapatsakmetha
 参考サイト:http://www.pattieworld.com/profile_en.php
 ・ナナの母親(マイとプの学校の先生で、マーリー・カフェというお店もやっている)
 ・オーレック(Oh Lek):フォカス・ジラクン Focus Jirakul*
 『フェーンチャン』では主役の女の子ノイナーを演じた。
 ・オーレックの姉
 ・ティティー(迪迪/Titee):Ting Wei Lu
 参考サイト:http://wiki.d-addicts.com/Lu_Ting_Wei
 ・ハーン(Hern):チャンタウィット・タナセーウィー Chantawit Thanasewee
 ・クン(ハーンの友だち。蒼井そらのDVDを日本から直輸入している)
 ・Aoi:蒼井そら
 ・ヌアン(Nual):タニヤー・アマリチョート Thaniya Ummaritchoti
 ・ジェシー(ヌアンの女友だち)
 ・ジョー(Jo):ラッチュ・スラチャット Ratchu Surachalas
 ・シー(Cee):チティマー・ティーパナート Chutima Teepanat

 ※出演者の多くは、『フェーンチャン』の他の監督(ウィッタヤー・トーンユーヨンやニティワット・タラトーン)の作品(日本未公開)に出演していたりするようです。

 【スタッフ】
 監督:ソンヨット・スックマークアナン Songyos Sugmakanan
 脚本:アマラーポーン・ペンディントーン*、ノントラー・クムウォン、トン・チャイセーロー、プラスート・ウィチットパーワン、ニティット・ナピチャヤスティン
 撮影:ニラモン・ロース Niramon Ross
 ニラモン・ロースは『心霊写真』(2004)、ソンヨット・スックマークアナンの“Dorm”(2006)などを手がけている。
 美術:セイント・アート
 編集:サシカーン・スワンスティ、ニティワット・タラトーン*
 ニティワット・タラトーンは、『フェーンチャン』の6人の監督の1人。
 音楽:バナナ・チーム
 プロデューサー:チラ・マリクン*、ヨンユット・トーンコーントゥン*、チェンチョンニー・スントーンサーラトゥーン、スウィモン・モーチャスピナン
 エグゼクティブ・プロデューサー:バイブーン・ダムロンチャイタム*、ブッサバー・ダーオルアン*、ウィスート・プーンウォーララック*、チナー・オーソットシン*

 *印は『フェーンチャン ぼくの恋人』のキャスト・スタッフ

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 【物語‐2】
 ①‐2.マイはインドア派で、プはアウトドア派。それぞれ別々にナナとデートを重ねる(映画、カラオケ、バイクでのツーリング、プール……)。しかし、マイは、偶数日にプとナナのデートを覗き見してしまい、プに裏切り者呼ばわりされてしまう。プはそんなマイにもうナナの携帯番号をゲットしたとウソをつく。プはウソをついてしまった自分にあせりながら、ナナがプールでシャワーを浴びている間にナナの携帯の番号を盗み見ようとするが、ナナに見つかり、軽蔑されてしまう。水掛祭りにはみんなで遊ぼうと約束していた3人だったが……。

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 ②‐2.ティティーのタイ・ツアーが契約上の問題で中止になってしまい、オーレックはすっかり落ち込んでしまう。

 ③‐2.シーは、ジョーがしつこいのとダサいのとで、きっぱりと彼を振ってしまう。

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 ④‐2.ハーンは、少しでも早くヌアンに会いたくて、1日早くバンコクを出発する。しかしその列車の中で、日本人バックパッカーのAoiと出会い、彼女に誘われるまま、バンガン島のフルムーン・パーティーについていってしまう。ハーンは、ヌアンにはウソをついてごまかしていたが、Aoiとビーチでいちゃいついていて、偶然ヌアンと携帯がつながっていたことに気づかずにいて、浮気がばれてしまう。ハーンが1日遅れでヌアンに会いに行くと、彼女はハーンに「別れましょう」と告げる。

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 ◆映画『夏休み ハートはドキドキ!』を楽しむためのあれやこれや

 ・タイの学校は2学期制で、夏休みは、3月~5月。
 タイのお正月は、4月13日で、ソンクラーンといい、国民全員が盛大に祝う(4月13日~15日は祝日にもなっている)。だから、タイの4月は、お正月と夏休みが一緒に来るということにもなり、イベントも多く、思い出いっぱいの季節となりやすい。
 ソンクラーンに行われる行事として恒例となっているのが、映画にも出てくる「水掛け祭り」で、マイとプが暮らすチェンマイで行われるものが最も有名。
 お正月(に入る前?)には先祖の供養のために墓参りをする習慣がある。映画の中で、オーレックの家族も墓参りにでかけているが、彼女が映画の中で燃やしているのは、ご先祖様にあの世で使ってもらうために納める紙で作ったお金。こうした風習は、アジア全域の中国系の国民(華僑系?)の間でごく普通に行なわれている(オーレックの家庭も中国系なのかもしれない)。

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 ・日本人バックパッカーのAoiが目指すバンガン島のフルムーン・パーティーは、毎月、満月の夜にバンカン島で行なわれるパーティーで、映画『ザ・ビーチ』の中で紹介されてから、さらに有名になり、多くの観光客が押し寄せるようになった。バンガン島のフルムーン・パーティーについて書かれた記事はネット上に数多く存在する。

 ・カーオ・ラム(竹筒米)。
 映画の中では、ジョーがシーにおみやげとして買っていく。
 竹筒にもち米、小豆、ココナッツ・ミルクを入れて、火にかざし、炊き上げて作る。携帯食。

