アキ・カウリスマキ+レニングラード・カウボーイズ 『L.A.Woman』

 “L.A.Woman”は、レニングラード・カウボーイズが、まだ完全にはレニングラード・カウボーイズになりきっていない1987年のコンサート映像で、前髪のとさかは小さめで、衣装も黒づくめではなく、まだとんがりブーツも履いていません。演奏曲“L.A.Woman”は、ドアーズの楽曲です。



 映像としては、ドラマーの足元をとらえるカットから始まって、パートごとの華となる楽器やボーカルの映像をおさえていって、途中に「引き」の映像を入れるという構成になっています。カメラは、「引き」の映像をおさえる1台とあとハンディーが2台くらいでしょうか。
 映像の半ばにロサンゼルスらしいモノクロ写真とベトナム兵士らしい写真、黒人の男の子、レーガンの肖像写真が入ります。そんなに政治的でもないカウリスマキがこういう記号を入れてしまうことに彼の若さを感じさせます(この時30歳)が、それでもやはりこういうことをやることに気恥ずかしさを感じたのか、こういうことは1箇所でしかやっていません。
 一見、漫然と撮影された素人っぽいライブ・フィルムのようにも見えますが、カット割を見ていくと、どのシーンで誰をどのように写すかということはあらかじめ綿密に打ち合わせしてあったらしいことが伺われます。

 また、よくよく見ると、音楽と演奏は、微妙に合っていないようであり、会場の歓声等も全く入っていないことから、映像と演奏は別撮りらしいこともわかります。

 ボーカルは、前年の『ロッキーⅥ』でロッキーを演じたシル・セッパラが務めています。

 映像は4分56秒ありますが、その4分56秒目に、“MEGAMANIA KY”“VILLEALFA FILMPRODUCTION OY”とクレジットが入っています。

画像

 楽曲の歌詞は以下の通りです。
 この曲に込められた意味とか位置づけとかは私は全く知らないのですが、歌詞を読んだ限りでは、LAにやってきた男が運命の女に出会い、犯罪を犯す(あるいは巻き込まれる)といったチャンドラー的シチュエーションがイメージできます。
 映画『街のあかり』には主人公をだます女ができますが、タイトルからしても、内容からしても、カウリスマキが『街のあかり』を作る時にこの“L.A.Woman”を思い出したであろうことは想像にかたくありません。

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 “L.A.Woman” Lyrics

 Well, I just got into town about an hour ago
 Took a look around, see which way the wind blow
 With a little girl in a Hollywood bungalow
 Are you a lucky little lady in The City of Light
 Or just another lost angel...City of Night
 City of Night, City of Night, City of Night, woo, c'mon
 L.A. Woman, L.A. Woman
 L.A. Woman Sunday afternoon
 L.A. Woman Sunday afternoon
 L.A. Woman Sunday afternoon
 Drive thru your suburbs
 Into your blues, into your blues, yeah
 Into your blue-blue Blues
 Into your blues, ohh, yeah
 I see your hair is burnin'
 Hills are filled with fire
 If they say I never loved you
 You know they are a liar
 Drivin' down your freeways
 Midnite alleys roam
 Cops in cars, the topless bars
 Never saw a woman
 So alone, so alone
 So alone, so alone
 Motel Money Murder Madness
 Let's change the mood from glad to sadness
 Mr. Mojo Risin', Mr. Mojo Risin'
 Mr. Mojo Risin', Mr. Mojo Risin'
 Got to keep on risin'
 Mr. Mojo Risin', Mr. Mojo Risin'
 Mojo Risin', gotta Mojo Risin'
 Mr. Mojo Risin', gotta keep on risin'
 Risin', risin'
 Gone risin', risin'
 I'm gone risin', risin'
 I gotta risin', risin'
 Well, risin', risin'
 I gotta, wooo! Bang! Bang!
 Woah, ohh yeah
 Well, I just got into town about an hour ago
 Took a look around, see which way the wind blow
 With a little girl in a Hollywood bungalow
 Oh you were like a little lady in The City of Lights
 Or just another lost angel...City of Night
 City of Night, City of Night, City of Night, woah, c'mon
 L.A. Woman, L.A. Woman
 L.A. Woman, your my woman
 Little L.A. Woman, Little L.A. Woman
 L.A. L.A. Woman Woman
 L.A. Woman c'mon

