久々のリン・チャン 台湾故宮博物館『花気薫人帖』

 1990年代のホウ・シャオシェン作品の出演者として知られるリン・チャン(林強)。
 彼は、元々はミュージシャンで、現在は俳優としての活動はほとんどしていないようですが、ジャ・ジャンクー作品に音楽を提供しているのをはじめ、音楽活動は活発に行なっているようです。

 下の動画は、故宮博物館とのコラボレーション“Old is New”というプロジェクトのCMです。



 【物語】
 いくつかの器。
 茶の道具。
 茶が注がれる。
 豊かな自然の中に建てられた建物の中で茶を楽しむ男性。
 花びらが舞い散る桜の下で、桜色のドレスをひらめかせる女性。
 庭先に腰かけるリン・チャン。
 ターンテーブルの前に座り、ヘッドホンをする。
 その前にはいくつものディスプレーが置かれている。
 ターンテーブルをまわし、機器を操作する。
 ディスプレーに書が映し出される。
 「花氣薰人欲破禪」
 「心情其實過中年」
 「春來詩思何所似」
 「八節灘頭上水船」
 宋代の詩人・黄庭堅の七言詩が詠み上げられる。
 建物と詩を詠み上げるリン・チャンの点景。

 詩の文字がスクランブルして別の文章に変わる。

 國立故宮博物院
 花氣薰人詩(1087年作)
 宋 黄庭堅(1045-1105)
 世界現存千年墨跡之一

 Old is New
 國立故宮博物院

画像

 ◆解説
 このイメージCMは、リン・チャンが、故宮博物館に所蔵されている黄庭堅の書画「花氣薰人詩」をモチーフに、自らの音楽と映像とを使って、このインスタレーションのテーマである“Old is New”を表現しようとしたもののようです。

 黄庭堅の書画「花氣薰人詩」をざっと訳すと―
 花の香りは、人を気もそぞろにさせ、禅を破ろうとする
 実際のところ心は年老いてしまい
 春が来て、詩を詠もうとしても
 八節灘を溯ろうとする船のように、遅々として進まないのだ

 このCMは、ホウ・シャオシェン作品を探していて、ひっかかってきてもので、「侯孝賢導演」としているものもあり、ホウ・シャオシェン演出のエール・フランスのCMとリズムやタッチが似ているので、てっきりホウ・シャオシェン演出作品かと思ったのですが、よくよく調べてみると台湾のCMディレクター彭文淳(ポン・ウェイチュン)の作品で、故宮博物館のサイトにちゃんとそう記載されていました。
 しかも、このCMは、The American Association of Museumsの2006年 Muse awardsのPromotional and Marketing部門で金賞を受賞したという評価の高い作品なのだそうです。

 リン・チャンというのは、私の中では「自分の中の衝動や感情、欲望をコントロールも、うまく発散させることもできずに、いつもフラストレーションを抱えて、いらだち、時に誤った方向にそれを爆発させて、まわりや自分を傷つける青年」というようなキャラクター・イメージがあったのですが、知らないうちに、なかなか雰囲気のある大人の男性になっていたのですね。

 このインスタレーション自体は、さして面白いものでも目新しいものでもありませんが(笑)、温故知新的なコンセプトを打ち出したイメージCMとして美しく、また、古いものと新しいものをつなぐ存在としてリン・チャンをキャスティングしている(そして音楽も任せている)のは、ちょっと面白かったですね。

 *参考サイト
 ・故宮博物館HP(日本語):http://www.npm.gov.tw/hotnews/oldisnew/index3_1_jp.html
 ・リン・チャンに関するWikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E5%BC%B7
 ・「花氣薰人詩」を紹介しているサイト:http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/6412/s-lit-ori-shi.html
 ・、The American Association of Museums:http://www.mediaandtechnology.org/muse/2006muse_promotion.html

 ◆作品データ
 2005年/台湾/1分33秒
 北京語(台湾語)台詞あり/字幕なし
 CM

 
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 ◆監督について
 彭文淳(ポン・ウェイチュン) Wayne Peng
 アジアを代表するCMディレクターの1人。

 1964年 台湾生まれ。
 10代の頃からよく映画を観に行くようになる。
 大学では物理を専攻したが、映画の道に進みたいという気持ちもあり、しかし再受験したくないということもあって、次善の策として2年時より外国語学部に転部する。1986年に大学卒業。
 2年の兵役を経て、CM業界に入る。他人に使われるのが嫌で、どこかの会社に所属することはせず、インディペンデントのCMディレクターとして活躍している。
 主なCM作品には、中國銀行、Just Gold(香港)、日本ペイント、シンガポール空軍、エリクソンなどがある。金城武と組むことが多いことでも知られる。
 CMのほか、デイヴィッド・タオやアンディー・ラウなどのミュージック・ビデオも手がけている。

 【フィルモグラフィー】 *CM作品については下記公式HPを参照のこと
 1995年 アンディー・ラウ『真永遠』[ミュージック・ビデオ]
 2003年 スン・イェンツー『The Moment』[ミュージック・ビデオ]
 2003年 『歌舞中国』“Burning Dreams”[ドキュメンタリー]
 2005年 デイヴィッド・タオ『孫子兵法』[ミュージック・ビデオ]
 2005年 デイヴィッド・タオ『愛是個什麼東西』[ミュージック・ビデオ]
 2005年 『花氣薰人帖』[CM]
 2005年 『東森ホームショッピング』[CM]
 2008年 レネ・リウ『我很好』[ミュージック・ビデオ]

 *参考サイト
 ・公式HP Purefilms:http://www.purefilms.com.tw/home.asp
 ・IMDb:http://www.imdb.com/name/nm1618171/

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