ツァイ・ミンリャン 『これは夢』

 『それぞれのシネマ』より、ツァイ・ミンリャン篇「これは夢」。



 【物語】 若かった頃の父の夢を見る。夜中に目覚めた私に、父は、ランタンの明かりで、ドリアンを切り分けてくれた。母もいたが、夢の中の母は既に年老いていた。
 母方の祖母は映画好きで、よく私を映画館につれていってくれた。祖母は映画館で串に刺した梨を買ってくれた(串に刺した梨を後ろの座席にいる男性に食べろと差し出す女性の映像)。遺影とともに映画館で映画を観ている家族3人。

 BGMは李香蘭の「是夢是真」。

 【出演】 リー・カンション(父)、Chay Yiok Khuan、Pearlly Chua、Norman Atun、Lee Yi Cheng

画像

 『それぞれのシネマ』の中では、自身の映画館体験を郷愁を込めて描いた(タイプの)作品ということになります。
 後半が暗くて、何が映っているのか、この動画ではほとんどわからないというのが残念ですが(DVD等でご確認ください)、映画(館)と、家族と結びついた楽しかった思い出がノスタルジックに回顧されていることは、この映像からもわかると思います。

 ロケーションは、ツァイ・ミンリャンが育ったクアラルンプールで行なわれたと伝えられています。

 夏の夜とドリアン(味覚と嗅覚)、映画館と母方の祖母と串に刺した梨(味覚)、が結びついているというのがちょっと面白いですね。

 家族と結びついた楽しかった思い出、夢なのか過去の記憶なのか幻想なのかわからない自分の頭の中のイメージ、夏の夜といったモチーフは、大林宣彦の『異人たちとの夏』を思い出させます。

 ちなみに、家族との映画(館)体験を描いているのは、ツァイ・ミンリャンを除けば、『それぞれのシネマ』でも、あとはクロード・ルルーシュしかいません。

 ツァイ・ミンリャンとしては、映画館を題材にした作品として、他に『楽日』(2003)があります。

 ◆作品データ
 2007年/台湾/3分20秒
 北京語・台湾語台詞あり/英語字幕あり
 実写作品

 *この作品は、『それぞれのシネマ』として、2007年の東京フィルメックスで上映された後、2008年シネフィル・イマジカで放映され、ユナイテッド・シネマ豊洲で劇場公開されました。
 2008年7月日本版DVDリリース。

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 ◆『それぞれのシネマ』 INDEX
 【0】プロローグ
 【1】レイモン・ドパルドン「夏の映画館」 Raymond Depardon “Cinéma d'été /Open-Air Cinema”
 【2】北野武「素晴らしき休日」 Takeshi Kitano “One Fine Day”
 【3】テオ・アンゲロプロス「3分間」 Theo Angelopoulos “Trois minutes /Three Minutes”
 【4】アンドレイ・コンチャロフスキー「暗闇の中で」 Andrei Konchalovsky “Dans le noir /In the Dark”
 【5】ナンニ・モレッティ「映画ファンの日記」 Nanni Moretti “Diaro di uno spettatore /Diary of a Moviegoer”
 【6】ホウ・シャオシェン「電姫戯院」 Hou Hsiao-Hsien “The Electric Princess House”
 【7】ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ「暗闇」 Jean-Pierre and Luc Dardenne “Dans l'obscurité /Darkness”
 【8】ジョエル&イーサン・コーエン Joel and Ethan Coen 「ワールドシネマ」“World Cinema”
 【9】デイヴィッド・リンチ「アブサーダ」 David Lynch“Absurda”
 【10】アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ「アナ」 Alejandro Gonzalez Inarritu “Anna”
 【11】チャン・イーモウ「映画をみる」 Zhang Yimou “En regardant le film /Movie Night”
 【12】アモス・ギタイ「ハイファの悪霊(ディブク)」 Amos Gitai “Le Dibbouk de Haifa /The Dibbuk of Haifa”
 【13】ジェーン・カンピオン「レディ・バグ」 Jane Campion “The Lady Bug”
 【14】アトム・エゴヤン「アルトー(2本立て)」 Atom Egoyan “Artaud Double Bill”
 【15】アキ・カウリスマキ「鋳造所」 Aki Kaurismaki “La Fonderie /The Foundry”
 【16】オリヴィエ・アサヤス「再燃」 Olivier Assayas “Recrudescence/Upsurge”
 【17】ユーセフ・シャヒーン「47年後」 Youssef Chahine “47 ans après /47 Years Later”
 【18】ツァイ・ミンリャン「これは夢」 Tsai Ming-Liang “It's a Dream/是夢”
 【19】ラース・フォン・トリアー「職業」 Lars von Trier “Occupations”
 【20】ラウル・ルイス「贈り物」 Raul Ruiz “Le Don /The Gift”
 【21】クロード・ルルーシュ「街角の映画館」 Claude Lelouch “Cinéma de boulevard /The Cinema Around the Corner”
 【22】ガス・ヴァン・サント「ファースト・キス」 Gus Van Sant “First Kiss”
 【23】ロマン・ポランスキー「エロチックな映画」 Roman Polanski “Cinema Erotique”
 【24】マイケル・チミノ Michael Cimino 「翻訳不要」“No Translation Needed”
 【25】デイヴィッド・クローネンバーグ「最後の映画館における最後のユダヤ人の自殺」David Cronenberg “At the Suicide of the Last Jew in the World in the Last Cinema in the World”
 【26】ウォン・カーウァイ「君のために9千キロ旅をしてきた」 Wong Kar Wai “I Traveled 9,000 Km to Give It to You”
 【27】アッバス・キアロスタミ「ロミオはどこ?」 Abbas Kiarostami “Where Is My Romeo?”
 【28】ビレ・アウグスト「最後のデート・ショウ」 Bille August “The Last Dating Show”
 【29】エリア・スレイマン「臆病」 Elia Suleiman “Irtebak/Awkward”
 【30】マノエル・デ・オリヴェイラ「唯一の出会い」 Manoel de Oliveira “Rencontre unique /Sole Meeting”
 【31】ウォルター・サレス「カンヌから5557マイル」 Walter Salles “À 8 944 km de Cannes /5,557 Miles From Cannes”
 【32】ヴィム・ヴェンダース「平和の中の戦争」 Wim Wenders “War in Peace”
 【33】チェン・カイコー「チュウシン村」 Chen Kaige “Zhanxiou Village”
 【34】ケン・ローチ「ハッピー・エンド」 Ken Loach “Happy Ending”
 【35】エピローグ

