星空の映写技師 『ファンタスマゴリア 1.オーロラショウ』

 動画サイトをチェックしたら、久しぶりにたくらしげるさんの作品があったので、アップしたいと思います。作品は、『ファンタスマゴリア』の第1話「オーロラショウ」です。



 【物語】
 北にある原っぱに一台の大きな映写機があり、夜空に星を映し出している。
 映写技師は何人も代わったが、映写機はずっと同じもので、古いものに手を加えながらずっと使っている。暇そうに見えるがやることは多く、季節によって映写する星空も変えなければならない。
 そんな映写技師には行きつけのコーヒーショップがある。そこのコーヒーは不味かったが、ほかに客が来ないので、いつも落ち着いて時間を過ごすことができる。
 珍しくコーヒーショップに南の国から旅行者がやってきた。南の国の人は一所懸命働いて、お金を貯め、オーロラを見に旅行するのが夢なのだと言う。映写技師は、自分が星空の映写技師だと名乗ることもできずに、男の話に耳を傾けるのだった。

画像

 【コメント】
 私は、DVDで『ファンタスマゴリア』を持っているので、これを観るのは初めてではなく、もう既に何度目か観ているのですが、久々に観ると、やっぱりいいですね。

 とりたててストーリーもなく、当然オチもなく、ただ星空を映す映写技師のことを語るだけの短編なんですが、夜空に星を映し出す映写機があり、それを動かす映写技師がいるという発想が面白くて、なんだか心の中にポッと小さな感動の灯が灯ります。こんな物語を書いてみたいと思わせ、案外簡単に書けるんじゃないかと錯覚させもするほど、シンプルなお話ですが、なかなかこういう発想はできませんよね。

 主人公が映写技師で、それは地味な仕事であり、存在も意識させないほどの職業でありながら、人の役に立ち、人が楽しむのを陰から支える。これを書いた時、著者の頭の中には、プラネタリウムだけでなく、本物の映画の映写技師のことも当然あったはずで、映画や映写技師への思い(感謝と憧れ)がこの作品には二重写しになっているのだろうと思われます(たぶん)。
 これが作品集のトップに据えてあるのはそういうわけ(オマージュ)もあるのでしょう。
 考えてみれば、私がこの作品を観ていいなと思うのは、おそらくそういう思いを作り手と共有するからでもあります。

 ◆作品データ
 1995年/日本/5分11秒
 日本語台詞あり/字幕なし
 アニメーション

 *この作品は、DVD『ア・ピース・オブ・ファンタスマゴリア』に収録されています。

 *この作品を他の誰かにも教えてあげたいと思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 

 当ブログではこれまで2作品、たむらさんの作品をご紹介していましたが、確認してみたらリンクが落ちてしまっていました。改めて動画を貼り直しましたので、よかったら、そちらもご覧ください。

 ◆『ファンタスマゴリア』について

 「ファンタスマゴリア」は、元々は、1989年のたむらしげるの画集『PHANTASMAGORIA』の巻頭インデックスとして誕生し、どんどん物語が膨んでいって、1995年にCD-ROM『Amusement Planet PHANTASMAGORIA』に発展しました。描かれたエリアは、サンタクロース村、クリスタルシティー、ほんやらベーカリーなど35あり、ランスロット、木人、スノーマン、さすらいのシンガー、フープ博士などが暮らして、それぞれの物語を生きています。DVDに収録されているのは全部で15話、78分。ナレーションはあがた森魚とかの香織、音楽は手使海ユトロが担当しています。

 <全15話タイトル>
 1.オーロラショウ
 2.虹の谷絵の具工場
 3.ガラスの海
 4.南の大陸
 5.電球発光の日
 6.ゴーストタウン
 7.キノコ村
 8.密造酒
 9.サボテンの街
 10.ほんやらベーカリー
 11.アルタイルの酒場
 12.人工の月
 13.デジタルゾーン
 14.流れ星の夜
 15.旅の終わり

