山村浩二が手がけた唯一のPV作品 『ジュビリー』

 山村浩二が、『頭山』の2年前に手がけた、現時点で唯一のミュージック・ビデオが中村一義の『ジュビリー』です。



 アニメーションの主な登場人物は――
 カップ頭男
 魚頭女
 クラッカー男
 噴火寸前の上司男
 テレビを見ている赤ん坊
 ナットの足りない歯車男
 つぶれた缶ビール君
 Barbar
 ネズミのJelly
 神様

 名前がないとわかりづらいので、上のように名前をつけてみましたが、物語としてはだいたい以下のような感じでしょうか。

 【物語】
 新しい世紀を迎えようとしている街Jubile。
 Jubileではみんなが悩みを抱えている。
 魚頭女は孤独を抱え、クラッカー男は自分の能力をどう発揮していいのかわからず、噴火寸前の上司男は、いつも怒ってばかり。
 カップ頭男は、自分の頭の中にガラクタを抱えているが、それを使ってまわりの人々の悩みを少しずつ解決し始める。しかし、魚頭女の孤独には気づかない。
 やがて、クラッカー男は神様に導かれて、新しい世界の扉を開けるための重要な役割を担う。
 クラッカー男のおかげで、「2000年」がやってきて、新しい世界の扉が開き、向こうの世界へ行こうと人々が集まってくる。

画像

 ◆コメント
 新しい時代への期待と、自分探しや自己実現、自己解放が、このアニメーションのテーマでしょうか。

 カップ頭男と魚頭女が、互いに必要としているものに気づいて惹かれ合い結ばれる、といった結末があってもいいように思いましたが、魚頭女は何らかの啓示を受けたらしいところで出番は終わり、カップ頭男にはオチらしいオチが用意されていませんでした。

 タイトルの「ジュビリー」とは、旧約聖書レビ記25章にある50年に一度やってくる「ヨベル」の年のことで、その年には、土地や家屋を元の所有者に返し、奴隷を解放しなければならず、債務も帳消しになる、とされています。

 歌詞の方は、「才能や光るものを秘めていながら、それに気づかないか、押さえつけようとしてくる世界の中で自分をうまく表現できない人(おそらくは異性)に対して、もっと前に出て、『正論』や『理屈』なんかには耳を貸さずに、自分を解放しなよと訴えかけている」というような内容になっています(下記参照)。
 要するに、この曲のテーマは「解放」(とそれに対する「応援」)で、それに「ジュビリー」というちょっと思わせぶりなタイトルをつけている、ということになります。といっても、日本には「ジュビリー」というタイトルをつけたロック・バンドの曲が大量にあるのですが。

 ミュージック・ビデオとしては、楽曲のメッセージ(「解放」と「応援」)を基本情報としてつかんだ後は、個々の歌詞にとらわれることなく、それを「新世紀」(といっても2000年は世紀末ですが)への期待と結びつけて、ストーリー化・アニメーション化した、ということになるでしょうか。
 ちょっと散漫なところもあって、繰り返し観ないとなかなかストーリーは見えてきませんが(よくわからないけど面白いといった程度の印象にとどまってしまいます)、主人公と物語の語り手を明確にすれば、1篇のアニメーション作品として十分に成立するだろうと思われます。

 山村浩二が『頭山』の米国アカデミー賞ノミネートで話題になった時、『ジュビリー』の人だと思った人も多いそうです。

 ◆作品データ
 2000年/日本/5分32秒
 日本語歌詞あり/字幕なし
 ミュージック・ビデオ

 *この作品は、2003年に、ユーロスペースの<ヤマムラアニメーション図鑑 VOL.2>と題したプログラムの中で上映されています。

 *この作品は、DVD『頭山』に収録されています。

 
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 『ジュビリー』 歌詞(作詞:中村一義)

