日本で上映されたシンガポール映画 1992-2008

 シンガポール映画『881 歌え!パパイヤ』の劇場公開を記念して、日本で上映されたシンガポールについてまとめてみました。劇場公開作としては、『881 歌え!パパイヤ』が3本目で、あと2本は2000年の『フォーエバー・フィーバー』、2007年の『メイド ~冥土~』です。

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 【日本で上映されたシンガポール映画】

 1992年
 <東南アジア映画祭 コンペティション・プログラム>
 バービーちゃんの彼はG.I.ジョー(1990/シンガポール)[短編] 監督:エリック・クー
 8月(1991/シンガポール) [短編] 監督:エリック・クー
 パンク・ロッカー・アンド…(1992/シンガポール) [短編] 監督:エリック・クー
 遠い岸辺に寄せる波(1992/シンガポール) [短編] 監督:Meng Ong

 1993年
 <山形国際ドキュメンタリー映画祭93>
 カルカス(1992/シンガポール) 監督:エリック・クー
 シンフォニー(1992/シンガポール)  監督:エリック・クー

 1995年
 <第9回福岡アジア映画祭>
 ミーポック・マン(1995/シンガポール) 監督:エリック・クー
 ペイン(1994/シンガポール) 監督:エリック・クー

 1997年
 <山形国際ドキュメンタリー映画祭97>
 美食漫遊(1996/シンガポール)[短編] 監督:ケルヴィン・トン、サンディ・タン、ジャスミン・ン

 <第10回東京国際映画祭 ヤング・シネマ・コンペティション>
 12階(1997/シンガポール) 監督:エリック・クー

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 1999年
 <QFRONT東京国際ファンタスティック映画祭’99>
 フォーエバー・フィーバー(1998/シンガポール) 監督:グレン・ゴーイ

 2000年
 フォーエバー・フィーバー(1998/シンガポール) 監督:グレン・ゴーイ

 <第14回福岡アジア映画祭2000>
 イーティング・エアー(2000/シンガポール) 監督:ケルヴィン・トン、ジャスミン・ン

 <第22回ぴあフィルムフェスティバル>
 ミーポック・マン(1995/シンガポール)  監督:エリック・クー
 イーティング・エアー(2000/シンガポール) 監督:ケルヴィン・トン、ジャスミン・ン

 2001年
 <アメリカン・ショートショート・フィルムフェスティバル2001>
 “Sons”(1999/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン

 <山形国際ドキュメンタリー映画祭2001>
 塩素中毒(2000/シンガポール) 監督:タン・カイシン

 <Movie-Highway2>
 “Sons”(1999/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン

 2002年
 <第16回福岡アジア映画祭2002>
 チキンライス・ウォー(2000/シンガポール) 監督:チーク

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 <アジアフォーカス・福岡映画祭2002>
 チキンライス・ウォー(2000/シンガポール) 監督:チーク

 <第15回東京国際映画祭 「アジアの風」部門>
 僕、バカじゃない(2001/シンガポール) 監督:ジャック・ネオ

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 2003年
 the EYE(2002/香港・シンガポール・タイ・英) 監督:オキサイド&ダニー・パン

 <第16回東京国際映画祭 「アジアの風」部門>
 ホームラン(2003/シンガポール) 監督:ジャック・ネオ

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 2004年
 地球で最後のふたり(2003/タイ・日・オランダ・仏・シンガポール) 監督:ベンエーグ・ラッタナルアーン
 コウノトリの歌(2001/ヴェトナム・シンガポール) 監督:ジョナサン・フー、グェン・ファン・クアン・ビン
 インファナル・アフェアⅡ 無間序曲(2003/香港・シンガポール) 監督:アンドリュー・ラウ、アラン・マック
 ターンレフト ターンライト(2003/香港・シンガポール) 監督:ジョニー・トー、ワイ・カーファイ

 <ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2004>
 地球で最後のふたり(2003/タイ・日・オランダ・仏・シンガポール) 監督:ベンエーグ・ラッタナルアーン

 <ショートショート・フィルムフェスティバル アジア2004 一般アジア ショートショート部門>
 “Cut”(2004/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン

 <アジアフォーカス・福岡映画祭2004>
 コウノトリの歌(2001/ヴェトナム・シンガポール) 監督:ジョナサン・フー、グェン・ファン・クアン・ビン

 <第17回東京国際映画祭 コンペティション部門>
 ライス・ラプソディー(2004/シンガポール・中・豪) 監督:ケネス・ビィ

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 <東京フィルメックス2004 コンペティション部門>
 終わらない物語(2004/イラン・仏・シンガポール) 監督:ハッサン・イェクタパナー

