アンソニー・ミンゲラ死す!

 アンソニー・ミンゲラ監督が亡くなったそうです。

 そんな死ぬような年齢ではないはずだと思って調べてみると、まだ54歳でした。第一報では、病気なのか、事故なのか、死因は発表されませんでしたが、その後、首に痛みを感じて、ロンドンの病院に入院し、腫瘍を取り除く手術をした、術後は順調に回復していたが、3月17日午前に容態が急変して出血により死亡した、と報じられました。2007年の映画賞を賑わせた『フィクサー』(日本のマスコミでも物凄く人気が高いらしい)の製作総指揮を務めていたし、精力的に仕事をしていたはずなのですが。

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 訃報によると、最新監督作品“The No. 1 Ladies Detective Agency”の撮影をボツワナで終えたばかりだったと伝えています。『パリ、ジュテーム』の姉妹編である“New York, I Love You”にも参加していたはずですが、完成していたのでしょうか。

 アンソニー・ミンゲラのことは、私は、シネマスクエアとうきゅうで公開された『最高の恋人』(1993)で名前を覚えて――作家性の強い作品ばかり上映していたシネスクで、こんな恋愛映画も上映するのかという驚き(軽い失望?)とともに彼の名前も私の頭の中に刻まれました。それ以前に『愛しい人が眠るまで』(1991)も観ていましたが、その時は監督名に思いを馳せるまでには至りませんでした――、そんな監督が『イングリッシュ・ペイシェント』で1996年度の米国アカデミー賞を受賞して、「え~っ、『最高の恋人』みたいな作品を撮る監督がアカデミー賞?」と驚いた記憶があります。

 個人的には『イングリッシュ・ペイシェント』を観てもあまりピンと来なかったのですが、印象が変わった(凄い監督なんじゃないかと意識するようになった)のは、彼がエグゼクティブ・プロデューサーを務めていたトム・ティクヴァの『ヘヴン』を観てからです。
 DVD『ヘヴン』の監督コメンタリーを観て初めて知ったんですが、アンソニー・ミンゲラは、『ヘヴン』を映画としてどういう方向に持っていけばいいかプロデューサーとして実に的確なアドバイスをしているんですね(詳しくは是非DVD『ヘヴン』の監督コメンタリーをご覧ください)。優れたプロデューサーというのは、お金を集めるだけじゃなくて、そういうこともできるんだ!と、当たり前と言えば当たり前のことかもしれませんが、それが、私がアンソニー・ミンゲラという名前を認識した3度目の瞬間でした。

 ◆アンソニー・ミンゲラ Anthony Minghella

 1954年 イギリス生まれ。舞台、テレビでキャリアをスタートする。脚本家としてキャリアを重ね、『愛しい人が眠るまで』(1991)で映画監督デビュー。『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)で、米国アカデミー賞監督賞を受賞。『リプリー』(1999)でも脚色賞にノミネートされた。脚本のうまさに定評がある。7本の長編を監督し、5人の俳優を米国アカデミー賞ノミネートに導いた(うち、ジュリエット・ビノシュとレニー・ゼルウィガーが受賞)。自作ではよくジュード・ロウやジュリエット・ビノシュを起用した。

 【フィルモグラフィー】

 ・1981年 "Maybury"<TVシリーズ>[脚本]
 ・1985年“What If It's Raining”<TV>[脚本]
 ・1985年~ "Grange Hill"<TV>[脚本] (8エピソード)
 ・1986年 "Boon"<TV>[脚本] (1エピソード)
 ・1986年「モース警部シリーズ VOL.1 ジェリコ街の女」<TV> [脚本]
 ・1987年“ The Dead of Jericho <TV>[脚本]
 ・1988年 「ジム・ヘンソンのストーリーテラー」<TVシリーズ>[脚本]
 ・1988年「モース警部シリーズ VOL.10 欺かれた過去」<TV> [脚本]
 ・1989年 “Living with Dinosaurs” (1989) (TV) (writer)
 ・1989年「モース警部シリーズ VOL.14 死を呼ぶドライヴ」<TV> [脚本] 
 ・1990年“"The Storyteller: Greek Myths" <TV ミニシリーズ>[creator]
 ・?年 "Smith and Jones in Small Doses" <TV>[脚本](1エピソード)
 ・1991年『愛しい人が眠るまで』 [監督/脚本] 
 ・1993年『最高の恋人』 [監督]
 ・1996年『イングリッシュ・ペイシェント』 [監督/脚本]
 ・1999年『リプリー』 [監督/脚本]
 ・2001年『アイリス』 [製作総指揮]
 ・2002年『愛の落日』 [製作総指揮]
 ・2002年『ヘヴン』 [製作総指揮]
 ・2003年『コールド マウンテン』 [監督/脚本]
 ・2005年『ザ・インタープリター』 [製作総指揮]
 ・2006年『こわれゆく世界の中で』 [監督/製作/脚本]
 ・2006年『輝く夜明けに向かって』 [製作]
 ・2007年『フィクサー』 [製作総指揮]

 ・2008年 “The No. 1 Ladies Detective Agency”[監督/製作/脚本]
 ジンバブエ出身で、エジンバラ大学の法医学教授でもある作家アレキサンダー・マコール・スミスの同名人気シリーズの映画化。主人公はボツワナでただ1人の女探偵プレシャス・ラモツエということなんですが、監督が(『輝く夜明けに向かって』を製作した)アンソニー・ミンゲラであってみれば、そういうキャラクターを使って、ボツワナの社会的現実を描いた作品だろうと推測されます。とりたてて有名な人は出ていないので、日本での劇場公開はないかもしれませんが、製作はワインスタイン・カンパニーほかで、BBCやHBOがワールド・セールスを手がけるようです。

 ・2008年 “New York, I Love You”[監督/脚本]
 『パリ、ジュテーム』の姉妹編で、舞台はニューヨーク。他の監督は。イヴァン・アタル、チアン・ウエン、スカーレット・ヨハンソン、ミラ・ナイール、パク・チャヌク、ブレット・ラトナー、アンドレイ・ズビャギンツェフ、ファティ・アキン、岩井俊二ら。
 ちょうど各編が制作中だったはずで、詳細は伝えられていません。アンソニー・ミンゲラ編はなし、ということになるのかもしれません。

 ・2008年 “Margaret”[製作総指揮]
 『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アナライズ・ミー』の脚本家としても知られるケネス・ローナガンの第二監督作品。出演は、アンナ・パキン、マット・デイモン、マーク・ラファロ、マシュー・ブロデリック、ジャン・レノら。配給は20世紀フォックスのはずですが、日本公開はあるでしょうか。

 ・2008年 “Love You More”[製作]
 監督はSam Taylor Woodで、これが初長編。有名な俳優も出ていないし、日本での公開はおそらくないでしょう。

 ・2008年 “The Reader”[製作]
 『リトル・ダンサー』『めぐりあう時間たち』の監督であるスティーブン・ダルドリー監督作品であり、ベルンハルト・シュリンク『朗読者』の映画化なので、日本公開はほぼ確実です。出演は、ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、アレクサンドラ・マリア・ラーラ、ブルーノ・ガンツら。全米公開が2008年12月12日で決定していて、2008年度のアカデミー賞狙いの作品と目されています。

 ・“The Ninth Life of Louis Drax”[監督/脚本]
 リズ・ジェンセン『ルイの九番目の命』(ソフトバンククリエイティブ刊)の映画化作品でしたが、まだ製作が発表されただけの段階だったので、ミンゲラの死により製作はストップになるだろうと推測されます。

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