私はこうしてアニメーション作家になりました パヴェル・コウツキー『履歴書』

 1987年のベルリン国際映画祭の短編部門で金熊賞を受賞している作品です。

 途中で出てくるネズミは、コウツキーの他の作品でも出てきますがどうやらコウツキーの分身のようです。



 【物語】
 履歴書が映し出され、各欄が書き込まれていく。が、学歴(Education)のところでペンが止まる。
 小学校時代
 アルファベット、がいろんなものに見えたり、i(I)とY(you)がケンカしたり。
 数字。
 (卵)
 Der、Dasなど冠詞の勉強。
 それまでに教わったことが積み上げられる。

 ギムナジウム(中高等教育)時代
 数学。
 (卵)
 年号。929年(聖ヴァーツラフ(チェコの最初の王)の殉教)。1415年(フスの死)。1492年(アメリカ大陸発見)。
 (卵から“ネズミ”が誕生)
 格言。「シーザー:賽は投げられた」「ガリレオ:それでも地球はまわっている」
 π=3.14159265358979323846264338327950288419716939937510……
 H2O
 ビーナスの誕生
 ニュートン 万有引力の発見。
 アインシュタイン。
 大きな口に追いかけられる。
 √
 2πr
 πr2
 H2SO4
 それまでに教わったことが積み上がる。

 デューラー、レオナルド、ゴヤ、ロダン
 美大時代
 ラスコーの壁画、モナリザ、……
 ピラミッド
 建築学。ドーリア式、イオニア式、コリント式。パルテノン宮殿。シャルトル大聖堂。サンピエトロ寺院。
 骨格学。
 裸婦像。ボッティチェリ「ビーナスの誕生」、ティツィアーノ「ウルビーノのビーナス」、ベラスケス「鏡を見るビーナス」、ゴヤ「裸のマハ」、マネ「草上の朝食」……。
 アニメーションへ
 白雪姫、ドナルドダック、ポパイ、『イエロー・サブマリン』
 ニワトリのアニメーション
 それまでに教わったことが積み上がる。

 それまでにおそわったことのすべて(残骸?)が3つ重なる。
 それぞれが小学校、ギムナジウム、美大に変わる。

 履歴書を書き上げる。

 【コメント】
 時系列的にいろんなものが流れてきて、人生をたどるというやり方は、コウツキーの『決闘』と同じですが、今回は教育に限られていることがわかります。しかも、最後まで観ると美大からアニメーションに進んでいるようで、これはどうやら、コウツキーの学歴をアニメーション化したものらしいとわかってきます(わかるのは最後の最後ですが)。
 全体としては、自分の履歴書を書こうとして、学歴の欄でふと過去に思いを馳せたというところでしょうか。

 上には、私がわかることをできるだけ書き出してみましたが、「格言」も1つわからないし、「犀」もよくわかりません。「裸婦」にもわからないのがあります。

 卵が割れてネズミが出てくるのは自我の芽生えでしょうか。大きな口に追いかけられるイメージは、コウツキーが数学や化学は不得意だったということですね。

画像

 ◆作品データ
 1986年/チェコ/9分3秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、1987年ベルリン国際映画祭短編部門で金熊賞を受賞しています。

 *この作品は、<チェコアニメ映画祭2006>で上映されました。

 *この作品は、DVD『80s~90s 2D傑作選『カフェ』他』に収録されています。

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 ◆監督について
 パヴェル・コウツキー
 鉛筆画に彩色という独特のスタイルが特徴で、シニカルな内容の作品を得意とする。
 好きなアニメ作家は、バルタ、シュヴァンクマイエル、ポヤルだと発言していて、シュヴァンクマイエルの諸作品の影響が見られる作品も多い。

 1957年 プラハ生まれ、2006年4月15日没。
 プラハ工芸美術大学で学ぶ。
 1984年 クラートキー・フィルムで活動を始める。

 日本では<チェコアニメ映画祭2006>のAプロ&Bプロで『バイオリン・コンサート』『カタストロフィー』『ジレンマ』『履歴書』『ひとめぼれ』『ネズミ、万歳!』『カフェ』『メディア』が上映されたんですが、この会期中にコウツキーは亡くなってしまいました。
 彼は、チェコアニメ新世代の牽引者と見なされていたのですが、48歳という早すぎる死でした。

