『絵画の主題』 ジョルジュ・シュヴィツゲベル

 有名な絵画がいくつも出てきますが、いくつかわりますか?



 【物語】
 何やら書き物をしているらしい老人の姿を絵に描いている画家。
 しかし、キャンバスに描かれているのは老人ではなく、青年。
 画家が、絵に一筆加えていくごとに、絵の中の青年の様子が大きく変わっていく。画家が青年に生命を吹き込んでいるようで、最後には青年は首が動かせるようになって、キャンバスの中から出て行く。
 青年は、赤いドレスの女性が描かれた絵の中に入り込んだり、マネの「草上の朝食」の中に入り込んで語りかけたりする。
 画家が、波打ち際で、椅子に座って海を眺めている青年の絵を描いている。
 絵の中の海が動いて、打ち寄せる波が風になびく草原の草にメタモルフォーズする。
 その上空にいる鳥の群れが画面いっぱいにとらえられていき、鳥の群れが水面のさざ波に変わる。
 汽船の煙突から出ていた煙がむくむくと大きな雲になる。
 雨が降り出して、地面に水たまりをつくる。
 水たまりは、水鳥が水遊びをするような水面に変わり、その水鳥はカーテンの模様に変わる。
 水鳥のカーテンのある部屋の窓外には、有名な絵画の世界が広がる。
 ベラスケスの「ラス・メニーナス」。
 その絵の奥に行くと、フェルメールの「真珠の首飾りの女」。
 その向こうにはムンクの「思春期」。
 さらにその向こうには、上半身半裸の女性の絵がある。
 その女性はおびえているようだったが、画家はそのとなりに男性の姿を描き足して、絵の主題を変えてしまう。

画像

 【コメント】
 絵の中の人物が動き出して、絵の外に飛び出し、他の絵の中に入っていたずらをしたりする映画、かと思うと、その人物(青年)はすぐにいなくなってしまい、お得意のメタモルフォーズがいくつか繰り返されたあと、最後にはいくつかの名画を覗いて、本作はそれで終わってしまいます。

 ジョルジュ・シュヴィツゲベルだったら、絵の中に入り込んで、見えない絵の中の裏の裏まで見せてくれるんじゃないかと思ったりしたんですが、この段階ではそこまではしません。
 数年後に『ジグザグ』を作るのは、監督自身も絵画を使ってやれることがまだあったということに気がついた、ということなのではないでしょうか。

 私が、本作の中で示される絵画の中で、タイトルを当てることができたのは4つですが、あと2つくらいは有名な作品がありそうです。

 本作のラストもちょっと判断がつかないところがあって、おびえている半裸の女性の絵に筆を加えて甘いベッド・シーンに変えたのか、それにしては男性のポーズが不自然でDVのようにも見えてしまいます。監督の作風からすればそんなはずはないのですが、どうなのでしょうか。

 ◆作品データ
 1989年/スイス/5分52秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *この作品を他の誰かにも教えてあげたいと思ったら、人気ブログランキングにクリックをお願いします。
 ↓ ↓ ↓ ↓
 

 ◆監督について
 ジョルジュ・シュヴィッツゲベル
 スイスを代表するアニメーション作家&グラフィック・デザイナー。キャリアは30年以上ですが、この10年間で特に評価が高まっているようです。
 1944年 スイスのベルン生まれ。1951年にジュネーブに移る。
 1961年 ジュネーブのArt School and College of Decorative Artsに入学(~1965年)
 1966年 ジュネーブの広告代理店に入社(~1970年)
 1970年 独立して、Claude Luyet 、Daniel Suter とともにGDS Studio を設立し、テレビ番組のタイトルやポスター、広告イラスト、短編アニメーション等を手がける。
 1983-1984年 中国語を学ぶために1年間、上海の復旦大学で学ぶ。
 1986年 スイスのビュルにあるGruyerien美術館で GDS Studioの展覧会開催。
 1987年 Nürenbergで回顧展開催。
 1992年 ジュネーブで舞台“Children's King”のためのセットを手がける。
 ジュネーブの Building-House のためにフレスコ画を手がける。
 1994年 シュツットガルトで展覧会&回顧展開催。
 1995年 東京と大阪とパリで回顧展開催。
 ジュネーブのギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。
 1996年 ジュネーブのJardin BotaniqueとギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。

 ・1971年“Patchwork ” *カンヌ国際映画祭 短編部門ノミネート
 ・1974年 『イカロスの飛翔』 “Le Vol d'lcare”
 ・1975年 『遠近法』 “Perspectives”
 ・1977年 『オフサイド』 “Hors-jeu”
 ・1982年 『フランケンシュタインの恍惚』 “Le Ravissement de Frank N. Stein” *ベルリン国際映画祭C.I.D.A.L.C. Award名誉賞受賞
 ・1985年 『78回転』 “78 Tours”
 ・1986年 『ナクーニン』 “Nakounine”
 ・1987年“Academy Leader Variations” *カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
 ・1989年 『絵画の主題』 “Le Sujet du tableau”
 ・1992年 『破滅への歩み』(『深遠への旅』) “La Course à l'abîme” *広島国際アニメーションフェスティバル 5分以内の作品部門2位
 ・1995年 『鹿の一年』 L' Année du daim(The Year of the Deer)” *ザグレブ国際アニメーションフェスティバルCategory A - 30 Sec. to 5 Min First Prize受賞
 ・1996年 『ジグザグ』 “Zig Zag”
 ・1998年 『フーガ』 “Fugue” *オタワ国際アニメーションフェスティバルBest Use of Colour Craft Prizes受賞、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞
 ・2001年 『少女と雲』 “La Jeune fille et les nuages(The Young Girl and the Clouds)” *スイス映画賞短編映画部門受賞、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞受賞
 ・ 2004年 『影のない男』 “L' Homme sans ombre(The Man with No Shadow)” *カンヌ国際映画祭 短編部門Prix Regards Jeune受賞、ジニー賞短編アニメーション部門ノミネート、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル審査員特別賞&Jury Award of the Partner Festival Krok 受賞、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞
 ・2006年 『技』 “Jeu” *スイス映画賞最優秀短編アニメーション賞ノミネート、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞

 *1995年にイメージフォーラムの<Magical View!>というプログラムで、イギリスの映像作家トニー・ヒルの6作品とともに、8作品(『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』)が劇場公開されました。

 *第7回ラピュタアニメーションフェスティバル2006で『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『ナクーニン』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』『ジグザグ』『フーガ』『少女と雲』『影のない男』『技』という主だった14作品が<ジョルジュ・シュヴィッツゲベル作品集>として上映されました。
 これに先立って、『技』以外の13作品が『ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品集』として2005年に日本でもDVDリリースされています。

 *参考サイト:THE GALLARY:http://www.awn.com/gallery/schwizgebel/index.html

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック