痛快なり! ニン・ハオ 『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』
『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』は、ケルヴィン・トンの『LOVE STORY』と同じく、アンディ・ラウがアジアの新鋭6監督をプロデュースしたFOCUS first cutsの1本だったのですが、正直なところ、観てみるまでこんなに面白いとは思ってもみませんでした。痛快な作品でしたね~!
ネット上では、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のような、と書いてあるものがいくつかありましたが、確かに小気味よいテンポで進む犯罪映画で、へえ~、中国映画にこんなのが出てきたんだ!という驚きがありました。FOCUS first cuts の公式サイトには、『オーシャンズ11』に対する中国からの答え、というような書き方がしてあり、日本のサイト(IMXのブロコリ:http://news.brokore.com/content_UTF/Read.jsp?num=5944)には「ブラッド・ピット主演の『スナッチ』などにも見られる演出が見事に融合した作品」とあります。とにかく、面白くって、その面白さをこれまでに観た映画のタイトルを出すことで伝えたくなるような映画なんですね(私がこの映画を観て連想したのはメキシコ映画の快作『カクタス・ジャック』でした)。
監督は、『モンゴリアン・ピンポン』のニン・ハオ。『クレイジー・ストーン』は、『モンゴリアン・ピンポン』から推測されるような素朴なタッチの映画では全くなくて、これも“驚き”の1つでした。
その時々に、新しい中国を見せてくれる映画があって、“新しい中国映画”として宣伝されたりもするんですが、『クレイジー・ストーン』はこれまでのそういった作品とも違ったタイプの映画になっていました。ジャ・ジャンクーのような気取りはなく、フォン・シャオガンよりもカジュアルで人間くさく、フルーツ・チャンよりも快活であっけらかんとした笑いに満ちている、といったらいいか。
変わりゆく中国や、都市の再開発に翻弄される人々をテーマにした中国映画は最近の流行で(現在岩波ホールで上映中の『胡同の理髪師』もその1つ)、そういった映画では、概して、古きよき時代への感傷と、抗いがたい時代の流れへの諦念に似た心情が綴られている場合がほとんどですが、『クレイジー・ストーン』はそのどれにも似ていなくて、いい意味での娯楽映画に徹しているのがよかったですね。
ま、とにかく、百聞は一見にしかずなので、ここでは、『クレイジー・ストーン』に関する作品データを残しておきたいと思います。
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◆主な登場人物
包世宏(パオ・シーホン):曙光工芸品工場警備課長。前立腺炎で、おしっこがしたくてもおしっこが出ないので医者にかかっている。翡翠の展示会の警備を担当。ちょっと安倍晋三に似てる?
三宝(サンパオ):包の部下。
謝千里(シェ・チェンリ):曙光工芸品工場の工場主。借金の返済期限が間近になったため、ガラクタの中から見つかった翡翠を売って、借金返済に充てようとしている。翡翠を高く売るために展示会を企画。
謝小盟(シェ・シャオメン 自称チャールズ):謝千里の息子。カメラマンで、ナンパばかりしている。キャイーン天野に似ている。
馮(フォン):グルーバル・グループの社長。曙光工芸品工場の跡地に高層ビルを建てようとしている。
秦(チン):グルーバル・グループ社員。買収に際しての交渉係。曙光工芸品工場が翡翠を売って、借金返済に充てようとしているのを知って、泥棒に翡翠を盗ませようとする。
怪盗マイク:香港のプロの泥棒。秦の依頼を受けて、曙光工芸品工場の翡翠を盗み出そうとする。スタイルから入る泥棒らしく、ハリウッド映画に出てくるような小道具を集めてみたり、『ミッション・インポッシブル』ばりに天井からロープでぶら下がってみたり、通気孔から脱出しようとしたりする。しかし、いつも、道(タオ)ら3人組にいいように翻弄されてしまう。
道(タオ):3人組のリーダー。空き巣専門だったが、空き巣もやばくなってきたので、新しい金儲けの手段を探っている。
黒皮(ヘイピー):道の手下。
小軍(シャオジュン):道の手下。実は道に隠れて道の女と寝ている。
道(タオ)の女
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◆物語
