『フランケンシュタインの恍惚』 ジョルジュ・シュヴィツゲベル

 合わせ鏡の中を歩いていくかのように……。



 【物語】
 映画のオープニングを思わせる数字のカウント・ダウン。
 ぼんやりした視界。徐々に物の形がはっきりしていく。
 研究室の内部らしい風景。人を縛り付けていたらしい寝台も見える。
 壁に四角く切り抜かれた出入口を通り抜けて、同じようながらんとした部屋を次から次へと進んでいく。
 一度だけ右に90度曲がってそのまま直進する。
 それまではフラットに進んでいたのが、右折後、視界が上下動するようになる。
 部屋は、右の壁に窓があったり、出入口の左側の壁に物が置けるスペースがあったりくり貫かれていたり、部屋の中に立方体や何らかのオブジェが置かれていたりする。
 そのうち部屋に人が現れ始める。
 四角い部屋を抜けるとアーチが続く回廊に変わる。
 アーチの奥を見ていると、頭を包帯でぐるぐる巻きにされた男の顔が浮かび、それに女性の顔がオーバーラップする。
 水辺にたたずんでいる何かが近づいてくるイメージ。
 点在する人の集まりの間を通り抜けていくイメージ。空間はただの闇のようであり、これまでと同じ部屋のようであり、右側が開けた廊下のようでもある。
 光の明滅。
 部屋の出入口にフランケンシュタインの顔がオーバーラップする。
 フランケンシュタインが、ある部屋を出て、階段を下りていき、そこに立っていた1人の女性を見つける。
 女性の悲鳴。
 フランケンシュタインの顔のアップから、それが映画館のスクリーンに映し出されているイメージだったことがわかり、さらにフィルムの1コマへと変わる。
 フィルムを引きでとらえていって、1本の線になったところで、それが「FIN」の「I」に収まる。

画像

 【コメント】
 1つの「画」の中へとどんどん進んでいて、その先にあるものを見せていくというやり方は、その後、ジョルジュ・シュヴィツゲベルの1つの特徴のようになっていきますが、本作は、それを最初に試した作品となります。

 似たような部屋を、歩いていくフランケンシュタインの主観としてただ見せていくというのは単調すぎるんですが、ひょっとすると私が気づいてないような何らかの仕掛けがあったりするのかもしれません。

 本作には、途中でフランケンシュタインが自分が何を探しているのかに気づき、最後にそれにめぐり逢うという流れがあり、最初と最後で、これが「映画」であることが示されています。

 途中で立方体と見えたものも、フランケンシュタインが形を認識できなかっただけで、本当は人間だったのかもしれません。
 部屋が最初は図面に引かれた製図のように見えたのも最初フランケンシュタインにはそう見えたからであり、また、初めのころ画面が上下動していないのも、最初は彼が二足歩行していなかったから、と考えると納得がいきます。

 ◆作品データ
 1982年/スイス/8分49秒
 台詞なし/字幕なし
 アニメーション

 *本作は、ベルリン国際映画祭でC.I.D.A.L.C. Award名誉賞を受賞しています。

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 ◆監督について
 ジョルジュ・シュヴィッツゲベル
 スイスを代表するアニメーション作家&グラフィック・デザイナー。キャリアは30年以上ですが、この10年間で特に評価が高まっているようです。
 1944年 スイスのベルン生まれ。1951年にジュネーブに移る。
 1961年 ジュネーブのArt School and College of Decorative Artsに入学(~1965年)
 1966年 ジュネーブの広告代理店に入社(~1970年)
 1970年 独立して、Claude Luyet 、Daniel Suter とともにGDS Studio を設立し、テレビ番組のタイトルやポスター、広告イラスト、短編アニメーション等を手がける。
 1983-1984年 中国語を学ぶために1年間、上海の復旦大学で学ぶ。
 1986年 スイスのビュルにあるGruyerien美術館で GDS Studioの展覧会開催。
 1987年 Nürenbergで回顧展開催。
 1992年 ジュネーブで舞台“Children's King”のためのセットを手がける。
 ジュネーブの Building-House のためにフレスコ画を手がける。
 1994年 シュツットガルトで展覧会&回顧展開催。
 1995年 東京と大阪とパリで回顧展開催。
 ジュネーブのギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。
 1996年 ジュネーブのJardin BotaniqueとギャラリーPapiers Grasで展覧会開催。

 ・1971年“Patchwork ” *カンヌ国際映画祭 短編部門ノミネート
 ・1974年 『イカロスの飛翔』 “Le Vol d'lcare”
 ・1975年 『遠近法』 “Perspectives”
 ・1977年 『オフサイド』 “Hors-jeu”
 ・1982年 『フランケンシュタインの恍惚』 “Le Ravissement de Frank N. Stein” *ベルリン国際映画祭C.I.D.A.L.C. Award名誉賞受賞
 ・1985年 『78回転』 “78 Tours”
 ・1986年 『ナクーニン』 “Nakounine”
 ・1987年“Academy Leader Variations” *カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
 ・1989年 『絵画の主題』 “Le Sujet du tableau”
 ・1992年 『破滅への歩み』(『深遠への旅』) “La Course à l'abîme” *広島国際アニメーションフェスティバル 5分以内の作品部門2位
 ・1995年 『鹿の一年』 L' Année du daim(The Year of the Deer)” *ザグレブ国際アニメーションフェスティバルCategory A - 30 Sec. to 5 Min First Prize受賞
 ・1996年 『ジグザグ』 “Zig Zag”
 ・1998年 『フーガ』 “Fugue” *オタワ国際アニメーションフェスティバルBest Use of Colour Craft Prizes受賞、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞
 ・2001年 『少女と雲』 “La Jeune fille et les nuages(The Young Girl and the Clouds)” *スイス映画賞短編映画部門受賞、ザグレブ国際アニメーションフェスティバルSpecial Recognition受賞、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞受賞
 ・ 2004年 『影のない男』 “L' Homme sans ombre(The Man with No Shadow)” *カンヌ国際映画祭 短編部門Prix Regards Jeune受賞、ジニー賞短編アニメーション部門ノミネート、スイス映画賞最優秀短編賞ノミネート、ザグレブ国際アニメーションフェスティバル審査員特別賞&Jury Award of the Partner Festival Krok 受賞、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞
 ・2006年 『技』 “Jeu” *スイス映画賞最優秀短編アニメーション賞ノミネート、広島国際アニメーションフェスティバル国際審査員特別賞受賞

 *1995年にイメージフォーラムの<Magical View!>というプログラムで、イギリスの映像作家トニー・ヒルの6作品とともに、8作品(『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』)が劇場公開されました。

 *第7回ラピュタアニメーションフェスティバル2006で『イカロスの飛翔』『遠近法』『オフサイド』『フランケンシュタインの恍惚』『78回転』『ナクーニン』『絵画の主題』『破滅への歩み』『鹿の一年』『ジグザグ』『フーガ』『少女と雲』『影のない男』『技』という主だった14作品が<ジョルジュ・シュヴィッツゲベル作品集>として上映されました。
 これに先立って、『技』以外の13作品が『ジョルジュ・シュヴィツゲベル作品集』として2005年に日本でもDVDリリースされています。

 *参考サイト:THE GALLARY:http://www.awn.com/gallery/schwizgebel/index.html

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