2007年 ドイツ女優No.1! マルティナ・ゲデック

 映画『グッド・シェパード』を観て、「おっ!」と思ったことの1つは、第二次世界大戦のドイツの戦後にやってきた米国OSSの主人公(マット・デイモン)に仕える通訳ハンナ・シラーとして、マルティナ・ゲデックが出演していることでした。


 『グッド・シェパード』は、彼女の魅力を引き出していたとは言いがたかったのですが、彼女のこのところの躍進ぶりには目を見張るものがあります。2007年だけで、映画祭上映作品を含めて、日本で4作品も上映されています。

 そこで、今回は、彼女マルティナ・ゲデックについて調べてみました。

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 ◆フィルモグラフィー

 ・1986年“In der Kälte der Sonne”(西独) 監督:Jürgen Klauß
 ・1986年“LieblingKreuzberg”(TVシリーズ)
 ・1987年“Retouche”(西独)  監督:Dieter Funk、Beat Lottaz
 ・1987年“Aquaplaning”[TV]  監督:Eva Hiller
 ・1988年“Goldjunge”(西独) 監督:Sven Severin
 ・1988年“Die Beute”[TV]  監督:Dominik Graf
 ・1989年“Schulz & Schulz”[TV]  監督:Ilse Hofmann
 ・1989年“Tiger, Löwe, Panther”[TV]  監督:Dominik Graf
 ・1989年“Eine Frau für Alfie”(スイス) 監督:Beat Kuert
 ・1989年“Hard Days, Hard Nights”(西独) 監督:Horst Königstein


 ・1989年“Eurocops”[TV]
 ・1989~1991年“Ein Fall für zwei”[TV]  監督:Ilse Hofmann
 ・1990年“Der Doppelte Nötzli”(独・スイス) 監督:Stefan Lukschy
 ・1991年“Leo und Charlotte”(TVシリーズ) 監督:Kaspar Heidelbach
 ・1991年“Schulz & Schulz II”[TV]  監督:Ilse Hofmann
 ・1991年“Hausmänner Helen”(独) 監督:Peter Timm
 ・1992年“Schulz & Schulz III”[TV]  監督:Ilse Hofmann、Achim Poulheim
 ・1992年“Mutter und Söhne”[TV]  監督:Claus Peter Witt
 ・1992年“In fuga per la vita”(TVシリーズ) 監督:Gianfranco Albano
 ・1992年“Endstation Harembar”[TV]  監督:Rainer Wolffhardt
 ・1992年“Unser Lehrer Doktor Specht”(TVシリーズ)
 ・1992年“Wolffs Revier”[TV]
 ・1993年“Leo und Charlotte”[TV]  監督:Kaspar Heidelbach
 ・1993年“Schulz & Schulz IV”[TV]  監督:Nico Hofmann
 ・1993年“Schulz & Schulz V”[TV]  監督:Nico Hofmann
 ・1993年“Krücke”(独) 監督:Jörg Grünler
 1993年 ドイツ映画賞男優賞・撮影賞・プロダクションデザイン賞受賞
 ・1993年“Barmherzige Schwestern”(独) 監督:Annelie Runge
 ・1994年“Der K önig”[TV]
 ・1994年“Nur eine kleine Affäre”(TVシリーズ) 監督:Detlef Rönfeldt
 ・1994年“Der Bewegte Mann(Maybe... Maybe Not/ The Most Desired Man)”  監督:Sönke Wortmann
 エルンスト・ルビッチ賞受賞
 ・1994年“Die Kommissarin”[TV]
 ・1994年“Im Namen des Gesetzes(In the Name of the Law)”[TV]
 ・1995年“How I Got Rhythm”(独) [短編]  監督:Michael Gutmann
 1995年 Day of the German Short Film Friedrich-Wilhelm-Murnau-Award受賞
 ・1995年“Man(n) sucht Frau”[TV]  監督:Vivian Naefe
 ・1995年“Die Spiele zu zweit”(独) 監督:Friederike Beck
 ・1995年“A.S.( A.S.Gefahr ist sein Geschäft)”[TV]
 ・1995年“Das SchweinEine deutsche Karriere(The Swine)”(TVシリーズ) 監督:Ilse Hofmann
 ・1995年“Frauenarzt Dr. Markus Merthin”[TV]
 ・1995年“Hölleisengretl”[TV]  監督:Jo Baier
 ババリアンTVアワード作品賞受賞


