感動もののPVを作らせたら、今、この人の右に出る人は……

 当ブログの「tantano 短編映画を楽しむ」のアクセス・ランキング第5位は、ミュージック・ビデオの『You and Me』でした。
 この作品がこんなにアクセスされてるというのは、全く意識していなかったのでちょっと意外でした。この動画自体はあちこちのブログに貼り付けられているものだったんですが。
 唄っているJUNEと、出演している夏帆と林遣都、そして監督の三木孝浩という4方面からの検索の結果なのでしょうか。といっても、You Tubeでの再生回数は37645なので、当ブログでのアクセス数はそのわずか2%にしか過ぎませんが。

 まあ、はっきりしたことはわからないわけですが、ここでは、一応、第5位を記念して、三木監督の別の作品について書いてみることにします。作品は、ORANGE RANGEの『SAYONARA』にしてみました。



 【物語】
 2人の男女が斜面を登っていく後ろ姿。
 ふと目覚めると男は見知らぬ森の中にいる。
 歩いていくと墓地があり、今まさに埋葬が行われている。参列している人々の中にひときわ悲しそうな表情をしている女性を見つける。それは彼が愛した女性だった。彼は彼女の名前を呼ぶが、彼女には彼の声は届かない。彼は、その墓が彼の墓であり、自分が死んでしまったということをようやく悟る。
 「2006年10月25日、僕は死にました」
 青空にタイトル「SAYONARA」
 (ここでようやく音楽が流れてくる)
 木漏れ日。
 彼と彼女の思い出の写真。それは2人が過ごした部屋。
 彼女は彼の写真に「行ってきます」と言って仕事に出かけていく。
 花屋で働く彼女を、少し離れたところから見守る彼。犬だけが彼の気配に気づく。
 買い物をする彼女のそばで、一緒に買い物にでかけた時は、どっちが似合うかと訊かれて答えたりしたっけと思い出す彼。彼女は気づいていないけれど、彼は生きていた頃と同じように彼女と並んで歩き、恋人気分を取り戻す。彼女がナンパされると、男を追い払おうとしてみたりもする。
 2人の記念日なのか、彼女は、部屋を薄暗くして、ケーキにロウソクを立て、いない彼のためにワインも注ぐ。彼は、テーブルの反対側にいるが、もちろん彼女は気づかない。
 彼はそういう生活にも疲れ、もう一度彼女と話がしたいと願う。すると、彼女は何かを感じたのか、花屋の店先からふらふらと道路に出てしまう。そこへバイク(?)が……。
 彼女はバイクにはねられて怪我を負い病院に運ばれる。
 彼女の昏睡状態が続く。(ここでいったん音楽は途切れる)
 「ごめんな。俺が悪いんだ。もう1回、もう1回、おまえと話がしたいって思っちゃったから。神様、ごめんなさい。あれ、ウソだからさ。ヤユコ(?)、おまえはこっち来ちゃダメだぞ。頼む。頼むから、目開けて。」
 (曲が再びスタート)
 ゆっくりと目を開ける彼女。
 木漏れ日。
 2人の思い出の日々。
 元気になった彼女。新しい彼氏と連れ立って歩いている。
 彼はもうヤキモチを焼くことはなく、ただじっとやさしく見守るだけ。
 何かを感じて、彼女は立ち止まり、振り返るが、彼女には彼の姿は見えない。
 「さよなら」
 彼は背を向けて2人とは反対の方向へと歩き出す。

画像

 ◆コメント
 このミュージック・ビデオを観るのはこれが初めてでしたが、この「2006年10月25日、僕は死にました」っていう部分が流れるテレビスポットを確かに観た記憶はあります(2006年10月25日はCD「SAYONARA」のリリース日)。そうか、あれがこれだったんですね。そういえば、この作品がちょっと話題になっていたという記憶もあります。

 物語自体は、単純に言ってしまえば、『ゴースト ニューヨークの幻』をORANGE RANGEの「SAYONARA」をバックにしてやってみたというだけのことですが、運命のいたずらにとまどうユースケ・サンタマリアの自然な演技と、羽田実加の儚げさが、なかなかいいんですね。つっこみどころはたくさんありますが、まあ、それはよしとしましょう。

 歌詞(下記参照)を読むと、気持ちのすれ違いから別れることになってしまった彼女のことが忘れられない男の子が語り手で、でも忘れなければと思い、彼女に感謝して、新しく一歩踏み出すことに決めた、ということを語っているのだとわかります。歌詞の最初の部分がなければ、このミュージック・ビデオが描いているのと同じ物語を語ろうとしている、とも読めてしまうところが面白いですね。というか、この歌詞からこの(ビデオで描かれているような)物語を思いついた作り手の発想が素晴らしいというか。

 これは9分30秒の短編映画ということになりますが、ふくらませて長編にすることもできたはずで、今、劇場で公開されている日本映画のレベルからすると、ふくらませ方次第では劇場公開作としても十分成立したのではないか、と私は思うのですが、どうでしょうか(浅田次郎に脚本を書かせたりして(笑))。もちろん、『ゴースト』じゃないか、と言われることは承知の上でですが。

 動画サイトを探せば、三木監督の手がけた作品はまだまだ見つかるはずですが、これまでに当ブログで観てきた3つの作品(『Good-bye days』『You and Me』そして『SAYONARA』)からすると、これらはいずれもエモーショナルな作品で(要するに泣かせ方がうまい)、この監督がそういうタイプの作品を得意としているということは明らかなようです。