 真っ直ぐに背筋を正そうぜ 病んだビール開け放って
 すんげえ泥臭い日々にさ ビート入れ 街中にバラまこうぜ

 日々 (祝え!祝え!おぉ、祝え!)
 そう君ん中に溢れ出す世界に 決して消えない場所が
 それに光あて 赤く染め返せ!君に出会いたいから

 あいつらの言う正論は凍りついて さぁ 流れ変えてやれ
 一生どん臭い理屈掘りよりか まぁ サイズ合った服 着ようって

 日々 (祝え!祝え!おぉ 祝え!)
 そう 君ん中に溢れ出す世界に 決して消えない場所が
 それを キレイ事って済ますなら 去って 君を祝いたいから

 息を吸え 日々 (祝え!祝え!おぉ、祝え!)
 そう 君ん中に溢れ出す世界に 必死で灯るサインが
 それをみんなが持って 出会えたらなぁって 単純に想いたいから

 僕は 手かかげて 想い達するまで
 僕は 手かかげて この声 遠くまで

 息を吸え(真っすぐに)
 息を吸え(今すぐに)
 声を出せ

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 ◆監督について
 山村浩二
 1964年 名古屋市生まれ。
 1987年東京造形大学絵画科卒業。椋尾篁氏が主宰するアニメ美術制作会社ムクオスタジオへ入社
 1989年 フリーに。
 1993年 ヤマムラアニメーション(有)設立。
 2002年 Acme Filmworksと契約。
 現在、東京造形大学客員教授、国際アニメーション協会(ASIFA)日本支部理事。1998年から2006年まで日本アニメーション協会理事。

 1987年 『水棲』[監督]
 1989年 『ひゃっかずかん』[監督]
 1990年 『遠近法の箱』[監督]
 1991年 『ふしぎなエレベーター』[監督]
 1993年 『カロとピヨブプト おうち』[監督]
 1993年 『カロとピヨブプト サンドイッチ』[監督]
 1993年 『カロとピヨブプト あめのひ』[監督]
 1995年 『パクシ』[監督]
 1995年 『キッズキャッスル』[監督]
 1995年 『キップリングJr.』[監督]
 1996年 『バベルの本』 [監督] (TV) シカゴ国際児童映画祭 アニメーション部門 Adult's Jury Award受賞
 1997年 『金魚の一生』[アニメーション]
 1998年 『地球肋骨男』[監督]
 1998年 『REMtv Carp』[監督]
 1999年 『どっちにするの?』[監督]  シカゴ国際児童映画祭 アニメーション部門 Adult's Jury Award受賞、オタワ国際アニメーションフェスティバル 児童映画部門 OIAF Award受賞
 1999年 『Vibe-ID』[監督]
 2000年 『ジュビリー』[監督][ミュージュック・ビデオ]
 2001年 『伝説のワニ ジェイク』 [アニメーション] (TV)
 2002年 『伝説のワニ ジェイク』[アニメーション]
 2002年 『頭山』[監督]
 2003年 『冬の日』[監督] 36に分かれたパートのうちの35番目「けふは妹の眉描きに行き 綾ひとへ居湯に志賀の花漉して」を担当
 2005年 『年をとった鰐』[監督] 飛騨国際メルヘンアニメーション映画祭グランプリ
 2006年 「Fig(無花果)」(『TOKYO LOOP』)[監督]
 2007年 『校長先生とクジラ』 [監督]
 2007年 『子どもの形而上学』[監督]
 2007年 『カフカ 田舎医者』[監督]

 *ヤマムラアニメーション公式サイト:http://www.jade.dti.ne.jp/~yam/

 *山村浩二ブログ 知られざるアニメーション:http://yamamuraanimation.blog13.fc2.com/

 *Acme Filmworks:http://www.acmefilmworks.com/dir_folders/dirYamamura/yamamura.html

 *関連サイト 山村浩二ギャラリー:http://www.bitpranks.com/hagakiya/gal_ky.htm

 *関連サイト 東京造形大学:http://www.zokei.ac.jp/gallery/event/exhibit/pub_2003/yamamura.html

 *参考サイト Cinema Topics Online「ヤマムラアミネーション図鑑
」:http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3818

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