 ・1995年“Faust”[TV]
 ・1995年“Stadtgespräch Sabine Kirsch(Talk of the Town)”(独) 監督:Rainer Kaufmann
 ・1995年“Wer Kollegen hat, braucht keine Feinde”[TV]  監督:Martin Enlen
 ・1996年“Der Schönste Tag im Leben”[TV]  監督:Jo Baier


 ・1996年“Alles außer MordTodkäppchen”[TV]  監督:Kai Wessel
 ・1996年“Adelheid und ihre Mörder”[TV]
 ・1996年“Rosa Roth”[TV]
 ・1997年“Lea Katz Die Kriminalpsychologin: Einer von uns”[TV]  監督:Konrad Sabrautzky
 ・1997年“Harald Rica Reichmann”(独) 監督:Jürgen Egger
 ・1997年 『悦楽晩餐会/または誰と寝るかという重要な問題』“Rossini(Rossini, oder die mörderische Frage, wer mit wem schlief)”(独) 監督:ヘルムート・ディートル
 1997年 ババリア映画祭監督賞・男優賞受賞、ドイツ映画賞作品賞・監督賞・編集賞受賞 ☆ドイツ映画賞助演女優賞受賞(“Das Leben ist eine Baustelle(Life Is All You Get)”と併せて) DVD
 ・1997年“Lea KatzDie Kriminalpsychologin: Das wilde Kind”[TV]  監督:Konrad Sabrautzky
 ・1997年“Solo für Sudmann”[TV]  監督:Thomas Fantl、Thomas Nikel
 ・1997年“Das Leben ist eine Baustelle(Life Is All You Get)”(独) 監督:ヴォルフガング・ベッカー(『グッバイ、レーニン!』)、脚本:トム・ティクヴァ
 1997年 ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品・スペシャル・メンション受賞、ドイツ映画賞主演男優賞・助演女優賞受賞 ☆ドイツ映画賞助演女優賞受賞(『悦楽晩餐会/または誰と寝るかという重要な問題』と併せて)
 ・1997年“SOKO 5113”[TV]
 ・1997年“Der Neffe”[TV]  監督:Gabriela Zerhau
 RTL Golden Lion Awardsky脚本賞ノミネート
 ・1997年“Bella Block”[TV]  監督:Max Färberböck
 ☆1998年 RTL Golden Lion Awards 助演女優賞受賞


 ・1998年“Frauen lügen nicht( Women Don't Lie)”(独・オーストリア) 監督:Michael Juncker
 ・1998年“Frau Rettich, die Czerni und ich (Mrs. Rettich, Czerni and I)”(独)  監督:Markus Imboden


 ・1998年“Der Laden”(TVシリーズ) 監督:Jo Baier
 ・1998年“Single Bells[TV]  監督:Xaver Schwarzenberger
 ・1998年“Grüße aus der Grüne Wüste (The Green Desert)”(独)  監督:Anno Saul
 1999年 シネクエスト サンホセ映画祭観客賞受賞 ☆ババリア映画祭主演女優賞受賞


 ・1999年“Die Beste Party Heimatabend 1999”[TV]  監督:Ulrich Waller
 2000年アドルフ・グリム・アワードOutstanding Individual Achievementノミネート
 ・1999年“Viehjud Levi( Jew-Boy Levi)”  監督:Didi Danquart
 1999年 ベルリン国際映画祭カリガリ賞受賞、エルサレム映画祭市長賞名誉賞受賞
 ・1999年“Alles Bob!( All About Bob/ It's All Bob)”(独・オーストリア・デンマーク)  監督:Otto Alexander Jahrreiss


 ・1999年“Ich habe nein gesagt”[TV]  監督:Markus Imboden
 ・1999年“Deine besten Jahre”[TV]  監督:Dominik Graf
 2000年ババリアンTVアワード作品賞受賞
 ・2000年“Happy Hour oder Glück und Glas”[TV]  監督:Xaver Schwarzenberger
 ・2000年“O Palmenbaum”[TV]  監督:Xaver Schwarzenberger


 ・2001年“Romeo”[TV]  監督:Sherry Horman
 アドルフ・グリム・アワード フィクション部門作品賞受賞


 ・2001年“Private Lies(Scheidung auf amerikanisch)”[TV]  監督:Sherry Horman
 ・2001年 『マーサの幸せレシピ』“Bella Martha (Mostly Martha)”(伊・独・オーストリア・スイス)  監督:サンドラ・ネットルベック
 2002年 ヨーロッパ映画賞男優賞受賞、他多数受賞 ☆ヨーロッパ映画賞女優賞ノミネート、ドイツ映画賞女優賞受賞、2003年 ドイツ映画批評家協会賞女優賞受賞、モンス国際映画祭最優秀女優賞受賞 DVD


 ・2001年“Jenseits der Liebe”[TV]  監督:Matti Geschonneck
 バーデンバーデンTV映画祭 観客賞ノミネート
 ・2002年“Die Mutter”[TV]  監督:Matti Geschonneck
 2002年 ドイツ・ゴールデン・カメラ賞最優秀女優賞受賞(“Verlorenes Land”と併せて)
 ・2002年“Verlorenes Land”[TV]  監督:Jo Baier
 2002年 ドイツ・ゴールデン・カメラ賞最優秀女優賞受賞(“Die Mutter”と併せて)
 ・2002年“Andreas Hofer 1809 Die Freiheit des Adlers”[TV]  監督:Xaver Schwarzenberger


 ・2003年“Geheime Geschichten”[TV]  監督:Christine Wiegand


 ・2003年“Unsre Mutter ist halt anders”[TV]  監督:Franziska Buch
 ・2003年“Ins Leben zurück(Schattenlinie)”[TV]  監督:Markus Imboden
 ・2004年“Das Blaue Wunder”[TV]  監督:Peter Kahane
 ・2004年“Hunger auf Leben”[TV]  監督:Markus Imboden
 バーデンバーデンTV映画祭 観客賞ノミネート ☆ドイツTVアワード TV映画部門最優秀女優賞受賞


 ・2004年“Feuer in der Nacht(Live Movie)”[TV]  監督:Kai Wessel

画像

 ・2004年“Der Stich des Skorpion(Operation Skorpion)”[TV]  監督:Stephan Wagner


 ・2004年 『サージェント・ペッパー ぼくの友だち』“Sergeant Pepper”(独・伊・英) 監督:サンドラ・ネットルベック
 2005年ミュンヘン映画祭白象賞受賞 DVD

 ・2004年“Casanova”[TV]  監督:Richard Blank
 ・2005年“Spiele der Macht 11011 Berlin”[TV]  監督:Markus Imboden


 ・2005年“Liebe nach dem Tod”[TV]  監督:Matti Geschonneck
 ・2006年 『素粒子』“Elementarteilchen(Atomised/ Elementary Particles)”(独) 監督:オスカー・レーラー
 2006年ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品・銀熊賞 (男優賞=モーリッツ・ブライブトロイ)受賞、ヨーロッパ映画賞作品賞ノミネート ☆ドイツ映画賞助演女優賞ノミネート DVD


 ・2006年 『善き人のためのソナタ』“Das Leben der Anderen(The Lives of Others)”(独) 監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
 2006年 ババリア映画祭監督賞・主演男優賞・脚本賞受賞、ドイツ映画賞作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞・主演男優賞他受賞、ヨーロッパ映画賞作品賞・脚本賞・男優賞受賞、2007年 米国外国語映画賞受賞 ☆ヨーロッパ映画賞女優賞ノミネート DVD


