DVD『20 30 40の恋』 レビュー 完全版!

 ケイト・ヤンについての記事を書くついでに、買ったけど、そのまま観ないでいた『20 30 40の恋』のDVDを観てみました。

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 『20 30 40の恋』のことはともかく、一般的にDVDスルーの作品に関しては、観た人の感想がブログに上がったりはしますが、ロードショー作品とは違って、きちんとした作品情報が残されないのが残念なんですね。
 今回もいろいろ調べてみたのですが、やっぱり簡単な紹介以上の作品情報はどこにもありませんでした。

 なので、ここでできるだけまとめておきたいと思います。

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 【物語】

 物語は、着陸間際の旅客機の中から始まる(物語からするとマレーシアから台北へ向かう便らしい)。
 この便には、初めて台北に訪れる20代のマレーシア娘シャオジエが乗っており、フライト・アテンダントとして30代のシアンシアンも搭乗している。

 空港についたシアンシアンは同僚とこれからどうするのかと軽口をたたき、一方、シャオジエは公衆電話からシーさんに電話してどこへ向かえばいいのか訊く。また、空港には別の飛行機で到着したらしい40代リリーの家族も見える。リリーの家族は、留学間近の娘サンディーと、彼女の誕生日祝いを兼ねた旅行の帰りで、リリーはビデオで家族を写すが、サンディーはゲームに夢中で、夫はずっと誰かと携帯電話で話ばかりしている。

 シアンシアンは、つきあっている医者ブライアンに電話をかけるが、手術中だとつれない返事。その電話を切ったそばからもう1つの携帯がなる。それは、遊びでつきあっている、スタジオ・エンジニアの青年シャオチで、彼はシアンシアンに夢中だが、彼女の方はもう冷めている。
 今後の予定が立たないシアンシアンは、バスの中で、ニューヨークに住む元カレ、ジャックに電話したりする。

 シャオジエは、独力でなんとかシーさんの家に着く。シーさんは音楽プロデューサー兼マネージャーで、彼女を売り出してくれることになっている。
 シーさんのところには、香港からトンという娘が先に来ていて、シーさんは2人を双子として売り出そうとしているが、どうやらトンはそれを嫌がっているらしい。
 シャオジエは当面の住まいがないので、トンの泊まっているホテルの部屋に泊めてもらうことにする。

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 シアンシアンが自分の部屋にいると、「男が車を破壊している」という連絡が入る。行ってみると、それは案の定シャオチで、シアンシアンは彼をなだめ、結局ベッドインすることになる。彼は彼女に「結婚しよう」と言うが、彼女はうんとは言わない。

 リリーは、花屋「愛家花店」を営んでいるが、その日は従業員が何人も休みを取ったため、自分で配達に行かなければならなくなる。配達先に行ってみると、配達相手の女性とその子ども、そして自分の夫が仲睦まじく写った写真が飾られているのを見つける。どうやら夫は別の家庭を作り、二重生活していたらしい。

 リリーは、ショックを受けて離婚を決意し、実行に移す。

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 シャオジエは、また異国に来て浅いこともあって、地震後の街頭インタビューでテレビに映ったことがうれしくて家に電話したり、憧れの歌手に偶然街で遭ってはしゃいだりする。
 シャオジエは、トンに、実は家族の了解を得ずに台湾に来てしまったし、歌手として成功しなかったら、帰って家計を支えなくてはならないと話す。一方、トンは自分の母に隠れた恋人がいるらしく、その人に会ってみたいのだと告白する。

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 リリーは、離婚のうさを晴らすように、女友達と一緒に夜遊びをするが、独りになると自問自答を繰り返すばかり。

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 大雨の日、シアンシアンにニューヨークのジャックから電話が入る。大雨で車がつかまらず、びしょぬれになっているのに、その上、彼が結婚するらしいと知って、ショックを受ける。

 シアンシアンは、ふと母の言葉を思い出す。それは、なぜピアノを習うのかというシアンシアンの問いに答えて母が言った言葉で、母はまだ幼かった彼女に「旦那様に捨てられても、独りで食べていけるようにするためよ」と言ったのだ。当時、シアンシアンは、「なぜ私が男に棄てられるの?」とそんなことを言う母が悲しかったが、現実に今確かに自分には男運がなく、そんなことを思い出させる母がうらめしいばかりだった。
 生活を変えるために友人に頼んで、ネット上でピアノを売りに出してもらう。
 衝動的に服を買い込むが、黒ばかりで葬式みたいと友人に言われたり、服はたくさんあるのにまた買ってしまったと自己嫌悪に陥ったり。
 次のフライトに向けてパッキングしている間に、ブライアンもシャオチも電話をくれるが、気持ちは晴れない。

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 トンをメイクしていたシャオジエは、彼女に「女の子とキスしたことある?」と聞く。「ないわ」とトン。「でもそんな子いたわよね」2人はこれから寝ようというのに2人ともブラをしていることで、からかい合う。自分たちの姿を鏡で見た2人は一瞬動きを止めるが、ダンスのポーズを取ってる風に見えたのか、なぜか2人で手を取り合ってダンスを始める。

 リリーは、駐車場で車に忘れ物をしたことに気づき、取りに戻ろうとして、なかなか車がみつからず、車がみつかったと思ったら、今度は何を取りに戻ったのか忘れ、それがサングラスで、頭に乗せているのに気づいていなかったことを知って、二重三重のショックを受ける。
 リリーは、遊ぶ相手を探すためか、知人に電話しまくる。ワンさんが今はテニスのコーチをやっていると聞いて、テニスもいいかもと考える。

 ワンさんにテニスを習うリリー。体を密着させてコーチする彼に興奮したのか、セックスする間柄になる。しかし、ワンさんは元気があり余っているらしく、とうとう耐え切れなくなったリリーはワンさんの頭を殴って、気絶させてしまう。

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 シーさんは、シャオジエとトンに仕事を見つけようとするがなかなかうまくしかない。

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 ようやく決まった仕事は、大学の学園祭で、シャオジエとトンは、サンデーシスターズとしてステージに上がるが、学長の息子だという青年が出てきて、「何曲も唄いやがって、何様のつもりだ」ともめたりする。トンがその青年に食ってかかるが、シーさんが2人の間に割って、青年にわびを入れる。

 ワーッとトンとシャオジエが大学構内の階段を駆け降りていく。
 「今までで一番大胆な経験は?」と訊くトンに、
 「牛の乳しぼりよ。獰猛な牛で私しか近づけなかったの」とシャオジエ。
 「私とセックスできる?」とシャオジエを挑発するトン。
 シャオジエはトンに誘われるようにして、トイレに行くが、トンはシャオジエに迫ると見せて、ふいに出て行ってしまう。

 シアンシアンは、シャオチにつきまとわれたまま自分のマンションに帰るが、それを目撃したブライアンが追いかけてきて、一触即発の危機を迎える。しかし、シャオチが金魚鉢を落として、金魚をアップアップさせたのと、シアンシアンを訪ねてもう1人別の男がやってきたのとで、シアンシアンは事態をうやむやにして部屋を出てきてしまう。
 第三の男スートゥは彼女の後についてきて、ピアノをみに来たが、取り込んでるようなので、出直すと言う。

 シャオジエとトンは、あんなことがあって気まずいのか、帰りの列車では席を離れて座る。そこへさっきの学園祭でもめた青年たちがやってくる。学長の息子だという青年は、さっきのトラブルなどなかったように、馴れ馴れしくトンに話しかけてきて、電話番号を教えるから連絡してくれよと言う。

 リリーは、友人たちとスポーツジムにいて、かっこいい男をみつける。どうせ声なんかかけられないくせにと友人たちに言われたリリーは勇気を振り絞って、彼に声をかける。「同級生だけど覚えてる?」 口からでまかせだったが、実は本当に同級生で、彼ジェリーは彼女のことを覚えていて、彼女を驚かせる。

 リリーは勝手にジェリーに恋心を抱くが、ジェリーはそんなことも知らずに、つきあっている女性に花を贈りたいと彼女の店に注文してきて、ひそかに彼女を傷つけてしまう。
 そんな気持ちのズレもあってか、リリーは花を贈る相手の名前を間違ってしまい、彼女の機嫌を損ねてしまったとジェリーにとがめられてしまう。
 リリーは、ジェリーとその恋人エミーのために自分がよく行くレストランを予約して罪のつぐないをすることにする。

 シアンシアンは、ようやく引越しを決める。引越し屋なのか、それとも偶然やってきて引越しを手伝うはめにたのか、ピアノを注文したスートゥがやってくる。彼は2年前に妻を亡くしたので、8歳の娘にピアノを買って娘を元気づけたいのだと言う。

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 シャオジエが食堂にいると、遅れてトンがやってくる。トンはあの青年(偶然にも名前がシャオジエ)を連れ立ってくる。「映画が長かったのよ」と悪びれるでもないトンに腹を立てて、シャオジエ(マレー娘の方)は店を出てきてしまう。

 シャオジエは、独りでカラオケに行く。
 リリーとジェリーは、連れ立ってライブハウスに行く。
 シアンシアンは、ベランダで来る当てのない電話を待っているが、電話がかかってくると「もう電話しないで」と答え、携帯をベランダから落として(捨てた?)しまう。

 シアンシアンは空港までのタクシーを拾おうとするが、そこでスートゥと偶然再会する。聞くと家はこの近くなのだと言う。

 リリーは、何かあると自分に電話してくるジェリーは、自分のことを相談相手か何だと思っているのかと訝しく思う。

 シャオジエとトンはもうホテルに泊まるお金が尽きかけていることを知る。
 シャオジエ「シーさんに頼もう」
 トン「人妻を寝取るしか才能がない男よ」
 シャオジエ「じゃあなんで契約したの?」
 その質問に答えたくなのか、トンは毛布をかぶって寝てしまう。

 シャオジエはシーさんにお金がないことを告げにいく。

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 シーさんは売り込みが失敗したことを認め、この金で帰れと言って、お金をくれる。
 「まだスタジオに入ったこともないのに」とシャオジエが言うと、シーさんは「好きなだけ入って唄え」と言う。

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 リリーは、「どうしても苦しい」と漏らし、韓国ドラマとアイスで苦しさをまぎらわせる。

 シアンシアンは母の墓参りに来て、呪いをかけた母を恨む。と同時に、運命の人が現れたら、知らせてくれるのかしらと思う。
 すると、偶然にも墓参りに来たスートゥと彼の娘に出会う。

 シャオジエとトン。
 「帰ろうかな。帰ると親も安心する」とシャオジエ。
 2人でフライト・アテンダントにでもなろうかと夢想していて、ふと「シーさんはどうなのるの?」とシャオジエが口にする。
 「ママを愛してはいる」
 「えっ?」
 「そうなの。彼が愛してるのは私のママなの。彼はパパよりもママを愛してるし、ママもそう。私はママが愛してる人がどんな人が見たかったのよ」
 「それをシーさんは知ってるの?」
 「知らないわ」

 トンは、帰国するシャオジエを空港に見送る。
 トンは、2人が街頭インタビューに映った時のビデオテープをシャオジエに手渡す。
 ハグしてくるトンに、シャオジエはキスする。
 とまどっているトンを残して、晴れやかな顔をしてシャオジエは旅立つ。

 スートゥの娘にピアノを教えるシアンシアン。「ピアノが好きだからピアノをやる」という彼女の答えに安心したシアンシアンは「上手になったら好きな人に聞かせるといいわ」とアドバイス。「だったらパパに聞かせるわ」と娘。シアンシアンの肩にスートゥの手がそっと置かれる。

 洗面所で水に顔をつけていたリリーは、起き上がって、カミソリを手にしたかと思うと鏡に向かって「私は男に捨てられた女」と繰り返す。
 するとそこで軽い地震が起こる。
 鎮まれ鎮まれとリリーが念じると地震は静まる。
 リリーは「私は男に捨てられた女」ともう2度繰り返すと、持っていたカミソリでワキ毛の処理を始める。

 リリーは、病院でいつも面倒を見てあげている寝たきりの老女のために誕生日を祝ってあげる。

 元気に朝のジョギングに出かけるリリー。「お早う!いい一日を!」
 誰彼となく、元気に声をかけるリリーにすれ違ったジョガーが思わず方向転換して、リリーを追ってくる。
 BGM“我要你的愛”。
 暗転。クレジット。

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 ◆キャスト

 40代パート
 リリー(シー・イーメイ/施亦梅):シルヴィア・チャン
 リリーの夫:陶傳正(Tao Chuan Zheng)
 リリーの娘サンディー:
 テニスのコーチ ワン(王)さん:リッチー・レン
 ジェリー(チャン・シージエ/張世傑):レオン・カーファイ
 フライト・アテンダント エミー:
 ボビー・チェン(陳昇):本人(リリーとジェリーが行ったライブハウスで「走在雨中」を歌う)
 病院で寝たきりの女性:

 30代パート
 シアンシアン(想想):レネ・リュウ
 ジャック(ニューヨークに住む元カレ):(姿は見せず)
 医者ブライアン:ジェレミー・チャン(張洪量)
 スタジオ・エンジニア シャオチ(小斉):
 ピアノを買いに来た男 スートゥ(司徒):

 20代パート
 シャオジエ(小潔):アンジェリカ・リー
 トン(童):ケイト・ヤン
 音楽プロデューサー&マネージャー シー(石)さん:アンソニー・ウォン
 チー・ユイ(齋豫):本人(シャオジエの憧れの歌手)
 学長の息子 シャオジエ(小傑):チェン・ボーリン

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 ◆各パートが交差するシーン

 20代―30代―40代
 空港シーン
 シアンシアンとシャオジエは同じ旅客機に乗り合わせ、空港では、別の飛行機で着いたらしいリリーの家族もやってくる。シアンシアンとエミーは同僚で、エミーにはジェリーは迎えにきている。

 20代パート―30代パート
 ・シャオジエとトンが受けた街頭インタビューのテレビがシアンシアンの部屋で映っている。

 20代パート―40代パート
 ・カウンター席で、シーさんと隣にリリーが座って食事を取る。

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 ・中華料理屋で、シャオジエ(女)とリリー、ジェリーがいるところへ、トンとシャオジエ(男)がやってくる。リリーと背中合わせにトンとシャオジエ(男)が座る。
 ・リリーの店を偶然シャオジエが覗き込んで、リリーと目が合う。

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 30代パート―40代パート
 ・シアンシアンがタクシー待ちをしているところにスートゥがやってくるが、背景にリリーの店が見えていて、リリーは店の日よけを巻き上げている。

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 ◆名セリフ・名シーン

 少女時代のシアンシアンが「なぜピアノを練習するのか」と聞いて母が答えたセリフ。
 母「旦那様に捨てられても、食べていけるように」
 シアンシアン「なぜ私が捨てられるの」
 母「それより準備することが大切なの」

 シアンシアン「私が死んでも誰も困らない。死にたい。…もう死んだ」

 シアンシアン「最初に来た男と結婚しよう」
 しかし誰も来ないので。シアンシアンはドアの外に出て、自分でチャイムを押してみる。

 シアンシアン「何もかも売りたい。自分も売りたい」

 シアンシアン「最近手入れしてないけど、調律してもらえば値段のわりになかなかよ。自分のことみたい。とにかく大切にしてほしいの」

 シアンシアン「母さん。なぜ落ち着き先がみつからないの? 誰かに愛されてもいつも踏み切れない。“いつか男に捨てられる”という母さんの呪文が私を縛りつけてる。幸せになれる日はくるの? 本当の愛は見つかる? これがその人だってどうやったら分かるの? 母さん、その時はサインをくれる? たとえばどこかで突然鐘が鳴り出すとか、天使が急に歌いだすとか、一陣の風でもいいから…」

