川本喜八郎人形美術館に行ってきました!

 長野県飯田市にある川本喜八郎人形美術館に行ってきました。

画像

 映画『死者の書』について調べていた時には、建設中だったのですが、今年(2007年)3月25日にオープンしていたんですね。

 HP(http://www.city.iida.nagano.jp/puppet/kawamoto/index.html)が非常にあっさりしたものだったので、わざわざこのために飯田まで行って、お粗末な展示内容だったらどうしようという恐れもあって、あんまり期待しないようにしようと思っていたのですが、飯田市を挙げてのプロジェクトだということもあり、建物も立派だし、展示内容も見ごたえのあるものでした。

画像

--------------------------------

 建物は、1階が市のおみやげ物売り場(?) (+お蕎麦屋さん)と観光案内所で、2階と3階が美術館になっていて、2階に入り口がありました。

画像

 2階に受付とエントランスがあり、「順路」に従って、3階の展示室を見てまわり、2階に戻ってくるというコースになっています。
 11時、13時、15時、17時には、2階にある映像ホールで、川本喜八郎作品の上映もあって、上映5分前に館内アナウンスで知らされるんですが、展示を見ている途中ですぐに映像ホールに行って、また展示室に戻るというのも構わないらしく、「順路」というのは単に来場者が見やすいように設定されているだけのもののようでした。

 ◇3階
 ・ギャラリー(展示室)
 ・スタジオ(体験室)
 ・ホワイエ

 ◇2階
 ・交流ゾーン
 ・映像ホール
 ・グッズコーナー

画像

 3階は、ギャラリー、スタジオ、ホワイエと区切られてはいますが、人形劇の人形の展示、人形アニメーションの人形の展示、その他の川本作品の展示、「人形ができるまで」についての解説、年譜、内外の映画祭で授与されたトロフィー等展示、という風に各種の展示が順番になされている、と考えたらいいかと思います。

--------------------------------

 ◇人形劇の人形の展示

 この時に展示されていたのは、『三国志』の前半部分で、8つのパート(ガラスケース)で構成されていました。8つのパートとは――
 ・桃園の誓い
 ・黄巾の乱
 ・宮中の抗争
 ・漢末の群雄と連環の計
 ・紳々と竜々
 ・劉備と曹操
 ・三顧の礼
 ・江東と荊州

 各ガラスケースには3~10数体の人形が置かれ、その部分のストーリーの解説と、各人形の説明がプレートによってなされていました。

画像

 こうした人形の展示では、ただそこに人形が(魂を失ったように) ポツンとあるだけでは仕方がないわけで、“見せ方”には相当工夫を凝らしたであろう、ということは想像に難くありません。
 というか、そんなことも意識させないくらい自然な展示だったのですが。

 【人形劇の人形の展示の仕方】
 ・黒い箱の上に黒い正方形の板を置き、その上に人形を立たせる。

 ・照明はガラスケースの上から、前から、後ろという3方向から当てる(そうすることで、人形に陽の光を浴びたような影が出来、顔かたちがくっきり浮かび上がる)。

 ・黒い箱の高さは、身分の高さを表しているようで、1つのガラスケースの中には、最も身分の高い人を中心に、バランスよく高低の箱(人形)を配置している。ただし、「桃園の誓い」の3人の箱の高さだけは同じ。

 ・1つのガラスケースの中にはできるだけいろんな身分の人間が入るように工夫されている。
 それぞれの人形には、役柄や場面に相応しい持ち物(剣、槍、斧、盃、笛、扇等)が持たされている。身分により、服装も違えば、髪型や被り物も違う。馬に乗っている者もいれば、水牛に跨っている子どももいる。

 ・背景には場面に相応しい背景画が置かれる。

 ・人形には、それぞれ表情に違いがあるが、それだけではなく、顔の色や光沢も違ったりする。

 ・それぞれのガラスケースは、それぞれの場面の登場人物(の人形)の紹介であって、場面の再現ではない。

 ・案内人の「紳々と竜々」(紳介竜介)のガラスケース以外は、物語の進行に合わせて展示されているが、「武将」や「戦闘」をイメージさせるものばかりではなく、後漢末の宮中から三国時代へと、8つのガラスケースがメリハリのある展示内容になっている。

 ・8つのガラスケースの中で、劉備・関羽・張飛だけは2度(2体ずつ)展示されていました。

 ・ガラスケース以外に、各シーンの写真パネルや、どうやって動かすかを見せるように衣装を取った紳々人形も展示されていました。

 各人形は、中に手を入れるということもあって、高さ40~50cmくらいありました。

 また、各人形の衣装は、光沢のあるものが多く使用されているようでした。

 物語上では、この部分で最も印象的なのは曹操だと思うんですが、ここでの展示で目立っていたのは赤兎馬と董卓(赤兎馬に乗るのは本当は呂布では?)、あるいは、水牛上の勝平、でしょうか。

 展示室には、案内員(2名?)がいて、来場者に解説をしてくれていました。

--------------------------------

 ◇人形アニメーションの人形の展示

 ・花折り
 ・不射之射
 ・いばら姫またはねむり姫
 ・道成寺
 ・鬼
 ・火宅
 ・死者の書(これだけはセットとともに「スタジオ」に展示)

 人形アニメーションの人形は、人形劇の人形よりも小さくて、20~25cmくらい。

 展示も人形劇の人形とは違って、ガラスケースの上が白いプラスチックの格子で、照明はその上から当てる。下からの照明もペン型の小さいライトで、反射板を使った間接照明。

--------------------------------

 ◇その他の川本作品の展示

 ・休みなさいったら!(スタジオ)
 ・川本・岡本パペットアニメーションショウ(スタジオ)
 ・クイズ面白ゼミナール(鈴木健二人形) (スタジオ)
 ・人形絵本(ホワイエ)
 ・ヤンヤンムウくん(ホワイエ)
 ・3匹のこぶた(ホワイエ)
 ・風の子ケーン(ホワイエ)
 ・シンデレラ(ホワイエ)

--------------------------------

 ◇内外の映画祭で授与されたトロフィー等の展示(ホワイエ)

 ・「花折り」 1968年ママイヤ国際アニメーション映画祭銀のペリカン賞
 ~メダル

 ・メルボルン映画祭特別賞 1974年「鬼」、1976年「道成寺」、1978年「火宅」
 ~すべてブーメラン型の小さなトロフィー

 ・「鬼」 1972年 第10回毎日映画コンクール大藤賞
 ~メダル(ペリカンを刻印?)

 ・「道成寺」 1984年 ロサンゼルス アニメーション・オリンピック 優秀作品選定
 ~賞状

 ・「火宅」
 1980年 ユネスコ国際青少年のための推薦映画メダル
 ~メダル

 1981年バルナ国際アニメーション映画祭グランプリ
 ~牛の仮面をかぶった農民(?)の像

 ・1985年 ブルガリア・バルナ国際アニメーション映画祭 第1回国際アニメーション協会(ASIFA)賞
 ~黒コウノトリ(?)の像

 ・「三国志」
 1985年 川本喜八郎と「三国志」スタッフに対して第17回テレビ大賞特別賞
 ~女性像

 ・1987年 アニメグランプリ アニメージュ賞
 ~楯

 ・「不射之射」
 1988年 上海国際アニメーション映画祭審査員特別賞
 ~オブジェ(メビウスの輪)

 ・1988年 アニー賞
 ~オブジェ(ゾーエトロープ)

 ・「いばら姫またはねむり姫」
 1990年 第28回毎日映画コンクール大藤賞
 ~女性像

 ・1997年 「三国志」「平家物語」に対して第24回伊藤熹朔賞特別賞
 ~凹型のガラスの前に小さな像

 ・2003年 パリ市大勲章
 ~メダル

 ・「冬の日」
 平成15年度 第7回日本メディア芸術祭大賞
 ~オブジェ(nとmとDをイメージしたもの?)

 ・「死者の書」
 2005年 ザグレブ国際アニメーション映画祭審査員特別栄誉賞
 ~賞状

 2006年 第3回中国国際アニメーション&デジタルアーツフェスティバル 長編グランプリ
 ~賞状

 ※展示されていたのは、多数の受賞歴のうちの一部でした。

--------------------------------

 ◇交流ゾーン

 吉川英治『三国志』、横山光輝『三国志』などが置かれていて、自由に読めるほか、川本監督が自作について語っているビデオが流されていました。

 『三国志』の人形キャラクターの写真が入った“しおり”も置かれていて、「自由にお持ちください」と書かれてありました。しおりは全部で15種類ありました。その中には諸葛孔明のものがなかったので、おそらく最初は16種類あって、諸葛孔明のものが一番最初になくなったのだと思われます。

画像

 関連書籍については、注文表が置かれていて受付で買えるようになっていました。
 羅漢中『三国志演義』、吉川英治『三国志』、北方謙三『三国志』、横山光輝『三国志』、『三国志検定』、『三国志の謎』、『三国志のすべて』。

 ◇映像ホール

 120インチ、50席。

 上映回によって、上映作品は異なるらしく、私が観た回は『花折り』でした。20人以上が一緒に観たはずで、ストレートで微笑ましい反応がありました。

 段差のつけられていない、普通の部屋でしたが、見にくいということはありませんでした。もちろん、フィルムではなく、ビデオ・プロジェクターによる上映でしたが。

 ◇グッズコーナー

 書店や各種ショップでも入手できる関連書籍やDVDも売られているほか
 ・海洋堂フィギュアコレクション 劉備、曹操、張飛 各8900円
 (↑ネットで検索すると、画像を見ることができます)
 ・孔明扇 2900円
 ・三国志地図 両面下敷き 1700円
 ・三国志キャラクター クリスタルキーホルダー 各1000円
 ・三国志クリアファイル 200円
 ・三国演義トランプ 500円
 ・一筆箋 曹操、孔明 各350円
 ・三国志 香木しおりセット 1600円
 ・ポスター 白孔明、黒孔明 各300円
 ・紹興酒 関帝 赤5年 1050円
 ・紹興酒 関帝 金10年 2625円
 ・『死者の書』の絵ハガキ・セット(4枚組) A~D 各400円

 ・新刊「別冊太陽 川本喜八郎 人形 この命あるもの」(平凡社) 2520円

画像

 ↑後で都内で探してみましたが、映画コーナーに置いている書店はなくて、かろうじて、工芸関係の棚に1冊あるかどうかというところでした。 関連記事

--------------------------------

 【雑感】

 基本的には、予想を上回る展示内容で、大満足だったのですが(入場料はたった400円だったし)、せっかくなので、あえて気になったことを書き出しておくと――

 ・人形の展示には、物語や各人形のキャラクターについて解説がなされていましたが、各人形や装置、場面等に関する制作エピソードが一切記されていなかったのが、残念といえば残念でしょうか。(この点に関しては、実は「別冊太陽 川本喜八郎 人形 この命あるもの」にこうしたことについての記述があり、ガイドブックとして使えるようになっています。)

 ・展示室での案内員の方の解説をチラリと耳にしたのですが、お客さんに川本監督のことを話すのに「センセイ」と呼ぶのはどうかなあ、と私は思ったのですが、どうでしょうか。飯田市が川本監督を招いて、人形美術館ができたということもあって、飯田市的には「センセイ」なのでしょうが、来場者に使う尊敬語としては使い方が間違っているような気がしますね。まあ、美術館の正式な職員というよりは、「桃園の会」の方が半分ボランティアのような立場で、解説を担当されているというようなことであれば、全然かまわないのですが。

 【飯田市について】

 飯田市は、人形文化が根づいている町で、そのこともあって、ここが故郷でもなんでもない川本監督の人形美術館が設立したわけなんですが、人形座が複数あるほか、「いいだ人形フェスタ」が開催されたり、人形関連の施設も多数あるようです(http://www.city.iida.nagano.jp/puppet/)

画像

 田舎町は、けっこう荒れていたり、寂れていたりして、心寒からしむることも多いのですが、飯田は街に活気が感じられてよかったですね。日夏耿之介や菱田春草の生地であるほか、柳田國男ゆかりの地でもあって、街に文化と歴史が息づいているということなのでしょう。日夏記念館、柳田國男記念館をはじめとする文化施設や各種記念碑もたくさんあるようでした。
 南アルプスの登山口の1つでもあり、桜の名所でもあって、それぞれの季節に楽しめるようになってるんですね。

画像

 東京からJRを使って約5時間(豊橋からは2時間半)、高速バスだと4時間くらいなので、人形美術館がメインでなくても、飯田線沿線のレジャー・プラン(天竜舟下りとか、中央アルプス駒ケ岳ロープウェイとかもある)の中に組み込んでも面白いかもしれませんね。

画像

 グッズコーナーで何か買おうかと相談していた2人組が、「また来るから今度でもいいんじゃない?」と自然に話していたのが、印象的でした。そのくらいの気安さで来れる「町の美術館」ていいですよね。

 [川本喜八郎人形美術館]
 〒395-0044 長野県飯田市本町1-2 TEL:0265-23-3594(さんごくし)
 開館時間:午前10時~午後7時
 休館日:月曜日(祝日は開館)・祝日の翌日・年末年始
 料金:一般 400円(団体300円)、小・中・高校生 200円(団体150円)

 *なかなかいい記事だと思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 

 *当ブログ関連記事
 ・映画『死者の書』、または、リスペクト川本喜八郎!
 ・必携!『別冊太陽 川本喜八郎 人形―この命あるもの』
 ・その他 関連記事

この記事へのコメント

2007年09月14日 11:18
うわぁ・・・いいなあ!!
羨ましい。もうずっと以前、雑誌「特選街」?だったと思いますが、フィギア諸葛孔明他何体だったか忘れましたが、6万円?で売り出されたことがありました。欲しかったのですが、財布と相談して、買いませんでした。長野県飯田市まで行かれたんですか。年と共に興味が薄れていくのですが、思い起こして頂き、新鮮でした。人形劇(NHK)も、ずっと子供と共に見ていましたしね。まんが全巻も、小説も、読んだ読んだ、本当に楽しかったです。
umikarahajimaru
2007年09月14日 20:48
huneさま
いつもありがとうございます。
この時期、自腹でトロント国際映画祭に出かけられる方もいるというのに、私はなんて安上がりなんだ!という気もしますが、気分も変わってなかなかよかったですね。
たぶん近々また川本作品に関する記事をアップできると思いますので、そちらもお楽しみに!

この記事へのトラックバック