30年経っても色あせない… フレデリック・バック 『イリュージョン』

 シャガール、あるいは、水森亜土にちょっと似てる?



 【物語】
 大自然の中で子供たちが遊んでいる。
 そこに、ワン・マン・バンド(全身に楽器を身につけた男)がやってくる。
 彼は、子供たちの好奇心を一身に集め、ウサギを帽子の中に入れ、代わりにおもちゃを取り出す。彼のやることに興味津々の子供たち。
 次々と彼は魔法のように動物や風景を変えていく。
 車を作り、道路を引き、アイスクリーム屋を開き、さらに街灯をつけ、風景を近代的な街に変えていく。
 子供たちは、知らないうちに工場の工員に変えられてしまい、単純労働に従事させられてしまっている。
 しかし、やがて、その子供たちも、望んでいたのはこういうものじゃないと言って工場からゾロゾロと出てくる。
 男は、それを見て、大金を取り出してみせるが、子供たちは喜ばず、兵器を出してみても、嬉しそうな顔をしない。
 とうとう男は音を上げて逃げ去る。
 自然が回復され、子供たちは昔と同じように遊ぶ。
 地面に描かれたケンケンの枠には、ワン・マン・バンドの図柄が使われている。

画像

 ※動画の状態がよくないので、できればDVD『フレデリック・バック傑作選』でご覧になることをオススメします。

 ◆コメント
 自然が破壊され、便利な人工物に囲まれた生活になるが、一方で人間は疎外されていく……。

 フレデリック・バックは、「自然が与えてくれる健康でシンプルな喜びが、いかに人工的な作り物にとって代わられてしまうかということ」にショックを受けて、この作品を作ったと語っています。

 今でも十分通用するメッセージ性を持っていますが、今の感覚からすると、ちょっと図式的すぎる感じもして、途中でこの作品がどういうことを語ろうとしているのかがわかって、「あ~、もうわかったよ」と思ってしまうということもあるかもしれません。

 自然に還り、人間性を取り戻そうというような考え方は、この作品が作られた1975年よりさらに10年くらい前から叫ばれ始めた考え方だと思いますが、フレデリック・バックの作品に一貫して流れている思想でもあって、『大いなる河の流れ』などにつながっていきます。

 若干気になったのは、自然にあふれた世界を人工的世界に変えていく人物として、ワン・マン・バンドがその役割を担わされていることですが、フレデリック・バックにとってワン・マン・バンドというのはちょっと胡散臭い存在なのでしょうか。

 作品としては、お説教臭くなるギリギリのところで成立している佳品などと言ってみたくもなりますが、30年以上経ても全く古さを感じさせないのは驚異的なことでもあります。

 ◆作品データ
 1975年/カナダ/12分
 台詞なし/日本語字幕なし
 アニメーション

 制作期間は1年半、そのうち彩色は6ヶ月。

 人物や動物は、アセテートの上に油性の画材用フェルトペン アートマーカー。背景は、色の着いた紙にパステルや色鉛筆、マーカー、テンペラ。

 歌や笑い声は子供たちによるもので、あらかじめ録音したものを後で映像に合わせた。

 音楽:ノーマン・ロジェ

 *この作品は、フランス国際青少年短編映画祭1位、ブルガリア国際赤十字映画祭グランプリを受賞しています。

 *2000年に『イリュージョン』から『大いなる河の流れ』までの6作品を収めたDVD「フレデリック・バック作品集」が、パイオニアLDCから出ました(税込み7140円)が、その後、初DVD化作品を含む9作品を収めた「フレデリック・バック作品コレクション」がジェネオン エンタテインメントから発売されました(税込み12800円。新たに収録された作品は『アブラカダブラ』『神様イノンと火の物語』『鳥の誕生』)。

フレデリック・バック傑作選~「木を植えた男」「大いなる河の流れ」「クラック!」
ジェネオン エンタテインメント
2007-07-25

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 ◆監督について
 フレデリック・バック
 1924年 ドイツのザールブリュッケン(当時はフランス領)生まれ。父親は音楽家。
 1938-1939 年 パリのEcole Estienneで学ぶ。
 1939-1945年 レンヌの美術学校で画家マテラン・メウに学ぶ。
 1948年 文通で知り合ったカナダ人女性に会うために、カナダに向かう。
 1949年 結婚。以後、モントリオールを活動拠点とする。
 1952年 カナダ国営放送(Radio Canada)にグラフィック・アーティストとして参加し、教育番組や科学番組の作画や視覚効果を担当する。
 1967年 モントリオールのPlace-des-Arts Metro station にL'histoire de la musique à Montréal ("history of music in Montreal") という題のステンドグラスを制作。
 1968年 Hubert Tisonによって開設されたアニメ部門に移る。最初はタイトル・ロゴなどを担当していたが、70年以降、子ども番組を制作するようになる。
 1989年 ケベック州からナイトの称号を受ける(National Order of Quebec)。
 2004年 Planet in Focus film festivalでEco-Hero Media Award を受賞。
 色鉛筆とフェルペンによる作画で、1作品1作品、時間をかけて制作。作品の中に、ケベック州の美しい自然を描き、人と自然環境をテーマに作品を作り続けている、と評される。

 1970年 『アブラカダブラ』“Abracadabra”
 1971年 『神様イノンと火の物語』“Inon Ou LaConquet De Feu”
 1973年 『鳥の誕生』“The miracle of spring”
 1974年 『イリュージョン』
 1977年 『タラタタ』
 1978年『トゥ・リエン』“All Nothing” アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート
 1981年 『クラック!』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1987年 『木を植えた男』 アカデミー賞短編アニメーション賞受賞
 1993年 『大いなる河の流れ』 アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート

 公式HP:http://www.fredericback.com/

 参考サイト:http://www.animationarchive.org/bio/2005/12/back-frederic.html

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