中国・重慶にある曙光工芸品工場は、借金が嵩んで、用地買収の話が進んでいる。
いよいよ借金の返済期限も迫ってきたという時、工場側は、ガラクタの中から見つかった翡翠(本物)を売って、借金を返そうという打開策を立てる。しかし、翡翠をただ売るだけでは安く買い叩かれてしまうかもしれないので、その前にお寺を借りて翡翠の展示会をして衆目を集め、翡翠の値段を釣り上げることに決める。
一方、買収する側のグローバル・グループはそんなことをされては開発計画がパーになってしまうので、香港の泥棒・怪盗マイクに依頼して、その翡翠を盗ませようとする。
これにからんでくるのが、道(タオ)・黒皮(ヘイピー)・小軍(シャオジン)という重慶の小悪党 3人組で、空き巣狙いもやりにくい時代になったので、何か新手の商売をと考えていて、たまたま掏ったマイクのアタッシュケースから、翡翠のことを知り、彼らも翡翠を狙うことにする。
展示会で警備を担当するのは、曙光工芸品工場で警備課長を務める包世宏(パオ・シーホン)。彼は、前立腺炎でおしっこが出ないという悩みをかかえている。
包が展示会の準備をしていると、足にギブスをし、松葉杖を抱えた男性が入ってくる。彼は、工場主の息子で謝小盟(シェ・シャオメン、自称チャールズ)と言い、ナンパばかりしているカメラマンで、今日も怪我をしたと嘘をついて父親から金をせびりにきたのだった。そんな彼も翡翠に目をつける。
包とその部下 三宝(サンパオ)は、寺が見下ろせるホテルに部屋(風呂・トイレなし)を借り、展示会開催期間中に泊り込むことにする。
その隣の部屋は、道らが借りた部屋で、彼らもそこで作戦を立てる。同じホテルに部屋を借りたために、彼らはしばしば顔を合わせることになる。
果たして、最終的に、翡翠は誰のものに? そして、曙光工芸品工場と包の運命は――。
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◆キャスト
包世宏(パオ・シーホン):郭涛(グオ・タオ。クオ・タオやグォ・タオという表記もあり)。
1992年中央戯劇学院表演系卒業。国家話劇院所属。『クレイジー・ストーン』の大ヒットにより一躍注目を浴びた。身長は180cmと意外に長身。2007年に生まれた息子に『クレイジー・ストーン』にちなんで「石頭」という名前をつけた。
『活きる』では、主人公の人生に大きく関わってくる友人シュンシェー役(主人公と人形芝居の旅に出るが、内戦に巻き込まれて、共産党軍のトラック・ドライバーとなり、やがて党幹部として町に帰ってくるが、主人公の息子を誤って車ではねてしまう)を演じ、『スパイシー・ラブスープ』では、第3話の「おもちゃ」で倦怠期を迎えている結婚5年目の夫を演じる。『鳳凰 わが愛』では、中井貴一の獄中仲間を演じた。
ブログ(もちろん中国語)もやっている:http://blog.sina.com.cn/guotaoblog
主な出演作:『永失我愛』(94)(日本未公開・監督:フォン・シャオガン)、『活きる』(94)、『ルアンの歌』(98)、『スパイシー・ラブスープ』(98)、『青春愛人事件』(04)(第17回東京国際映画祭にて上映)、『私の胸の思い出』(06)、『落葉帰根』(07)(日本未公開。監督:チャン・ヤン)、『鳳凰 わが愛』(07)、『連環局』(07)(日本未公開。監督:ロー・チーリョン)、『大電影2.0』(07)(日本未公開。監督:アー・ガン)。
三宝(サンパオ):劉剛(リウ・ガン)
謝千里(シェ・チェンリ):陳中華(チェン・ジェンファ)
謝小盟(シェ・シャオメン):彭波(ポン・ボー)
馮(フォン):徐崢(シュー・ジェン)
*参考サイト「時新電影倶楽部」:http://www.c-c-club.net/actor/xuzheng.htm
秦(チン):
怪盗マイク:連晋(テディ・リン/レン・ジン)
主な出演作は、『フルタイム・キラー』(01)、『マジック・キッチン』(04)、『ムービング・ターゲット』(04)(日本未公開。監督:バリー・ウォン)、『イエスタデイ、ワンスモア』(04)
道(タオ):劉樺(リウ・フア)
*参考サイト「Quick-China」:http://www.quick-china.com/movie/actors/%CE%AD%B3%F2/
黒皮(ヘイピー):黄渤(ホアン・ボー)
寧浩監督の最新作“奇迹世界Qi Ji Shi Jie”(07)では主役を演じている。
*参考サイト「時新電影倶楽部」:http://www.c-c-club.net/actor/huangbo.html