 ・2006年“Un ami parfait”(仏) 監督:フランシス・ジロー


 ・2006年 『サマー’04』“Sommer '04(Summer '04)”(独) 監督:シュテファン・クローマー
 ドイツ映画祭2007で上映。ゲデックは、バカンスをともに過ごす息子と恋人の仲を気に病む母親という役どころ。


 ・2006年“Auf ewig und einen Tag”[TV]  監督:Markus Imboden


 ・2006年 『グッド・シェパード』“The Good Shepherd”(米) 監督:ロバート・デニーロ
 2007年 ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品・芸術貢献賞受賞、米国アカデミー賞アート・ディレクション賞ノミネート


 ・2007年“Verlassen”[TV]  監督:Christoph Stark
 ・2007年“Meine schöne Bescherung”(独) 監督:Vanessa Jopp


 ・2008年 『クララ・シューマン 愛の協奏曲』“Clara”(独・仏・ハンガリー) 監督:ヘルマ・サンダース=ブラームス [主演] 共演:パスカル・グレゴリー *彼女が演じるのはクララ・シューマン


 ・2008年 『バーダー・マインホフ 理想の果てに』“Der Baader-Meinhof Komplex”(独) 監督:ウリ・エデル 出演:モーリッツ・ブライプトロイ、ヨハンナ・ヴォカレク、ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ラーラ

 マルティナ・ゲデックは、もともとはテレビを中心に活躍していた女優で、ご覧のようにフィルモグラフィーにもTV作品がずらずら並びます。

 ここに挙げたようなドイツのTV作品が今後日本で観られる可能性は絶無なので、映画作品のみに絞ってリスト化しようかとも思ったのですが、実際にこうして作品名を挙げるのと、「多数のTV作品に出演し」と書くのとはやはりインパクトが違うので、IMDbに挙がっている全作品を書き出してみました。ひょっとすると、何人かの監督は、今後の日本公開作品に関わってくるかもしれません。

 ドイツのテレビ業界の大きさの問題もあるかもしれませんが、けっこう同じ監督の作品に起用されているのがわかります。

 追記:

 ・2009年 “Tris di donne & abiti nuziali”(伊) 監督:Vincenzo Terracciano

 ・2009年 "Sisi" [TV]

 ・2009年 “Lena on the Seventh Day ”(イスラエル・米) 監督:Joseph Rassulo

 ・2010年 “Jud Süß ” 監督:オスカー・レーラー

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 ◆プロフィール

 マルティナ・ゲデック Martina Gedeck

 1961年9月14日 ミュンヘン生まれ。3人姉妹の長女。父親は卸売業を営む。

 幼少期を、ババリアのランツフート(Landshut)とベルリンで過ごす。

 11歳の時に、TVドラマ“Die Sendung mit der Maus”で子役デビューを果たす。続けて“Denkste“にも出演。

 高校卒業後、1年間アメリカに留学。
 1981年にドイツ自由大学で、ドイツ語・ドイツ文学および歴史学を学ぶが、1982年にベルリン芸術大学に移り、演技を学ぶ(~1986年)。

 フランクフルトの劇場で初舞台を踏み、その後、ハンブルグのDeutsches SchauspielhausやHamburger Kammerspiele、Kampnagel Hamburg、および、スイスのバーゼルを本拠地とするSchauspielhaus で舞台女優として活躍する。

 映画への出演は、学生時代から始めていて、1988年のTV映画“Die Beute”、1989年の“Tiger, Löwe, Panther”から主役を演じるようになる。

 多くのテレビ・ドラマにゲスト出演した後、ババリアンTVアワードを受賞した“Hölleisengretl”(1995年)ではタイトル・ロールを演じた。

 1997年には、『悦楽晩餐会/または誰と寝るかという重要な問題』と“Das Leben ist eine Baustelle(Life Is All You Get)”でドイツ映画賞最優秀助演女優賞を受賞し、1998年の“Grüße aus der Grüne Wüste (The Green Desert)”ではババリア映画祭主演女優賞を受賞した。

