『キャッシュバック』 スーパーマーケット深夜アルバイトのちょっとエッチな妄想

 半裸の女性がスーパーの中で買い物をしているヴィジュアルが印象的な映画『フローズン・タイム』(2008年1月26日よりQ-AXシネマにて公開)のチラシが出回っていますが、この映画には、元々“Cashback”という短編があって、それを長編化したものがこの『フローズン・タイム』なのだそうです。

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 動画サイトで探してみたら、あっさり短編版“Cashback”を見つけることができました。
 長編版“Cashback”(原題は短編版と同じ。邦題が『フローズン・タイム』)は、単に短編版のエピソードを膨らませたものではなく、短編版に前日譚・後日譚を加えて長編化したもの、だということです(つまり長編版の中には短編版がそのまま入っている!)。



 【物語】
 ベンは美大に通う青年。
 夜、眠ることができないので、24時間営業のスーパーで夜間勤務のアルバイトをすることにした。ほかの人が休んでいる時間に働いて、余った時間を売る。キャッシュバックだ。
 スーパーの夜間勤務のメンバーは個性派が揃っている。
 レジ係のシャロン。彼女は、なかなか時間が過ぎないのを確認するのがイヤで、いつも時計を視界に入れないようにしている。
 バリーは、スタントマンを目指す青年だが、いつも相棒のマットとふざけてばかり。シャンプー・ボトルに似た“ローション”をこっそり女性客のカートの中に入れて、客に買わせてしまうなどといういたずらなんかしょっちゅうだ。
 ボスのジェンキンスは、従業員のミスを見つけては、注意するのを日課のようにしている。
 従業員の方もそんなボスの目を盗んでは、就業時間に店内でキックボードのレースをしたりしている。
 しかし、そういうベンも、深夜のスーパーは、あまりにも退屈なので、時間を止めて、動かない客たちを観察するようになった(もちろん妄想だけど)。
 そして、女性客の服を脱がせては、デッサンを始めるようになった。
 デッサンをしながら、ふと思い出すのは、初めて女性の裸に興味を持った時のことだ。それは、少年時代のことで、家に下宿していたスウェーデン人のお姉さんがお風呂上りにいつも全裸で歩き回っていたのだ。風呂上りの彼女がパンティーを落としていったのを見つけた時は、ドキドキしながら部屋まで届けたものだ。
 デッサンにも飽きた頃、ベンは女性客の服を元に戻し、さらにシャロンに小言を言っていたボスをかかえて、まさに牛乳パックを投げつけようとしていたバリーの前に移動させた。
 そうして止まっていた時間を再び元に戻すと……、バックストックからバリーを叱りつける店長の怒鳴り声がとどろくのだった。

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 【解説】
 この作品は、イギリスで活躍するファッション・フォトグラファー、ショーン・エリスの監督第2作で、第1作“Left Turn”同様リドリー・スコットのプロダクションRSAによって制作されています。無名の映画監督の短編第2作にこれだけ女性のヌードが出てくるのに驚いてしまいますが、これは、ショーン・エリスのキャリアとRSAのバックアップがあってこそなのでしょう。

 物語は、深夜のスーパーで働く人々の人間模様と、主人公ベンの妄想がベースになっていて、短編というには長めの作品ですが、エッチな妄想と笑いが観る者を楽しませてくれます(これを作った時、ショーン・エリスは33歳か34歳ですが)。

 この作品は、ロンドンにあるSainsbury's Whitechapel branch というスーパーで、夜10時~6時までの間に店を閉めて、その間、4日間で撮影されました。

 あまり予算がなかったため、従業員のユニフォームはお店の本物のユニフォームを借りて撮影されています。

 映画の中に時間を止めるシーンがありますが、CGは一切使っておらず、すべてカメラワークで処理しているそうです。

 この作品は、米国アカデミー賞短編部門にノミネートされていますが、それが発表になる前に長編版のプロジェクトは始まっていました。

 長編版(『フローズン・タイム』)では、お店のスタッフに新たに“カンフー・キッド”ブライアンが加わり、物語的には、ベンとシャロンの恋が中心になるようです(短編版でも、ベンがシャロンに片思いしているような雰囲気は感じられますが、具体的には何も起こりませんでした)。

 ベン役のショーン・ビガースタッフは、『ウィンター・ゲスト』、『ハリー・ポッターと賢者の石』『ハリー・ポッターと秘密の部屋』で知られる俳優。

 元々ベン役はジェイミー・ベルにオファーされていたのですが、ジェイミー・ベルからは見送られてしまったと伝えられています。

 ◆作品データ
 2004年/英/17分51秒
 英語台詞あり/日本語字幕なし・フランス語字幕あり
 実写作品

 *2004年シカゴ国際映画祭ゴールデン・ヒューゴー賞(グランプリ)受賞、ブレスト・ヨーロピアン・ショートフィルム・フェスティバル(フランス) グランプリ受賞、ルーバン国際ショートフィルム・フェスティバル(ベルギー) グランプリ受賞、2005年リール国際ショートフィルム・フェスティバル(フランス) フィクション部門初監督作品賞受賞、FIKEエボラショートフィルム・フェスティバル(ポルトガル) 観客賞受賞、トライベッカ映画祭(アメリカ)Best Narrative Short 受賞、2006年米国アカデミー賞短編部門ノミネート