 ◆作品データ
 2006年/日本/9分30秒
 日本語台詞あり/字幕なし
 ミュージック・ビデオ

 ◆監督について
 三木孝浩
 一連のZONEのシングルCDのPV演出を担当したことで知られていて、そのほかの作品にはYUIの『Good-bye days』(VMAJ2007 Best Video of the Yearノミネート)『Rolling star』『CHE.R.RY』、ORANGE RAGE『落陽』『花』(VMAJ2005 Best Video of the Year受賞)『キズナ』『SAYONARA』『イカSUMMER』、木村カエラ『L.Drunk』などなど。ソニー・ミュージック・レコーズ所属のディレクター。

 *当ブログ関連記事
 ・YUI 『Good-bye Days』
 ・JUNE 『You and Me』

 前回、『You and Me』についての記事を書いた時、この監督には、「将来、劇映画の監督にというオファーもあるんじゃないでしょうか」と書いたのですが、『Pieces of love』というオムニバス映画の中で「It's so quiet」という作品の監督をしたようです。三木監督は、ソニー・ミュージック・レコーズ社員ディレクターなので、監督をするとすれば、グループ会社であるソニー・ピクチャーズが出資している映画かな、と思ったんですが、これは違うようです。
 14分の短編で、主演は仲里依沙。耳の聞こえない男の子との小さな恋の物語で、やはりちょっと切ない作品であるようです。

 『Pieces of love』は、全部あわせても36分しかないので、レイトショーで限定公開するくらいしか劇場公開の可能性は考えられませんが、とりあえず、TOHOシネマズ鳳のオープニング企画として試写上映された後、「It’s so quiet」のみ、『時をかける少女』と合わせて同劇場で限定上映されたようです。
 どういうリリースを考えてこの作品が作られたのかはわかりませんが、あと3作品くらい足して劇場公開作品としての体裁を整えて公開するか、DVDで出してしまうのか、ネットで1作品ずつ配信していくか、のどれかでしょうか。

 ・「It’s so quiet」(14分)
 脚本・監督:三木孝浩、音楽:mio-sotide、主演:仲里依紗
 ・「日にち薬」(10分)
 脚本・監督:永田琴、音楽:戸田色音、主演:谷村美月
 ・「つみきのいえ」(12分)(アニメーション)
 脚本:平田研也、監督:加藤久仁生、音楽:近藤研二、声:長澤まさみ

 ちなみに、この作品の製作会社はROBOTだそうですが、ROBOTのHPを見ても、この作品についての情報は一切ありませんでした(ROBOTの長編作品が劇場公開される時に1作品ずつ併映されるという可能性も考えられます)。

 ◆おまけ ROBOTと三木孝浩を中心にした関係図
 映画『タイヨウのうた』
 監督:小泉徳宏 → 監督第二作『ガチ☆ボーイ』 → 出演:仲里依紗 → 三木監督の「It’s so quiet」に出演
 主演:YUI → 『Good-bye days』以外のシングルCDのPVも三木孝浩が演出
 挿入歌:『Good-bye days』
 挿入歌PV演出:三木孝浩 → PV『SAYONARA』の演出 → 出演:ユースケ・サンタマリア → ROBOT製作の『UDON』に主演 → 監督:本広克行 → 『踊る大捜査線』……

 映画『ちーちゃんは悠久の向こう』
 出演:仲里依紗 ← 映画『時をかける少女』
 出演:林遣都 ← PV『You and Me』に出演 ← 演出:三木孝浩
 主題歌:奥華子 ← 映画『時をかける少女』

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 ◆「SAYONARA」歌詞

 今夜も月はいつものようにベッドの中の僕だけ照らしてる
 恋い焦がれ独り言つぶやいた
 枕の中の世界はいつも君が笑顔で僕に歌ってる
 奇麗だね 耳元でささやいた

 あの日閉じ込めた記憶呼び覚ませ 明日に向け胸を張って
 この愛しさくれたあなたのため
 トビラを開けて 進み行くだけ
 「大嫌いだ」とか「大好きだ」って
 愛し合った二人に今サヨナラ

 今更だけど ありがとうを君へ ありがとうを君へ
 静かにそっと支えてくれてたね
 時間を今超えて ありがとうって君へ
 素直になれなくて 閉じたままだった 心の中のアルバム広げ
 僕が前向いたら 思い出達が笑った

 初めて見たのは今日と同じ晴れた日で
 体の中から 全て壊ていくような
 わずかな希望持って必死で告白したんだ
 邪魔をする 蝉しぐれ
 聞こえたかな? けど君は 小さく笑って頷いた

 いらない涙なんてない 強くなれるための薬さ
 来るはずの無い未来 なんだかんだで僕は笑っている

 今更だけど ありがとうを君へ ありがとうを君へ
 静かにそっと支えてくれてたね
 時間を今超えて ありがとうって君へ
 素直になれなくて 閉じたままだった 心の中のアルバム広げ
 僕が前向いたら 思い出達が笑った

 二人で描いた未来図も 譲り合えず流した涙も
 ほら二人三脚の足跡 どれも無駄な物はないだろう
 愛する気持ちは捨てないで 愛される喜び忘れないで
 笑顏のままで あの日のままで 笑ってる君はキレイだから
 泣かないで 泣かないで 声をからして届けるよ
 歩き出して 歩き出して 思い出達はそばにいるよ
 全て抱いて 僕は行くよ

 僕は行くよ
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    Excerpt: アリオ鳳のオープニング試写会に行ってきました。 舞台挨拶の後、ちょこちょこ上映です。 It's so quiet (14分 / 主演:仲里依沙)  ・・・・・耳の聞こえない男子との小さな.. Weblog: afternoon tea racked: 2008-04-14 21:54