エミール・クストリッツァ 『ウンザ・ウンザ・タイム』

 エミール・クストリッツァ率いるノー・スモーキング・オーケストラのミュージック・ビデオ『ウンザ・ウンザ・タイム』。



 【物語】
 平原にぽつんとある駅
 椅子に腰掛けていねむりしている男がいて、さらに二人のシスターやパナマ帽の二人組がベンチに座っている
 走り去っていくトロッコには人が乗っているようないないような
 ニワトリも卵を産んだり引っ込めたりしたかと思うと続けざまに3つも産んだり
 男は夢を見ているのかと思い、目をパチクリさせる
 そこに乗客がやってくる
 車の上に棺おけを乗せた葬列と楽隊、そして結婚式のカップル
 みんなが一斉に汽車に乗り込む
 さまざまな乗客が入り乱れた車内
 カップル シスター パナマ帽の二人組 楽隊 山羊
 一人の男性はなぜかガスマスクをかぶる
 山羊は乗客の本を破いて食べる
 カップルがキスすれば、シスター同士もキスをする
 ガスマスクの男はヘルメットをかぶって、身をひそめる
 陽気に踊る人々 棺おけもあっちへ行ったりこっちに来たり
 汽車が1つ目のトンネルをくぐり抜けた時、確かにそこにいたはずの炉の係が消える
 この汽車は何かおかしい
 次のトンネルをくぐるとまた人が消える
 そうして次々乗客が消えていく
 さらに次のトンネルがせまる
 トンネルを逃れようとするがもちろん汽車に乗っている限りどうにもならない
 そして汽車がトンネルから出た後、汽車の中に残っているのは山羊だけだった

画像

 ◆コメント
 「婚」と「葬」が入り乱れた、猥雑なクストリッツァ的世界。

 双子に見えるシスターとパナマ帽の男の存在は、ここが異界めいた世界であることを予感させます。

 汽車から次々乗客がいなくなるというのは、ただのファンタジーなのか、何かの比喩なのか、ちょっと判断がつきません。

 列車の中をライブ会場のようにしてしまうというのは、ノー・スモーキング・オーケストラの日常そのものなのかもしれませんが、次の『SUPER 8』のイメージにもつながっていきます。というか、このミュージック・ビデオが元になって『SUPER 8』が作られたということはほぼ確実なように思われます。
 駅を舞台にするという発想は、『ライフ・イズ・ミラクル』につながります。

 歌われている歌詞は下記の通りですが、映像とは全く無関係で、「ファッション先行型の音楽なんかつまらない。もっと血の通った音楽を取り戻すのだ」と英語で歌っています。
 英語が使われているのは、この曲が収録されたアルバム“Unza Unza Time”がユニバーサル・レコードからリリースされたからでしょうか。

 ◆作品データ
 1999年/米/5分19秒
 英語歌詞あり/日本語字幕なし
 ミュージック・ビデオ

 *参考サイト
 ・ノー・スモーキング・オーケストラ:http://www.kustu.com/w2/en:no_smoking_orchestra#official_website

 
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 “Unza Unza Time” Lirics

 In the beginning at the boring time back in 1999
 The man killed the line between punishment and the crime

 On the planet Earth
 there was no more fun
 no sex no drugs no rock'n'roll
 all music turned to a fashion show

 White man had British pop
 and black man had soul
 But no, not a drop of a blood
 'cause video killed the rock'n'roll

 and God said "Oh my God!"
 What's happened to the human being
 What's happened to my lovely creatures
 They all become a cold machine
 No more love no more power
 Machine without gasoline
 Wake up Wake up crowd
 Wake up from your boring dream

 There is lighting
 there is thunder
 What's up with you I wonder
 Lift your shoulders
 stamp your feet
 produce the extra protein
 I'm gonna hit you hit you hit you hit you
 hit you with my rythm stick
 So let there be light
 Let there be sound
 let there be a music divine
 It's Unza Unza Unza Unza time

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 「ウンザ・ウンザ・タイム」 歌詞

 1999年は退屈な年の始まりだった
 人間は罪と罰との間で方向を見失ってしまった

 地上ではもはや楽しみもセックスもドラッグもロックンロールもなく
 すべての音楽はファッション・ショーになってしまった

 白人には英国流ポップがあり
 黒人にはソウルがあった
 だがもう一滴の血も流れやしない
 ビデオがロックンロールを殺してしまったのさ

 そして神さえ「オー・マイ・ゴッド」と叫ぶ
 人間に何が起こったのか
 この愛しい生き物はどうしてしまったのか
 すべては冷たい機械になって
 もう愛も力もなくしてしまった
 ガソリンのない機械
 目覚めよ 目覚めよ 群集
 退屈な夢から目覚めるのだ

 稲光が光り
 雷鳴がとどろく
 どうしたんだい
 肩を上げ
 足を踏み鳴らせ
 タンパク質を蓄えるんだ
 おまえを叩いて叩いて叩いて叩いてしまいたい
 オレのスティックでさ
 光あれ
 音よ轟け
 神聖な音楽を作り出すんだ
 それがウンザ・ウンザ・ウンザ・ウンザ・タイムだ

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 ◆監督について
 エミール・クストリッツァ Emir Kusturica
 カンヌ国際映画祭で2度のパルムドールを受賞している数少ない監督の1人。

 1954年 ユーゴスラビア・サラエボ生まれ。
 10代の頃から映画に興味を持って、短編映画を作り始める。
 チェコスロバキアのAcademy of Performing Arts (FAMU)映画学部で学ぶ。1978年卒業。
 在学中に作った“Guernica”はカルロヴィ・ヴァリ学生映画祭で入賞した。
 卒業後は、サラエボに戻り、いくつかのテレビ映画を監督。
 初長編『ドリー・ベルを憶えてる?』がベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、華々しいデビューを飾った。