 ・1970年 『ホンザがどうやって世界に行ったか』
 ・1981年 『バイオリン・コンサート』 Houslový Koncert
 ・1981年 『3つのフォーラム』 Trojfórum
 ・1983年 『プラハにようこそ』 Navštivte Prahu
 ・1984年 『カタストロフィー』Katastrofy
 ・1985年 『ラテルナ・ムジカ』Laterna musica
 ・1986年 『履歴書』 “Curriculum vitae”
 *1987年ベルリン国際映画祭短編部門金熊賞受賞
 ・1987年 『視覚の外』“Láska na první pohled(Love at First Sight)”
 ・1987年 『ヤン・ナープラヴーニクの静かな世界』 Tichý svĕt Jana Nápravníka
 ・1987年 『一歩から進歩へ』 Od krouku k pokroku
 ・1987年 『ひとめぼれ』 Láska na první pohled
 *1988年 ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞受賞
 ・1988年 『ポートレート(セルフポートレート)』 “Portrét”
 *この作品は、アニメ作家David Ehrlichが、1988年に、5カ国(チェコスロヴァキア、エストニア、日本、アメリカ、ユーゴスラヴィア)のアニメーターに自分をモチーフにして作品を作るよう依頼した短編の1つで、他のアニメーターは――
 イジー・バルタ、サリー・クルックシャンク、ボリヴォイ・ドヴニコヴィチ、David Ehrlich、川本喜八郎、木下蓮三、Candy Kugel、マッティ・キュット、ニコラ・マイダック、Josko Marusic、手塚治虫、プリート・パルン、ビル・プリンプトン、Maureen Selwood、ヤン・シュヴァンクマイエル、リホ・ウントゥ、ハルディ・ヴォルメル、Dusan Vokoti。
 *1990年 カンヌ国際映画祭短編部門出品
 ・1990年 『マルクス・レーニン主義の最後の100年』“Posledních 100 let Marx-Leninismu v Cechách(Last 100 Years of Marx-Leninismus in Bohemia)”
 *1991年 ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞受賞
 ・1993年 『ネズミ、万歳!』 “At zije mys!( Long Live the Mouse!)”
 *1993年 ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞受賞
 ・1993-95年 『ハラリ』 テレビ・シリーズ7話
 ・1994-95年 『ノーコメント』 テレビ・シリーズ90話
 ・1996年 『決闘』 “Duel”
 ・1997年 『コマーシャル』 Reklama
 ・1998年 『わが祖国』 Mà vlast
 ・1998年 『2000年の世界』 Svét2000
 ・1998年 『カフェ』 “Kavárna(Coffee-House)”
 *チェコ批評家賞受賞
 ・2000年 『メディア』 “Média”
 *2000年アヌシー国際アニメーションフェスティバル 国際批評家連盟賞受賞、2000年ベルリン国際映画祭短編部門銀熊賞&エキュメニカル審査員特別賞受賞
 ・2001年 『ピグマリオン』 Pygmalion
 ・2001年 『ド・ポルキー』 テレビ・シリーズ
 ・2003年 『マイ・ビューティフル・ボヘミア』 cechy krasne,cechy me
 ・2003年 『4つの愛』 “Ctyri lásky(Four Loves)”
 ・2005年 “Letters from Czech Repubric”  *愛・地球博で上映されました(ミハエラ・パヴラートヴァー、イジー・バルタ、アウレル・クリムトとの共同作品)。
 ・2006年 『フィムファールム』 Fimfarum Ⅱ

 *<チェコアニメ映画祭2006>で上映された8作品は、DVD『Fantastic! Czech Animation 80’s~90’s 2D傑作アニメーション』に収録されています。

 *当ブログ関連記事 「チェコアニメ映画祭2006、または、エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー」:http://umikarahajimaru.at.webry.info/200605/article_7.html

 *関連書籍
 ・『メッセージ・フロム・チェコアート』(アーティストハウス)
 日本で上映された作品の紹介と監督へのインタビューが掲載されています。

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