 ※書き出してみると、シアンシアンのシーンばかりになりますが、これはシャオジエが恋に対しては未熟なのに対して、リリーは恋を語るには現実的過ぎるからで、リアルに「恋愛と結婚」、「理想と現実」について考えるのはシアンシアンしかいないからだと考えられます。

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 ◆ちょっとした考察

 1.女の一生を描く

 複数の異なる世代の女性を主人公にすることで、実は「1人の女性が、その人生で体験するいろいろなことを描く」というのはよくある手で、実際、監督のシルヴィア・チャンも「この作品では(こうした構成を取ることで)女性の30年を描こうとした」と語っています。

 この作品の主人公の設定は、ちょっとトレンディー・ドラマっぽいというか、「憧れに近い仕事」に就いていて(就こうとしていて)、――それが、まあ、リアリティーを乏しくしていると言えばそうなのですが、あんまり夢がないのも観る側の興味を削ぐかもしれないので、これくらいはいいとして――世代が上になるにつれ、歌手からスチュワーデス、そして花屋の店主と、設定が、だんだん、より現実的なものになっていく(設定してある)というのが面白いですね(笑)。

 シャオジエがラスト近くで「故郷に帰ってスチュワーデスになろうかしら」と話すシーンがありますが、シャオジエの未来はシアンシアンのようになっているかもしれない、とこの映画の作り手は匂わせているわけです。そして、シアンシアンの10年後はリリーと似たようなものになるかもと……。

 この映画は、タイトル通り3つのパートで考えるだけでなく、もっと広い視野で考えることもできます。というか、むしろ、そう作ってあるのですが、この映画に出てくる女性は、すべて、1つの「女の人生」を構成する一部分としても考えられています。そして、それぞれが、その時々の様々な愛のあり方をも示している、という仕掛けになっているわけです。

 シャオジエの恋~少女が同性に寄せるほのかな恋心
 トン~若者の恋
 エミー~情熱的な恋
 シアンシアン~恋愛と結婚、理想と現実の間で揺れる恋
 トンの母~結婚できなくても、互いを愛していることはわかっている真実の愛
 リリーの夫の不倫相手~愛人でもいいという生き方、または略奪愛
 リリー~離婚、そして性別を超えた大人の友情
 病院の寝たきりの老女~あるいは孤独な老後

 これに少女時代のシアンシアンやスートゥの娘を加えてもいいかもしれません。

 この映画の作り手は、男たちを愚かだと思ったり、憎んだりしても、不思議と、女性は誰一人否定的には描いていません。エミーにも、リリーの夫の不倫相手に対してもそうで、それは、この作品が、<「女の一生」を共感込めて描いた作品>であるからにほかありません。
 邦題は『20 30 40の恋』となっていますが、原題が単に“20 30 40”であるにはそういうわけがあります。
 『20 30 40の恋』と思い込むことで、観る者は、それぞれの恋の行方はどうなるのかと考えて物語を追ってしまいますが、これは「この邦題によるミス・ディレクション」で、本当は、少女時代から老後までを見せることで、女の一生、あるいは女の幸せってなんだろうと考えさせるのがこの映画の狙いだったりします。だから、40代のパートは、リリーが新しいパートナーを見つけるという結末にはしなくて、セックスも恋愛感情も抜きで付き合える男女関係があったっていいじゃないか、という終わり方になっています。
 病院の老女のこともそうですが、この映画はファンタジーで始まっていますが、最後は意外と現実的な終わり方をしている、ということになります。

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 2.シャオジエは、トンに対して同性愛的な感情を抱いていたのか

 「シャオジエは、トンに対して同性愛的な感情を抱いていたのか」というのは、20代パートの重要なポイントになりますが、もしそうなのだとしたら、もう少し違った描き方があったかと思います。
 これはそうではなくて、マレーシアから来た「お上りさん」であるシャオジエを、トンがからかって挑発していたのと、何もあげるもののないシャオジエが自分の感謝の気持ちを伝えるのに選んだ精一杯の方法である「キス」が屈折した形でつながっているように見えるからです。その証拠に、シャオジエ役のアンジェリカ・リーは、現実の彼女よりかなり野暮ったいルックス(特に髪型)をさせられています。
 これまた邦題のミス・ディレクションなんですが、ここも「20代の恋」ではなくて、単に「20代の女」、なんですね。

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 3.作劇法

 <複数の異なる世代の女性を主人公にすることで、実は「1人の女性が、その人生で体験するいろいろなことを描く」というのはよくある手で>と上に書きましたが、シルヴィア・チャンの出演作には『恋人たちの食卓』という作品があって、これはもう少し年齢が近いですが、3姉妹の物語で、シルヴィア・チャンはこの企画を思いついた時、『恋人たちの食卓』を思い出した(そして参考にした)というのは想像に難くありません。

 姉妹ものでは、この種の作品として、例えば、トラン・アン・ユンの『夏至』(2000)があります。
 また、主人公がお互いを全く知らないという設定であるなら、ソフィア・ローレン、ミラ・ソルヴィノ、デボラ・カラ・アンガーが主役を演じた『微笑みに出逢う街角』(2002)
 もっと最近の作品では、『肩ごしの恋人』(2007)が主人公の女性は2人で2人は知り合いですが、テーマは本作と全く同じです(ちなみに、原作ではどうなっているのかわかりませんが、少なくとも映画では2人がどうして知り合いなのかは全く示されていませんでした)。

 人物設定としては、こうした群像劇を作劇する場合、新参者を入れて、そこがどういう世界なのか、その人物の目を通して描いていく、というのは常套手段ですが(例えば『ALWAYS 三丁目の夕日』ではその役を堀北真希が担う)、この作品ではそれをアンジェリカ・リーが担っています。
 本作は、つながりの悪さを指摘されていますが、アンジェリカ・リー扮するシャオジエをもっとほかの登場人物と結びつけることができたら、もっとまとまりがでてきたかもしれません。

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 ◆ありがちな間違い

 この映画についてネットで調べていて、いくつかありがちな間違いのあるレビューを発見しました。

 1つは、リッチー・レンをスタジオ・エンジニア役としているもので、これは確かめるまでもなく間違いです。

 もう1つは、リリーが介護している女性を彼女の母と書いているもので、「お隣さんは賑やかね。(それに引き換えこちらは)どうして家族が来ないのかしら」とリリーに発言させていることから、これも間違いだとわかります。
 映画の中では描かれていませんでしたが、離婚したリリーに何か新しいこと、世の中に役に立つことをやってみればと友人か誰かが勧めて(あるいは紹介して)、リリーが老人介護を始めることになった、という設定が隠されているのだと思います。

 なお、上の【キャスト】は精一杯頑張って調べたものですが、スートゥ役の男優はどうしても名前がわかりませんでした。どこかで見たことはあるんですが。

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 かなり長くなってしまったので、このくらいにしておきますが、ネットで調べていて、一番面白かったレビューは、ブログ「箪笥のへそくり」さんのものでした(http://sen1818.exblog.jp/945772/)。コメントしたり、TBしたりしたいのですが、現在はどちらも受け付けていないようなので(ブログ自体更新されていないので閉鎖されてしまう可能性もあります)、ここでご紹介させていただきました。

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この記事へのコメント

2007年11月17日 14:13
はじめまして。
「箪笥のへそくり」管理人のsen1818ことせんきちです。
リンクのお知らせ、ありがとうございました。
現在は下記のスペースにてブログを継続中ですが、「箪笥~」の方も閉鎖する予定はございませんので、ご安心下さい。
取り急ぎ、お礼まで。
http://senkichi.blogspot.com/
umikarahajimaru
2007年11月17日 20:37
せんきちさま
コメントありがとうございました。
やっぱり1つのジャンルを極めた方は知識も情報量も、そして見方も一味違いますね。ブログ「まぜるなきけん」もさっそく「お気に入り」に登録させていただきました。
ちょくちょく覗かせていただきます。

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