必携!『別冊太陽 川本喜八郎 人形―この命あるもの』

 「別冊太陽 川本喜八郎 人形―この命あるもの」(2007年9月1日刊)という本があることは、私も川本喜八郎人形美術館のグッズ・コーナーで初めて知ったのですが、残念ながら東京の書店を探してもあまり置いてありません。映画のコーナーに置かれていることはまずなくて、工芸のコーナーにかろうじて1冊置かれているかどうかという感じでした。

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 この本は、これまで川本ファンのバイブルだった『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』(角川書店)刊行以降の作品、つまり『冬の日』と『死者の書』についても多くのページを割いてあるほか、川本喜八郎人形美術館のガイドブックとしても使える本になっていて、とても読み応えがあります。いい本なのに、ほとんど存在自体知られていないのはもったいないですね。

 そこで今回は、この本「別冊太陽 川本喜八郎 人形―この命あるもの」を紹介してみることにしました。

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 ◆おおまかな構成
 ・「死者の書」について
 物語紹介、メイキングなどとともに、豊富な図版で、映画「死者の書」の魅力に迫る。

 ・全作品についての詳しい解説
 『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』では、コマ割りで各作品が紹介してありましたが、こちらでは「物語」と詳しい「解説」、大小様々の図版によって作品を紹介してあります。例えば、「不射之射」の弓矢は核兵器の暗示で、核兵器が使われないまま忘れられてしまうほどになればいいという願いも込められている、などということも書かれています。
 『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』には解説が載ってなかった「アブソルート・ウォッカ 『李白』」についての解説もあります。

 ・「人形劇 三国志」と「人形歴史スペクタクル 平家物語」
 各キャラクターに解説はもちろん、各の人形の造形に関しても触れられていて、川本喜八郎人形美術館鑑賞の手引きとしても使えるようになっています。例えば、曹操の肌が白いのは“悪の白”なんだそうです。
 人形の写真を大きな図版に引き伸ばして写しても人形が全く見劣りしないというところが、人形が丁寧に作りこまれている証拠のようでもあって、とても素晴らしい。しかも、新撮影30体!

 ・川本喜八郎 人と仕事
 旅、思い出の映画『別れの曲』、映画、トルンカとの出会い、川本+岡本パペットアニメーショウ
 師のこと(飯澤匡、トルンカ)
 年譜

 ・川本人形美術館と飯田市
 全収蔵作品を写真つきで紹介してあるほか、人形劇の町・飯田についての解説もあります。

 ◆豪華執筆陣
 ・赤川次郎[巻頭エッセイ] p8
 ・安藤礼二(文芸評論家) p12
 ・岡野弘彦(国文学者、歌人) p22
 ・マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット p28
 ・おかだえみこ p32
 ・高畑勲(『冬の日』に参加) p60
 ・片山雅弘(アニメーション作家) p62
 ・観世銕之丞(能楽師。 「火宅」のナレーションを担当し、『死者の書』では大津皇子の声を担当) p64
 ・池辺晋一郎(作曲家) p65
 ・平井徹(中国文学) p74
 ・森本レオ(「三国志」に声の出演) p96
 ・細野晴臣(「三国志」の音楽を担当) p97
 ・三谷昇(1951年人形劇「プーポン博士のアフリカ体験」から「三国志」「平家物語」「冬の日」「死者の書」等、長年にわたって川本作品に参加) p110
 ・牧野光朗(飯田市市長) p145

 ◆スタッフが語る川本喜八郎
 ・アニメーター 及川功一(「花折り」『冬の日』『死者の書』を担当) p27
 ・プロデューサー 福間順子(桜映画社プロデューサー、『死者の書』をプロデュース) p67
 ・画家 神戸智行(『死者の書』のイメージ画を担当) p68
 ・人形操演者 小松市子(「三国志」「平家物語」で人形を操る) p111

 ◆制作うらばなし
 ・川本喜八郎のアトリエ p4
 ・『死者の書』メイキング p24
 ・「詩人の生涯」のサウンド・デザインについて(西本企良(アニメーター)) p66
 ・人形劇の人形ができるまで p116
 ・衣装に使う古布について(池田重子(時代布「池田」主人)) p118

 ◆特別記事
 ・吉田文雀(文楽)・川本喜八郎対談 p112
 ・作・川本喜八郎 人形&デジタル・アニメーション「シルクロード」台本抜粋 p116
 ・手塚治虫からのメッセージ(展覧会「川本喜八郎の世界」図録からの転載) p132

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 当初は、私も『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』(角川書店)を持っているから、この本はいらないかなと思ったんですが、中身を見てみると『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』をうま~く補うように構成・編集されていて、ほとんど重なるところがなく、川本作品に興味がある人であれば、どちらも買ってしまわざるを得ないようにできていました。やるなあ~、別冊太陽編集部!