 2005年
 <ショートショート フィルムフェスティバル 2005 in 北海道 ロイストン・タン特集>
 “15”(2002/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン
 “Cut”(2004/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン
 “Careless Whisper”(2005/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン

 <山形国際ドキュメンタリー映画祭2005>
 消えゆく思い出(2005/シンガポール・豪) 監督:ウィン・イエンピン
 イノセント(2004/シンガポール) 監督:ルー・リーシャン、ホー・ジュンション

 <第18回東京国際映画祭 「アジアの風 新作パノラマ」部門>
 一緒にいて(2005/シンガポール) 監督:エリック・クー

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 <第6回NHKアジア・フィルム・フェスティバル>
 4・30(フォーサーティ)(2005/シンガポール・日本) 監督:ロイストン・タン

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 2006年
 the EYE2(2004/香港・タイ・シンガポール) 監督:オキサイド&ダニー・パン

 <第20回福岡アジア映画祭2006>
 シンガポール・ショート[短編特集]
 アムステルダムで活躍するアン・ソッコン監督の6作品を上映。“Do I Ever Linger There?”(2004)、“Bend to Mirth”(2004)ほか。

 <札幌短編映画祭>
 “Monkeylove”(2005/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン

 <アジアフォーカス・福岡映画祭2006>
 4・30(フォーサーティ)(2005/シンガポール・日本) 監督:ロイストン・タン

 <第19回東京国際映画祭 「アジアの風」部門>
 LOVE STORY(2006/シンガポール・香港) 監督:ケルヴィン・トン

 2007年
 アート・オブ・トイピアノ マーガレット・レン・タンの世界(2004/米・シンガポール・香港)
 メイド ~冥土~(2005/シンガポール) 監督:ケルヴィン・トン

 <第2回札幌短編映画祭>
 D.I.Y(2005/シンガポール)[短編] 監督:ロイストン・タン
 4・30(フォーサーティ)(2005/シンガポール・日本) 監督:ロイストン・タン

 <アジアフォーカス・福岡映画祭2007>
 ここに陽はのぼる 東ティモール独立への道(2006/シンガポール・東ティモール) 監督:グレース・パン

 <山形国際ドキュメンタリー映画祭2007>
 アキ・ラーの少年たち(2007/シンガポール・カンボジア) 監督:リン・リー、ジェームズ・ロン

 <第20回東京国際映画祭 「アジアの風」部門>
 シンガポール・ドリーム(2006/シンガポール) 監督:イェン・イェン・ウー、コリン・ゴー

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 <第8回NHKアジア・フィルム・フェスティバル>
 雨の味(2006/シンガポール・日本) 監督:グロリア・チー

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 2008年
 881 歌え!パパイヤ(2007/シンガポール) 監督:ロイストン・タン

 <アジア新星流FOCUS First Cuts>
 LOVE STORY(2006/シンガポール・香港) 監督:ケルヴィン・トン
 *当ブログ記事:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200803/article_6.html

 <ショートショート・フィルム・フェスティバル&アジア2008>
 色の世界(2007/シンガポール)[短編] 監督:Derrick Lui & Chee Tian Lee
 モリーのほくろ(2006/シンガポール)[短編] 監督:Victric Thng

 <第17回東京レズビアン&ゲイ映画祭>
 カトーン・フーガ(2006 / シンガポール) [短編] 監督:ボー・ジュンフェン(ウー・ジュンフェン)
 家族の肖像(2004/シンガポール) [短編] 監督:ボー・ジュンフェン(ウー・ジュンフェン)

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 劇場未公開作品

 アジアンビート シンガポール編 「ラブ・フロム・ラマセク」(1991/シンガポール・日本) 監督:ロー・ベン・リー [Vのみ]

 レイザーサンクション(2004/シンガポール) 監督:ジャン・ホンクエ [Vのみ]

 君を守りたい(2005/シンガポール) 監督:ポール・ユェン [Vのみ]

 1942 怨霊(2005/シンガポール・日本) 監督:ケルヴィン・トン [Vのみ]

 ホーム・ソング・ストーリーズ(2007/オーストラリア・シンガポール) 監督:トニー・エアーズ [シネフィル・イマジカにて放映]

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 *当ブログ記事
 ・ケルヴィン・トンについて:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200803/article_5.html
 ・エリック・クーについて:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200806/article_11.html
 ・シンガポール映画小史年表:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200808/article_5.html

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 シンガポール映画は、これまで日本では3作品しか劇場公開されておらず、作家単位で特集上映されることも、シンガポール映画としてまとめて上映されることもありませんでしたが、エポック・メイキングな作品のほとんどは、何らかの機会に上映されています。エリック・クーもケルヴィン・トンもロイストン・タンもほぼタイムラグなしで紹介されていることになります。シンガポールの国民的コメディアン、ジャック・ネオ関連の作品だけは未紹介作品が多いのですが。