小軍(シャオジュン):嶽小軍(ユエ・シャオジュン)
本作では脚本にも参加。
道(タオ)の女:
医者:寧浩(ニン・ハオ)
リムジンで女をくどいている男:杜杰(ドゥ・ヂエ)
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◆スタッフ
監督/脚本:寧浩(ニン・ハオ)
1977年 山西省生まれ。
『男たちの挽歌』を観て、映画の道に進むきっかけだという。
1992年に山西電影学校に入り、1997年に北京師範大学芸術科、2001年に北京電影学院図片撮影専攻へと進む。
北京電影学院での卒業制作『香火』(03)が第56回ロカルノ国際映画祭に出品されるなど、最初から高い評価を受け、『モンゴリアン・ピンポン』(05)、『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』(06)と確実にキャリアを重ねている。
『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』は、300万元の製作費で2000万元の興行収入を上げて、2006年の中国国内興行ランキングで10位に入り、大きく注目される。
この成功で、ハリウッドのエージェントCAA(クリエイティブ・アーティスト・エイジェンシー)とも契約を結んだ。
寧浩の公式ブログ:http://blog.sina.com.cn/ninghao
【フィルモグラフィー】
・2000年 “星期四星期三”
・2003年 『香火』
第56回ロカルノ国際映画祭正式出品作品。
東京フィルメックス2003で上映されて、最優秀作品賞を受賞。
*参考サイト「東京フィルメックスでの監督Q&A」:http://homepage.mac.com/xiaogang/films/talk/2003/031129filmex.html
・2005年 『モンゴリアン・ピンポン』
2005年上海国際映画祭観客賞受賞、ヴァラドリッド国際映画祭最優秀監督賞受賞。
・2006年 『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』(出演も)
第19回東京国際映画祭 「アジアの風」部門で上映。
第43回台湾金馬奨 最優秀映画賞・最優秀監督賞・最優秀オリジナル脚本賞・最優秀編集賞ノミネート。
第1回アジアン・フィルム・アワードで脚本賞ノミネート。
・2007年 “奇迹世界Qi Ji Shi Jie”
・2008年 “銀牌車手 Silver Medalist”
撮影:杜杰(ドゥ・ヂエ)
『モンゴリアン・ピンポン』(05)でもニン・ハオと組んでいる。本作では「リムジンで女をくどいている男」として出演もしている。
編集:杜媛(ドゥ・ユアン)
主な作品に、『紅夢』(91)、『秋菊の物語』(92)、『活きる』(94)、『上海ルージュ』(95)、『キープ・クール』(97)など。
音楽:ファンキー末吉
元・爆風スランプのドラマーで、現在は北京を拠点に活動。
音楽を手がけた映画には、ほかに『香港大夜総会』(97)、『ショムニ』(98)がある。
アシスタントが留学中に寧浩監督と一緒にバンドを組んでいたという縁で、本作の音楽を(ただ同然の値段で)手がけることになった。
本作では、登場人物ごとに音楽や楽器を使い分けた、と語っている。特に『白鳥の湖』の”4羽の白鳥の踊り”をアレンジした曲の評判が高い。
公式サイト「亜洲鼓王 Funky末吉的家頁」:http://www.funkycorp.jp/funky/
公式ブログ「ファンキー末吉とその仲間達のひとりごと」:http://funkyblog.jp/
2006年6月30日と7月20日に関連記事あり。
プロデューサー
・アンディ・ラウ 主題歌「累鬥累」を歌うという形でも参加。
・包世宏(パオ・シーホン) 本作の主人公と同じ名前。
・楊歩亭(ヤン・プーテン)
*製作作品として『ハッピー・フューネラル』(01)、『ミッシング・ガン』(01)、『スピリット』(06)、製作総指揮を手がけた作品として『たまゆらの女』(02)、『北京ヴァイオリン』(02)、『春の惑い』(02)、『ブレキング・ニュース』(04)、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(04)、『THE MYTH 神話』(05)、『プロミス 無極』(05)など。
・藍瑞龍(ラン・ルイロン)
共同プロデューサー
・鄭碧雪(ローナ・ティー) 映画会社FOCUS FILMのプロデューサー。
