夢のように美しい 『クジラの跳躍』 たむらしげる

 たまには何か気分を変えてみようと思い、動画サイトを巡っていて、見つけました!
 たむらしげる『クジラの跳躍』!
 この作品は、1998年に劇場公開されたんですが、当時私はほとんど全く予備知識なしで観て感激し、どうしても欲しくなってDVDも購入して持っています。23分の『クジラの跳躍』1作品だけ収録したDVDが、なんと税抜き6800円もしたんですが、それでも手元に置いておきたかったんですね~。
 それが、今、タダで観れてしまうとは!

 この作品は、実は、一時期日本でもネット配信されていたようなのですが、現在You Tubeに投稿されているのは、英語字幕と、その上に重ねるようにポルトガル語字幕がついたもので、英語圏でネット配信された後、その上にポルトガル語字幕をつけてブラジルでもネット配信され、それがめぐりめぐってYou Tubeに投稿された、ということのようです(冒頭にネット配信元のクレジットが入っています)。

 今のところタダで観れてしまうわけですが、気に入った方は、是非DVDもお求めください(笑)。この動画は動画サイトで観られる作品の中ではかなり画質がい方ですが、DVDの方がやはり断然画質もいいですし、イラスト・ギャラリーなどの特典もついていますから。一生の宝ですよ!(笑)




 【物語】
 大型客船の上からトビウオがはねる夜の海を眺める少年がいる。
 その海には、もう1つ別の時間が流れていて、そこではエメラルド色に輝く海から半日かけて、クジラの跳躍が行なわれる。クジラの跳躍が始まると、それを見ようとたくさんの人が集まってくる。ガラスの海に穴を開けて魚をつかまえている老人、ウォーターピープル(海の上で火を焚くと現れて不思議な旋律の曲を奏でる)、画家のR、冒険家ライム爺さんの話をする弟子の青年、ガラスの海からガラスの象を出してみせる3人の楽団、手回しオルガンの男、沈没船で見つけた酒を勧める男とその友人(ヤシの実の夢を見たと話す)、……。
 老人は、Rの描いた絵を見てかつて自分がそれと同じ船に乗っていたことがあると思い出す。その船とは、老人がいる海を眺めている少年のいる大型客船そのもの。少年のいる大型客船は老人の過去なのか、それとも老人のいる海が少年の見ている幻想なのか……。

画像

 『クジラの跳躍』では、いくつかの時間といくつかの世界が、つながっているようないないような、曖昧な形で結びつけられて、「クジラの跳躍」を中心にして1つの作品世界を構成しています。それは、まるで、原作者たむらしげるの頭の中に想起する「夢」を見せられているようですが、その夢は、とても幻想的で、魅惑的です。

 論理的にどういうことなのか理解したいという人もいるでしょうが、おそらくそんなには論理的な意味合いは計算されておらず、提示されるイメージを楽しむというのが、この作品に対する正しい鑑賞法なのではないでしょうか。(ただ、この「クジラの跳躍」というのが、1日かけて1周する時計の短針のようなものなのではないか、などと想像することはできますが)

 「クジラは半日かけて跳躍し、人々の心に美しい思い出を残し、海の中へ還っていった」と、この映画の後半で語られますが、この映画自身も観た者に美しい思い出を残して、流れていくことになります。

 ところで、この動画を観て、おやおや?と思うところはなかったでしょうか。実は、おこの動画、台詞と字幕のタイミングが合ってなかったんですが、字幕を出すタイミングがおかしいのかと思ったら、その逆で、台詞の方が映像に遅れて出ているのでした。どの段階でこんなことになってしまったのかわかりませんが、へんなこともあるものです。
 本来の姿で楽しむには、やはりDVDを購入した方がよい、ということでしょうか(笑)。

 ◆作品データ
 1998年/日本/23分
 日本語台詞あり/英語字幕&ポルトガル字幕あり
 3DCGアニメーション

 *この作品は、平成10年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞しています。

 *この作品は、1998年に劇場公開されました。

 *この作品は、『世界と日本のアニメーションベスト150』(ふゅーじょんぷろだくと)で449位。

 *この作品は、DVD『クジラの跳躍』としてリリースされています。
 そのほか、原作絵本サウンドトラックCD、原画集CD-ROMなどもあります。

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 ◆監督について
 たむらしげる
 絵本作家、イラストレーター、映像作家。
 自作の絵本や画集の中の世界を“動かす”というところからごく自然に映像作品を手がけるようになり、これまでに3つの作品を発表している。 

 1949年 東京生まれ。
 桑沢デザイン研究所卒業。
 1972年、パッケージ・デザイナーとしてトッパン・アイデアセンターに入社。1976年、絵本『ありとすいか』出版を期に独立。その後、イラストレーターや絵本作家として活躍。代表的な絵本に『よるのさんぽ』『ダーナ』『ネズミのヒコーキ』『ロボットのくにSOS』などがある。「ガロ」に漫画作品を発表したこともある。
 1993年に初の映像作品『銀河の魚』を発表。この作品は、友人のアニメーターやコンピュータ・デザイナーの協力の元に、手作りで作られた“パソコンによるハイビジョン作品”で、毎日映画コンクール 大藤信郎賞、国際エレクトロニック・シネマ・フェスティバル グランプリ、ハイビジョン・アワード 選定委員長賞を受賞するなど、高い評価を受けた。
 1995年には、自身の絵本作品『PHANTASMAGORIA』を映像化した作品『Amusement Planet PHANTASMAGORIA』をCD-ROMで発表(のちに『ア・ピース・オブ・ファンタスマゴリア』としてビデオ、DVDでも発売)。AMDアワード グランプリ郵政大臣賞、マルチメディア グランプリ エンターテインメント賞受賞。
 1998年には『クジラの跳躍』を発表。この作品は平成10年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 大賞を受賞したほか、海外の数多くの映画祭に招待された。

 これら3作の映像作品のうち、『銀河の魚』『クジラの跳躍』と、『ファンタスマゴリア』のうちの「密造酒」「南の大陸」「オーロラショウ」「虹の谷の絵の具工場」は、1998年11月に銀座テアトル西友のレイトショーで劇場公開されました。

 『クジラの跳躍』劇場公開時に、長編アニメの構想もある、と噂されていましたが、具体的な作品となって一般に公開されることもないまま、既に10年。新作が待たれている。

 静かで、穏やかで、どこかノスタルジックなその作品世界は、宮澤賢治や稲垣足穂の作品を髣髴とさせると評されます。

 1998年9月から、TBS系毎週土曜22時からの報道番組「ブロードキャスター」のオープニングとエンディングにたむら作品が使われています。http://www.tbs.co.jp/bc/

 長年にわたり、TV番組情報誌「TV Station」の表紙のイラストを描いています。http://tvstation.jp/

 2007年6月18日~30日に青山ピンポイント・ギャラリーにて、<たむらしげる個展 メルヒェンティック>(http://www.pinpointgallery.com/japaneseindex.html)が開催されました。

 ・たむらしげるworld:http://www.daijobu.co.jp/home/tamu/t_list/t_list.html

 ・たむらしげるスタジオ通信:http://www.tamurashigeru.com/

 ・たむらしげる世界展 ファンタスマゴリア・ミュージアムツアー:http://www5f.biglobe.ne.jp/~age1/tamura/

 *当ブログ関連記事
 ・たむらしげる 『ファンタスマゴリア』「オーロラショウ」

 ・たむらしげる 『ファンタスマゴリア』「虹の谷絵の具工場」

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