 主にジプシーの視点から、社会を、そして故郷ユーゴスラビアのたどった過酷な歴史を描くことが多いが、ただ悲惨な現状をリアルに描写するのではなく、厳しい現実を大胆に笑い飛ばすパワーとイマジネーションがあって、生命力あふれる作品に仕上がっていることが多い。

 受賞歴も多く、1981年『ドリー・ベルを憶えてる?』がベネチア国際映画祭で金獅子賞受賞、1985年カンヌ国際映画祭で『パパは、出張中!』がパルムドール&国際批評家連盟賞受賞、1989年カンヌ国際映画祭で『ジプシーのとき』が監督賞受賞、1993年ベルリン国際映画祭で『アリゾナ・ドリーム』が銀熊賞受賞、1995年カンヌ国際映画祭で『アンダーグラウンド』がパルムドール受賞。そのほか『ライフ・イズ・ミラクル』や“Zavet”もカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されている。
 2007年にはフランス芸術文化勲章(Ordre des Arts et des Lettres)が贈られている。

 現在は、『ライフ・イズ・ミラクル』のロケ地に小さな映画学校Kustendorfを開校し、後進の指導にも当たっている。
 また、ユニークなルックスと存在感を買われてか、『サン・ピエールの生命』『ギャンブル・プレイ』など、いくつかの作品には俳優として出演している。
 90年代以降は、CMも数多く手がけている。
 自らがギタリストを務めるバンド ノー・スモーキング・オーケストラは、2008年にワールド・ツアーを行ない、東京でもコンサートも開いている。
 2007年にはパリでオペラ版「ジプシーのとき」を演出した。

 【フィルモグラフィー】

 ・1971年 “A Part of the Truth”[短編][監督]
 ・1972年 “Autumn”[短編][監督]
 ・1972年 “Valter brani Sarajevo”[出演](監督:Hajrudin Krvavac)
 ・1974年 “Valter brani Sarajevo”(TVシリーズ)[出演](監督:Hajrudin Krvavac)
 ・1978年 “Guernica”[短編][監督/脚本]
 ・1978年 “Nevjeste dolaze(The Brides Are Coming)”(TV)[監督/出演]
 ・1979年 “Bife 'Titanik'(Buffet Titanic)”(TV)[監督/脚色]
 ・1981年 『ドリー・ベルを憶えてる?』[監督/脚本]
 ・1982年 “13. jul”[出演](監督:Radomir Saranovic)
 ・1985年 『パパは、出張中!』 [監督]
 ・1987年 “Strategija svrake”[脚本](監督:Zlatko Lavanic)
 ・1987年 “Zivot radnika”[脚本](監督:Miroslav Mandic)
 ・1988年 “Vizantija”(TV)[出演](監督:Milan Bilbija)
 ・1989年 『ジプシーのとき』 [監督/脚本]
 ・1992年 『アリゾナ・ドリーム』 [監督/脚本/出演]
 ・1994年 “Parisienne People”[CM][監督]
 ・1994年 “Le Sucre”[CM][監督]
 ・1995年 『アンダーグラウンド』 [監督/脚本/出演]
 ・1995年 “L'envol”[CM][監督]
 ・1995年 “Bila jednom jedna zemlja”(TVシリーズ)[監督/脚本/出演]
 ・1996年 “Seven Days in a Life of a Bird”[短編][監督]
 ・1996年 “XS”[CM][監督]
 ・1997年 “Magic Bus”[短編][監督]
 ・1997年 “Maxwell”[CM][監督]
 ・1998年 『黒猫・白猫』 [監督]
 ・1999年 『サン・ピエールの生命(いのち)』 [出演](監督:パトリス・ルコント)
 ・1999年 “Unza Unza Time”[ミュージック・ビデオ][監督]
 ・1999年 “Le coucher de solei”[CM][監督]
 ・1999年 “L'épi”[CM][監督]
 ・2001年 『SUPER 8』 [監督/製作総指揮/出演]
 ・2001年 “Ali Baba”[CM][監督]
 ・2002年 『ギャンブル・プレイ』 [出演](監督:ニール・ジョーダン)
 ・2003年 “Jagoda u supermarketu”[出演](監督:Dusan Milic)
 ・2004年 『ライフ・イズ・ミラクル』 [監督/製作/脚本/音楽]
 ・2004年 “Next”[CM][監督]
 ・2005年 『ブルー・ジプシー』(『それでも生きる子供たちへ』) [監督/製作総指揮]
 ・2005年 “Gypsy Ketchup”[CM][監督]
 ・2006年 “Zivot je cudo”(TVシリーズ)[監督]
 ・2006年 “Guca!”[製作](監督:Dusan Milic)
 ・2006年 “Viaggio segreto”[出演](監督:Roberto Andò)
 ・2007年 “Zavet(Promise Me This)”[監督/脚本/音楽]
 ・2007年 “Rainin In Paradize”[ミュージック・ビデオ][監督]
 ・2007年 “Hermano”[出演](監督:Giovanni Robbiano)
 ・2008年 “Maradona by Kusturica”[監督/脚本]
 ・2008年 “Mavi Jeans”[CM][監督]

 *参考サイト
 ・kustu.com:http://www.kustu.com/w2/en:commercials?redirect=1

 *当ブログ関連記事
 ・エミール・クストリッツァが作った小さな小さな映画学校:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200801/article_10.html


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    Excerpt:  (-1℃の部屋、鈍った思考から…)  ぜひ、みなさんに見て欲しい、クストリッツァによるドキュメンタリー映画「マラドーナ」のなかでは、安っぽい風刺アニメが随所にしつこく挿入されている。多分、.. Weblog: 山羊冥冥 racked: 2010-01-05 03:43