エグゼクティブ・プロデューサー
・韓三平(ハン・サンピン)
*製作総指揮を手がけた作品として『スケッチ・オブ・Peking』(95)、『山の郵便配達』(99)、『西洋鏡』(00)、『たまゆらの女』(02)。プロデュースを手がけた作品に『ルアンの歌』(98)、『チベットの女 イシの生涯』(00)、『プロミス 無極』(05)などがある。
・余偉國(ダニエル・ユー)
アンディ・ラウとともに映画会社FOCUS FILMを立ち上げる(現在は離れている)。『インビジブル・ウェーブ』(06)で製作総指揮を務めているほか、アンディ・ラウ主演の『愛と死の間で』(05)では監督もしている。
--------------------------------
『クレイジー・ストーン』は、中国や香港で爆発的にヒットしたという紹介のされ方をすることが多いのですが、実際にどのくらいヒットしたかというと、2006年の中国での国産映画興行ランキングでは――
第1位:『王妃の紋章』 43億円
第2位:『女帝[エンペラー]』 20億円
第3位:『スピリット』 15億円
第4位:『プロジェクトBB』 15億円
第5位:『墨攻』 10億円
第6位:『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』 7億円
第7位:『傷だらけの男たち』 6億円
第8位:“雲水謡” 5億円
第9位:“東京審判” 4億円
第10位:『クレイジー・ストーン』 3億円
となっています。
ちなみに、外国映画は、『ダ・ヴィンチ・コード』16億円、『キング・コング』15億円、『M:i:III』12億円、『ポセイドン』10億円、『スーパーマン リターンズ』9億円、『ナルニア国物語 第1章』9億円、『ガーフィールド2』9億円、『南極物語』8億円、『アイス・エイジ2』5億円、『トランスポーター2』5億円。
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ネット上では、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のような、と書いてあるものがいくつかありましたが、確かに小気味よいテンポで進む犯罪映画で、へえ~、中国映画にこんなのが出てきたんだ!という驚きがありました。FOCUS first cuts の公式サイトには、『オーシャンズ11』に対する中国からの答え、というような書き方がしてあり、日本のサイト(IMXのブロコリ:http://news.brokore.com/content_UTF/Read.jsp?num=5944)には「ブラッド・ピット主演の『スナッチ』などにも見られる演出が見事に融合した作品」とあります。とにかく、面白くって、その面白さをこれまでに観た映画のタイトルを出すことで伝えたくなるような映画なんですね(私がこの映画を観て連想したのはメキシコ映画の快作『カクタス・ジャック』でした)。
監督は、『モンゴリアン・ピンポン』のニン・ハオ。『クレイジー・ストーン』は、『モンゴリアン・ピンポン』から推測されるような素朴なタッチの映画では全くなくて、これも“驚き”の1つでした。
その時々に、新しい中国を見せてくれる映画があって、“新しい中国映画”として宣伝されたりもするんですが、『クレイジー・ストーン』はこれまでのそういった作品とも違ったタイプの映画になっていました。ジャ・ジャンクーのような気取りはなく、フォン・シャオガンよりもカジュアルで人間くさく、フルーツ・チャンよりも快活であっけらかんとした笑いに満ちている、といったらいいか。
変わりゆく中国や、都市の再開発に翻弄される人々をテーマにした中国映画は最近の流行で(現在岩波ホールで上映中の『胡同の理髪師』もその1つ)、そういった映画では、概して、古きよき時代への感傷と、抗いがたい時代の流れへの諦念に似た心情が綴られている場合がほとんどですが、『クレイジー・ストーン』はそのどれにも似ていなくて、いい意味での娯楽映画に徹しているのがよかったですね。
ま、とにかく、百聞は一見にしかずなので、ここでは、『クレイジー・ストーン』に関する作品データを残しておきたいと思います。
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◆主な登場人物
包世宏(パオ・シーホン):曙光工芸品工場警備課長。前立腺炎で、おしっこがしたくてもおしっこが出ないので医者にかかっている。翡翠の展示会の警備を担当。ちょっと安倍晋三に似てる?