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 ◆監督について
 ツァイ・ミンリャン 蔡明亮
 台湾を代表する映画監督の1人。リー・カンションを主人公とした一連の作品で知られる。

 1957年、マレーシアのクチン生まれ。
 1977年に台湾に渡り、1980年に文化大学演劇科に進み、映画と演劇を学ぶ。
 卒業後は、映画の脚本家としてキャリアをスタートさせる。1990年代前半にはテレビ業界に進み、テレビ・ドラマの演出を手がける。
 映画としては、1992年の『青春神話』で監督デビュー。この作品で国際的に注目され、2作目の『愛情萬歳』(1994)は、ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、金獅子賞を授賞。第3長編『河』(1997)はベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞。第4作『Hole』(1998)はカンヌ国際映画祭コンペティション部門で国際批評家連盟賞を受賞。以後、『ふたつの時、ふたりの時間』(2001)をカンヌ、『楽日』(2003)をベネチア(国際批評家連盟賞受賞)、『西瓜』(2005)をベルリン(銀獅子賞&国際批評家連盟賞受賞)、『黒い眼のオペラ』(2006)をベネチア('CinemAvvenire' Award)と、三大映画祭の常連となっている。

 作品の舞台は、ほとんど現代の台北で、主人公が、自分でもコントロールできない感情や衝動から、奇妙な状況にはまっていく(そして秘密を抱え込むことになる)、というタイプの物語が多い。そうした中で描かれるのは、主に、他者との気持ちのすれ違い、とその結果による孤独感や絶望感である。
 映画評論的には、ツァイ・ミンリャンは「現代人の孤独や愛の不毛を描く映画作家」と紹介されることが多いが、その際の「愛の不毛」とは、多くの場合、「(主人公=)男どうしの同性愛」という形で提示される。

 映画以外では、文化大学演劇科在学中から演劇の演出も手がけている。

 ・1984年 “風車與火車”[脚本](監督:張佩成)
 ・1984年 『逃亡』“策馬入林”[脚本](監督:王童)
 ・1985年 『ある日の騒動』“小逃犯”[脚本] (監督:張佩成)
 ・1986年 “陽春老爸”[脚本](監督:王童)
 ・1987年 『カンフーキッド3 飛び出せ!悪ガキ三兄弟』“苦児流浪記好小子 第三集”[脚本](監督:林福地)
 ・1988年 “黄色故事”[脚本](監督:王小棣)
 ・1989年 “不情了”[TV][脚本]
 ・1989年 “快楽車行”[TV] [監督]
 ・1990年 “海角天涯”[TV] [監督]
 ・1990年 “阿雄的初戀情人”[TV] [監督]
 ・1991年 “麗香的感情線” [TV] [監督]
 ・1991年 “給我一個家”[TV] [監督]
 ・1991年 “小孩”[TV] [監督]
 ・1992年 『青春神話』“青少年哪吒”[監督]
 ・1994年 『愛情萬歳』[監督]
 ・1995年 “我新認識的朋友”[TV] [監督]
 ・1997年 『河』“河流” [監督]
 ・1998年 『Hole』“洞” [監督]
 ・2001年 「神様との対話」(『三人三色』)“與神對話” [監督]
 ・2001年 『ふたつの時、ふたりの時間』“你那邊幾點” [監督]
 ・2001年 『お月様が見えない』“月亮不見了”[TV] [監督]
 ・2002年 “天橋不見了/The Skywalk is Gone”[短編] [監督]
 ・2002年 『小樹慢慢長大』[監督]
 ・2003年 『迷子』[製作総指揮](監督:リー・カンション)
 ・2003年 『楽日』“不散” [監督]
 ・2004年 “Aquarium”(“Welcome to São Paulo/Bem-Vindo a São Paulo”) [監督]
 サンパウロ誕生450年記念のオムニバス・ドキュメンタリーで、他にマリア・デ・メデイロスやアモス・ギタイ、ミカ・カウリスマキ、フィリップ・ノイス、吉田喜重ら13人の監督が参加している。
 ・2004年 “我的旲小孩” [TV] [監督] (共同監督:リー・カンション)
 ・2004年 ファミリーマート(全家便利商店)CM [CM]
 ・2005年 『西瓜』“天邊一朵雲” [監督]
 ・2006年 『黒い眼のオペラ』“黑眼圈” [監督]
 ・2007年 「これは夢」(『それぞれのシネマ』)“是夢” [監督]
 ・2007年 『ヘルプ・ミー・エロス』[製作総指揮](監督:リー・カンション)
 ・2008年 “莎樂美/臉/Faces”[監督]

 ※特記なしは長編監督作品。

 *参考サイト
 ・プレノン・アッシュHP:http://www.prenomh.com/prev/tml-movie/2006/tml/film.html

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