wkw/tk/1996@7'55''hk.net !!!

 『インビジブル・ウェーブ』劇場公開時に併映されて、久しぶりに陽の目を見たウォン・カーウァイの『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』。You Tubeで観られたんですね。



 【物語】
 日本人の男(浅野忠信)と香港人の女(カレン・モク)が、香港の安宿で、おもちゃの銃や火を使ってじゃれ合い、悪ふざけを繰り返している。
 男は、女とコミュニケーションを取りたいからか、中国語の語学テープを聴いたりもしている。
 男はつぶやく。「真面目に戦うことすらも俺には最低の行為だ。くだらないヤツにとって真面目になるということはそういうことなんだ」

画像

 ◆解説
 『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』は、ウォン・カーウァイがファッション・デザイナー菊池武夫のために作った、ブランドのプロモーションを兼ねた短編で、1996年6月29日からシネマライズで劇場公開されていた『天使の涙』に11月15日から併映されることになった作品です(『天使の涙』は11月29日まで上映)。

 最近の、凝りまくった短編を観ている目で観ると、演技も撮影も構図もカット割も色彩設計もドラマとしての完成度やエモーションも、何もかもゆる~いと感じてしまいますが、これは画像が悪いせいでもあるのでしょうか。

 ま、恋愛初期の浮かれた感じはよく出ていると思いますが。

 Wikipediaによると、この作品には何通りもの異なったバージョンがあるとのことで、男の視点から描いたバージョンだけでなく、女の視点から描いたバージョンもあるそうです。

 公開当時のチラシから「story」を引用すると――
 中国への返還を一年後に控え、世紀末の様相を呈する香港。主人公の男(浅野忠信)は、この世紀末都市に、ある目的で渡航してきたジャパニーズ・マフィア。果物市場の中の薄汚い小部屋に潜み、業務遂行の時をじっと待っている。しかし、ある女(カレン・モク)との出会いで男の中に何かが生まれ、運命が大きく変わっていく。そして迎える死。でもその結末は、世紀末の香港にとっては、ほんの些細な日常にしかすぎない。

 作品を観た後で、この説明を読むと「ウソだろう?」と思ってしまいますね。たとえこのような設定がこの作品の背景としてあったとしても、見せられた映像とは飛躍がありすぎます。ラスト近くで、「女」がこめかみに銃を当てるシーンがありますが、ここから劇的な結末を想像しろというのにはやはり無理があります。
 とはいうものの、こういうストーリーだったとすれば、『インビジブル・ウェーブ』との関連性が感じられますね(撮影監督も同じクリストファー・ドイル)。

 ついでなので、同じチラシからウォン・カーウァイと菊池武夫の言葉も引用しておきましょう。

 ウォン・カーウァイ:<まず音楽である種のイメージを掴み、俳優の持つキャラクターによって物語を組み立てていく>といういつものアプローチを採用しながらも、今回少し違っていたのは、<俳優からではなく“衣装”からそれを組み立てていった>ということです。私はまず、TAKEO KIKUCHIの服を服としてではなく映画のコスチュームとしてとらえました。この服を着るのはどんな人間か、どこで何をするべきか…そうして出来上がったのが今回のショートフィルムなのです。
 いずれにせよ、彼の作品は“衣装”という形で私に届き、私はそこから作品を作りました。皆さまにはこの2人の作品を楽しんでいただければ幸いです。

 菊池武夫:映画とファッションの関わりには以前から強い興味がありました。今回は、私の服の持つ世界を、映画を構成する映像や登場するキャラクターをフィルターとすることで、よりリアリティがあり時代が求めるかたちで表現できていると確信しています。

 タイトル『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』のwkwはウォン・カーウァイ、tkはTAKEO KIKUCHI、1996は制作年、7'55''は上映時間ということですが、上の動画は明らかに7分55秒を越えています。これも単にバージョンが違うからということなのでしょうか。hkは香港のことです。

 撮影監督はクリストファー・ドイル、編集とアート・ディレクションはウィリアム・チャンが務めています。

 ◆作品データ
 1996年/日本/9分56秒
 日本語・北京語/日本語字幕あり
 実写作品

 *この作品は、1996年のウォン・カーウァイ監督作品『天使の涙』劇場公開時に併映されました(ただし、ロードショー終了間際の2週間限定)。
 また、同年12月31日~1997年1月10日まで新宿シアターアプルで開催されたウォン・カーウァイ フェスティバル(『天使の涙』『恋する惑星』または『天使の涙』『欲望の翼』を2本立てで上映)でも併映されました。
 さらに、2007年、浅野忠信主演、ペンエーク・ラッタナルアーン監督作品『インビジブル・ウェーブ』劇場公開時に、最終回上映時にのみ併映作品として上映されました。