 【コメント】
 1998年11月に銀座テアトル西友のレイトショーで<クジラの跳躍>と題して、「ファンタスマゴリア」の4編を含む、たむらしげるの特集上映が行なわれたのですが、私もそれで初めてたむらワールドに触れ、そして魅せられて、『クジラの跳躍』と、『ア・ピース・オブ・ファンタスマゴリア』はDVDも購入してしまいました。短いわりには、どちらも6800円もしたのですが、どうしても手元においておきたかったんですね。
 本当は、『クジラの跳躍』の、スクリーンにおける、あのあまりにも美しいクジラの大跳躍をスクリーンごと自分のものにしてしまいたかったのですが、もちろんそれは叶わぬ夢。仕方がないので、DVDで我慢するしかないのですが。

 「ファンタスマゴリア」は、本当は結構孤独だったり、悲惨だったりするのかもしれない内容を含みつつ、最終的には、どのエピソードも温かくホッとした気分にさせてくれます。CG作品でありながら、こんなに温かみを感じられるのは、やはり作者の人柄なのでしょう。

 ◆監督について
 たむらしげる
 絵本作家、イラストレーター、映像作家。
 自作の絵本や画集の中の世界を“動かす”というところからごく自然に映像作品を手がけるようになり、これまでに3つの作品を発表している。 

 1949年 東京生まれ。
 桑沢デザイン研究所卒業。
 1972年、パッケージ・デザイナーとしてトッパン・アイデアセンターに入社。1976年、絵本『ありとすいか』出版を期に独立。その後、イラストレーターや絵本作家として活躍。代表的な絵本に『よるのさんぽ』『ダーナ』『ネズミのヒコーキ』『ロボットのくにSOS』などがある。「ガロ」に漫画作品を発表したこともある。
 1993年に初の映像作品『銀河の魚』を発表。この作品は、友人のアニメーターやコンピュータ・デザイナーの協力の元に、手作りで作られた“パソコンによるハイビジョン作品”で、毎日映画コンクール 大藤信郎賞、国際エレクトロニック・シネマ・フェスティバル グランプリ、ハイビジョン・アワード 選定委員長賞を受賞するなど、高い評価を受けた。
 1995年には、自身の絵本作品『PHANTASMAGORIA』を映像化した作品『Amusement Planet PHANTASMAGORIA』をCD-ROMで発表(のちに『ア・ピース・オブ・ファンタスマゴリア』としてビデオ、DVDでも発売)。AMDアワード グランプリ郵政大臣賞、マルチメディア グランプリ エンターテインメント賞受賞。
 1998年には『クジラの跳躍』を発表。この作品は平成10年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 大賞を受賞したほか、海外の数多くの映画祭に招待された。

 これら3作の映像作品のうち、『銀河の魚』『クジラの跳躍』と、『ファンタスマゴリア』のうちの「密造酒」「南の大陸」「オーロラショウ」「虹の谷の絵の具工場」は、1998年11月に銀座テアトル西友のレイトショーで劇場公開されました。

 『クジラの跳躍』劇場公開時に、長編アニメの構想もある、と噂されていましたが、具体的な作品となって一般に公開されることもないまま、既に10年。新作が待たれている。

 静かで、穏やかで、どこかノスタルジックなその作品世界は、宮澤賢治や稲垣足穂の作品を髣髴とさせると評されます。

 1998年9月から、TBS系毎週土曜22時からの報道番組「ブロードキャスター」のオープニングとエンディングにたむら作品が使われています。http://www.tbs.co.jp/bc/

 長年にわたり、TV番組情報誌「TV Station」の表紙のイラストを描いています。http://tvstation.jp/

 2007年6月18日~30日に青山ピンポイント・ギャラリーにて、<たむらしげる個展 メルヒェンティック>(http://www.pinpointgallery.com/japaneseindex.html)が開催されました。

 ・たむらしげるworld:http://www.daijobu.co.jp/home/tamu/t_list/t_list.html

 ・たむらしげるスタジオ通信:http://www.tamurashigeru.com/

 ・たむらしげる世界展 ファンタスマゴリア・ミュージアムツアー:http://www5f.biglobe.ne.jp/~age1/tamura/

 *当ブログ関連記事
 ・たむらしげる 『ファンタスマゴリア』「虹の谷絵の具工場」

 ・『クジラの跳躍』

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック