そして映画が始まる 『それぞれのシネマ』 チャン・イーモウ篇

 『それぞれのシネマ』より、チャン・イーモウの『映画をみる』。



 【物語】
 物語:山間の小さな村に映画がやってくる。昼間から技師たちがスクリーンを張ったり、て映写機を組み立てたりして、準備をする。子供たちは早く暗くならないかと楽しみにして待つ。暗くなっても、なかなか上映は始まらず、スクリーンを通して映写技師が食事を取っているシルエットが映ったりする。いざ映画が始まる頃になると、子供は待ちくたびれて眠ってしまっている。

 【出演】 Wang Liang(若い男)、Li Man (若い女)、Lu Yulai (映写技師)

画像

 ◆コメント
 素朴でシンプルでわかりやすい。短編であっても、中国の歴史や天下国家を論じないと気が済まない(だから若干身構えさせられるところがある)チェン・カイコーとは対照的で、肩の力が抜けていて、観る側も単純に楽しむことができます。

 とはいうものの、けっこうな情報量がある作品で、子供の仕草から、かつてこのような上映会で、カンフー映画や西部劇が上映されたことがあるらしいことなどもわかる仕掛けになっていて、チャン・イーモウの芸の細かさを感じさせます。

 映写機の光とスクリーンを使って影絵遊びをするといった行為(より原初的な映画・演劇的体験!)は、万国共通なのだなあなどと微笑ましく見ることもできます。

 村の娘と上映にやってきた若い男性との淡い恋心も描かれますが、映画の内容そのものよりも、技師や上映の仕組み、機器などに目が行ってしまうあたりは、撮影監督から映画業界に入ったチャン・イーモウらしい、と言うことができるかもしれません。

 待ちくたびれて肝心のところを見逃してしまうあたりは、アッバス・キアロスタミの『トラベラー』(1974)を思い出させたりもします。

 ◆作品データ
 2007年/中国/3分17秒
 台詞なし/字幕なし
 実写作品

 *この作品は、『それぞれのシネマ』として、2007年の東京フィルメックスで上映された後、2008年シネフィル・イマジカで放映され、ユナイテッド・シネマ豊洲で劇場公開されました。
 2008年7月日本版DVDリリース。

 
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 ◆『それぞれのシネマ』 INDEX
 【0】プロローグ
 【1】レイモン・ドパルドン「夏の映画館」 Raymond Depardon “Cinéma d'été /Open-Air Cinema”
 【2】北野武「素晴らしき休日」 Takeshi Kitano “One Fine Day”
 【3】テオ・アンゲロプロス「3分間」 Theo Angelopoulos “Trois minutes /Three Minutes”
 【4】アンドレイ・コンチャロフスキー「暗闇の中で」 Andrei Konchalovsky “Dans le noir /In the Dark”
 【5】ナンニ・モレッティ「映画ファンの日記」 Nanni Moretti “Diaro di uno spettatore /Diary of a Moviegoer”
 【6】ホウ・シャオシェン「電姫戯院」 Hou Hsiao-Hsien “The Electric Princess House”
 【7】ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ「暗闇」 Jean-Pierre and Luc Dardenne “Dans l'obscurité /Darkness”
 【8】ジョエル&イーサン・コーエン Joel and Ethan Coen 「ワールドシネマ」“World Cinema”
 【9】デイヴィッド・リンチ「アブサーダ」 David Lynch“Absurda”
 【10】アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ「アナ」 Alejandro Gonzalez Inarritu “Anna”
 【11】チャン・イーモウ「映画をみる」 Zhang Yimou “En regardant le film /Movie Night”
 【12】アモス・ギタイ「ハイファの悪霊(ディブク)」 Amos Gitai “Le Dibbouk de Haifa /The Dibbuk of Haifa”
 【13】ジェーン・カンピオン「レディ・バグ」 Jane Campion “The Lady Bug”
 【14】アトム・エゴヤン「アルトー(2本立て)」 Atom Egoyan “Artaud Double Bill”
 【15】アキ・カウリスマキ「鋳造所」 Aki Kaurismaki “La Fonderie /The Foundry”
 【16】オリヴィエ・アサヤス「再燃」 Olivier Assayas “Recrudescence/Upsurge”
 【17】ユーセフ・シャヒーン「47年後」 Youssef Chahine “47 ans après /47 Years Later”
 【18】ツァイ・ミンリャン「これは夢」 Tsai Ming-Liang “It's a Dream/是夢”
 【19】ラース・フォン・トリアー「職業」 Lars von Trier “Occupations”
 【20】ラウル・ルイス「贈り物」 Raul Ruiz “Le Don /The Gift”
 【21】クロード・ルルーシュ「街角の映画館」 Claude Lelouch “Cinéma de boulevard /The Cinema Around the Corner”
 【22】ガス・ヴァン・サント「ファースト・キス」 Gus Van Sant “First Kiss”
 【23】ロマン・ポランスキー「エロチックな映画」 Roman Polanski “Cinema Erotique”
 【24】マイケル・チミノ Michael Cimino 「翻訳不要」“No Translation Needed”
 【25】デイヴィッド・クローネンバーグ「最後の映画館における最後のユダヤ人の自殺」David Cronenberg “At the Suicide of the Last Jew in the World in the Last Cinema in the World”
 【26】ウォン・カーウァイ「君のために9千キロ旅をしてきた」 Wong Kar Wai “I Traveled 9,000 Km to Give It to You”
 【27】アッバス・キアロスタミ「ロミオはどこ?」 Abbas Kiarostami “Where Is My Romeo?”
 【28】ビレ・アウグスト「最後のデート・ショウ」 Bille August “The Last Dating Show”
 【29】エリア・スレイマン「臆病」 Elia Suleiman “Irtebak/Awkward”
 【30】マノエル・デ・オリヴェイラ「唯一の出会い」 Manoel de Oliveira “Rencontre unique /Sole Meeting”
 【31】ウォルター・サレス「カンヌから5557マイル」 Walter Salles “À 8 944 km de Cannes /5,557 Miles From Cannes”
 【32】ヴィム・ヴェンダース「平和の中の戦争」 Wim Wenders “War in Peace”
 【33】チェン・カイコー「チュウシン村」 Chen Kaige “Zhanxiou Village”
 【34】ケン・ローチ「ハッピー・エンド」 Ken Loach “Happy Ending”
 【35】エピローグ

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 ◆監督について
 チャン・イーモウ 張藝謀/Zhan Yimou
 中国第五世代を代表する監督の一人。

 1951年、西安生まれ。
 高等中学を卒業後、1966年より農村や紡績工場などで働く。
 1978年に北京電影学院撮影科に入学、1982年卒業。
 1985年、西安映画製作所に配属される。『一人と八人』『黄色い大地』『大閲兵』『古井戸』の撮影監督を務め、中国ニューウェーブの映像・画面作りに大きく貢献した。
 1987年の『紅いコーリャン』で監督デビュー。この作品はベルリン映画祭金熊賞を受賞し、チェン・カイコーらとともに中国第五世代の登場を大きく印象づけた。
 1990年の『菊豆』は中国映画(香港映画を除く)として日本で初めて拡大公開された作品となった。
 1995年までの初期の監督作品は、過酷な歴史や厳しいしきたりの中で本音や本能で生きようとした女性を描いた作品で、女優コン・リーが主役を務め、「紅」を基調とした画面作りを特徴とした。
 1999~2002年は、それまでの作風から一転させ、現代中国の庶民の生き方をやさしいまなざしで見つめた3部作『あの子を探して』『初恋のきた道』『至福のとき』を発表。これ以降の作品は国外での配給をハリウッド・メジャーが手がけるようになった。
 2002年の『HERO』以降は、特撮を多用したスペクタクル性の強いアクション大作を発表し、新境地を開いた。
 さらに、2006年の『王妃の紋章』は、中国映画史上ナンバーワンとなる興行成績を残している。

 起用した俳優から才能を引き出す手腕には定評があり、何人ものスターを生み出している。

 『紅夢』でベネチア国際映画祭銀獅子賞、『秋菊の物語』でベネチア国際映画祭金獅子賞、『活きる』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞、『あの子を探して』で2度目のベネチア国際映画祭金獅子賞、『初恋のきた道』でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)など受賞歴も多い。

 映画『「あの子を探して」ができるまで』は、単なるメイキングにとどまらない、チャン・イーモウの創作の秘密を知ることができる出色のドキュメントである。

 【フィルモグラフィー】
 ・1984年 『一人と八人』 [撮影] (監督:チャン・チュンチャオ)
 ・1984年 [撮影] (監督:チェン・カイコー)
 ・1985年 『大閲兵』 [撮影] (監督:チェン・カイコー)
 ・1987年 『古井戸』 [撮影/出演] (監督:ウー・ティエンミン)
 ・1987年 『紅いコーリャン』 [監督/出演] 
 ・1988年 『ハイジャック/台湾海峡緊急指令』 [監督] (共同監督:ヤン・フォンリャン)
 ・1989年 『テラコッタ・ウォリア/秦俑』 [出演] (監督:チン・シウトン)
 ・1990年 『菊豆』[監督](共同監督:ヤン・フォンリャン) 
 ・1991年 『紅夢』 [監督] 
 ・1992年 『画魂-愛、いつまでも』 [製作総指揮] (監督:ホァン・ショーチン)
 ・1992年 『秋菊の物語』 [監督] 
 ・1994年 『活きる』 [監督]
 ・1994年 『項羽と劉邦/その愛と興亡』 [監修](監督:スティーヴン・シン)
 ・1995年 『上海ルージュ』 [監督]
 ・1995年 『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』[監督]
 ・1996年 『龍城恋歌』 [製作総指揮](監督:ヤン・フォンリャン)
 ・1997年 『キープ・クール』 [監督/出演]
 ・1999年 『あの子を探して』 [監督]
 ・1999年 『初恋のきた道』 [監督]
 ・2000年 『トゥーランドット』 [演出](監督:アラン・ミラー)
 ・2002年 『「あの子を探して」ができるまで』 [監修/出演](監督:吉田啓)
 ・2002年 『至福のとき』 [監督]
 ・2002年 『HERO』 [監督/脚本]
 ・2003年 “威馳新風” [監督][PV]
 ・2004年 『LOVERS』 [監督/脚本]
 ・2005年 『単騎、千里を走る。』 [監督/原案]
 ・2006年 『王妃の紋章』 [監督/脚本]
 ・2006年? “成都~一座來了就不想離開的都市” [監督][PV]
 ・2007年 『映画をみる』(『それぞれのシネマ』) [監督] 
 ・2007年 『北京オリンピック・聖火リレー』 [監督][PV]

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