 ◆シンガポール国産映画 興行ランキング
 (単位は万シンガポール・ドル)

 1. “Money No Enough”(1998) 5.84
 2. “I Not Stupid too”(2006) 4.18
 3. 『僕、バカじゃない』(2002) 3.80
 4. 『881 歌え!パパイヤ』(2007) 3.54
 5. “Liang Po Po”(1999) 3.03
 6. “Just Follow Law”(2007) 2.77
 7. “The Best Bet”(2004) 2.66
 8. 『ホームラン』(2003) 2.35
 9. 『メイド ~冥土~』(2005) 2.15
 10. 『the EYE(アイ)』(2002) 1.99
 11. “I Do、I Do”(2005) 1.84

 ※2、3、6、7、8、11はジャック・ネオ監督作品、1、5はジャック・ネオ主演作品。

 シンガポール映画を語る時に繰り返し言われることは、シンガポール映画が1978年から1991年まで1本も作られなかった(映画の制作スタッフや俳優もすべて職を失うか、別の現場に活路を見出すしかなかった)ということですが、映画制作のノウハウもスタッフもすっかり失われた状況で、シンガポールで産業として映画を再興させようという時に行なったこと(の1つ)が何かというと、それは「模倣」でした。

 「模倣」とは、すなわち、現在もしくは過去にヒットしている作品を参考にして、映画を作るということで、『フォーエバー・フィーバー』や『ホームラン』のようにはっきりとリメイク(もしくはオマージュ作品)とうたっているものもあれば、『メイド ~冥土~』のようにアジアン・ホラーの路線を踏襲したと思えるような作品(シンガポール風味は加えられているにしても)もあります。

 「模倣」と言っても、それぞれの作品が面白く、オリジナリティーを感じさせるものであれば全然問題ない――例えば、『メイド ~冥土~』のケルヴィン・トン監督が、パクリ作家(という言い方が人聞きが悪いと言うなら「職人監督」と言い換えてもいい)などでないことは『LOVE STORY』を観ればよくわかります――わけですが、まあ、とにかくそのようにして新生シンガポール映画が始まったというところがあるわけです(実際、アジアの各国でどのように映画が作られているか、シンガポール政府の機関が調査にでかけたという報告もあります)。

 そうして、シンガポールならではの題材、シンガポール映画ならではの語り口を模索して、成果を見せつつあるというのが、現在のシンガポール映画の状況であり、その中で「発見」された映画作家が、エリック・クーやロイストン・タン、ケルヴィン・トンらであり、そうした状況を端的に示す象徴的な出来事が、エリック・クーの“My Magic”が今年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門にシンガポール映画として初めて選ばれたことと言っていいかと思います。

 ※ シンガポールならではの題材というのは、まずは、中国料理、マレー料理、インド料理、イギリス料理、そしてそれらを融合した料理、など、いろんな料理が楽しめるという豊富な食文化を背景とした諸作品があり(映画のタイトルからだけでもそれが窺われます)、そのほかに、教育事情を背景にした作品(『僕、バカじゃない』)、住宅事情を背景にした作品(『12階』)、ゲータイなど独特の文化を題材とした作品(『881 歌え!パパイヤ』)などがあります。

 シンガポールは、自国としては小さなマーケットしか持たない国(資源もなく、十分な飲料水すらない)ですが、地理的なメリットを生かすことができたのと、国による積極的な開発政策で経済的に大きな発展を遂げた、というのは、日本や香港ととてもよく似ています。
 英語が公用語であるというのと、中国語圏と密接なつながりがあるということは、映画製作においても非常に有利で、自国内のみにとどまらない大きな市場を意識した映画製作も可能となってくるわけで、実際に1998年以降のメディアコープ・レインツリー・ピクチャーズの参入で、そうした大きな市場を視野に入れた映画製作や国際的なプロジェクトも徐々に行なわれつつあります(香港の中国返還時に香港映画人をシンガポールに呼び寄せようというプランもあったようですが、それはうまくいかなかったようです)。

 これまで、香港や中国、台湾、イラン、韓国、ルーマニアなど、世界各国で新しい映画の波が起こるのを日本でもいながらにして体験できたわけですが、ほぼゼロから映画産業が隆盛に向かっていくのを追体験できるというのは、このシンガポール映画が初めてと言っていいと思います。こんな体験は滅多にできるものではありません。

 これからのシンガポール映画もますます楽しみですね!

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 *当ブログ記事
 ・シンガポール・ブックガイド:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200808/article_7.html
 ・シンガポール・ミニガイド:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200808/article_6.html

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