 ・パッタイ(タイ焼きそば)。
 映画の中では、ハーンがAoiにプレゼントして、一緒に食べる。
 ビーフンを太くした麺で作る。
 参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%BF%E3%82%A4

 ・『サークル・オブ・フレンズ』(1995)
 ジョーがシーに面白いと勧めた映画。50年代のアイルランドを舞台に、大学に入った3人の女性の恋模様を描いた作品で、紆余曲折ありながらも、最後は本当に好きな人と結ばれるというストーリー・ラインを持つ。国や時代が変わっても、みんな恋に悩むものだが、心から相手を思っていれば、最後はその熱意が伝わるものだという意味で、本作と相通ずるところがあり、そういう意味で引用されているのでしょう。

 ・『ラブ・アクチュアリー』(2003)
 複数のストーリーが平行して進むというスタイルは、『ラブ・アクチュアリー』等と同じ。この映画の作り手が特に『ラブ・アクチュアリー』を意識しているということは、映画マニアのジョーに『ラブ・アクチュアリー』と同じことをやらせているということで示されている(紙のボードを使って、愛の告白をするところ。ただし、それに対するリアクションは本作と『ラブ・アクチュアリー』では違うものになっている)。

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 【物語‐3】(物語のラストに触れています)

 ①‐3.マイもプも罪の意識を感じていて、共に相手がナナと一緒に水掛け祭りに行けばいいと思い、その旨を相手にメールして、携帯を仕舞い込んで見ないようにして、夏休みの残りを過ごす。
 新学期になって、マイもプも携帯を取り出して、どちらも水掛け祭りに行かなかったことを知る。ナナの家に行ってみると、ナナはもうバンコクに帰った後だったが、ナナは2人に携帯番号のメモを残している。2人は、ビーチ・フラッグの要領で携帯を並べ、どちらが早くナナに電話できるか競う。そして……、バンコクにいるナナの携帯電話が鳴る。

 ②‐3.オーレックが先祖の墓参りに来て、紙で作ったお金を燃やしていると、風で火のついた紙が飛んでいってしまう。急いで消そうとするが、なかなかうまくいかず、悲鳴を上げる。騒いでいると、なぜか同じ墓地に来ていたティティーがその声を聞きつけてやってくる(オーレックはファンレターにテープを吹き込んで送っていたらしい)。ティティーは、オーレックと一緒に記念写真も撮ってくれる。後日、彼女の元には、ティティーのツアーのフリーパスが送られてくる。

 ③‐3.新学期。ジョーは、学校に『サークル・オブ・フレンズ』のDVDを持ってきている。そのDVDには、ジョーがシーへの思いを綴ったパネルの写真がはさんであったが、パッケージを開いた時に、落ちてしまい、それをたまたまシーが拾う。ジョーは、慌てて取り返してポケットに隠すが、シーはジョーの思いの深さを知ってか知らずか、「それ(『サークル・オブ・フレンズ』)、私に貸してくれるって言ってたでしょう?」と、やさしくジョーに声をかける。

 ④‐3.新学期。ハーンは、駅に行って、新入生の歓迎旅行に出かけようとしているヌアンと再会する。彼は、最後に会った時にきっぱりと謝ったためか、この時は、なんとか冷静に彼女と話をすることができる。ちょっとホッとしたような気分でキャンパスに戻った頃、彼の携帯が鳴り始める。

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 ◆感想を少しだけ

 限られた時間の中に、異なる年齢の登場人物のドラマを平行して進めることで、人生のいくつも局面を1本の映画の中で描きこんでしまうというのは、よくある手法ですが(例えば、映画『セックス・アンド・ザ・シティ』もその1つ)、この映画もそういった1本ということになると思われます。

 この映画では、夏休み&お正月を舞台として、中学生、高校生、大学生といった時期の、恋の4つの局面を、4つのエピソードを通して描いている、ということになります。

 この映画には、複数の脚本家がクレジットされていますが、ひょっとするとそれぞれのパートを異なる脚本家が担当しているのかもしれません。

 ただパートにより若干描き込みの濃い薄いがあるようで、監督の得意とするのは、①のパートのようにも思われます(この監督は、女性の心理を描くことはあまり得意ではないようにも見えます。)。①のパートだけをもっと丁寧に描いて、1本の映画としてまとめ上げたなら、観客動員数では本作よりも落ちても、映画の完成度としてはより高いものになったとも思われます。

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 ちなみに、蒼井そらの登場シーンは、2時間8分ある映画の、ちょうど1時間経ったところでした。事前の情報では、蒼井そらの役は「蒼井そらとそっくりの日本人バックパッカー」の役だと説明されていましたが、実際に観てみたらただの「日本人バックパッカー」の役で、彼女について、蒼井そらと似てるとか似ていないとかそういうやりとりは映画本編の中には一切ありませんでした。

 本作は、今回の映画祭では、2回限りの上映でしたが、日本語字幕は元のフィルムとは別に作ったものを本編に重ねるようにして投影しているようで(ということは、日本語字幕つきのフィルムを作ることなく)、日本に輸入されたフィルムはそのまま返却されたようです。というわけで、今回のフィルムは今回限りの上映でおしまいで、残念ながら、後で劇場公開されたり、別の機会に再上映されたりということはなさそうです。字幕のデータだけは残っているので、またフィルムを輸入すれば、より少ない負担で再上映することは可能ですが(実際のところ、本映画祭で過去に上映された外国映画で、後に再上映されたりしたものはわずかに2本あるのみです)。

 なお、本作は、本映画祭のコンペティションで、審査員特別賞を受賞しています。グランプリは、現時点で2008年度の米国アカデミー賞外国語映画賞台湾代表作品にもなっている台湾映画『海角七号』でした。

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