 ◆監督について
 ショーン・エリス Sean Ellis
 1970年 イギリス・サセックス州ブライトン生まれ。
 11歳から写真を撮り始め、スティール・カメラマンとしてキャリアをスタートさせる。
 1994年にロンドンに移り、スティール・カメラマンの経験を生かして、ファッション写真へと転身し、“The Independent”紙・日曜版では、イギリスのフォトグラファー トップ10の1人に数えられるまでになる。

 ファッション・フォトグラファーとしての主な活動媒体は、“i-D”、“The Face”、“Arena”、“Arena Homme Plus”、“Visionaire”、“Dazed and Confused”、“Numero”、“Vogue”(フランス版、イギリス版、日本版、アメリカ版)、“Harper’s Bazaar”、“Big Magazine”など。

 過去に手がけた人物写真は、エルトン・ジョン、北野武、トレント・レズナー、カイリー・ミノーグ、エリック・バナ、ステラ・マッカートニー、Air、Kosheen、リチャード・アシュクロフトなど。
 “Harper’s Bazaar”誌では、ファッション・イメージのシリーズでデイヴィッド・リンチとコラボレーションしたりもしている。

 1年間毎日写真を撮るというアイデアで1999年に撮りためた写真を写真集“365-A Year in Fashion”としてまとめる(第一写真集)。

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 元々写真にストーリー性を持ち込むことを得意としていたが、それがミュージック・ビデオやCMへの移行を容易にした。
 1997年に手がけたAll Saintsのビデオ“Never Ever”は、1998年 Brit Awardのビデオ部門を受賞している。
 CM作品としては、ジャン・ポール・ゴルティエ、ランド・ローヴァー、リンメル、O2など。

 リドリー・スコットのプロダクションRSAのプロデュースで、2001年に最初の短編“Left Turn”(サイコ・ホラー)を発表。続いて2004年に“Cashback”を発表した。
 “Cashback”は、米国アカデミー賞短編部門にノミネートされたほか、シカゴ国際映画祭の短編部門でゴールド・ヒューゴー賞(グランプリ)を受賞するなど、高評価を受け、2006年に長編版“Cashback”(邦題『フローズン・タイム』)を制作した。

 ◆フィルモグラフィー
 ・1997年 "Never Ever”[ミュージック・ビデオ]
 ・2001年 “Left Turn”[短編]
 ・2001年 “Gabriel”[ミュージック・ビデオ]
 ・2004年 “Cashback”[短編]
 ・2006年 『フローズン・タイム』“Cashback”
 ・2006年 “Lila”[短編]
 ・2008年 “The Brøken”

 *参考サイト
 ・ショーン・エリス公式サイト:http://www.sean-ellis.com/contents.html
 ・SEAN ELLIS PHOTOGRAPHER:http://www.seanellis.co.uk/index.asp
 ・“Cashback”(長編版)公式サイト(英語):http://www.cashbackthemovie.com/
 ・『フローズン・タイム』公式サイト:http://www.frozen-time.jp/
 ・ショーン・エリスに関するWikipedia(フランス語):http://fr.wikipedia.org/wiki/Sean_Ellis
 ・デザイナー 岡沢高宏さんのブログ honeyee.com(ハニカム):http://blog.honeyee.com/tokazawa/archives/2007/12/sean_ellis.html

この記事へのコメント

2007年12月19日 23:47
こんばんは♪umikarahajimaruさん

この作品、すごくタノシミなんですよ~
観てから読ませてもらいますね☆
前知識なく観ようと思ってマス。
予告編が良かった☆
いつも丁寧なレビュー頭が下がります
umikarahajimaru
2007年12月20日 21:28
migさま
ショーン・エリス関係の記事は、当ブログでは、動画つきで5つアップしましたが、まあ、これらを先に観ちゃっても、『フローズン・タイム』鑑賞の邪魔になることはないと思いますが。
公開後のレビュー記事を楽しみにしてますね。

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    Excerpt: 時間はないので気になたみたい映画とかをメモ。 『フローズン・タイム』 監督 ショーン・エリス Sean Ellis 『おそいひと』 監督 柴田剛 『フローズン・タイム』の原作『キャッシュバック』は短.. Weblog: …それが現れた日のこと…… racked: 2007-12-18 22:47