天国か地獄か ジェイソン・ライトマン“In God We Trust”(2000年)

 『JUNO/ジュノ』のジェイソン・ライトマン監督の2000年の作品“In God We Trust”(我ら神を信ず)。ショート・バージョンとロング・バージョンがありますが(ジェイソン・ライトマンが2通り作ったのかどうかは不明)、ストーリーは全く同じなので、ショート・バージョンでも十分楽しむことができます。

 ショート・バージョン↓(5分54秒)
 


 フル・バージョン↓(16分34秒)
 


 【物語】
 宇宙から地球にずんずんズームしていく。
 通りで1クォーター・コインを手にしている主人公ロバート・ピーターソン。
 コインの表面に“In God We Trust”(我ら神を信ず)と刻まれているのが見える。
 そこに車が走ってきて、ロバートは、はねられて死ぬ。
 死んだはずのロバートがやってきた先は、今風のデスクが並ぶオフィスで、彼はそこでにこやかに微笑む女性に出迎えられる。そこは煉獄で、死んだロバートはそこへエレベーターで運ばれてきたのだった。
 デスクに案内されるロバート。
 彼の担当官はギルという男で、ギルはロバートのフルネームや生年月日を確認した後で、あっさりと「地獄行きだな」と宣言する。
 驚くロバートは「オレは悪人じゃない」と抗議するが、ギルは「決めたのは私じゃない。生まれた時から良い行為には得点が与えられ、良くない行為は減点される仕組みになっていて、君はトータルでマイナス198点なのだ」と話す。些細なことで減点される(1992年にはFワードを1032回口にした等)ほか、積極的に良い行ないをしなかったということも減点の対象になる、と知らされる。
 ロバートは、地獄に行きたくはなかったので、コンピュータがダウンしてギルの注意がそれた隙に、新しい死者を運んできたエレベーターに飛び込んで逃げる。
 その結果、ロバートは下界の救急車の中で蘇生する。
 ロバートは、必死になって、善行を重ね、点数を稼ごうとする。ガール・フレンドに昔のことを謝ったり、飼っていたセキセイインコを逃がしてやったり……。
 一方、煉獄では、なんとかロバートの邪魔をしようとして(もう一度死なせようとして)、最初は新米のボビー・ジュニアがあれこれ試みるが、うまくいかず、結局ギルにバトン・タッチする。
 ロバートが、女の子が靴のひもを結ぶ間ソフトクリームを持っていてあげていると、ギルは、ソフトクリームを溶かして、止まっていたバイクの上に落ちるようにする。ロバートは怒ったバイクの持ち主に追われるが、逃げ込んだダンス教室でダンスの相手をして、逆に点数を稼ぐ。ギルは、ロバートの目の前に高圧の電線を躍らせたりもするが、ロバートはそれもあっさりかわしてしまう。
 街角でリッキー・マーティンの「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」を鳴らしているテープレコーダーを見つけたロバートは、それを蹴飛ばして壊し、また点数を稼ぐ。
 そして父親に会いに行く。「ちっちゃな悪事を重ねたせいで地獄に行くことになった」とロバートが話すと、「赤ん坊の時にお前を落っことしたのがまずかったのかもしれないな」と父。「でもお前もオレもこうして元気だし、きっと天国に行けるさ」と明るく元気づけてくれる。
 ロバートは、こうして父との会話の時間を持ったことで、またもポイントを得る。
 ラスト、マイナス1ポイントとなったところで、ロバートは浮浪者と出会う。彼は小銭がないか探すが、持ち合わせがない。ふと路上を見渡すと、1クォーター・コインが落ちているのを見つける。拾おうとしたところで、ロバートは車にはねられて死んでしまう。
 それを見て大喜びするギル。
 しかし、コインは空中を舞って、見事に浮浪者のカップの中へ。
 ロバートのスコアは、ギリギリのところでプラス3に転じる。
 ロバートは、エレベーターで再び煉獄にやってくるが、ショックを受けたギルは彼がやってきたことに気づかず、扉は再び閉まってしまう。エレベーターには「上へ」の表示が出る。

画像

 ◆コメント
 自分の死に際して、煉獄で人生を回顧する、あるいは、この世に残した人々にお別れを告げるために短い間だけ人生をやり直すことが許される、という趣向の映画は、けっこうあったりしますが、これもそうした系譜につらなる作品と言ってよいかもしれません。
 こういう設定の作品で最も有名なのは、おそらくエルンスト・ルビッチの『天国は待ってくれる』ですが、映画を学び、しかも父親がアイヴァン・ライトマンであるジェイソン・ライトマンが『天国は待ってくれる』を知らないわけもなく、彼が『天国は待ってくれる』を意識しつつ(今の自分ならこうすると考えて)本作を作ったと考えてまず間違いないところだろうと思われます。

 『サンキュー・スモーキング』も『JUNO/ジュノ』もそうですが、ジェイソン・ライトマンという人は、下品にならないユーモアの持ち主で、人の善意を信じている監督なんだなということがこの作品を観てもよくわかります。

 タイトルの“In God We Trust”は、「我ら神を信ず」という意味ですが、アメリカの貨幣に必ず入れること義務づけられている標語だそうです。

 ちなみに、ジェイソン・ライトマン自身は、ユダヤ教徒です。

 ◆作品データ
 2000年/米/16分34秒
 英語台詞あり/日本語字幕なし
 実写作品

 この作品は、2001年と2006年のショート・ショート・フィルム・フェスティバルで日本語字幕付きで上映され(http://www.shortshorts.org/2006/ssff/jp/special/)、『サンキュー・スモーキング』が上映されたシャンテ シネでも限定で上映されました。

 この作品は、2000年アスペン短編映画祭 観客賞&審査員賞受賞、オースティン映画祭短編部門グランプリ受賞、フロリダ映画祭短編部門審査員賞受賞、ロサンゼルス・インディペンデント・フィルム・フェスティバル観客賞受賞、ニューヨーク・コメディー・フェスティバル最優秀短編賞受賞、シアトル国際映画祭最優秀短編賞受賞など、受賞歴多数。

 
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 ◆監督について

 ジェイソン・ライトマン
 1977年 カナダ・モントリオール生まれ。
 父は映画監督のアイヴァン・ライトマン、母は女優のジュヌヴィエーヴ・ロベールで、妹のキャサリンとキャロラインも女優として活躍している。
 少年時代に、『ツインズ』(1988)、『ゴースト・バスターズ2』(1989)、『キンダーガートン・コップ』(1990)、『ファーザーズ・デイ』など、父が監督もしくはプロデュースした作品に出演している。
 1995年にHarvard-Westlake Schoolを卒業後、南カリフォルニア大学に進む。

 最初の短編“Operation”がサンダンス映画祭で上映されるという幸運をつかみ、その後、いくつかの短編を発表。
 2005年に発表した初長編『サンキュー・スモーキング』は2005年のトロント国際映画祭、2006年のサンダンス映画祭で上映されて話題を呼び、さらにゴールデン・グローブ賞に2部門ノミネートされるなど、一躍注目の監督となった。
 第二長編『Juno/ジュノ』は、2007年度の賞レースで、作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞などの部門で数多くのノミネーション/受賞を受け、米国アカデミー賞では脚本賞を受賞した。

 2006年にパートナーのDaniel Dubieckiとプロダクション"Hard C Productions"を設立し、“The Ornate Anatomy of Living Things”や“Jennifer's Body”(ディアブロ・コーディー脚本作品)などのプロデュースに当たっている。

 ホンダ、任天堂、デニーズなど数々のCMも手がけている。

 *公式サイト MY SPACE:http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendID=58601444

 【フィルモグラフィー】

 ・1998年 “Operation”[短編]
 コメディー。詳細は不詳ですが、既にビル・バーチなどプロとして活躍している俳優を使っています。

 ・1999年 “H@” [短編]
 銀行を舞台にしたコメディーのようです。

 ・2000年 “In God We Trust” [短編]

 ・2001年 “Gulp” [短編]
 水槽の中でアップアップしている魚を見たフランシスは友達に相談するが、友達はその魚は塩水じゃないと生きられないと言い出す。そこで彼は魚を助けるために行動し始める……。

 ・2002年 “Uncle Sam” [短編]
 コメディー。詳細不詳。

 ・2004年 “Consent” [短編]
 ペニーとジュダの最初のデート。二人は彼女のベッドのそばでキスしかけるところまで行くが、そこで彼は彼女にある質問をする……。

 ・2005年 『サンキュー・スモーキング』
 ナショナル・ボード・オブ・レビュー 新人監督賞受賞。ゴールデン・グローブ賞2部門ノミネート。
 当ブログ記事:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200612/article_11.html

 ・2007年 “Local Ad”(『The Office』)[TV]

 ・2007年 『Juno/ジュノ』
 米国アカデミー賞作品賞・監督賞・主演女優賞ノミネート、脚本賞受賞。

 ・2008年 “Pilot”("The United States of Tara")[TV]

 ・2009年 “Up in the Air”

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