 2001年の『マーサの幸せレシピ』では、ヨーロッパ映画賞女優賞にノミネートされたほか、ドイツ映画賞女優賞、2003年 ドイツ映画批評家協会賞女優賞、モンス国際映画祭最優秀女優賞など、数々の女優賞に輝いた。

 2003年にはベルリン国際映画祭の審査員も務めた。

 2006年には、『素粒子』『善き人のためのソナタ』という国際的にも評価の高い作品で重要な役どころを演じ、それぞれ、ドイツ映画賞助演女優賞、ヨーロッパ映画賞女優賞にノミネートされた。

 2006年以降、国際的に活躍の舞台を広げ、初めてのアメリカ映画『グッド・シェパード』に出演。この作品が出品されたベルリン国際映画祭では製作陣を代表して、受賞した芸術貢献賞を受け取った。


 私生活では、“Der K önig”(1994年)、“Die Spiele zu zweit”(1995年)などで共演した24歳も年上のUlrich Wildgruberと同棲したが、彼の自殺という形で終焉を迎えている。

 現在のパートナーは、スイス出身のTVドラマの演出家Markus Imbodenで、彼の演出作品への出演は非常に多い。

 2006年の“Gala”マガジンでは、「現在最も重要なドイツ女優」のトップに彼女の名を挙げている。彼女に次ぐのが、『ベルリン、僕らの革命』『白バラの祈り』のユリア・イェンチ、そしてTVを中心に活躍しているイリス・ベルベン(日本での公開作は『キラーコンドーム』!)です。

 *参考
 ・公式サイト:http://www.martinagedeck.com/
 ・Martina Gedeckに関するWikipedia(独語版・英語版・日本語版あり):http://de.wikipedia.org/wiki/Martina_Gedeck

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 私の場合、マルティナ・ゲデックに注目したのは、『マーサの幸せレシピ』でもなく、『善き人のためのソナタ』でもなく、『素粒子』でした。

 映画『素粒子』は、いい年してほとんど女性に縁のなかった男がやらせてくれる女性をさがして右往左往するところから始まる物語で、いい年こいて『グローイング・アップ』(もしくは『アメリカン・パイ』、あるいは『40歳の童貞男』)じゃないだろうというおバカな展開を見せるのですが、主人公に救いを与える女性としてマルティナ・ゲデック扮するクリスティアーネが登場すると、映画の雰囲気は徐々に変わってきます。

 クリスティアーネは、空想上の「男にとって都合のいい女」ではなく、当然、肉体も感情も自分の意思も持った女で、主人公ブルーノ(モーリッツ・ブライブトロイ)にとって頭の中だけで描いていた「女性」に実体を与える存在であり、ブルーノにとって救いの女神ともなるわけですが、ブルーノがクリスティアーネを捨てる(クリシティアーネが自ら身を引く)ことでクリスティアーネは聖性を増し、映画としては(男が胸の痛みを感じざるを得ない)“私が捨てた女”モチーフの作品になるわけです。

 ということで、この映画の鍵になるのは、クリスティアーネを演じるマルティナ・ゲデックで、彼女は、男をやさしく包み込む包容力と、そこはかとないはかなさ、悲しさを感じさせて、ぐっとさせるんですね。マルティナ・ゲデック自身は、決して醜女ではありませんが、どこか「醜女の深情け」的な情の濃さと悲しみを感じさせます。

 ※映画『素粒子』は、ブルーノのパートと、彼の異父弟のミヒャエルのパートを交互にはさんで、2人の生き方を対照的に描き出すという趣向を持った作品になっています。なので、実際に観てみると、私が上に書いたようなものとはちょっと印象が違ってしまうかもしれません。念のため。

