ファミマ! ツァイ・ミンリャンCM

 ツァイ・ミンリャンは、2004年の『楽日』(と『迷子』)の台湾での劇場公開時に、ファミリーマート(全家便利商店)とタイアップしていて、その時にファミリーマートのためにCM(たぶん現時点で唯一のもの)を制作しています。



 【物語】
 夜10時過ぎのファミリーマート。
 店内には、中年女性と、30代の男性(リー・カンション)と、それよりもう少し若いと思われる女性(チェン・シアンチー)がいる。
 チェン・シアンチーは、店内を見てまわっているリー・カンションが気になって、彼が店を出たすぐ後に店を出る。どちらかに歩き去ったと思われた彼は、しかし、店を出たすぐのところにたたずんでいた。人の気配を察して振り返った彼女と、立ち止まった彼女に気づいて顔を上げた彼とは、思わず目が合ってしまう。

画像

 ◆解説
 チェン・シアンチーは、映画『楽日』でも映画館の受付嬢として、映写技師のリー・カンションにほのかな恋心を示す女性(しかし、映画の中では成就はされない)を演じていますが、このCMでもそれに近い作品世界が形作られていて、恋の始まりを感じさせるCMになっています。

 CMは、チェン・シアンチーのナレーションで進んでいますが、中国語がわからないので詳しい内容はわからないのですが、「私はいつもこの店で出会う彼のことがとても気になっている」とかそういう内容でしょうか。台詞の中で、リー・カンションの役名であるシャオカンと2度聞こえてくるのが、気になるところです。

 映画『楽日』は、元々は、短編“天橋不見了”の成功に気をよくしたツァイ・ミンリャンが、続けてもう1本短編を作ろうと考えて、企画したのが発端で、当初は、リー・カンションの『迷子』と合わせて、2本立で上映することになっていた、と伝えられています。『楽日』の原題が“不散”で、『迷子』の原題が“不見”で、合わせて“不見不散”で「また逢いましょう」という意味になるという風に企画されていました。
 このCMでは、ラストに、『楽日』と『迷子』という2作品を合わせたポスターを見ることができます。このポスターが、実際の興行にも使われたのかどうかはわかりませんが、台湾では2作品をセットにしたDVDもリリースされていて、そのDVDにはこのポスターを再構成したようなビデオ・パッケージ(下画像)が使われています。

 このCMを最初に観た時、私はちょっとぎくしゃくした印象を受けたのですが、繰り返して観てもやはりその印象は変わりませんでした。これは、この作品がツァイ・ミンリャンが手がけた初めてのCMで、おそらく25秒という短い時間に物語を語ることに慣れていないからでもあるからだろう、と思われます。映像的に、物語の視点もちょっと曖昧なところがあって、物語がチェン・シアンチーの視点で語られていることは少なくとも2度以上観ないとわかりません。CMとしてのリズムもよくはないですね。ただ短いカットを重ねることでストーリーを語ろうとした、という感じで、カット割りとBGMも合っていないようにも思われます。せめて1分あったら、と思うのは、無茶な注文でしょうか。

 台湾映画界のトップに君臨する映画監督として、CMの依頼は数多くあるはずですが(ホウ・シャオシェンにはけっこうCM作品があるということからもそれは推測されます)、結果的に、このCMしか残していないというのは、自分でも向いていないと感じているからでしょうか。

 なお、台湾のファミリーマートのキャッチフレーズは、「全家就是你家」ですが、これは「ファミリーマートはあなたの家です」ということを意味するようです。

 ◆作品データ
 2004年/台湾/25秒
 台湾語・北京語台詞あり/日本語字幕なし
 CM

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 ◆監督について
 ツァイ・ミンリャン 蔡明亮
 台湾を代表する映画監督の1人。リー・カンションを主人公とした一連の作品で知られる。

 1957年、マレーシアのクチン生まれ。
 1977年に台湾に渡り、1980年に文化大学演劇科に進み、映画と演劇を学ぶ。
 卒業後は、映画の脚本家としてキャリアをスタートさせる。1990年代前半にはテレビ業界に進み、テレビ・ドラマの演出を手がける。
 映画としては、1992年の『青春神話』で監督デビュー。この作品で国際的に注目され、2作目の『愛情萬歳』(1994)は、ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、金獅子賞を授賞。第3長編『河』(1997)はベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞。第4作『Hole』(1998)はカンヌ国際映画祭コンペティション部門で国際批評家連盟賞を受賞。以後、『ふたつの時、ふたりの時間』(2001)をカンヌ、『楽日』(2003)をベネチア(国際批評家連盟賞受賞)、『西瓜』(2005)をベルリン(銀獅子賞&国際批評家連盟賞受賞)、『黒い眼のオペラ』(2006)をベネチア('CinemAvvenire' Award)と、三大映画祭の常連となっている。

 作品の舞台は、ほとんど現代の台北で、主人公が、自分でもコントロールできない感情や衝動から、奇妙な状況にはまっていく(そして秘密を抱え込むことになる)、というタイプの物語が多い。そうした中で描かれるのは、主に、他者との気持ちのすれ違い、とその結果による孤独感や絶望感である。
 映画評論的には、ツァイ・ミンリャンは「現代人の孤独や愛の不毛を描く映画作家」と紹介されることが多いが、その際の「愛の不毛」とは、多くの場合、「(主人公=)男どうしの同性愛」という形で提示される。

 映画以外では、文化大学演劇科在学中から演劇の演出も手がけている。

 ・1984年 “風車與火車”[脚本](監督:張佩成)
 ・1984年 『逃亡』“策馬入林”[脚本](監督:王童)
 ・1985年 『ある日の騒動』“小逃犯”[脚本] (監督:張佩成)
 ・1986年 “陽春老爸”[脚本](監督:王童)
 ・1987年 『カンフーキッド3 飛び出せ!悪ガキ三兄弟』“苦児流浪記好小子 第三集”[脚本](監督:林福地)
 ・1988年 “黄色故事”[脚本](監督:王小棣)
 ・1989年 “不情了”[TV][脚本]
 ・1989年 “快楽車行”[TV] [監督]
 ・1990年 “海角天涯”[TV] [監督]
 ・1990年 “阿雄的初戀情人”[TV] [監督]
 ・1991年 “麗香的感情線” [TV] [監督]
 ・1991年 “給我一個家”[TV] [監督]
 ・1991年 “小孩”[TV] [監督]
 ・1992年 『青春神話』“青少年哪吒”[監督]
 ・1994年 『愛情萬歳』[監督]
 ・1995年 “我新認識的朋友”[TV] [監督]
 ・1997年 『河』“河流” [監督]
 ・1998年 『Hole』“洞” [監督]
 ・2001年 「神様との対話」(『三人三色』)“與神對話” [監督]
 ・2001年 『ふたつの時、ふたりの時間』“你那邊幾點” [監督]
 ・2001年 『お月様が見えない』“月亮不見了”[TV] [監督]
 ・2002年 “天橋不見了/The Skywalk is Gone”[短編] [監督]
 ・2002年 『小樹慢慢長大』[監督]
 ・2003年 『迷子』[製作総指揮](監督:リー・カンション)
 ・2003年 『楽日』“不散” [監督]
 ・2004年 “Aquarium”(“Welcome to São Paulo/Bem-Vindo a São Paulo”) [監督]
 サンパウロ誕生450年記念のオムニバス・ドキュメンタリーで、他にマリア・デ・メデイロスやアモス・ギタイ、ミカ・カウリスマキ、フィリップ・ノイス、吉田喜重ら13人の監督が参加している。
 ・2004年 “我的旲小孩” [TV] [監督] (共同監督:リー・カンション)
 ・2004年 ファミリーマート(全家便利商店)CM [CM]
 ・2005年 『西瓜』“天邊一朵雲” [監督]
 ・2006年 『黒い眼のオペラ』“黑眼圈” [監督]
 ・2007年 「これは夢」(『それぞれのシネマ』)“是夢” [監督]
 ・2007年 『ヘルプ・ミー・エロス』[製作総指揮](監督:リー・カンション)
 ・2008年 “莎樂美/臉/Faces”[監督]

 ※特記なしは長編監督作品。

 *参考サイト
 ・プレノン・アッシュHP:http://www.prenomh.com/prev/tml-movie/2006/tml/film.html

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