小泉今日子×本木雅弘×香川照之 「ボクらの時代」2

 映画『トウキョウソナタ』の映像が流れる。

 ナレーション:小泉今日子さんと香川照之さんが出会いを果たした映画『トウキョウソナタ』。どこにでもある4人家族の日常が不協和音に包まれていく様子を映し出した作品。今の時代に家族を問うこの作品で、小泉さんと香川さんは夫婦を演じました。

 映画『おくりびと』の映像が流れる。

 ナレーション:2人と時期を同じくして、本木雅弘さんは映画『おくりびと』で遺体を棺に納める納棺師という役を演じました。実はこの納棺師という仕事に興味を持ち、映画にならないかとアイデアを温めていたのは本木さんご自身でした。20代の頃にインドに旅したことがきっかけだったといいます。

 小泉:言ってた。インドから絵葉書くれた。覚えてる。

 本木:そうそう、小泉さんに、書いた。

 香川:(本木さんはインドとかは)絶対、ダメなタイプに思えんだけど

 本木:ああ、いやいや、私、全然、田舎育ちだから。それで、なんとなく、大げさに言えば、ちょっと若いなりに、死生観みたいなのに目覚めた。それで、インドでは本当にこうなんか死と生っていうのが、当たり前の日常の風景の中に共存してた。そのことにもう衝撃を受けたみたいなことがあって、そんなことを考えてる時にたまたま『納棺夫日記』ていう青木新門さんっていうね、元詩人の方が書いた本がひそかなブームっていうのがその頃あって、それで納棺の世界を知ったという。それをなんとなく、直感的に……。だって、見知らぬ男が見知らぬご遺体を前に、それを拭き清め、棺に納めるっていう、なんかちょっと神秘的で、映画的? で、私は、小泉さんとか香川さんみたいにアクティブに外に出てって、いろんなこうなんか監督さんなり、それに通じていく物書きの人たちとかっていうのと会って話をする機会がね、なんか出不精だから

 小泉:ホント出不精だよね。私も出不精なんだよ、これでも。

 香川:オレも、本当、自分のこと出不精だと思うけど

 小泉:この人(笑)

画像

 本木:それで、ジクジクジクって溜めてるままで、時々小出しに、会った人にポロって言ってたけどみたいなので、時間がかかっちゃったっていう感じ

 小泉:そうかそうか。でも、今やってよかったんじゃない?

 本木:それはそう思う、たぶん。『トウキョウソナタ』もそうじゃない? ある種、閉塞感のある混沌とした都市生活で

 香川:リストラされてね、リストラから来るっていう話

 本木:って、家族の中でのコミュニケーションが取りづらくなってる世の中みたいなさ、なんか生きてることって何だろうって、簡単に言えばね、今、普通に生きてることの尊さみたいなものを知るためにっていう映画だから、『おくりびと』もね、だから、そういう意味では時代とマッチしたっていう

 小泉:今、この、今の時代って、映画とかを観てても、当たり前のことでしょ、生きてることって、本当は。でも、生きてるんだよ、生きてていいんだよっていうテーマの映画とかって凄く多いと思う。だから、それをメッセージとして届けなきゃいけない世の中なんだねって、思うの。

 本木:その実感みたいなものがね、薄いって感じは

 小泉:あるんだろうね、特に若い人なんて

 香川:幸せだからね、またこのニッポンていう国はね

 小泉:そうだよね。ボンヤリはしてるよね

 香川:幸せだからさ

 本木:幸せなのかしら

 香川:そういう意味では不幸なのかもしれない。

 小泉:ボンヤリしすぎてて、その、痛みを知らないから、幸せもわからないっていうか、こう、ちょっと鈍感な感じになってるのかなあ。

 香川:そうだよね。大人になりきれない部分ていうのが凄く大きくて

 小泉:幼稚、だよね、大人が

 香川:『おくりびと』でもさ、リストラされた瞬間から自分の中にある事件が起きてはじめて真実に気づくコースへの旅が始まるわけじゃない。その事件が出ないと一生表面化されなかったであろう問題なんだよ。それぐらいの、今、ニッポンていうか、ベースで生きているっていうのがよく……

 本木:そういう意味ではアクシデントは必要だね。小泉さん、どうなのよ、そういう意味では人生のアクシデントは?

 小泉:あたしは、日々、アクシデントですけどね。

 本木:日々アクシデントだけどさ、どういう人がかっこいいと思うとかあるわけ? ごめん、ベタな質問で

 小泉:(笑) あたし独り、独身だからね。

 香川:現場でうまいのよ、またね、凄いリポーターぶりを……。意外にね、そこはって、オレは、逆にそこだけはちょっとっていうところを、ぐぐぐっていくからさ。

 小泉:いやあ、(本木さんの)義理のお母さんとかにも心配されてて、あの、樹木さんとかに、あなた、ほんとに、いい人で、仕事もちゃんと持ってるのに、なんでそこだけがダメなのかしらみたいな。あたしとYOU? YOUと仲いいんですけど、ホントに樹木さんは2人のことを考えると、すごい、どうにか伴侶をみつけてほしいと思うんだって

 本木:その時に、なんか、どういうパートナーがいるのをイメージしてるの?

 小泉:どうだろ? なんか具体的なイメージとか持たないけど、なんかピカンとこう、なんかね、男らしい人がやっぱり、さ、みたくないですか?

 本木:男らしいっていうのはどういうのなのよ? どういうのが男らしいの?