三宝(サンパオ):包の部下。
謝千里(シェ・チェンリ):曙光工芸品工場の工場主。借金の返済期限が間近になったため、ガラクタの中から見つかった翡翠を売って、借金返済に充てようとしている。翡翠を高く売るために展示会を企画。
謝小盟(シェ・シャオメン 自称チャールズ):謝千里の息子。カメラマンで、ナンパばかりしている。キャイーン天野に似ている。
馮(フォン):グルーバル・グループの社長。曙光工芸品工場の跡地に高層ビルを建てようとしている。
秦(チン):グルーバル・グループ社員。買収に際しての交渉係。曙光工芸品工場が翡翠を売って、借金返済に充てようとしているのを知って、泥棒に翡翠を盗ませようとする。
怪盗マイク:香港のプロの泥棒。秦の依頼を受けて、曙光工芸品工場の翡翠を盗み出そうとする。スタイルから入る泥棒らしく、ハリウッド映画に出てくるような小道具を集めてみたり、『ミッション・インポッシブル』ばりに天井からロープでぶら下がってみたり、通気孔から脱出しようとしたりする。しかし、いつも、道(タオ)ら3人組にいいように翻弄されてしまう。
道(タオ):3人組のリーダー。空き巣専門だったが、空き巣もやばくなってきたので、新しい金儲けの手段を探っている。
黒皮(ヘイピー):道の手下。
小軍(シャオジュン):道の手下。実は道に隠れて道の女と寝ている。
道(タオ)の女
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◆物語
中国・重慶にある曙光工芸品工場は、借金が嵩んで、用地買収の話が進んでいる。
いよいよ借金の返済期限も迫ってきたという時、工場側は、ガラクタの中から見つかった翡翠(本物)を売って、借金を返そうという打開策を立てる。しかし、翡翠をただ売るだけでは安く買い叩かれてしまうかもしれないので、その前にお寺を借りて翡翠の展示会をして衆目を集め、翡翠の値段を釣り上げることに決める。
一方、買収する側のグローバル・グループはそんなことをされては開発計画がパーになってしまうので、香港の泥棒・怪盗マイクに依頼して、その翡翠を盗ませようとする。
これにからんでくるのが、道(タオ)・黒皮(ヘイピー)・小軍(シャオジン)という重慶の小悪党 3人組で、空き巣狙いもやりにくい時代になったので、何か新手の商売をと考えていて、たまたま掏ったマイクのアタッシュケースから、翡翠のことを知り、彼らも翡翠を狙うことにする。
展示会で警備を担当するのは、曙光工芸品工場で警備課長を務める包世宏(パオ・シーホン)。彼は、前立腺炎でおしっこが出ないという悩みをかかえている。
包が展示会の準備をしていると、足にギブスをし、松葉杖を抱えた男性が入ってくる。彼は、工場主の息子で謝小盟(シェ・シャオメン、自称チャールズ)と言い、ナンパばかりしているカメラマンで、今日も怪我をしたと嘘をついて父親から金をせびりにきたのだった。そんな彼も翡翠に目をつける。
包とその部下 三宝(サンパオ)は、寺が見下ろせるホテルに部屋(風呂・トイレなし)を借り、展示会開催期間中に泊り込むことにする。
その隣の部屋は、道らが借りた部屋で、彼らもそこで作戦を立てる。同じホテルに部屋を借りたために、彼らはしばしば顔を合わせることになる。
果たして、最終的に、翡翠は誰のものに? そして、曙光工芸品工場と包の運命は――。
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◆キャスト
包世宏(パオ・シーホン):郭涛(グオ・タオ。クオ・タオやグォ・タオという表記もあり)。
1992年中央戯劇学院表演系卒業。国家話劇院所属。『クレイジー・ストーン』の大ヒットにより一躍注目を浴びた。身長は180cmと意外に長身。2007年に生まれた息子に『クレイジー・ストーン』にちなんで「石頭」という名前をつけた。
『活きる』では、主人公の人生に大きく関わってくる友人シュンシェー役(主人公と人形芝居の旅に出るが、内戦に巻き込まれて、共産党軍のトラック・ドライバーとなり、やがて党幹部として町に帰ってくるが、主人公の息子を誤って車ではねてしまう)を演じ、『スパイシー・ラブスープ』では、第3話の「おもちゃ」で倦怠期を迎えている結婚5年目の夫を演じる。『鳳凰 わが愛』では、中井貴一の獄中仲間を演じた。
ブログ(もちろん中国語)もやっている:http://blog.sina.com.cn/guotaoblog
主な出演作:『永失我愛』(94)(日本未公開・監督:フォン・シャオガン)、『活きる』(94)、『ルアンの歌』(98)、『スパイシー・ラブスープ』(98)、『青春愛人事件』(04)(第17回東京国際映画祭にて上映)、『私の胸の思い出』(06)、『落葉帰根』(07)(日本未公開。監督:チャン・ヤン)、『鳳凰 わが愛』(07)、『連環局』(07)(日本未公開。監督:ロー・チーリョン)、『大電影2.0』(07)(日本未公開。監督:アー・ガン)。
三宝(サンパオ):劉剛(リウ・ガン)
謝千里(シェ・チェンリ):陳中華(チェン・ジェンファ)
謝小盟(シェ・シャオメン):彭波(ポン・ボー)
馮(フォン):徐崢(シュー・ジェン)
*参考サイト「時新電影倶楽部」:http://www.c-c-club.net/actor/xuzheng.htm
秦(チン):
怪盗マイク:連晋(テディ・リン/レン・ジン)
主な出演作は、『フルタイム・キラー』(01)、『マジック・キッチン』(04)、『ムービング・ターゲット』(04)(日本未公開。監督:バリー・ウォン)、『イエスタデイ、ワンスモア』(04)
道(タオ):劉樺(リウ・フア)
*参考サイト「Quick-China」:http://www.quick-china.com/movie/actors/%CE%AD%B3%F2/
黒皮(ヘイピー):黄渤(ホアン・ボー)
寧浩監督の最新作“奇迹世界Qi Ji Shi Jie”(07)では主役を演じている。
*参考サイト「時新電影倶楽部」:http://www.c-c-club.net/actor/huangbo.html
小軍(シャオジュン):嶽小軍(ユエ・シャオジュン)
本作では脚本にも参加。
道(タオ)の女:
医者:寧浩(ニン・ハオ)
リムジンで女をくどいている男:杜杰(ドゥ・ヂエ)
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◆スタッフ
監督/脚本:寧浩(ニン・ハオ)
1977年 山西省生まれ。
『男たちの挽歌』を観て、映画の道に進むきっかけだという。
1992年に山西電影学校に入り、1997年に北京師範大学芸術科、2001年に北京電影学院図片撮影専攻へと進む。
北京電影学院での卒業制作『香火』(03)が第56回ロカルノ国際映画祭に出品されるなど、最初から高い評価を受け、『モンゴリアン・ピンポン』(05)、『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』(06)と確実にキャリアを重ねている。
『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』は、300万元の製作費で2000万元の興行収入を上げて、2006年の中国国内興行ランキングで10位に入り、大きく注目される。
この成功で、ハリウッドのエージェントCAA(クリエイティブ・アーティスト・エイジェンシー)とも契約を結んだ。
寧浩の公式ブログ:http://blog.sina.com.cn/ninghao
【フィルモグラフィー】
・2000年 “星期四星期三”
・2003年 『香火』
第56回ロカルノ国際映画祭正式出品作品。
東京フィルメックス2003で上映されて、最優秀作品賞を受賞。
*参考サイト「東京フィルメックスでの監督Q&A」:http://homepage.mac.com/xiaogang/films/talk/2003/031129filmex.html
・2005年 『モンゴリアン・ピンポン』
2005年上海国際映画祭観客賞受賞、ヴァラドリッド国際映画祭最優秀監督賞受賞。
・2006年 『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』(出演も)
第19回東京国際映画祭 「アジアの風」部門で上映。
第43回台湾金馬奨 最優秀映画賞・最優秀監督賞・最優秀オリジナル脚本賞・最優秀編集賞ノミネート。
第1回アジアン・フィルム・アワードで脚本賞ノミネート。
・2007年 “奇迹世界Qi Ji Shi Jie”
・2008年 “銀牌車手 Silver Medalist”
撮影:杜杰(ドゥ・ヂエ)
『モンゴリアン・ピンポン』(05)でもニン・ハオと組んでいる。本作では「リムジンで女をくどいている男」として出演もしている。
編集:杜媛(ドゥ・ユアン)
主な作品に、『紅夢』(91)、『秋菊の物語』(92)、『活きる』(94)、『上海ルージュ』(95)、『キープ・クール』(97)など。
音楽:ファンキー末吉
元・爆風スランプのドラマーで、現在は北京を拠点に活動。
音楽を手がけた映画には、ほかに『香港大夜総会』(97)、『ショムニ』(98)がある。
アシスタントが留学中に寧浩監督と一緒にバンドを組んでいたという縁で、本作の音楽を(ただ同然の値段で)手がけることになった。
本作では、登場人物ごとに音楽や楽器を使い分けた、と語っている。特に『白鳥の湖』の”4羽の白鳥の踊り”をアレンジした曲の評判が高い。
公式サイト「亜洲鼓王 Funky末吉的家頁」:http://www.funkycorp.jp/funky/
公式ブログ「ファンキー末吉とその仲間達のひとりごと」:http://funkyblog.jp/
2006年6月30日と7月20日に関連記事あり。
プロデューサー
・アンディ・ラウ 主題歌「累鬥累」を歌うという形でも参加。
・包世宏(パオ・シーホン) 本作の主人公と同じ名前。
・楊歩亭(ヤン・プーテン)
*製作作品として『ハッピー・フューネラル』(01)、『ミッシング・ガン』(01)、『スピリット』(06)、製作総指揮を手がけた作品として『たまゆらの女』(02)、『北京ヴァイオリン』(02)、『春の惑い』(02)、『ブレキング・ニュース』(04)、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(04)、『THE MYTH 神話』(05)、『プロミス 無極』(05)など。
・藍瑞龍(ラン・ルイロン)
共同プロデューサー
・鄭碧雪(ローナ・ティー) 映画会社FOCUS FILMのプロデューサー。
エグゼクティブ・プロデューサー
・韓三平(ハン・サンピン)
*製作総指揮を手がけた作品として『スケッチ・オブ・Peking』(95)、『山の郵便配達』(99)、『西洋鏡』(00)、『たまゆらの女』(02)。プロデュースを手がけた作品に『ルアンの歌』(98)、『チベットの女 イシの生涯』(00)、『プロミス 無極』(05)などがある。
・余偉國(ダニエル・ユー)
アンディ・ラウとともに映画会社FOCUS FILMを立ち上げる(現在は離れている)。『インビジブル・ウェーブ』(06)で製作総指揮を務めているほか、アンディ・ラウ主演の『愛と死の間で』(05)では監督もしている。
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『クレイジー・ストーン』は、中国や香港で爆発的にヒットしたという紹介のされ方をすることが多いのですが、実際にどのくらいヒットしたかというと、2006年の中国での国産映画興行ランキングでは――
第1位:『王妃の紋章』 43億円
第2位:『女帝[エンペラー]』 20億円
第3位:『スピリット』 15億円
第4位:『プロジェクトBB』 15億円
第5位:『墨攻』 10億円
第6位:『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』 7億円
第7位:『傷だらけの男たち』 6億円
第8位:“雲水謡” 5億円
第9位:“東京審判” 4億円
第10位:『クレイジー・ストーン』 3億円
となっています。
ちなみに、外国映画は、『ダ・ヴィンチ・コード』16億円、『キング・コング』15億円、『M:i:III』12億円、『ポセイドン』10億円、『スーパーマン リターンズ』9億円、『ナルニア国物語 第1章』9億円、『ガーフィールド2』9億円、『南極物語』8億円、『アイス・エイジ2』5億円、『トランスポーター2』5億円。
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