チャン・イーモウが手がけたトヨタのPV “威馳新風”

 トヨタ自動車が中国市場向けに初めて設計・販売した「威馳(VIOS/ヴィオス)」のPVをチャン・イーモウが手がけています。



 北京語なので、会話の内容まではわかりませんが、物語は大体以下のような感じでしょうか。

 【物語】
 些細なことから夫婦喧嘩が始まる。
 夫が車を運転している間も妻は口うるさく小言を言い続け、やがて耐えられなくなった夫の方が「いいかげんにしろ」と怒鳴りつけて、車を降りる。妻の方も憤りがおさまらないまま、車を降りて、ベンチに座る。夫もベンチまで近寄るが、並んで座るということはない。
 そこに、通りがかりのおじさんがやってくる。彼は、夫の方に「ドアが開けっ放しだよ」と目配せした後で、好奇心から車に乗り込み、最新車の装備をいろいろ試してみる。
 カーステレオから曲が鳴り出したところで、おじさんは車を降り、喧嘩している2人にも聞こえるように車のドアを開けっぱなしにする。
 その曲は2人の思い出の曲だったらしく、2人はともに情熱的な恋をしていた頃のことを思い出し、再び気持ちを寄り添わせるのだった。

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 ◆コメント
 ブログ「あじえんざんまい」さん(http://dejiu.cocolog-nifty.com/asien/2003/06/cm.html)によると、このPVは5日間かけて作られたそうで、フル・バージョンとしてのオンエアは1回のみだったそうです(もっと短いバージョンがあるのかどうかは不明)。

 作品としてはホワイトカラー層の生活を描いたものだそうで、台本は推敲に推敲を重ねて、映画を撮るように撮ったと伝えられています。

 夫役は、『玻璃(ガラス)の城』(1998)、『美少年の恋』(1998)、『ジェネックス・コップ』(1999)、『女帝[エンペラー]』(2006)で知られるダニエル・ウーで、妻役は4000人からオーディションで選ばれた徐筠。

 撮影は、『LOVERS』『単騎、千里を走る。』『王妃の紋章』も手がけた趙小丁(チャオ・シャオティン)。

 最後に流れる曲は、朴樹(プー・シュー)の“Colorful Days”で、この曲は中国歌曲ランキングで4週連続1位になったそうです。朴樹は、1999年にリリースしたファースト・アルバム『我去2000』が大ヒットし、2004年には“Colorful Days”も収録されているアルバム『生如夏花』をリリース。これまた大ヒットになり、多数の賞も受賞しています。

 この作品は、中国で制作されたCMとしては最長のものだそうです。

 私が確認した限りでは、これがチャン・イーモウが手がけた初めてのPV(CM)で、ホワイトカラーのカップルを主役に据えるのも初めてなら、車を運転させるシーンのある映画も珍しく(『単騎、千里を走る。』くらい?)、音楽を重要なモチーフとして使うのも珍しいように思います。
 BMWプレゼンツの“The Hire”のシリーズと比べてみてもあまり面白みがないと感じてしまうのは、やはりチャン・イーモウが短編やPVに慣れていないのと、都市を舞台にした現代劇を得意としていないからでしょうか。

 ダニエル・ウーが、けっこういい俳優であることに気づかされたりもしたのですが、これはチャン・イーモウの意向によるキャスティングというより、どちらかといえばスポンサーの意向を反映したものなのかもしれません。

 車に乗り込むおじさんのキャラクターが、チャン・イーモウ的といえばチャン・イーモウ的かもしれません。

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 ◆作品データ
 2003年/中国/5分12秒
 北京語台詞あり/日本語字幕なし
 PV

 *参考サイト
 ・auto.enorth.com.cn:http://auto.enorth.com.cn/system/2003/04/11/000543026.shtml
 ・中国情報局 News:http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2003&d=0404&f=business_0404_006.shtml

 
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 ◆監督について
 チャン・イーモウ 張藝謀/Zhan Yimou
 中国第五世代を代表する監督の一人。

 1951年、西安生まれ。
 高等中学を卒業後、1966年より農村や紡績工場などで働く。
 1978年に北京電影学院撮影科に入学、1982年卒業。
 1985年、西安映画製作所に配属される。『一人と八人』『黄色い大地』『大閲兵』『古井戸』の撮影監督を務め、中国ニューウェーブの映像・画面作りに大きく貢献した。
 1987年の『紅いコーリャン』で監督デビュー。この作品はベルリン映画祭金熊賞を受賞し、チェン・カイコーらとともに中国第五世代の登場を大きく印象づけた。
 1990年の『菊豆』は中国映画(香港映画を除く)として日本で初めて拡大公開された作品となった。
 1995年までの初期の監督作品は、過酷な歴史や厳しいしきたりの中で本音や本能で生きようとした女性を描いた作品で、女優コン・リーが主役を務め、「紅」を基調とした画面作りを特徴とした。
 1999~2002年は、それまでの作風から一転させ、現代中国の庶民の生き方をやさしいまなざしで見つめた3部作『あの子を探して』『初恋のきた道』『至福のとき』を発表。これ以降の作品は国外での配給をハリウッド・メジャーが手がけるようになった。
 2002年の『HERO』以降は、特撮を多用したスペクタクル性の強いアクション大作を発表し、新境地を開いた。
 さらに、2006年の『王妃の紋章』は、中国映画史上ナンバーワンとなる興行成績を残している。

 起用した俳優から才能を引き出す手腕には定評があり、何人ものスターを生み出している。

 『紅夢』でベネチア国際映画祭銀獅子賞、『秋菊の物語』でベネチア国際映画祭金獅子賞、『活きる』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞、『あの子を探して』で2度目のベネチア国際映画祭金獅子賞、『初恋のきた道』でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)など受賞歴も多い。

 映画『「あの子を探して」ができるまで』は、単なるメイキングにとどまらない、チャン・イーモウの創作の秘密を知ることができる出色のドキュメントである。

 【フィルモグラフィー】
 ・1984年 『一人と八人』 [撮影] (監督:チャン・チュンチャオ)
 ・1984年 [撮影] (監督:チェン・カイコー)
 ・1985年 『大閲兵』 [撮影] (監督:チェン・カイコー)
 ・1987年 『古井戸』 [撮影/出演] (監督:ウー・ティエンミン)
 ・1987年 『紅いコーリャン』 [監督/出演] 
 ・1988年 『ハイジャック/台湾海峡緊急指令』 [監督] (共同監督:ヤン・フォンリャン)
 ・1989年 『テラコッタ・ウォリア/秦俑』 [出演] (監督:チン・シウトン)
 ・1990年 『菊豆』[監督](共同監督:ヤン・フォンリャン) 
 ・1991年 『紅夢』 [監督] 
 ・1992年 『画魂-愛、いつまでも』 [製作総指揮] (監督:ホァン・ショーチン)
 ・1992年 『秋菊の物語』 [監督] 
 ・1994年 『活きる』 [監督]
 ・1994年 『項羽と劉邦/その愛と興亡』 [監修](監督:スティーヴン・シン)
 ・1995年 『上海ルージュ』 [監督]
 ・1995年 『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』[監督]
 ・1996年 『龍城恋歌』 [製作総指揮](監督:ヤン・フォンリャン)
 ・1997年 『キープ・クール』 [監督/出演]
 ・1999年 『あの子を探して』 [監督]
 ・1999年 『初恋のきた道』 [監督]
 ・2000年 『トゥーランドット』 [演出](監督:アラン・ミラー)
 ・2002年 『「あの子を探して」ができるまで』 [監修/出演](監督:吉田啓)
 ・2002年 『至福のとき』 [監督]
 ・2002年 『HERO』 [監督/脚本]
 ・2003年 “威馳新風” [監督][PV]
 ・2004年 『LOVERS』 [監督/脚本]
 ・2005年 『単騎、千里を走る。』 [監督/原案]
 ・2006年 『王妃の紋章』 [監督/脚本]
 ・2006年? “成都~一座來了就不想離開的都市” [監督][PV]
 ・2007年 『映画をみる』(『それぞれのシネマ』) [監督] ・1995年 『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』[監督]
 ・2007年 『北京オリンピック・聖火リレー』 [監督][PV]

 ※参考:「tantano 短編映画を楽しむ」を楽しむ
 ・「tantano 短編映画をたのしむ」INDEX
 ・「tantano 短編映画をたのしむ」 人気動画 トップ39!

この記事へのコメント

鹿屋の中国好き
2008年06月28日 11:02
監督主演の(^^; テラコッタウォリアーを見たのが懐かしくてググって見つけましたが、PVだとしてもレベルが酷すぎます。。。本気で撮ったのか、信じられない程です。一回しか流さなかったのが正解。m(__)m 
umikarahajimaru
2008年06月28日 11:27
鹿屋の中国好きさま
ははは、そう思いますよね。
PVだから作家性をどの程度発揮できたのかわかりませんし、こういうものを手がけたのも初めての経験でしたから大目に見てあげましょうよ(笑)。
これ以降の作品は、チャン・イーモウもコツをつかんだのか、なかなかよくできているので、よかったらリンクをたどって見てみてください!

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