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 “L.A.Woman” 歌詞

 そうさ 街には1時間前に着いたばかりさ
 見回して、風がどこから吹いてくるのかうかがう
 ハリウッド・バンガローに少女が独り
 君は「街の灯」に出ていた幸運な少女なのかい
 それとも道に迷った天使か 夜の街
 夜の街 夜の街 夜の街 ウー カモン
 LAの女 LAの女
 日曜午後のLAの女
 日曜午後のLAの女
 日曜午後のLAの女
 郊外をドライブすれば
 君のブルーな 君のブルーな そうさ
 君のブルーでブルーなブルースの世界
 君のブルースの世界 オー イエー
 君の髪は燃えてるように見える
 丘は炎に包まれている
 オレが君を愛していないと誰かが言ってたなんて
 そんなのはでまかせだ
 フリーウェイを下って
 真夜中の裏道をうろつきまわる
 パトカーにはおまわり トップレス・バー
 女なんか一人もいない
 独りぼっちさ 独りぼっちさ
 独りぼっちさ 独りぼっちさ
 モーテル マネー マーダー マッドネス
 楽しい気分から悲しい気分にムードを変えようじゃないか
 Mr.モジョが勃つ Mr.モジョが勃つ
 Mr.モジョが勃つ Mr.モジョが勃つ
 ずっと勃ちっぱなし
 Mr.モジョが勃つ Mr.モジョが勃つ
 Mr.モジョが勃つ Mr.モジョをおっ勃たたせる
 Mr.モジョが勃つ Mr.モジョをずっとおっ勃たたせる
 勃つ 勃つ
 勃たせて 勃って
 勃って 勃って
 勃たせて 勃って
 そうさ 勃って 勃って
 撃っちまった ウー バンバン
 ウー イエー
 そうさ 街には1時間前に着いたばかりさ
 見回して、風がどこから吹いてくるのかうかがう
 ハリウッド・バンガローに少女が独り
 君は「街の灯」に出ていた幸運な少女なのかい
 それとも道に迷った天使か 夜の街
 夜の街 夜の街 夜の街 ウー カモン
 LAの女 LAの女
 LAの女 君はオレの女
 かわいいLAの女 かわいいLAの女
 LA LA 女 女
 LAの女 カモン

 ※Mr.Mojoとはペニスのこと。

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 ◆作品データ
 1987年/フィンランド/4分56秒
 台詞なし(楽曲は英語)/字幕なし
 ライブ・フィルム

 ◆監督について
 アキ・カウリスマキ

 1957年 フィンランドのオリマッティラ村で4人兄妹の次男として生まれる。兄は映画監督のミカ・カウリスマキ。フィンランドを代表する映画監督&プロデューサーで、自らの配給会社や映画館も持つ。フィンランドの映画産業の5分の1はカウリスマキ兄弟によって牛耳られているとも言われる(アキの現在の活動拠点はブラジルだが)。

 16歳の時に、シネマクラブで上映されていた、ブニュエルの『黄金時代』とフラハティの『極北の怪異』を観て、「映画」に目覚める。シネマクラブなどで手当たり次第に映画を観るようになり、映画雑誌にも多くの映画批評を投稿する。
 1977年に兄に伴われてロンドンで観た小津安二郎の『東京物語』に触発されて、映画を撮る決心をする。
 兄ミカはミュンヘンの映画大学に進んだが、アキは大学で映画を学ぶことはかなわず、タンペレ大学で、文学とコミュニケーション論を専攻。しかし、中退。
 様々な職を転々とするなかで、“Valehtelija(The Liar)”の脚本を書き、それがのちにミカの卒業制作の脚本となる。“Valehtelija(The Liar)”がきっかけとなって、アキも映画界することになる。監督として最初にクレジットされているのは、兄との共同監督作品で、音楽ドキュメンタリー“Saimaa-ilmiö(The Saimaa Gesture)”(1981年)。

 兄弟で、映画製作会社ヴィッレ・アルファを設立(1981年)。センソ・フィルムズという配給会社も立ち上げ、ヘルシンキにはシネマ・アンドラという映画館(http://www.andorra.fi/en/index.html)も作った。

 単独での最初の監督作品はドストエフスキーの同名小説を原作とする『罪と罰』。この作品が国内で評価されたことで、映画制作を続けていくことが可能になった。

 1986年より ソダンキュラでミッドナイトサン・フィルムフェスティバル(http://www.msfilmfestival.fi/fpage.php?lang=1)を開催。

 1987年 自身の製作会社スプートニクを設立。

 1988年の『真夜中の虹』、1990年の『マッチ工場の少女』あたりから、国際的にも注目が高まり、1990年の『コントラクト・キラー』以降、国際的なプロジェクトが多くなる。

 日本でアキ・カウリスマキ作品が初紹介されたのは、1990年で、『マッチ工場の少女』がシネマスクエアとうきゅうで、『コントラクト・キラー』がシャンテ シネで、『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』がパルコ SPACE PART3で、『真夜中の虹』が銀座テアトル西友で、それぞれ公開され、一躍注目の映画作家となった。それ以降、新作はコンスタントに劇場公開され、ほとんどの旧作も公開された。

 初期には、『罪と罰』、『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』といった古典文学の翻案作品もあったが、アキ・カウリスマキらしい作品として、一般にイメージされるのは、「幸福とは縁遠い人々を主人公とした、時に物悲しく、時にしみじみとさせる一連の作品」と、レニングラード・カウボーイズを主人公としたコメディー・タッチの作品。ロード・ムービーも多い。