 小泉:なんかあたしね

 本木:言葉で言っちゃうと、私なんかさ

 小泉:いつもね、心ん中にね、いろんなことに対して怒りとか持ってる人が好きなんですよ。男の人だと。怒りがもしも、こう、客観的に見た時に、すごい大勢の人がその怒りは間違ってると思っても、なんか信じてあげたいみたいな

 本木:ああ

 香川:オレ、むしろ、怒り的なものからスタート、していたのね。

 小泉:それ、凄く感じる。

 香川:それを、ある時点で、それに水をジャバジャバかける作業に入って、この火を消せと、いい火ではないと思って。で、今は、怒りに、火がまだ燃えていたとしても、なんか責任をとることだと思うの、最後まで。燃えてんなら燃えてるで、ほかに燃え移らせんのが仕事なのか、やりっぱなしの自分がすごい若い頃いたような気がしたからさ。燃やしっぱなし、逆だったら、逆にやりっぱなしみたいな。なんか責任を持つことなのかなあってのは、おぼろげには思うけど、ただこれは男が思う男らしさだから、また女性が思う男らしさとは違ってさ。

 本木:時々ね、内田裕也さんとかがね、私なんかが意外と、こう、そんなになんていうの、いわゆるチャリティーとか、こうボランティア精神みたいなもののところに身を置くのが苦手なタイプなわけ。で、今、裕也さんと直接しゃべったわけじゃないけども、あの、オレも、その感覚はなん、わかるけれども、結局でもやっぱり、なんだかんだ言いながら、いつもこう思ってるっていう、何かに反発してるとかっていう気持ちばっかりで、全然落としてない、それを。小さな爆弾になるかもしれないけど、それを落としてないのは卑怯だみたいな、そのような話をなんか聞いたことがあって、だから、どこかでは、その、さっき言った責任っていうところを負って、飛び火させるのか、消火するのかわからないけど、やっぱ、コトを起こさないと、やっぱり実際の大きさには、なんか溜めてるばっかりでは、内側だけでは評価されないだろうってのはどっか、そういう不安は凄く特にある、最近

 香川:そこはさ、だから、凄い男らしいと思う。オレがさ、たとえばさ、そうは思っても、ヘップバーンの晩年みたいにさ、アフリカに行って、子供たちを助けましょうみたいなのを具体的にやるかって言ったらさ、やっぱ、それは恐くてできないけど、だから、じゃあどうするかっていうと、やっぱ、演技のワン・カット、ワン・カットに、たとえば今みたいに思ったことを込める。たとえば、夫婦の関係だったり、友だちの関係だったりしても、それに込めていくことでメッセージにしようってことをしたいと思ってるけど、果たしてそれが、内田裕也さん言うところの具体的かどうかっていうのは凄く自信がないわけ。それって抽象でしょって言われたら、そうだなあって思っちゃうからさあ。

 本木:こうして今こう出て、こうね、42歳の標本がポンポンポンと、ありますよね。今日だって、小泉さんね、ところどころさ、敬語使ってるわけ。

 香川:ああ

 小泉:敬語使ってる?

 香川:使ってますよ。「です」とか

 本木:その辺の、ちょっとした加減が大人なのよ。だって、蕎麦屋でしゃべってる時に違うじゃない?

 小泉:その時、酔っ払ってたからかもしんない(笑)

 本木:あ、そっか。

 ナレーション:42歳、大人の3人によるお話はまだまだ尽きないようですが、今週はここまで。来週はどういうお話に行き着くのか。それでは、今日も素晴らしい1日を!

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 3人それぞれを、それぞれテレビや映画で見ることはあっても、こういう距離感、こういう親密さでつきあってるのかって知れたのがまず面白かったですね。モッくんがけっこうネガティブな内面の持ち主らしいというくだり、台本のくだり、WAVEのくだり、映画『おくりびと』につながる話は実はモッくんが長年温めてきたものであったということなど、へえ~、そうなんだ!っていう話題も多くて、面白い、面白いと思いながら観て、30分があっと言う間でした。だから観ていない人にもこの面白さを伝えてあげたいと思って、わざわざ活字に起こしたわけですが。キョンキョンが、今の時代って「生きてていいんだよって、メッセージとして届けなきゃいけない世の中なんだ」って語るっていうのも凄いって思いましたね。

 鼎談というのは、誰かが仕切り役になったりするものですが、そんなこともなくて、しかもバランスよく会話が成り立っている。そういうのもなかなかないですよね、話をまわす司会者もいないのに。

 役割分担的には、モッくんが若干仕切り気味で、香川照之は2人の話を聞きつつも自分の言いたいことを言ってる感じ(ちょっとナルシシズム入ってる感じ?)、キョンキョンはそんな2人の話をがっつり受け止めてひそかにホステス役もこなしてるっていう、そんな感じでしょうか(キョンキョンはちょっと話者にかぶり気味で話し始めることも多かった)。

 活字ではちょっと表わしづらかったんですが、モッくんと香川は話すと女言葉っぽくなっています。活字では、「私」にしましたが、モッくんは一人称をほぼ「あたし」としゃべっています。それに対して、香川は一人称に「ぼく」を使ったり、「オレ」を使ったりしていて、2人との関係性にまだ揺れ(距離感)があることが伺われました。

 というわけで、ここまでで、9月21日放送分の「ボクらの時代」はおしまい。あと、9月28日放送分の「後編」(http://umikarahajimaru.at.webry.info/200810/article_1.html)に続きます。

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 *当ブログ記事
 ・小泉今日子×本木雅弘×香川照之「ボクらの時代」1:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200809/article_9.html
 ・小泉今日子×本木雅弘×香川照之「ボクらの時代」3:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200810/article_1.html

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