 *この作品は、LD『天使の涙』に5ヴァージョン収録されているそうです。DVDには収録されていません。

 *参考サイト
 ・Wikipedia(英語):http://en.wikipedia.org/wiki/Wkw/tk/1996@7'55%22hk.net

 下↓の動画には、『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』の予告と、TAKEO KIKUCHIのCMが4本(それぞれ15秒ずつ)が収められています。これを観ると、元々の映像はシャープで、よりウォン・カーウァイらしい(クリストファー・ドイルらしい)作品だったことがわかります。



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 ◆監督について

 ウォン・カーウァイ 王家衛(Won Kar-Wai)

 1958年、上海生まれ。
 1963年、5歳の時、末子のウォン・カーウァイだけが母親と一緒に香港へ移住。彼は、北京語と上海語は話せたが、広東語がなかなか話せなかった(13歳くらいまで)ということもあり、母親と毎日映画館へ通うようになる。
 1980年に香港理工学院を卒業し、香港のTV局TVBへ入社。アシスタントと脚本を手がける。
 1980年代半ばには、TVBを辞め、The Wing Scope Co. 、アラン・タンのプロダクションIn-gear Film Production Companyで、脚本家/監督として活躍するようになる。
 1988年に『いますぐ抱きしめたい』で監督デビューするまでに10本以上の脚本を手がける。
 1990年に監督第二作『欲望の翼』を発表。この作品で初めて組んだオーストラリア出身の撮影監督クリストファー・ドイルと組み、彼の、手持ちカメラという撮影スタイル、および、画面構成と色彩設計が、ウォン・カーウァイ作品と分かちがたく結びついて、認識されていくようになる(2人のコンビは『2046』まで続いた)。
 1992年にクランクインした『楽園の瑕』の製作が難航し、1994年にゲリラ的に撮影した『恋する惑星』が先に完成し、公開。
 『恋する惑星』(日本公開は1995年7月)は、これまでの香港映画にはない、新しい映像センス、カッコよさを持った作品として日本でも記録的なヒットとなり、ウォン・カーウァイは日本でも人気の高い監督の1人となった。『恋する惑星』は、クエンティン・タランティーノが惚れ込み、自社でアメリカ公開した。
 1992年にジェフ・ラウとともにジェット・トーン・プロダクションを設立。同社は、『大英雄』『恋する惑星』『天使の涙』『初恋』『ブエノスアイレス』『花様年華』『2046』『マイ・ブルーベリー・ナイツ』などの作品を手がけている。
 1998年の『ブエノスアイレス』では、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、同賞を受賞した初めての中国人となった。
 2007年の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』でアメリカに進出した。
 ウォン・カーウァイは、脚本家としてデビューしながら、自作ではちゃんとした脚本もないままに撮影を始めるという方式を取っている。
 近年は、CM、ミュージック・ビデオ、短編作品を手がけることも多く、2000年の『花様的年華』“Hua yang de nian hua”はベルリン国際映画祭の短編部門に出品された。