 現在、川本監督は司馬遼太郎『項羽と劉邦』の人形劇実現のために、人形を作り始めているところなんだそうです。本書には、そんなことも書かれています。

 定価2400円+税は、少々高めですが、川本喜八郎人形美術館収蔵作品一覧以外のページがほぼオールカラーで、図版を見ているだけでも楽しく、美術書としても十分通用するような1冊となっています。オススメ!

 なお、『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』の特徴は、
 ①各作品の紹介がコマ割りでしてあって、まるで映画を観ているように物語がたどれるようになっていること
 ②詳細なバイオグラフィーがついていること
 ③フレデリック・バック、淀川長治、岸田今日子、花房實(NHK)、小前隆(美術)、峰岸裕和(アニメーター)、田村実(カメラマン)などのゲスト&スタッフ・トークほか、黒柳徹子との特別対談などが掲載されていて、川本喜八郎の人となりや作品の舞台裏がわかるようになっていること
 などが挙げられます。こちらは私の手持ちのものは3700円+税(川本喜八郎人形美術館でも同様)ですが、Amazonではなぜか5800円の値がついています。

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 *当ブログ関連記事
 ・映画『死者の書』、または、リスペクト川本喜八郎
 ・川本喜八郎人形美術館に行ってきました!
 ・その他 関連記事

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 *関連DVD
 ・DVD「川本喜八郎作品集」 3990円(税込)

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 ・DVD「人形劇 三国志 全集」
 ・DVD「平家物語 完全版 DVD SPECIAL BOX」
 ・DVD「連句アニメーション 冬の日」 7140円(税込)
 ・DVD「死者の書」 2007年10月24日発売予定 3990円(税込) 予約価格2993円(税込)

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 ◆川本喜八郎について
 
 映画監督、人形作家、アニメーター。
 1925年 東京・千駄ヶ谷の雑貨屋に生まれる。
 1937年 建築家を目指して旧制東京府立工芸学校(現・東京都立工芸高校)木材工芸科に入学(5年制)。
 1942年 旧制横浜高等工業学校(現・横浜国立大学)建築科入学
 1944年 学徒動員で満州に渡る。帰国後横浜高等工業学校卒業。
 同年 陸軍入隊。陸軍少尉として国内勤務。
 1946年 軍隊時代の上官に誘われて建築会社に入るが、工芸学校時代の同級生 村木与四郎に勧められて東宝を受験し、合格。東宝では美術助手を務める。
 1950年 東宝退社。フリーの人形美術家になる。
 1952年 イジー・トルンカ作品と出会い、人形アニメーションを一生の仕事にすることに決める。
 1953年 持永只仁氏に人形アニメーションについて教わる。
 1953~62年 人形絵本、TVCMの人形制作やアニメーションなどを担当。
 1963~64年 チェコスロバキアに留学。トルンカ・スタジオで『天使ガブリエルと鵞鳥夫人』の制作に加わる。
 1961年~ NHKの子ども向け番組の人形美術やアニメーションを手がける。
 1968年 人形アニメーション『花折り』を自主制作。
 1975年 国際アニメーションフィルム協会理事。
 1981年 初長編『蓮如とその母』の監督とアニメーション、人形美術を手がける。
 1982年~84年 NHK「人形劇 三国志」の人形美術を担当。同作品は第26回児童文化福祉奨励賞、第17回テレビ大賞特別賞を受賞。
 1985年 国際アニメーションフィルム協会賞受賞。
 1988年 中国・上海美術電影スタジオで『不射之射』を制作。
 同年 アニー賞受賞。紫綬褒章を受賞。
 同年 アニメーション作家の共同プロジェクトである「セルフポートレート」に参加。
 1989年 チェコのトルンカ・スタジオで『いばら姫または眠り姫』を制作。
 1993年~94年 NHK「人形歴史スペクタクル 平家物語」の人形美術を担当。
 1995年 勲四等旭日小綬章受賞。
 1996年 第24回伊藤熹朔特別賞受賞。日本アニメーション協会会長に就任。
 2005年 長年の夢であった『死者の書』を完成させる。同作品でシッチェス・カタロニア映画祭で特別賞を受賞。
 2007年 飯田市に川本喜八郎人形美術館オープン。