 『グッド・シェパード』で彼女が演じる役どころも、この『素粒子』のクリスティアーネにつながるもので、出来としては『素粒子』ほど成功してはいませんが(ただのおばちゃんに見えてしまう)、やはり情の濃さと悲しみを感じさせるものでした。
 ロバート・デニーロは、『素粒子』に出ているマルティナ・ゲデックを観て、彼女の起用を決めたのかとも思ったのですが、『素粒子』の公開時期と『グッド・シェパード』の制作期間から考えると合わないので、単なる偶然ということでしょうか。


 上のプロフィールのところにも書きましたが、彼女は、1999年に当時の恋人に自殺されたそうで、それはドイツではよく知られている事実のようでした。
 そのことを、今回、私も、彼女のことを調べて初めて知ったのですが、恋人に自殺されたというショッキングなできごとが彼女に「どこか寂しげな陰影」をもたらし、そして本人の望むと望まざるとに関わらず、結果的に彼女を女優としてもひとまわり大きくした、と考えるのはうがった見方でしょうか。
 知らなければ別になんてことはないことですが、知ってしまったばかりに、映画の中の彼女を見るたびに、これからは「恋人に自殺された女」という先入観で見てしまいそうで、それがちょっと恐くもあります。

 マルティナ・ゲデックは、かなりごつい感じのするドイツ人女優の中でも、大柄な感じのする女優で(実は体はけっこうほっそりしているのだけれど、顔形がそういう印象を与えてしまう)、故国ドイツを飛び出して、国際的に活躍するようになったのは、40代も半ばを過ぎてからというかなり遅咲きの部類に入ります。

 30代でもなかなか主役を張るというのが難しいという女優の世界で、ジョディー・フォスターでもキャサリン・ゼタ=ジョーンズでもない彼女が今以上のステップアップを果たすことができるでしょうか。ドイツのテレビの世界ではよく知られた女優らしいので、ドイツのテレビでならずっとやっていくことはできるのでしょうが、映画の世界では果たして……。くだらない脇役ばかりにならなければいいなと願うばかりなのですが、まあ、ハンナ・シグラ的な役どころだったら、アリ、でしょうか。

 次に日本で見られるマルティナ・ゲデックの映画は、彼女がクララ・シューマンを演じた“Clara”でしょうか。音楽ものだし、監督がヘルマ・サンダース=ブラームズなので、ロードショー公開はなくても、なんらかの形での上映はありそうです。

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この記事へのコメント

2007年11月30日 21:40
こんばんは!
遅くなりましたが、TBありがとうございました。
私もマルティナ・ゲデックは結構好きな女優さんで、そうそう!最近では「グッド・シェパード」にも出演していましたよね。
「マーサの幸せレシピ」で初めて知ったのですが、それ以来、彼女の出演する映画は注目するようになりました。
それにしても、これだけ沢山のテレビや映画に出演していたとは驚きです。
参考にさせて頂いて、ぜひ彼女の他の作品も観てみたいですね。(^^)
こちらからもTBさせていただきました。
umikarahajimaru
2007年11月30日 21:57
nyancoさま
こちらこそどうもありがとうございました。
『しあわせのレシピ』公開のおかげで、『マーサの幸せレシピ』を「発見」される方も多いみたいですね。日本の配給元は、『しあわせのレシピ』が『マーサの…』のリメイクであることは表立っては表明していないみたいでしたが。
当ブログでは、近々、現在活躍中の他のドイツ女優についてもまとめてみるつもりですので、よかったら覗いてみてください。
Ken'ch
2009年07月09日 17:57
“Der Baader-Meinhof Komplex”(バーダー・マインホフ/理想の果てに)、“Clara”(クララ・シューマン 愛の協奏曲)と、強烈なキャラクターの作品が立て続けに公開されますね。
umikarahajimaru
2009年07月10日 00:26
Ken'chさま
まあ、今のドイツ映画界きっての演技派ですからね。
といっても、もう十分、おばちゃん、なんですが(笑)。

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    Excerpt: 筋金入りのシュタージ局員であったヴィースラーが、芸術家たちを盗聴することで、新しい人生に目覚めていく感動的な物語です。 Weblog: 夫婦でシネマ racked: 2007-11-30 21:34