 1998年に発表した『白い花びら』はモノクロのサイレント映画だったが、元々どの作品も台詞は少なめで、サイレント映画を思わせる作品が多い。

 上映時間の短い作品が多く、最も長い作品で『ラヴィ・ド・ボエーム』の100分。70分台の作品が多い。

 マッティ・ペロンパー、カティ・オウティネン、カリ・ヴァーネン、サカリ・クオスマネン、オウティ・マエンパーら、常連の俳優を使うことが多い。

 Aki Kaurismäki という表記が、Akira Kurosawaと似ていることが自慢、らしい。

 大の酒好きで、マスコミの取材も飲みながらということがしばしばで、あげくに急性アルコール中毒でつぶれてしまったこともある(笑)。

 ・1981年 “Valehtelija(The Liar)”[共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1981年 “Saimaa-ilmiö(The Saimaa Gesture)”
 ・1982年 “Jackpot 2” [共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1982年 “Arvottomat(The Worthless)” [共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1983年 『罪と罰』
 ・1984年 “Klaani - tarina Sammakoitten suvusta(The Clan Tale of the Frogs)” [脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1985年 『カラマリ・ユニオン』
 ・1985年 “Rosso” [共同脚本](監督:ミカ・カウリスマキ)
 ・1986年 『ロッキーⅥ』 [短編]
 ・1986年 『パラダイスの夕暮れ』
 ・1987年 『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』
 ・1987年 『スルー・ザ・ワイヤー(ワイヤーを通して)』
 ・1987年 “L.A.Woman” [短編]
 ・1987年 “Rich Little Bitch” [短編]
 ・1988年 『真夜中の虹』 *モスクワ国際映画祭 国際批評家連盟賞受賞
 ・1989年 『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
 ・1989年 “Likaiset kädet” [TV作品]
 ・1990年 『マッチ工場の少女』 *ベルリン国際映画祭Forum of New Cinema部門で、Interfilm AwardとOCIC Award - Honorable Mentionを受賞
 ・1990年 『コントラクト・キラー』
 ・1991年 『悲しき天使』 [短編]
 ・1991年 “Aki Kaurismäki” [ドキュメンタリー/出演](監督:Andy Harries)
 ・1992年 『ラヴィ・ド・ボエーム』 *ベルリン国際映画祭Forum of New Cinema部門で国際批評家連盟賞受賞
 ・1992年 『俺(おい)らのペンギン・ブーツ』[短編]
 ・1992年 「株式会社日本触媒 吸油性樹脂 写真篇」 [CM]
 ・1993年 『小津と語る Talking With OZU』 [出演/ドキュメンタリー](監督:田中康義)
 ・1994年 『アイアン・カウボーイズ ミーツ・ゴーストライダー』[製作・出演]
 ・1994年 『レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う』
 ・1994年 『トータル・バラライカ・ショー』
 ・1994年 『愛しのタチアナ』
 ・1996年 “Välittäjä(Employment Agent)” [短編]
 ・1996年 『浮き雲』 *カンヌ国際映画祭エキュメニカル特別賞受賞
 ・1998年 『白い花びら』 *ベルリン国際映画祭 C.I.C.A.E. Award - Honorable Mention受賞
 ・2001年 “Cinéma, de notre temps” [ドキュメンタリー/出演](監督:ギー・ジラール)
 *フランスのTVシリーズ「現代の映画」の1編
 ・2002年 「野郎どもに地獄はない」“Dogs Have No Hell”(『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』) [オムニバス映画]
 ・2002年 『過去のない男』 *カンヌ国際映画祭グランプリ&エキュメニカル賞受賞、セザール賞ベストEU作品賞ノミネート、ヨーロッパ映画賞 作品賞・監督賞・脚本賞ノミネート、フランドル国際映画祭グランプリ受賞
 ・2004年 “Visions of Europe” [オムニバス映画]
 *EU加盟国25カ国から選出された監督が、それぞれの国の今(もしくは未来)を伝える短篇を作り、1本の映画にまとめたもの。参加している監督は、ファティ・アキン、バーバラ・アルベルティ、トニー・ガトリフ、ピーター・グリーナウェイら。
 ・2006年 『街のあかり』 *カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品
 ・2007年 『鋳造所』(『それぞれのシネマ』) [オムニバス映画]

 *そのほかに多数のプロデュース作品があります。
 *監督作品以外は、[ ]で特記しました。

 *参考書籍
 『アキ・カウリスマキ』(エスクァイア マガジン ジャパン)

 *参考サイト
 ・Wikipedia(英語):http://de.wikipedia.org/wiki/Aki_Kaurism%C3%A4ki
 ・ファン・サイト Siunattu teknologia!:http://www.sci.fi/~solaris/kauris/

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