 その他、個々の作品で国内外の受賞歴多数あり。

 *バイオグラフォー&フィルモグラフィーの詳細は、『川本喜八郎 アニメーション&パペット・マスター』(角川書店)で読むことができます。

 自主製作、つまり誰かがお金を出してくれるわけではないところから映画作りをスタートさせて(自分でお金を出して、自分の満足できる作品を作るところから始めて)、現在のようなアニメーション作家となり、ファンや同業者、後進のアニメーション作家からも深い尊敬を集めている。

 【フィルモグラフィー】

 ・1968年 『花折り』(14分/16mm)[脚本・演出・人形・アニメーション]
 人形アニメーション。台詞あり。

 ・1970年 『犬儒戯画』(8分/35mm)[脚本・演出・美術・人形・アニメーション]
 人形の動きを1コマずつモノクロで撮影し、それを紙焼きしたものを1枚ずつフィルムで撮影。台詞あり(フランス語、日本語字幕)。

 ・1972年 『鬼』(8分/35mm)[製作・演出・人形・アニメーション]
 人形アニメーション。台詞なし、字幕あり。

 ・1973年 『旅』(12分/35mm)[製作・脚本・演出・アニメーション]
 切り紙アニメーション+実写写真。冒頭と最後に蘇東坡の漢詩が字幕で入る。

 ・1974年 『詩人の生涯』(19分/35mm)[製作・演出・アニメーション]
 切り紙アニメーション。台詞なし、字幕あり。

 ・1976年 『道成寺』(19分/35mm) [脚本・演出・人形・アニメーション]
 人形アニメーション。台詞なし、説明字幕がインサートで入る。

 ・1979年 『火宅』(19分/35mm) [脚本・演出・人形・アニメーション]
 人形アニメーション。ナレーションあり。

 ・1981年 『蓮如とその母』(93分/35mm)[監督・人形・アニメーション]
 人形アニメーション。台詞あり。

 ・1982~84年 『NHK人形劇 三国志』(各45分、全68話)[人形美術]
 人形劇。

 ・1988年 『不射之射』(25分/35mm)[脚本・演出・人形美術・アニメーション]
 人形アニメーション。ナレーションあり(北京語版・日本語字幕付バージョンと日本語版バージョンあり)。上海スタジオでの製作作品。

 ・1988年 『セルフポートレート』(1分/35mm)[演出・人形美術]
 クレイ・アニメーション。BGMのみ。

 ・1990年 『いばら姫またはねむり姫』(22分/35mm)[脚本・演出・人形美術監督]
 人形アニメーション。ナレーションあり(チェコ語バージョンもあるらしい)。チェコとの共同製作作品。

 ・1991年 『注文の多い料理店』(19分/35mm)[監修]
 セル・アニメーション。

 ・1993~95年 『NHK人形歴史スペクタクル 平家物語』(各20分、全48話)[人形美術]
 人形劇。

 ・1996年 『オムニバス 李白』(?/?)[?]
 CM?

 ・2003年 『連句アニメーション 冬の日』(105分/35mm)[企画・監督・アニメーション]
 人形アニメーション、クレイ・アニメーション、セル・アニメーション等、様々な手法の作品あり。川本自身は人形アニメーション。朗読あり。

 ・2005年 『死者の書』(70分/35mm)[脚本・監督・人形・アニメーション]
 人形アニメーション。台詞あり。

この記事へのコメント

2007年09月21日 11:18
今日は!
今、早速、アマゾンで注文しました。2520円でした。ありがとう。
>曹操の肌が白いのは“悪の白”なんだそうです。
そうでしたか。曹操の生い立ちは宦官の出ということになっていたような記憶があります。?諸葛孔明に次ぐ魅力的な人物だったような?
>司馬遼太郎『項羽と劉邦』
未読です。読んでみたくなりました。
umikarahajimaru
2007年09月22日 00:03
huneさま
>曹操の生い立ちは宦官の出ということになっていたような記憶があります
宦官には子どもはないはずだからそんなことないんじゃないかと思って調べてみたら、曹操の父が宦官の家に養子に入っていて、曹操自身そのことで蔑視の対象にもなったそうですね。へえ~、huneさん、凄いじゃないですか!恐れ入りました!
私は、吉川英治の『三国志』は読んでいたんですが、そんな記述があったかどうかは覚えていませんでしたね~。
「別冊太陽」をお求めになったということですが、よかったらDVD『川本喜八郎短編集』もお求めください。長編作品以外の全11作品が収録されているのでお得ですよ! まあ、「別冊太陽」を見てると自然と欲しくなっちゃいますが(笑)。

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