 【フィルモグラフィー】

 ・1982年 “彩雲曲/Choi wan kuk(Rainbow Could Song)”[脚本](監督:アグネス・ホアン)
 ・1983年 “空心大少爺/Kong xin da shao ye(Just For Fun)”[脚本] (監督:フランキー・チェン)
 ・1984年 “伊人再見/Yi ren zai jian(Silent Romance)”[脚本・出演] (監督:フランキー・チェン)
 ・1985年 “吉人天相/Ji ren tian xiang (Chase a Fortune)”[脚本](監督:Wai Hung Liu)
 ・1985年 『レスリー・チャン あの日にかえりたい(美人スリに御用心))』<未> [脚本] (監督:ガイ・ライ)
 ・1985年 『ファンタジー・フォックス・ストーリー』<未>“小狐仙/Xiao hu xian(Unforgettable Tantasy)”[脚本](監督:フランキー・チェン)
 ・1986年 『傷だらけのメロディー』<未> [脚本] (監督:ノーマン・ロウ)
 ・1986年 “我要金龟婿/Wo yao jin gui xu(Sweet Surrender)”[脚本](監督:フランキー・チェン、ノーマン・ロウ)
 ・1986年 『ユン・ピョウ in ポリス・ストーリー(俺たちに明日はある!?)』[脚本](監督:チェン・タンチョウ)
 ・1986年 “悪男/E nan”[脚本](監督:フランキー・チェン)
 ・1987年 “最后一战/Zui hou yi zhan(The Final Test)”[脚本](監督:Kin Lo)
 ・1987年 『バンパイア・コップ』<未> [脚本] (監督:ラウ・チェンウェイ)
 ・1987年 『最後勝利』<未> [脚本] (監督:パトリック・タム)
 ・1987年 『マカオ極道ブルース』<未> [脚本] (監督:チェン・タンチョー)
 ・1988年 『バンパイア・コップ2』<未> [脚本・出演] (監督:ジェフ・ラウ)
 ・1988年 “猎鹰计划/Lie ying ji hua(Walk on Fire)”[脚本](監督:ノーマン・ロウ)
 ・1988年 “愛情謎語/Ai qing mi yu(Chaos by Design)”[出演](監督:アンジェラ・チャン)
 ・1988年 『いますぐ抱きしめたい』[監督/脚本]
 ・1988年 “Motolora”[監督](CM)
 ・1990年 『欲望の翼』[監督/脚本]
 ・1990年 『アンディ・ラウ/武闘派列伝』<未> [脚本] (監督:チョン・ファンツォ)
 ・1991年 『神鳥伝説』 [原案] (監督:デイヴィッド・ライ、ユン・ケイ、ジェフ・ラウ)
 ・1993年 『大英雄』<未> [製作総指揮] (監督:ジェフ・ラウ)
 ・1994年 『楽園の瑕(きず)』 [監督/脚本]
 ・1994年 『恋する惑星』[監督/脚本]
 ・1995年 『天使の涙』 [監督/脚本]
 ・1996年 『wkw/tk/1996@7'55''hk.net』 [監督](短編)
 ・1997年 『初恋』[製作] (監督:エリック・コット)
 ・1997年 『ブエノスアイレス』 [監督/製作/脚本]
 ・1999年 『ブエノスアイレス 摂氏零度』 <未> [出演] (監督:クアン・プンリョン、アモス・リー)
 ・2000年 『花様年華』[監督/製作/脚本]
 ・2000年 「花様年華MTV」[監督](ミュージック・ビデオ)
 ・2000年 『花様的年華』 “Hua yang de nian hua”[監督/製作](短編)
 ・2000年 “Suntime Wine(新天葡萄酒)”[監督](CM)
 ・2000年 JCDecaux “Un matin partout dans le monde”[監督](CM)
 ・2001年 “The Hire:The Fellow”[監督](短編)
 ・2001年 Orange France“Dans la ville”[監督](CM)
 ・2002年 “天下無双/Tian xia wu shuang (Chinese Odyssey 2002)”[製作]
 ・2002年 “Six Days” [監督/脚本](ミュージック・ビデオ)
 ・2002年 ラコステ “La Rencontre”[監督](CM)
 ・2004年 『愛の神、エロス』[監督/製作/脚本]
 ・2004年 『2046』[監督/製作/脚本]
 ・2005年 クリスチャン・ディオール 香水“Capture Totale”[監督](CM)
 ・2007年 ランコム・パリ 香水 “Hypnôse Femme”[監督](CM)
 ・2007年 ランコム・パリ 香水 “Hypnôse Homme” [監督](CM)
 ・2007年 『マイ・ブルーベリー・ナイツ』[監督/製作/原案/脚本]
 ・2007年 "I Travelled 9000 km To Give It To You"(『それぞれのシネマ』)[監督・脚本]
 ・2007年 ソフトバンクCM [監督](CM)
 ・2007年 クリスチャン・ディオール 香水“Midnight Poison”[監督](CM)
 ・2007年 “There's Only One Sun” [監督](短編)
 ・2009年 “The Lady from Shanghai”[監督/脚本]

 *参考サイト
 ・Allcinema Movie & DVD Database:http://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=5248&ct=
 ・IMDb:http://us.imdb.com/name/nm0939182/
 ・Wikipedia:http://en.wikipedia.org/wiki/Wong_Kar-wai
 ・「ウォン・カーウァイ FILMOGRAPHY」:http://members.jcom.home.ne.jp/baht/wkw_filmo_j.html
 ・香港影庫HKMDB:http://www.hkmdb.com/db/people/view.mhtml?id=5243&display_set=eng

この記事へのコメント

Wilson Lui
2013年12月04日 13:30
Hello, I am from Hong Kong.

For your information

1992年 「討你歡心MTV」[監督](ミュージック・ビデオ)
http://www.youtube.com/watch?v=g_TIR6hjDgQ

This is also directed by Wong Kar Wai.
(Sorry! I do not speak Japanese.)
umikarahajimaru
2013年12月04日 23:55
Wilson Luiさま
コメントありがとうございました。
教えていただいたMVを観てみましたが、ちょっと画質が悪かったですね。雰囲気は伝わりますが、せっかくのウォン・カーウァイがもったいないし、もっと鮮明なものが観てみたいものです。
To Wilson Lui
Thank you for your message!
I love Wong Kar Wai's Film.
I would like to watch the MV in clearer version.
Wilson Lui
2013年12月05日 10:59
Hello. I also want to see a clearer version. But I am afraid this is the best resolution I can find on the internet. I tried to search this MV in Chinese language on YouTube but cannot find a better one. I have also tried some Chinese video sharing sites, like 56.com, todou.com etc. but also no luck. Now, I am not trying to find the original MV in “Yahoo! Auction Taiwan”. If I can find, I will share with you. My email: islandsouthwilson@yahoo.com.hk
umikarahajimaru
2013年12月05日 22:27
Wilson Luiさま
また何か新しい情報が得られましたら、教えていただければ幸いです。
To Wilson Liu
Thank you.
I'll be happy to give me more information!

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