サイレント映画を彷彿とさせる『プロコウク氏 家作りの巻』 カレル・ゼマン

 カレル・ゼマンが1947年から1959年までの間に作った人形アニメーションによるコメディー <プロコウク氏>シリーズ8本のうちの1つ。
 <プロコウク氏>シリーズは、主役のプロコウク氏が、毎回異なった職業に挑戦するシリーズで、本作は、初期の作品で、家作りに挑戦しています。



 【物語】
 プロコウク氏がレンガを積んで家を作っていると、積んだレンガの外を回りこむように酒樽が動いてきて、レンガの囲いの中に飛び込んでくる。
 プロコウク氏は驚いて、飛びのくが、酒樽からは手足と頭が出て、酒を勧めてくる。
 プロコウク氏は、喜んで酒をごちそうになるが、飲み出すと止まらなくなり、空の酒びんがどんどんたまっていく。
 ニワトリの鳴き声を聞いて我に戻ったプロコウク氏は、すっかり酔っ払ってしまったことに気づく。そこで作業を再開しようとするが、グラスがちらついて仕事にならない。すっかり家ができてしまっているような幻覚も見る。
 またもやニワトリの鳴き声で目を覚ます。が、また、酒を飲んでしまい、今度は空を飛ぶ幻想を見る。
 ニワトリの鳴き声を聞いて、落下。
 気がつくと自分の体は、コートツリーのように棒状になっている。自分の本物の体はどうなったのかなと見回すと、酒樽男が中に酒を注いでいる。
 プロコウク氏は、酒樽男から自分の体を取り戻し、首を挿げ替える。
 ようやく作業を再開し、家を仕上げていく。

画像

 【コメント】
 このシリーズは、紹介のされ方に混乱があって、邦題が何通りもあり、どれがどれなのか、本当は何本あるのか、どれが何番目に作られたのか、わかりにくくなっています。本作は、DVDでは「家作りの巻」として紹介されている作品で、他では「試練を受けるの巻」と紹介されることもあります。順番的には、2番目に並べられることもありますが、これを第1作とするものもあるようです。

 プロコウク氏のキャラクターは、サイレント映画の喜劇役者を彷彿とさせるものですが、
『アニメーターズ1 カレル・ゼマン』(日本出版社)によれば、最初は社会風刺的だったものが、後半ではヒューマン・コメディー風になると指摘しています。シリーズ初期の作品であるはずの本作は、社会風刺ではなく、明らかにヒューマン・コメディーの方ですが。

 カレル・ゼマン作品として見るなら、プロコウク氏の見る幻想シーンに、のちに「幻想の魔術師」と呼ばれることになるゼマンの萌芽を見ることができるでしょうか。

 物語の構造としては、プロコウク氏が酒を飲んで酔っ払っては、ニワトリの鳴き声で目を覚ますという仕掛けになっていますが、これは作業を夜明けまでに仕上げなくてはならなくて、しかしついついお酒の誘惑に負けてしまうということなのでしょうか。ということは作業は真夜中にやっているということになりますが、その一方で、空を飛ぶシーンの背景は青空=昼ということになっています(これは幻想シーンだから昼でもかまわないということ?) まあ、本作のような作品で、こんなことはあまり気にするようなことでもないのかもしれませんが。

 ◆作品データ
 1947年/チェコスロバキア/7分38秒
 台詞なし/日本語字幕なし
 人形アニメーション

 *この作品は、DVD『幻想の魔術師 カレル・ゼマン 「前世紀探検」/短編「プロコウク氏 家作りの巻」」に収録されています。

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 ◆監督について
 カレル・ゼマン
 1910年 オーストリア・ヘンガリー帝国(現・チェコ)のオストロムニェジェに生まれ、1989年 プラハで没。
 幻想の魔術師、映像の錬金術師、チェコアニメ3巨匠の1人などと称される。

 少年の心をくすぐる冒険ファンタジー、次々と襲い来る試練とロマンの物語、イマジネーションあふれる“未来の”マシーンやメカの創造(特に空を飛ぶ乗り物)、技術の不足をアイデアで補った特撮、……。子ども向けの作品ばかりでありながら、(今となってはレトロとも思える)その作品の魅力にとりつかれたファンは多い。

 父親は貝ボタン職人。
 幼い頃から人形劇が好きだった。
 フランスの広告美術の学校で学び、マルセイユのスタジオに就職。最初に手がけた仕事はスープの広告。
 帰国後も広告の仕事がしたいと考え、まずは、ショーウィンドウのディスプレイのデザインなどを担当した後、ズリーンのクゥドロフ・スタジオに広報担当として就職(1943年)。そこで、アニメーション作家ヘルミナ・ティールロヴァーと出会い、アニメーションの制作に興味を持つ。
 1945年 ティールロヴァーと共同で『クリスマスの夢』を監督。正確には、撮影所の火事でフィルムが焼失してしまったことで失望して降板したティールロヴァーに代わって、カレル・ゼマンが再撮影を買って出る。実写部分をボジヴォイ・ゼマンが監督。この作品は、1946年のカンヌ国際映画祭で最優秀アニメーション賞を受賞。
 1947年 ゼマンとしての最初のプロジェクト「プロコウク氏」シリーズを手がける。
 1950年 最初の中編『王様の耳はロバの耳』を制作。この作品でアニメーションの監督として国内でも知られるようになる。
 1955年 俳優を使った、最初の実写作品『前世紀探検』を制作。
 続いて、ジュール・ヴェルヌ原作の『悪魔の発明』、『ほら男爵の冒険』、『彗星に乗って』など、子ども向けのSFや冒険ファンタジーを制作して、一躍人気監督となる。

 1987年には第2回国際アニメーションフェスティバルに国際名誉会長として来日している。

 娘のリュドミラ・ゼマンは、1984年にカナダに移住し、父の『シンドバッドの冒険』のアニメーターだったEugene Spalenyと結婚(http://www.bookcentre.ca/gg/lzeman.htm)。Eugene Spalenyは、“Certík Fidibus”(1981)、“Lord of the Sky ”(1992)等の監督作品を発表している。

 【フィルモグラフィー】
 ・1945年 『クリスマスの夢』
 ・1946年 『ハムスター』
 ・1946年 『幸福の蹄鉄』
 ・1947年 『プロコウク氏 在役中の巻(靴屋はいやだの巻)』
 ・1947年 『プロコウク氏 試練を受けるの巻(家作りの巻)』
 ・1947年 『プロコウク氏 ボランティアの巻』
 ・1947年 『プロコウク氏 映画製作の巻』
 ・1947年 『生者の中の死者』
 ・1947年 『労働者』
 ・1948年 『水玉の幻想』
 ・1949年 『プロコウク氏 発明家の巻(発明の巻)』
 ・1950年 『王様の耳はロバの耳(ラーヴラ王)』
 ・1952年 『鳥の島の財宝』
 ・1955年 『前世紀探検』 1958年日本公開
 ・1955年 『プロコウク氏 動物の友の巻』
 ・1958年 『悪魔の発明』 1959年日本公開
 ・1958年 『プロコウク氏 探偵の巻』
 ・1959年 『プロコウク氏 アクロバットの巻』
 ・1961年 『ほら男爵の冒険』 2004年日本公開
 ・1964年 『狂気のクロニクル』 2003年日本公開
 ・1966年 『盗まれた飛行船』 1987年日本公開
 ・1970年 『彗星に乗って』 1987年日本公開
 ・1971年 『シンドバッドの冒険 第1話 はじめての冒険』
 ・1972年 『シンドバッドの冒険 第2話 ふたたびの海へ』
 ・1972年 『プロコウク氏 時計屋の巻』
 ・1973年 『シンドバッドの冒険 第3話 巨人の島(巨人の国)』
 ・1973年 『シンドバッドの冒険 第4話 磁石の山』
 ・1973年 『シンドバッドの冒険 第5話 空飛ぶじゅうたん』
 ・1974年 『シンドバッドの冒険 第6話 閉じ込められた魔神(かいならされた悪魔)』
 ・1974年 『シンドバッドの冒険 第7話 海のサルタン』
 ・1976年 『千一夜物語』
 ・1977年 『クラバート』 2003年日本公開←1981年 池袋西武スタジオ200にて上映
 ・1980年 『ホンジークとマジェンカ』 2003年日本公開
 ・1981年 『カレル・ゼマンと子供たち』

 *資料によりデータ(邦題、制作年、作品そのもの)が異なる場合があります。

 *2003年にシアター・イメージフォラムにて<カレル・ゼマン レトロスペクティブ>が開催され、長編8作品(『鳥の島の財宝』『前世紀探検』『悪魔の発明』『狂気のクロニクル』『盗まれた飛行船』『彗星に乗って』『シンドバッドの冒険』『クラバート』『ホンジークとマジェンカ』)、短編5作品(『クリスマスの夢』『プロコウク氏 映画製作の巻』『水玉の幻想』『王様の耳はロバの耳』『鳥の島の財宝』『カレル・ゼマンと子供たち』)が上映されました。2004年 同劇場で『前世紀探検』『ほら男爵の冒険』が上映されました。

 *参考書籍
 ・『アニメーターズ1 カレル・ゼマン』(日本出版社)
 ・『夜想35 チェコの魔術的芸術』(ペヨトル工房) 
 ・『チェコアニメの巨匠たち』(エスクァイア マガジン ジャパン)

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